名古屋地方裁判所 昭和50年(ワ)594号 判決 1975年10月29日
主文
被告は、原告に対し、金二六三万九、五九五円および内金二四三万九、五九五円に対する昭和五〇年四月五日から、内金二〇万円に対する本判決言渡の翌日から、各完済に至るまで、年五分の割合による金員を支払え。
原告のその余の請求を棄却する。
訴訟費用はこれを一〇分し、その一を原告の負担とし、その九を被告の負担とする。
この判決は、原告勝訴の部分に限り、仮に執行することができる。
事実
第一当事者の求めた裁判
一 請求の趣旨
被告は、原告に対し、三〇〇万円およびこれに対する昭和五〇年四月五日から完済に至るまで年五分の割合による金員を支払え。
訴訟費用は被告の負担とする。
仮執行の宣言。
二 請求の趣旨に対する被告の答弁
原告の請求を棄却する。
訴訟費用は原告の負担とする。
第二請求原因
一 事故の発生
1 日時 昭和四八年四月一九日午前零時三五分頃
2 場所 名古屋市熱田区森後町一の七〇先道路
3 加害車 訴外池弘運転の普通自動車(名古屋四四―一一二四号)
4 被害者 原告
5 態様 原告が加害車に同乗中、同車が安全地帯に衝突
二 責任原因(自賠法三条)
被告は、加害車を自己のため運行の用に供していた。
三 受傷、治療経過等
1 受傷
顔面多発挫創、頭部挫傷、左膝挫創等
2 治療経過
(一) 昭和四八年四月一九日から同年五月七日まで
中京病院 入院(一九日)
(二) 昭和四八年五月八日から昭和五〇年二月二六日まで
同病院 通院(実日数五四日)
(三) 昭和四八年一〇月三一日から同年一一月八日まで
勝又病院 入院(九日)
3 後遺症
眉間、額、左脚等に瘢痕が残存(一二級に該当)
四 損害
1 治療費 四七万三、四〇五円
2 入院雑費 一万四、〇〇〇円
一日五〇〇円の割合による二八日分
3 通院交通費 一万五、一二〇円
一日往復二八〇円の五四日分
4 逸失利益 三六三万九、八四二円
原告は、昭和一三年六月四日生れの健康な女子で、事故当時クラブのホステスとして働き、月平均一二万円の収入を得ていた。
(一) 休業損害 二七六万円
事故日から昭和五〇年三月一八日までの二三か月間、休業を余儀なくされた。
(二) 将来の逸失利益 八七万九、八四二円
前記後遺症のため、向後五年間は一四パーセントの労働能力の減少が見込まれる。
5 慰藉料 一二〇万円
6 弁護士費用 三〇万円
五 損害の填補
自賠責保険から一〇二万円を受領
六 本訴請求
よつて、被告に対し、右の残損害四六二万九、三六七円のうち、三〇〇万円およびこれに対する本訴状送達の翌日から完済に至るまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払いを求める。
第三請求原因に対する被告の答弁
一は認める。
二は不知。
三ないし五は否認する。
第四被告の主張
加害者は、訴外池弘が被告方の就業時間外に無断で持ち出して使用したものであるから、被告には責任がない。
第五被告の主張に対する原告の答弁
争う。
第六証拠〔略〕
理由
一 事故の発生
請求原因一の事実は当事者間に争いがない。
二 責任原因
原告本人尋問の結果および弁論の全趣旨によれば、被告が加害車を所有していたものと認められる。
ところで、被告は加害車は訴外池弘が被告方の就業時間外に無断で持ち出して使用した旨主張するが、その立証を全くしないばかりか、原告本人尋問の結果により真正に成立したものと認められる甲第三号証、原告本人尋問の結果によれば、同訴外人は被告に雇われ、しかも被告方に同居していたものであることが認められ以上のような被告と同訴外人の密接な人的関係からすれば、仮に被告の右主張事実を前提としても、被告はなお加害車の運行支配を有していたというべきである。
従つて、被告は自賠法三条により、本件事故による原告の損害を賠償する責任がある。
三 受傷、治療経過等
請求原因三の事実は原告本人尋問の結果により真正に成立したものと認められる甲第四ないし第一一号証、原告本人尋問の結果により認められる。
なお、甲第九号証によれば、昭和五〇年二月六日をもつて、症状が固定したものと認められる。
四 損害(損害額の計算については円未満を切り捨てる。)
1 治療費 四七万三、四〇五円
前記甲第六、第八号証により認められる。
2 入院雑費 八、四〇〇円
前記三で認定のとおり二八日間入院しているので、一日三〇〇円の割合による同期間分について相当と認められる。
3 通院交通費 一万五、一二〇円
前記三で認定のとおり、五四日間通院しているところ、原告本人尋問の結果によれば一日往復二八〇円を要したことが認められるので、同額の同期間分について認められる。
4 逸失利益 二〇四万二、六七〇円
原告本人尋問の結果により真正に成立したものと認められる甲第一一ないし第一三号証、原告本人尋問の結果によれば、原告は事故当時クラブのホステスとして働き、月平均一二万の給料を受けていたことが認められるところ、経験則上、同職業の場合、少くとも三五パーセントの経費を要するものと考えられるので、原告の月収は七万八、〇〇〇円と認められる。
(一) 休業補償 一六八万四、八〇〇円
前記三で認定の受傷の部位、程度、治療経過、原告の職種等を考慮すると、事故日の昭和四八年四月一九日から症状固定日の昭和五〇年二月六日までの二一か月と一八日間、休業を余儀なくされたものと認められる。
<省略>
(二) 将来の逸失利益 三五万七、八七〇円
前記三で認定の後遺症の部位、程度、原告の職種等を考慮すると、本件後遺症により、症状固定日から三年間労働能力を一四パーセント喪失するものと認められる。
(78,000×12×14/100×2,731(3年のホフマン係数)≒357,870)
5 慰藉料 九二万円
入通院分 四〇万円
後遺症分 五二万円
6 合計 三四五万九、五九五円
五 損害の填補
請求原因五の事実は原告本人尋問の結果により認められる。
そこで原告の前記損害額から右の填補分一〇二万円を差引くと、残損害は二四三万九、五九五円となる。
六 弁護士費用 二〇万円
本件事案の内容、審理経過、認容額等を考慮。
七 結論
よつて、被告は原告に対し二六三万九、五九五円および内弁護士費用を除く二四三万九、五九五円に対する本件不法行為の後である昭和五〇年四月五日から、内弁護士費用二〇万円に対する本判決言渡の翌日から、各完済に至るまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金を支払う義務があり、原告の本訴請求は右の限度で正当であるからこれを認容し、その余の請求は理由がないから棄却することとし、訴訟費用の負担につき民事訴訟法八九条、九二条本文、仮執行の宣言につき同法一九六条を適用して、主文のとおり判決する。
(裁判官 熊田士朗)