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名古屋地方裁判所 昭和52年(ワ)2109号 判決 1981年9月25日

主文

一  原告游淑英が被告会社の取締役及び代表取締役の地位にあることを確認する。

二  原告游角が被告会社の監査役の地位にあることを確認する。

三  昭和四九年七月一日の被告会社臨時株主総会における別紙目録第一の1、2記載の各決議は、いずれも不存在であることを確認する。

四  昭和四九年七月一日の被告会社取締役会における別紙目録第二記載の決議は、不存在であることを確認する。

五  訴外簡美恵が被告会社の取締役たる地位、訴外簡東緒が被告会社の代表取締役たる地位をそれぞれ有しないことを確認する。

六  原告游淑英が被告会社の株式二、〇〇〇株を有する株主たる地位を有することを確認する。

七  訴訟費用は被告の負担とする。

事実

第一  (当事者の申立)

一  原告ら

主文一ないし七項同旨。

二  被告

1  原告の請求をいずれも棄却する。

2  訴訟費用は原告の負担とする。

第二  (当事者の主張)

一  原告の請求原因

1(一)  原告游淑英は昭和四七年二月一日被告会社の取締役及び代表取締役に就任し、爾来その地位にあった。

(二)  ところが、現在商業登記簿上被告会社の代表取締役に就任している訴外簡東緒は、昭和四九年六月一〇日、同原告に全く無断で、かつ、その権限もないのに、同原告が同年七月一日付をもって被告会社の取締役を辞任したい旨の辞任届を偽造し、同月五日、被告会社は名古屋法務局に対し、同原告が同月一日、取締役を辞任し、かつ、代表取締役を退任した旨の登記を申請し、その旨の登記を経由させるに至った。

(三)  しかし、同原告には右辞任の意思は全くないので、同原告が被告会社の取締役及び代表取締役の地位にあることの確認を求める。

2(一)  原告游角は昭和四七年二月一日被告会社の監査役に就任し、爾来その地位にあった。

(二)  ところが、前記訴外簡東緒は、昭和四九年六月一〇日同原告に無断で、かつ、その権限もないのに同原告が同年七月一日付をもって被告会社の監査役を辞任したい旨の辞任届を偽造し、前項(二)と同様にして退任の登記を申請し、その旨の登記を経由した。

(三)  しかし、同原告には右辞任の意思は全くないので、右監査役の地位にあることの確認を求める。

3(一)  原告游淑英は被告会社の株式二、〇〇〇株の株主である。

(二)  被告会社の商業登記簿によれば、昭和四九年七月一日に開催された被告会社の臨時株主総会において別紙目録第一の1、2記載の各決議がなされた旨の登記がある。

(三)  しかしながら、右株主総会は実際に開催されたことはないので、右決議の不存在確認を求める。

4(一)  原告游淑英は昭和四七年二月一日に被告会社の代表取締役に就任し、爾来代表取締役の地位にあった。

(二)  しかし、被告会社の取締役会議事録並びに商業登記簿によれば、昭和四九年七月一日取締役会が開催され、別紙目録第二記載の決議がなされた旨の記載及び登記が存在する。

(三)  しかし、右取締役会は実際には開催されていない。また、仮に開催されたとしても右取締役会に先立って開催されたとする臨時株主総会は存在しないので、右取締役会も存在しないことになる。

(四)  よって、右取締役会の決議不存在の確認を求める。

5(一)  前記3及び4項のとおり被告会社における別紙目録第一、第二記載の決議は存在しない。

(二)  従って、右第一の決議における訴外簡美恵の取締役としての地位、訴外簡東緒の代表取締役としての地位は存在しないので、原告らはその不存在の確認を求める。

6(一)  前記3項(一)にあるとおり原告游淑英は被告会社の株式二〇〇〇株を有するものであり、右は同原告が被告会社の前経営者であり、株主であった訴外阿石勇一から金一〇〇万円(一株当り金五〇〇円)を出捐して譲受けたものである。

(二)  しかし、被告会社は、それを訴外簡東緒が出資し、譲受けたもので、名義株にすぎないとして同原告の株主としての地位を否認し、株主総会の通知もしないので、同原告は被告会社に対し右株主たる地位の確認を求める。

二  被告の答弁

1  請求原因1項の(一)の事実は認める。

同項の(二)のうち、原告游淑英につきその主張の取締役辞任及び代表取締役退任の各登記がなされ、その旨の各登記が経由されている事実は認めるがその余は争う。

同項の(三)は争う。

右各登記手続は同原告の辞任及び退任の意思に基づいてなされたものであり、もとよりその辞任届は、訴外簡東緒の妻である同原告が同居中に提出されたもので、右訴外簡東緒が偽造した事実はない。

2  請求原因2項の(一)の事実は認める。

同項の(二)のうち、原告游角につきその主張の監査役辞任の登記申請がなされ、その旨の登記が経由された事実は認めるが、その余の事実は争う。

同項の(三)は争う。

同原告の右辞任はその意思に基づいてなされたものである。

3  請求原因3項の(一)の事実は認める。原告游淑英主張の株式二、〇〇〇株は後述のとおり名義株にすぎず、同原告に株主の権利はない。

同項の(二)の事実は認める。

同項の(三)は争う。被告会社の株主総会は適法に成立し、決議は存在する。

4  請求原因4項の(一)の事実は認める。

同項の(二)の事実も認める。

同項の(三)の事実は争う。被告会社の取締役会は適法に成立している。

同項の(四)は争う。

5  請求原因5項の(一)の事実は否認する。原告ら主張の各決議は存在する。

同項の(二)は争う。訴外簡美恵は被告会社の取締役としての地位を、訴外簡東緒はその取締役及び代表取締役としての地位を有する。

6  同6項の(一)のうち原告游淑英が名義上被告会社の株式二、〇〇〇株の株主になっていることは認めるが、その余の事実は争う。右株式は訴外簡東緒が他の二、〇〇〇株の株式とともに被告会社の最初の設立者訴外阿石勇一から合計金二〇〇万円(一株当り額面金五〇〇円)を出捐して譲受けたものであって、すべて同訴外人の権利に属するものであり、同原告主張の二、〇〇〇株はたまたま妻である同原告の名義にしたにすぎず、名義株である。

同項の(二)は争う。

第三  (証拠関係)(省略)

別紙

目録

第一1 原告游淑英が被告会社の取締役を辞任したので、簡美恵を取締役に選任する。

2 原告游角が被告会社の監査役を辞任したので、柴田音之助を監査役に選任する。

第二 簡東緒を被告会社の代表取締役に選任する。

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