名古屋地方裁判所 昭和54年(わ)152号 判決 1979年4月10日
本籍
愛知県西尾市住吉町三丁目一二番地
住居
右同
医院経理担当
三村民江
昭和二三年一月一一日生
右の者に対する所得税法違反被告事件について、当裁判所は検察官上野治出席のうえ審理を遂げ、次のとおり判決する。
主文
被告人を懲役八月及び罰金九〇〇万円に処する。
右罰金を完納することができないときは、金二万円を一日に換算した期間労役場に留置する。
この裁判確定の日から二年間右懲役刑の執行を猶予する。
理由
(罪となるべき事実)
被告人は、夫三村幸弘が愛知県西尾市住吉町三丁目一二番地において営んでいる三村医院の専従者として、同医院の経理全般を掌理しているものであるが、右三村幸弘の業務に関して同人の所得税を免れようと企て
第一 昭和五〇年分の三村幸弘の実際所得金額が一、八八四万七、二七五円で、これに対する所得税額は二〇九万二、九〇〇円であるにもかかわらず、診療収入の一部を除外し、接待交際費や消耗品費等の経費を水増し計上し、仮名預金を設定するなどして所得の一部を秘匿したうえ、昭和五一年三月一一日、愛知県西尾市熊味町南十五夜四一番地の一所在西尾税務署において、同税務署長に対し、三村幸弘の所得金額が二一三万九七一円で、これに対する所得税額は一三万七、六〇〇円であるが、源泉徴収所得税額として四一四万六、〇三三円納付しているので右源泉徴収所得税額との差額四〇〇万八、四三三円の還付を受ける旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、もつて右不正の行為により、正規の所得税額と右源泉所得税額及び同還付金との差額六一〇万一、三〇〇円の所得税を免れ、
第二 昭和五一年分の三村幸弘の実際所得金額が九、六一六万一、三三五円で、これに対する所得税額が四、九八九万二、三〇〇円であるにもかかわらず、前同様の方法により所得の一部を秘匿したうえ昭和五二年三月九日、前記税務署において、同税務署長に対し、三村幸弘の所得金額が四、九四〇万七、八五四円で、これに対する所得税額が一、六九九万六、五〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、もつて右不正の行為により、正規の所得税額と右申告税額との差額三、二八九万五、八〇〇円の所得税を免れ
たものである。(別紙脱税額計算書参照)
(証拠の標目)
判示事実全般につき
一 被告人の当公判廷の供述
一 被告人の検察官及び大蔵事務官に対する各供述調書
一 大蔵事務官作成の各証明書
一 大蔵事務官作成の各査察官調査書
一 三村幸弘、小久保博二、加藤元通、安東勉、三浦卓爾の検察官に対する各供述調書
一 安東勉の大蔵事務官に対する質問てん末書(添付の上申書を含む)
一 田中淳一作成の証明書
一 三浦卓爾作成の上申書
一 荒川龍夫作成の証明書
(法令の適用)
一 判示各所為につき 所得税法二三八条一項、(判示第二につき、なお同条二項)、二四四条一項(懲役と罰金との併科刑による。)
一 併合加重 刑法四五条前段、懲役刑については四七条、一〇条(情状の重い判示第二の罪の刑に加重)、罰金刑については四八条二項により各罪所定の罰金刑を合算
一 労役場の留置 同法一八条
一 刑の執行猶予 同法二五条一項
(裁判官 水谷富茂人)
別紙(一)
脱税額計算書
自50.4.1
至50.12.31
<省略>
別紙(二)
脱税額計算書
自51.4.1
至51.12.31
<省略>