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名古屋地方裁判所 昭和53年(モ甲)383号 判決 1978年7月03日

申立人(被申請人) 三菱重工業株式会社

被申立人(申請人) 四方八州男

主文

一  被申立人から申立人に対する名古屋地方裁判所昭和五一年(ヨ)第七九一号賃金仮払仮処分申請事件について、同裁判所が、昭和五一年一〇月二九日なした仮処分決定中主文第一項を取消す。

二  被申立人の右仮処分申請を却下する。

三  訴訟費用は被申立人の負担とする。

四  この判決第一項は仮に執行することができる。

事実

第一当事者の求めた裁判

一  申立人

(一)  主たる申立

主文一、三項と同旨及び仮執行の宣言。

(二)  予備的申立

1 被申立人から申立人に対する名古屋地方裁判所昭和五一年(ヨ)第七九一号賃金仮払仮処分申請事件について同裁判所が昭和五一年一〇月二九日なした仮処分決定中主文第一項は申立人が保証を立てることを条件としてこれを取消す。

2 訴訟費用は被申立人の負担とする。

3 仮執行の宣言。

二  被申立人

1  本件申立をいずれも棄却する。

2  訴訟費用は申立人の負担とする。

第二当事者の主張

(申立の理由)

一  被申立人は申立人名古屋航空機製作所に勤務していた従業員であつたところ、申立人が昭和四六年七月一日被申立人に対し、申立人大阪営業所総務部勤労課に転任を命じたのに拘らずこれを拒否したので、申立人は同年七月一六日被申立人に対し解雇の意思表示をした。

これに対して被申立人は申立人を相手取り右解雇処分が無効であるとして名古屋地方裁判所に地位保全等の仮処分申請(以下「第一次仮処分申請」という)をなし(同裁判所昭和四六年(ヨ)第八八四号)、同裁判所は昭和五一年五月三一日被申立人が申立人に対し労働契約上の権利を有する地位にあることを仮に定めるとともに金二、五〇〇、〇〇〇円及び昭和五〇年一〇月以降本案判決確定に至る迄毎月二〇日限り金八二、九一二円を仮に支払えという賃金の仮払を命ずる仮処分判決(以下「第一次仮処分判決」という)をなした。

二  そして被申立人は右第一次仮処分判決がなされるや、昭和五一年七月名古屋地方裁判所に、申立人は右仮処分判決後も被申立人の就労を拒否しているのであるから右仮処分判決後も被申立人は民法第五三六条第二項により本件解雇処分以降も賃金請求権を有し、かつ、他の従業員と同様に、賃金規則、労働協約などに基づく賃金引上げによる増額分、昇給及び賞与等の支払を受ける権利を有するところ、被申立人の計算によれば、昭和五〇年一〇月より同五一年八月迄の例月給与、一時金の合計は金三、六六九、〇八一円(昭和五一年四月以降の例月給与は月額二四六、八一三円)となるが、第一次仮処分判決に従つて金八二、九一二円の一一ケ月分計九一二、〇三二円が支払われているので、申立人に対し右残額金二、七五七、〇四九円及び昭和五一年九月以降毎月二〇日限り前記計算による例月給与二四六、八一三円と第一次仮処分判決による月額八二、九一二円との差額金一六三、九〇一円を仮に支払うことを求める賃金仮払仮処分申請をなした(以下「第二次仮処分申請」という、同裁判所昭和五一年(ヨ)第七九一号)。

三  右仮処分申請に対し名古屋地方裁判所は、昭和五一年一〇月二九日申請人(本件被申立人)は第一次仮処分判決により被申請人(本件申立人)に対し労働契約上の地位を仮に保有しているものであるから、右仮処分判決が取消されない以上本件においても申請人(本件被申立人)が被申請人(本件申立人)に対し労働契約上の地位を仮に保有しているものと認めるのが相当であり、被申請人(本件申立人)が申請人(本件被申立人)の就労を拒否している以上、申請人(本件被申立人)は民法第五三六条第二項により本件解雇以降も賃金請求権を有し、かつ、他の従業員と同様に就業規則、労働協約等に基づく賃金引上げによる増額分、昇給及び賞与等の支払を受ける権利を有するものというべきであると判断したうえ申請人(本件被申立人)の昭和五〇年一〇月より同五一年九月迄の例月給与、一時金の合計は金三、三二五、六八四円(昭和五一年四月以降の例月給与は月額二〇五、八八〇円)となるが、第一次仮処分判決により申請人(本件被申立人)は被申請人(本件申立人)から毎月八二、九一二円の一二ケ月分計九九四、九四四円の仮払を受けているのでこれを控除すると申請人(本件被申立人)は被申請人(本件申立人)に対し、昭和五〇年一〇月より同五一年九月迄の例月給与、一時金として計二、三三〇、七四〇円の、また、同年一〇月以降本案判決確定に至る迄毎月二〇日限り一二二、九六八円の各支払請求権をそれぞれ有するものというべきであるが、必要性の点で申請人(本件被申立人)の本件仮処分申請は金二、〇〇〇、〇〇〇円及び昭和五一年一〇月以降本案判決確定に至る迄毎月二〇日限り金一二二、九六八円を仮に支払えとの限度において理由があるのでこれを認容し、その余は失当として却下する旨の決定をなした(以下「第二次仮処分決定」という)。

四  而して被申立人はその後右第二次仮処分申請と同様の理由に基づき昭和五一年年末一時金五一〇、八七三円の仮払を求める仮処分申請を名古屋地方裁判所になし(同裁判所昭和五一年(ヨ)第一三六〇号)、同裁判所は昭和五一年一二月一七日右仮処分申請は金三三〇、〇〇〇円を仮に支払えとの限度において理由があるのでこれを認容しその余を失当として却下する旨の仮処分決定をしたが(以下「第三次仮処分決定」という)、被申立人は更に昭和五二年六月、前同様の理由に基づき、同年三月以降の賃金増額、同年四月以降の昇給により、同年三月より同年六月迄の例月給与の合計は金八九六、二〇二円(同年三月分の例月給与は二一八、六六一円、同年四月以降は二二五、八四七円)となるが第一次仮処分判決及び第二次仮処分決定に従つて金八二三、五二〇円が支払われているので、申立人に対し右残額金七二、六八二円及び昭和五二年七月以降毎月二〇日限り前記計算による例月給与二二五、八四七円と第一次仮処分判決及び第二次仮処分決定に月額計二〇五、八八〇円との差額金一九、九六七円を仮に支払うことを求める賃金仮払仮処分申請をなし(同裁判所昭和五二年(ヨ)第九四四号)、同裁判所は昭和五二年七月一三日右仮処分申請を認容し、「被申請人(本件申立人)は申請人(本件被申立人)に対し金七二、六八二円及び昭和五二年七月以降毎月二〇日限り金一九、九六七円を仮に支払え」との仮処分決定(以下「第四次仮処分決定」という)をなした。

なお、被申立人はその後も引続き、前同様の理由に基づき昭和五二年夏季一時金五五九、九五二円の仮払を求める仮処分申請を名古屋地方裁判所になし(同裁判所昭和五二年(ヨ)第一二三五号)、同裁判所は昭和五二年九月七日右仮処分申請は金三六〇、〇〇〇円を仮に支払えとの限度において理由があるのでこれを認容し、その余を失当として却下する旨の仮処分決定をしたが(以下「第五次仮処分決定」という)、次いで昭和五二年年末一時金五七六、二〇一円の仮払を求める仮処分申請をなし(同裁判所昭和五二年(ヨ)第一八七九号)、同裁判所はこれに対し昭和五二年一二月二三日右仮処分申請は金三七〇、〇〇〇円を仮に支払えとの限度において理由があるのでこれを認容し、その余を失当として却下する旨の仮処分決定(以下「第六次仮処分決定」という)をなした。

五  ところで申立人は前記第一次仮処分判決中、本件申立人敗訴の部分を不服として名古屋高等裁判所に控訴の申立をしていたところ(同裁判所昭和五一年(ネ)第二三七号)、同裁判所は昭和五三年四月二五日、控訴人(本件申立人)が被控訴人(本件被申立人)に対してなした、被控訴人(本件被申立人)の転任命令拒否に基づいてなした本件解雇処分はその配転命令が有効であるから、これまた有効であり、右配転命令の無効を前提とする被控訴人(本件被申立人)の解雇無効の主張は採用の余地なきものというほかはなく、結局本件配転命令及び解雇処分が無効であることについて疏明がないことに帰着するからこれらの無効を前提とする本件仮処分申請(第一次仮処分申請)は理由がないものといわなければならないと判断して原判決(第一次仮処分判決)中控訴人(本件申立人)敗訴の部分を取消す、被控訴人(本件被申立人)の本件仮処分申請を却下する旨の判決を言渡した。

六  以上の経緯に鑑みれば第一次仮処分判決が取消されずに存することを前提としてなされた本件第二次仮処分決定は、右判決が取消された以上その理由がないことに帰し、事情が変更して原因及び必要性が消滅したものというべきであるから、申立人はその取消を求めるため本申立に及んだ次第である。

七  また本件第二次仮処分申請は、縦令万一本案訴訟において被申立人の主張が認容されたとしても、性質上被申立人において金銭的補償によつて仮処分の目的を達し得るものであり、一方申立人は第一次仮処分判決後これを取消す前記控訴審の判決の言渡がなされる迄の間に、被申立人に対し第一次仮処分判決並びに第二次仮処分決定に基づき計金九、四〇六、六六四円の、第四次仮処分決定に基づき計金二七二、三五二円の各仮払を了している外前記第三次、第五次、第六次各仮処分決定に基づき計金一、〇六〇、〇〇〇円の仮払を了しているところ(仮払金総額計金一〇、七三九、〇一六円)、申立人が本案訴訟において前記控訴審の判決と同様申立人勝訴の判決を得ても既に支払われた右仮払金は消費され、申立人が被申立人に右仮払金及び今後第二次仮処分決定に基づき引続き仮払を続けなければならないとするならば、その仮払金の返還を求めることは事実上不可能で申立人としてはより多大の損害を蒙ることになることは明白である。

八  以上の事情は民事訴訟法第七五九条にいう特別の事情があるときにも該当することは明らかであるので、申立人は予備的申立として同規定により本件第二次仮処分決定の取消を求める。

(申立の理由に対する答弁)

一  申立の理由第一項ないし第五項の事実は認める。

二  同第六項の主張は争う。

三  同第七項中仮払のなされた事実は認め、その余は争う。

四  同第八項の主張は争う。

(被申立人の主張)

本件第一次仮処分事件についての控訴審判決は、一方では被申立人の正当な組合活動とこれに対する申立人の様々な妨害行為を認定し、被申立人の諸活動を、申立人が嫌忌していたものと認定しながら、右嫌忌の事実と配転命令とを全く切り離して、右嫌忌の事実から直ちに不当労働行為意思を推認することは困難であるとしている。しかしながら、不当労働行為意思は、嫌忌の事実があればこれを推認するのが当然であり、それ以外に不当労働行為意思の判断はできないでのあるから、右控訴審判決は不当である。

従つて、被申立人が申立人の従業員であることは変わりなく、申立人に対し賃金請求権を有し、且つ仮払の必要性があることも明らかである。

第三証拠<省略>

理由

申立の理由第一項ないし第五項の事実は当事者間に争いがない。右事実によると、第二次仮処分決定は、被申立人が申立人に対し労働契約上の地位を有することを仮に定めた第一次仮処分判決のいわゆる形成的効力により被申立人は当然に労働契約上の地位を仮に保有しているものとなし、右地位に基づいて発生する賃金支払請求権を被保全権利として、申立人に対し、主文第一項において被申立人主張のとおりの賃金仮払を命じたものであることが明らかである。

ところが、右第一次仮処分判決が昭和五三年四月二五日控訴審において取消されたことは当事者間に争いがなく、右控訴判決により第一次仮処分判決の前記形成的効力は消滅するから、第二次仮処分決定主文第一項の被保全権利も発生の基礎を失い、当然に消滅したものというべく、右は民訴法七五六条、七四七条にいう事情の変更に当ると解するのが相当である。

よつて、申立人の本件申立を正当として認容し、本件仮処分申請はこれを却下することとし、訴訟費用の負担につき民訴法八九条、仮執行の宣言につき同法一九六条一項を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判官 松本武 戸塚正二 島本誠三)

仮処分決定の主文及び理由

主文

一 被申請人は申請人に対し、金二、〇〇〇、〇〇〇円及び昭和五一年一〇月以降本案判決確定に至るまで毎月二〇日限り金一二二、九六八円を仮に支払え。

二 申請人のその余の申請を却下する。

三 申請費用は被申請人の負担とする。

理由

一 申請人は被申請人の従業員であるが、被申請人は昭和四六年七月一六日申請人に対し解雇の意思表示をなした。そこで申請人は右解雇が無効であるとして、名古屋地方裁判所に地位保全等の仮処分申請(同裁判所昭和四六年(ヨ)第八八四号)をなしたところ、同裁判所は昭和五一年五月三一日申請人が被申請人に対し労働契約上の権利を有する地位にあることを仮に定めるとともに賃金の仮払を命ずる仮処分判決(以下第一次仮処分判決という)をなした。以上の事実は当事者間に争いがない。

二 そうすると、申請人は第一次仮処分により、被申請人に対し労働契約上の地位を仮に保有しているものであるから、右仮処分判決が取消されない以上、本件においても申請人が被申請人に対し労働契約上の地位を保有しているものと認めるのが相当である。

しかるに被申請人が申請人の就労を拒否していることは当事者間に争いがないので、申請人は民法五三六条二項により本件解雇以降も賃金請求権を有し、かつ、他の従業員と同様に就業規則、労働協約等に基づく賃金引上げによる増額分、昇給、及び賞与等の支払を受ける権利を有するものというべきである。

三 被申請人会社の賃金算定算式が次のとおりであることは当事者間に争いがない。

(一) 本給  各人の計算時点における本給額

(二) 勤務給 本給×(支給率×調整係数)×成績係数

支給率  昭和五〇年一〇月から昭和五一年二月まで 一・五二五一

昭和五一年三月から現在まで 一六九一二

調整係数 本給五三、〇〇〇円以上 〇・〇三九

五四、〇〇〇円以上 〇・〇四〇

五五、〇〇〇円以上 〇・〇四一

五六、〇〇〇円以上 〇・〇四二

(三) 職能給 職群等級別金額×成績係数

事務技術職群の職群等級別金額

等級

昭和五一年二月まで

昭和五一年三月以降

二〇、三〇〇

二一、八〇〇

二六、二〇〇

二八、二〇〇

三三、三〇〇

三五、八〇〇

四二、四〇〇

四五、六〇〇

四九、九〇〇

五三、六〇〇

(四) 有扶手当  扶養家族を有する社員に対し二、四〇〇円

(五) その他手当 職責手当、看護手当、寮勤務手当等の基準内賃金と当直手当、時間外労働賃金等の基準外賃金時間外労働時間の算式は次のとおりである。

時間割賃金×時間外労働時間×(一+所定割増率)

1 時間割賃金

(本給+勤務給+職能給+有扶手当+その他手当)÷一六五

2 所定割増率(一時間につき)

時間外労働割増率 〇・三

休日労働割増率  〇・三

深夜労働割増率  〇・二五

四 (一) 本給昇給について

被申請人の社員職群等級規則七条三項三号によれば、事務技術職群四級の者が同五級へ進級するためには、<1>本人の現等級より一級上位の等級の職務がある職務系統を現在付与されていること、<2>本人が現在の等級を付与されてから三年(ただし特に優秀な者については二年)以上に及んでいること、<3>現等級経過年数中少なくとも一年は現等級以上の職務に従事していることが必要であること、右進級は五月一日付で行われること、申請人と同一学歴、同一学令の職群等級別の人員状況は次表のとおりであること(申請人を除いた人員である)、

二級

三級

四級

五級

管理職群一級

昭和四七年

一七

二七

四五

四八年

三七

四五

四九年

三九

四五

五〇年

二六

一二

三九

五一年

二一

一五

三七

右四五名中申請人と同じ事務職員は四名、右のうち三名は昭和四七、四八年に、一名は昭和四九年に、それぞれ五級に進級したことは当事者間に争いがない。右事実によれば、申請人は少くとも昭和四九年五月一日付をもつて五級に進級したものと一応認めるのが相当である。他方、申請人が管理職群一級に進級したものと認むべき資料はない。

そうすると、申請人の本給が昭和四六年七月当時事務技術職群四級四四、九〇〇円であること、被申請人会社における定期昇給時間が毎年四月一日であることは当事者間に争いがないから、右金額に昭和四七年から昭和五一年までの各年における昇給額を夫々加算した額をもつて現在の本給と認定すべきである。

しかるに被申請人会社における定期昇給額は一定でなく、事務技術職群四級の昇給額が社員昇給規則により最高二、八〇〇円、最低一、六五〇円、予算基準額二、二〇〇円、同五級の昇給額が最高三、〇〇〇円、最低一、八五〇円、予算基準額二、五〇〇円の各範囲内で査定されることになつており、右事実は当事者間に争いがないところ、申請人が通常以下の勤務しかできないと推認すべき特段の事情についての疎明がないのであるから、申請人の昇給額は右規則に定める予算基準額であると推定するのが相当と考える。

以上によると、申請人の本給は次表のとおりとなる。

昇給年月日

本給額

昇給事由

年月日

四六・七・

四四、九〇〇

四七・四・一

四七、一〇〇

四級の定期昇給 二、二〇〇

四八・四・一

四九、三〇〇

二、二〇〇

四九・四・一

五一、五〇〇

二、二〇〇

五〇・四・一

五四、〇〇〇

五級の定期昇給 二、五〇〇

五一・四・一

五六、五〇〇

二、五〇〇

(二) 申請人の成績係数を〇・九七として適用すべきこと、申請人に扶養家族があることについては当事者間に争いがない。

(三) 右(一)(二)の事実を三項に述べた賃金算定算式に当嵌めると、申請人の昭和五〇年一〇月以降昭和五一年九月までの賃金は別紙のとおり二、三六八、二六七円である(右計算自体は当事者間に争いがない)。

(四) 申請人の時間外手当はこれを認めることができない。すなわち疎明資料によれば、申請人が被申請人会社において幾何かの時間外労働をするであろうことは容易に推認できるのであるが、昭和五〇年九月以降昭和五一年六月までの被申請人会社社員の時間外労働時間は申請人の解雇処分時前三ケ月間の平均時間と比較し著しく激減していること、申請人の同期間中の時間外労働時間は間接員の平均を大巾に下回つていることなどの認められる事情の下においては申請人の昭和五〇年九月以降の時間外労働時間を確定することができないからである。

五 一時金について

疎明資料によれば、被申請人会社においては、賞与支給額は〔本給×(職群等級別配分係数+本給階級別配分係数)×支給率×成績係数+勤務給〕×勤怠係数により算出されること、申請人の右各係数、勤続給は次表のとおりであること、

昭和五〇年

昭和五一年

職群等級別配分係数

一・二四

一・三四

本給階級別配分係数

一・四七

一・四七

支給率

三・一四

三・〇七

勤務給

四、五〇〇円

六、〇〇〇円

勤怠係数は申請人の解雇通知前の出勤状況にてらし一〇〇%とするのが相当であることが認められ、本給は前示の如く昭和五〇年末が五四、〇〇〇円、昭和五一年夏期が五六、五〇〇円であり、成績係数は一・〇〇であると認められるから、申請人の

(一) 昭和五〇年年末一時金は

〔54,000円×(1.24+1.47)×3.14×1.00+4,500円〕×1.00=464,008円

(二) 昭和五一年夏期一時金は

〔56,500円×(1.34+1.47)×3.07×1.00+6,000円〕×1.00=493,409円

となることは計数上明らかである(右計算自体は当事者間に争いがない)。

六 したがつて、申請人の昭和五〇年一〇月より昭和五一年九月までの例月給与、一時金の合計は三、三二五、六八四円となるが、第一次仮処分判決により申請人が被申請人会社より毎月八二、九一二円の一二ケ月分合計九九四、九四四円の仮払を受けていることは当事者間に争いがないので、これを控除し、結局申請人は被申請人に対し、昭和五〇年一〇月より昭和五一年九月までの例月給与、一時金として合計二、三三〇、七四〇円の、昭和五一年一〇月以降本案判決確定に至るまで毎月二〇日限り一二二、九六八円の各支払請求権をそれぞれ有するものというべきである。

七 疎明資料によると、申請人は被申請人会社より受ける賃金を唯一の生活の資とする労働者であつて、夫婦及び子供二人の家計を維持していかねばならない状況にあることが認められ、これに最近の諸物価の高騰及び賞与が賃金の後払的性格をもつものであること等を併せ考えると、本件賃金の増額分及び前記各賞与分のうち二、〇〇〇、〇〇〇円につき仮払の必要性が認められる。

被申請人は、昭和五一年五月三一日言渡の第一次仮処分判決が認容した以上の仮払の必要性は存在しない旨主張するが、同判決が認定判断しているのは右訴訟の口頭弁論が終結した昭和五〇年九月二九日以前の仮払の必要性についてであることはいうまでもないから、被申請人の右主張は採用できない。

八 よつて、本件申請は、申請人が被申請人に対し、金二、〇〇〇、〇〇〇円及び昭和五一年一〇月以降本案判決確定に至るまで毎月二〇日限り金一二二、九六八円を仮に支払えとの限度において理由があるのでこれを認容し、その余は失当として却下し、申請費用の負担については民訴法八九条、九二条但書を適用して主文のとおり決定する。

(別紙省略)

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