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名古屋地方裁判所 昭和54年(行ウ)18号 判決 1986年9月29日

原告 株式会社名古屋螺子製作所

被告 岩倉市長

主文

原告の請求を棄却する。

訴訟費用は原告の負担とする。

事実

第一当事者の求めた裁判

一  請求の趣旨

1  被告の原告に対する昭和五三年九月二〇日付「公害防止事業費事業者負担法に基づく負担金の額の決定について」と題する通知によつてなした公害防止事業費事業者負担の決定処分を取り消す。

2  訴訟費用は被告の負担とする。

二  請求の趣旨に対する答弁

主文同旨の判決を求める。

第二当事者の主張

一  請求原因

1  被告は、公害防止事業費事業者負担法(昭和四五年法律第一三三号、以下、「負担法」という。)に基づき、原告に対し、岩倉地域農用地汚染対策地域において実施する公害防止事業に要する費用の事業者負担を左記のとおり定め(以下、「本件処分」という。)、請求の趣旨1項掲記の通知をなした。

(一) 負担金の額 金一億〇一〇六万円

ただし、物価の変動又は公害防止事業費の総額に変動が生じた場合は、その変動後の額をもつて算定した負担金の額とする。

(二) 負担金の納付方法等

(1) 負担金の納付は、実施年度ごとに当該年度の事業費を基礎とし、算出した額について、市長が別に発する納入通知書により次のとおり納付するものとする。

年度区分

負担回数

負担金額

納付期限

昭和五三年度

二回払い

第一回金一九二二万円

工事着手日

第二回金一九二二万円

昭和五四年度

二回払い

第一回金三一三一万円

工事着手日

第二回金三一三一万円

※ 工事完了日又は三月三一日のいずれか早い日

(2) 事業者は、災害その他特別の事情により、納付期限までに納付できないときは、その理由が発生した日から起算して三〇日以内に文書にて市長の承認を得なければならない。

(3) 負担金の納付期限までに納付できない場合は、法第一二条の規定に基づき延滞金を徴収することがある。

ただし、前記により、市長の承認を得た場合には、免除する。

2  原告は、昭和五三年一一月一八日、被告に対し、本件処分の異議申立をなしたところ、被告は、昭和五四年四月二日付で同申立を棄却する旨の決定をなし、同決定謄本は同月九日原告に送達された。

3  しかしながら、本件処分は、違法なものであるから、原告は、その取消しを求める。

二  請求原因に対する認否

1  請求原因1、2項の事実はいずれも認める。

2  同3項は争う。

三  被告の主張

1  愛知県知事は、昭和五二年四月二〇日、人の健康をそこなうおそれがあるカドミウムの蓄積がみられた岩倉地区の二六ヘクタール(うち農用地の面積は一四・二ヘクタール)を、農用地の土壤の汚染防止等に関する法律(昭和四五年法律第一三九号、以下、「土壤汚染防止法」という。)三条一項に基づき、農用地土壤汚染対策地域に指定し、同法五条により農用地土壤汚染対策計画を策定したので、別紙I記載のとおり、岩倉市川井町、大地町及び稲荷町の九・六ヘクタールにつき、汚染農用地の排土客土事業を中心とする対策工事が、岩倉市を施行者として、昭和五三年度から二か年の予定をもつて実施されることになつた。

2  そこで、被告は、昭和五三年五月一六日、負担法六条一項に基づき、農用地土壤汚染対策事業にかかる費用負担計画について岩倉市環境保全審議会に諮問したところ、同審議会は、同日開催された第一回の会議において、同審議会費用負担部会で調査、審議させる旨決議し、これを受けて同部会は、同月二七日、同年六月一六日、同年八月一四日の三回にわたつて調査、審議を尽し、その結果を同年九月四日、審議会に報告した。

そして、右審議会は、同日開催の第二回会議及び同月一八日開催の第三回会議を経て、右報告を了承し、費用負担計画案として被告に答申したところ、その内容が妥当であると判断した被告は、同年九月二〇日、別紙II記載のとおり、岩倉地域土壤汚染対策事業に係る費用負担計画を定め(以下、「本件計画」という。)、岩倉市告示第二一号として告示のうえ、本件処分をなしたものである。

3  ところで、原告の岩倉工場は、昭和三〇年六月より昭和四四年一二月まで、前記土壤汚染対策事業の対象地域において、カドミウムを使用して航空機用螺子の製造事業を行つていたところ、以下に述べるように、前記汚染はその工場廃水によつてもたらされたものであり、他に原因を求めることはできないので、本件計画においては被告が費用負担者とされたものである。

(一) 原告岩倉工場の上流部と下流部のかんがい用水路における底質のカドミウム含有量には、明らかな差異がみられた。

即ち、上流部にあたる一之杁用水路および二之杁用水路における底質中のカドミウム含有量は〇・三八ppm~〇・九〇ppmといずれも低く、この程度の数値では農用地への汚染は考えられないが、下流部にあたる郷東用水路及び江川用水路においては一一・〇ppm、一三・〇ppmおよび六・三ppmの高い数値が見られた。

(二) 他の事業所からの汚染は考えられなかつた。

即ち、汚染対策地域に展開する用水路の流域に存する金属関連事業所二八か所のうち、現にカドミウムを使用しているものとしては、左記<1>、<2>の事業所が、また、既に廃止されたものとして同<3>ないし<5>の事業所があるが、これらは、次の事情により、いずれも前記の汚染源とは考えられなかつた。

<1> 訴外石塚硝子株式会社岩倉工場は、昭和三六年の創業でガラス製品の製造を行つているが、装飾絵具の使用工程では水は使用しておらず、また工場廃水は、浄化後ヒユーム管で五条川へ直接放流している。

なお、水質調査の結果、カドミウムは検出されていない。

<2> 訴外日通商事株式会社名古屋支店岩倉工場は、昭和三六年の創業でトラツクボデイーを製造しているが、このトラツクボデイーの塗装工程において水は使用していない。また、一般廃水は側溝を経て川井用水に放流しているが、水質調査の結果、カドミウムは検出されていない。

<3> 川井用水の流域に昭和一六年から昭和二五年まで航空機部品等を製造していた訴外橋本工業があつた。

しかし、川井用水の底質に含まれるカドミウムが汚染対策地域まで影響を及ぼしていたとは、考えられないことから、この事業所は無関係である。

<4> 新堀用水の流域に、昭和二〇年までミシン部品の製造をしていた訴外三菱電機株式会社があつた。しかし、この下流域の水田土壤のカドミウムは、〇・二八~〇・四五ppmであり、その影響は考えられない。

<5> 郷中用水の流域に、昭和四六年まで非鉄金属製品製造をしていた訴外秋山化学工業所があつた。しかし、郷中用水のみを灌漑している同事業所下流域の水田土壤のカドミウムは〇・三七ppmであり、その影響は考えられない。

4  本件計画においては、前記汚染対策事業に要する総事業費は金一億六三〇〇万円と積算されている(但し、積算の基礎となる物価、賃金は、愛知県農地林務部の昭和五二年一二月設計省略単価表による。)ところ、その内訳は左記のとおりである。

なお、物価等の変動により、費用に変更がもたらされた場合は、その変更後の額をもつて総事業費と看做されるべきものであることは、工期が二か年にわたることを考慮すれば当然であり、本件計画もそのような前提を内容に取り入れている。

内訳

(一) 本事業費   金一億二九八〇万円

(二) 測量試験費  金四〇〇万円

(三) 土捨場補償費 金二三〇万円

(四) 全体設計費  金一五〇万円

(五) 工事雑費   金五七〇万円

(六) 事務費    金五四〇万円

(七) 予備費    金一四三〇万円

5  事業者に負担させるべき金額の決定については、負担法四条二項において、「当該公害防止事業に係る公害の原因となる物質が蓄積された期間等の事情により前項の額を負担総額とすることが妥当でないと認められるときは………これらの事情を勘案し妥当と認められる額を減じた額をもつて負担総額とする。」と規定されている。

これは、カドミウム等の重金属が人の健康に及ぼす影響は比較的最近まで科学的解明の手がさしのべられておらず、よく知られていなかつたことや、法的規制も行われていなかつたことを考慮すれば、それ以前に長期にわたつて蓄積したものについて、最近蓄積したものと同様に客土事業費等の費用の一切を事業者に負担させることは、衡平を欠き適当でないという観点から規定されたものであり、同条項の適用にあつては、蓄積期間が、汚染物質の毒性に対する科学的解明がどの程度なされていた期間であつたか、汚染物質の人の健康に及ぼす影響がどの程度科学的に明らかにされていた期間であつたか等の諸事情を判断材料として減額すべきところ、前記汚染対策事業については、イタイイタイ病の原因にカドミウムがかかわつているという厚生省見解が発表された昭和四三年五月を分岐点として、その前後の時期、すなわち、原告がカドミウムを使用開始した昭和三〇年六月から昭和四三年五月と、昭和四三年六月からカドミウムの使用を中止した昭和四四年一二月までの時期に分け、厚生省見解以前のものについては、水質汚染濁防止法施行前の行為であり、カドミウムの有害性に関する知識の社会的認識もないため、これを減額要素と考え、三分の一を減額し、厚生省見解後のものについては、法施行前の行為を減額要素と考え、四分の一を減額するのが相当である。

そこで本件計画においては、右各割合による減額をなした結果、原告の負担総額を金一億〇一〇六万円と定めたものである。

四  被告の主張に対する原告の認否及び反論

(認否)

1 被告の主張1項の事実は知らない。

2 同2項の事実は知らない。

3 同3項は否認ないし争う。

4 同4項の事実は知らない。

5 同5項は否認ないし争う。

(原告の反論)

1 本件処分は、負担法三条の解釈を誤るか若しくは憲法二九条、三九条などに違反する同条を適用した結果、原告に対して費用の負担を命じたものであつて、違法である。すなわち、

(一) 負担法三条は、公害防止事業の費用を負担させる事業者について「公害防止事業に要する費用を負担させることができる事業者は、(中略)当該公害防止事業に係る公害の原因となる事業活動を行ない、又は行なうことが確実と認められる事業者とする」旨規定し、事業者の範囲を限定しているところ、原告は、昭和三〇年から昭和四四年までの間、岩倉工場においてカドミウムメツキの業務を行つたが、同法が施行された昭和四六年五月一〇日には既に右業務を全面的に廃止していたのであり、昭和四四年以降岩倉工場の周辺地域にカドミウム又はその化合物を含む廃水を流出させたことは全くなく、また、将来カドミウムメツキの業務を再開する予定も全くないので、費用を負担すべき事業者に該当するものではない。

(二) ところが、被告は、同条の事業者には、現に事業活動を行つていないが、かつて行つていた者を含むとの解釈を前提に、本件処分を行つたものであるが、右のような拡大解釈は、国語の解釈を逸脱し、同条の明文に反するのみならず、立法及び法解釈の根本をなす法律不遡及の大原則(憲法三九条参照)に反し、かつ、憲法二九条の財産権保障の基本原理にも違背するものである。同条二項にいう公共の福祉による制限も、「法律の定め」があつて初めてなされ得るのであり、法律不遡及の根本原則を排除して事後法による遡及的制限を認めるものではない。

被告も認めるように、原告が前記カドミウムメツキ業務を行つていた時期は、未だカドミウムの有害性が認識されておらず、原告は、防衛庁認定工場として、その厳重な監理下にあり、その検定を受けた設備を用い、かつ派遣された監督官による厳重な工程及び品質の検査を受けて仕様書に忠実な航空機用螺子の製造に努めたのであつて、当時は、原告は勿論、国の機関である監督官においてさえカドミウムによる農用地汚染等を予想し得なかつた。

もし、負担法三条の拡大解釈によつて、その対象事業者に法施行前の事業者、すなわち「公害の原因となる事業活動を行つていた事業者」又は「公害の原因となる事業活動を行つたことのある事業者」を含め得るとするならば、同法の出現によつて、原告のように従来何ら違法、不当性のなかつた事業者に対し、事後法に基づく莫大な財産上の負担を命じ得ることになる。これは、もはや従来となえられている無過失責任論や原因者負担論の枠を超えて、全く無謀、無法の特異な暴論を援用しなければ説明できないことである。というのは、およそ、無過失責任論や原因者負担論は、少なくとも法律により責任の根拠が定められていて、責任の主体者がこれを知り得る場合に妥当する論理であるからである。

(三) 被告の解釈は、現に事業活動を行つていない者も費用を負担させる事業者に含まれるとの見解を示す昭和四六年六月二六日付内閣総理大臣公害対策室長通達を一つの根拠としているが、同通達は、負担法三条の解釈に疑義があればこそ、その補充的なものとして公害対策室長の見解を示したものと考えられるうえ、同条文の解釈がどうしてそのような見解となるのかその理由についてはなんらの根拠解説が示されていない。

右の通達は、専ら行政上の都合による理由のない拡大解釈であり、法律に規定していない部分について行政府が国民の同意を得ないまま勝手に立法行為をなしたに等しいものであつて、三権分立の基本原理に反する行政の不当な立法的行為として憲法に反するばかりでなく、常識的には理解しがたい法文の解釈による負担の強制として、前記憲法上の基本権規定に違反するものである。

また、被告は、立法者の意思をその解釈の根拠として挙げるが、国民は制定施行された法文に基づいて行動し、解釈することが求められるのであつて、もし、立法者に過去の事業者を費用の負担者に含めるつもりがあつたのであれば、それを明確な条文にしなかつたのは立法者の誤りであり、その誤りを不当な解釈で救済することはできない。

その場合、過去の事業者を含めて明記することは極めて容易であり、例えば「この法律の施行以前に当該公害防止事業に係る公害の原因となる事業を行つていた者にも事業費を負担させることができる。」との一文を規定することにより、はつきりと法律不遡及の原則の排除を明記できたはずであるのに、そのように明記できなかつたのは、同原則の排除が法理論として熟しておらず(現在も同じ)、負担法の立法当時において「過去の事業者にも負担させることができる。」という確定した見解が得られなかつたことによると思われる。

なお、公害関係法が特殊な時代的要請をになつているという理由によつて負担法三条を拡大解釈することも許されない。

公害関係法が、広範囲な公害被害の防止、除去という要請に基づいて制定されていることは否定しないが、そのことをもつて法の基本原則である法律不遡及の原則を否定し、憲法上明定されている財産権保障の基本原理を変更することはできない。

2 本件処分には全く理由が付されておらず、極めて重大な財産上の不利益を命ずる賦課処分として必要な要件を欠く違法、不当な決定である。

(一) 本件処分は、莫大な金銭の賦課を命じているが、負担の理由、すなわち原告を公害の原因者とする根拠、実施する公害防止事業の内容、費用負担決定の経緯等が全く示されていない。

およそ、諸税その他公課金の賦課、過料等行政罰の賦課、罰金等刑事罰の賦課等については、すべて法律において賦課の基準が定められており、あるいは一定範囲内の裁判所の裁量が法定されているなど、負担者にとつて賦課金の算定根拠が明らかである。これらは、憲法二九条、三〇条、三一条に定める基本理念に則つて、「法律の定め」や「法律の手続」によらなければ生命、自由、財産を制限されないという原理を貫くため、法律上において具体化したものであり、いずれの場合も法律又は当該処分(課税処分、公用徴収処分、判決等)において具体的な負担の理由が示されるよう措置されているし、これに反する処分は無効とされている。しかるに、本件処分は、前記のとおり、負担結果が通知されたのみでその決定の経過や内容(税負担における課税標準や税率に該る)が全く示されていない。

(二) 仮りに、負担法九条一項が、右のような結果の通知のみをもつて足りるとする規定であるとすれば、これは、明らかに憲法が定める前記基本原理に違反するものであり、原告としてはこれに服するに由なく、同条自体が違憲の法規であるといわざるを得ない。

3 本件処分は、その決定に至る過程において、原告に対し、その利益を守るための関与の機会を与えないまま、なされたものであり、憲法三一条の定める適正手続の保障の原則に反し、違法である。

(一) 憲法は、刑罰のみならず国や自治体の権力作用により国民の権利を制限し、あるいは不利益処分を課する場合においても、法律に基づいた正当な手続がなされるべきものと規定している。

しかして、適正手続の法理は、何人かに対し、不利益処分を課する場合には、その者を単なる処分の対象とせず、その者に対し、その処分に関する告知、聴聞の機会を与え、その手続に参加させることを基本的に要請するというべきところ、行政処分の方法、手続についていえば、被処分者は、公正な手続と事実の認定につき、行政の独断を疑うことがいわれがないと認められるような手続によつて判定を受くべき法的利益を享有する。

(二) ところで本件においては、原告は、当初から、被告に対し、原告が負担法三条の関係でなぜ負担義務者となるのか公式に質問し、その教示を求めてきたが、被告は前記通達の存在を伝えただけで、それ以上の何らの説明もなかつた。もつとも原告は、負担についての若干の資料を提出し、被告の呼び出しに応じて排客土地域の設定及び事業費の概算等について何度か説明を受けたことはあるが、これは協議といえるようなものではなく、負担の前提としての状況説明の押し付けでしかなかつた。そして、負担法三条については、それ以上の何らの説明も得られないまま、本件処分の通知が一方的に送りつけられ、納付をしなければ年一四、五パーセントという高率な延滞金を徴収する旨強制されたのであり、そのうえ、右通知書には、前項で述べたとおり、負担の結論のみが記載されていて、理由となる事項は何も記載されていないに等しく、判決や課税令書ならば主文と理由に分けて記載されるような負担の原因となる事項は一切記載されていない。

従つて、原告は、排客土事業の内容やその費用の計算根拠等について詳細が分からず、ただ被告が一方的に決めた負担命令の結論だけを突き付けられたものであつて、このように、原告に対し、その利益を守るための機会を与えぬままなされた本件処分は、憲法三一条の趣旨に照らし、違法というべきである。

五  被告の再反論

1  原告が岩倉工場においてカドミウムメツキの業務を行つていた期間は、昭和三〇年から昭和四四年までであり、負担法が施行された昭和四六年五月一〇日には既に右業務を廃止していた事実は認めるが、同法三条の事業者には、現に事業活動を行つているわけではないが、同法施行前に公害の原因となる事業活動を行つていた者を含むと解すべきである。

(一) 第一に、いわゆる文言解釈の問題であるが、我が国語は、時制の表現が必ずしも明確ではない。すなわち、過去・現在・未来の表現が必ずしも明確に区分されているわけではなく、動詞そのものに過去形・現在形・未来形というような区別を持たない。そして、右の「行い」という表現も、現在のみを示す表現ではなく、このことは、「現に行い」というように、修飾語がつくことによつて初めて時間的な制限が明確にされていることからも明らかである。

従つて、「行い」との文言が、現在行われているもののみを表現するものでないことは明らかであり、これを「現に行い」と限定して解釈する原告の主張が、文理上正確なものと言い得ないことは明らかである。

(二) 原告がその主張の根拠とする法律不遡及の原則は絶対的なものではない。憲法三九条は、刑事上の責任について右原則を明言するが、民事(行政)法規については、法が達成しようとする公益上の目的、必要性が重大かつ不可欠のものであつて、不利益を課すことがやむをえないと考えられる場合には、憲法は、右原則の例外として、遡及効を認める立法を何ら禁ずるものではない。

そして、負担法は、当時ますます深刻化した公害問題に対処してその対策を総合的かつ強力に推進するための立法の一環として制定されたものであつて、同法三条の趣旨は、公害の原因となる事業活動を行う事業者に公害防止事業に要する費用を負担させることにあり、その目的からいつて、公害の原因となる事業活動を行う時点を問うものではなく、過去の事業活動に起因する公害防止事業の場合には、現に事業活動を行つていないとしても、過去に公害の原因となる事業活動を行つた者が、その費用の負担を命ぜられるのは正義、公平の観念にも合致し、当然であり、このように、法律を遡及して適用するについて合理的な理由が存する以上、負担法は何ら違憲のそしりを受けるものではない。

このことは、憲法二九条のうたう財産権の不可侵も公共の福祉の制限内においてのみ認められることからも明らかである。

(三) 本件処分の前提となる被告の見解が正当なことは、昭和四六年六月二六日付総公対第九九号「公害防止事業費事業者負担法の施行について」(内閣総理大臣官房公害対策室長通達)が、「しゆんせつ、覆土、耕うん事業および導水事業ならびに汚染農用地に係る対策事業および農業施設の被害の除去に係る事業等、主として過去の事業活動に起因する公害防止事業の場合には、過去に当該公害の原因となる事業活動を行つたことがあるが現に事業活動を行つていない者も費用を負担させる事業者に含まれる。」という見解を示して、立法者の意思を明確にしていることからも明らかである。

そして、負担法の立法者の意思は、右見解のように、少なくとも本件のように公害の回復事業については、その原因行為が同法施行前に行われたものであると否とを問わず、原因者である事業者に費用を負担させることにあつたことは疑問の余地がない。

なぜならば、負担法は、前述のように、カドミウム汚染米問題、田子の浦港問題等々が発生し、公害問題がますます深刻化した状況の中で、これらの事態に対処して公害対策を総合的かつ強力に推進するための立法をなすために開かれた第六四回国会(いわゆる公害国会)で成立したものであり、負担法二条に公害防止事業として「しゆんせつ事業」(同条二項二号)、「客土事業」(同条二項三号)が掲げられていることからすれば、右事業が当時すでに深刻な社会問題となつていた田子の浦港問題、カドミウム汚染農地問題等を念頭においたものであることは明らかである。そこで、もし負担法施行前の原因行為に係る公害防止事業については同法を適用しないとの解釈をとるならば、前述した現在緊急を要するしゆんせつ事業や客土事業について費用負担制度を設けた意味はほとんど失われてしまうからである。

なお、負担法四条二項の減額事由の一つに公害の原因となる物質の蓄積期間があげられているが、これは、たとえば客土事業にかかるカドミウム等の有害性の認識等を想定しての規定と解され、負担法の施行前の原因行為を念頭においた規定と解されるし、また同法附則において、適用すべき公害防止事業の範囲について、遡及しないことを明記しているが、当該附則の規定がなければ遡及されると解しうるからこの規定をおいたものであり、この規定の存在は逆に、遡及しない旨の明文の規定がない三条においては、当然遡及することの根拠とみることができる。

2  本件処分には理由付記を欠く違法は存しない。

(一) 負担法九条は、施行者は事業者に対し、その者が「納付すべき事業者負担金の額及び納付すべき期限その他必要な事項」を通知することを規定しているところ、前二者については、原告が請求原因一項で自認するとおり、本件処分に記載して通知済である。

(二) また、「その他必要な事項」の記載は、行政庁の裁量に属するというべきところ、公害防止事業の内容については、愛知県が、原告に対し説明を行つており、又負担額等の決定の経緯、理由についても、被告より再三にわたり説明を行つており、更に本件処分の通知書の別添書類として、「費用負担計画書」及び「費用負担計画資料」を添付したため、原告は、公害防止事業の内容及び負担額等決定の経緯理由につき、十分理解しえたはずであることから、被告は、右各事項を「その他必要な事項」として、特段記載する必要はないと判断したものであり、本件処分の通知書には負担法九条に違反する不備は何ら存しない。

3  本件処分は、憲法三一条に違反しない。

(一) 原告は、憲法三一条は、刑事手続のみならず、行政手続にも適用があり、適正手続の内容については、処分に関する告知、聴聞の機会を与え、その手続に参加させることが基本的要請であると主張している。

しかしながら、憲法三一条の規定は、その位置(同条が刑事手続に関する三二条以下の規定の冒頭に置かれていること。)及び表現(同条はアメリカ合衆国憲法修正第五条にいわゆる適正手続((due process of law))条項と異なり、「生命若しくは自由を奪われ、又はその他の刑罰を科せられない。」と規定している。)等から考えて、本件処分に関する手続のような行政手続には適用がない。そして、わが憲法は、上述の通り、三一条において主として刑事手続について法律による適正手続を保障するにとどめ、一般の行政処分ないしその手続に関しては、事柄の性質の多様性にかんがみて直接には明文の規定を設けず、むしろ、いわゆる法治主義(法律に基づく行政)の原則によつて、国民の権利、自由を保障しようとしているものと解される。

しかして、負担法は、事業者負担金の決定手続については、審議会の意見をきいて、費用負担計画を定めなければならないと規定(同法六条)しているほかは何の定めもしておらず、他に成法上の定めはない。

(二) したがつて、本件処分の決定に至る過程について、いかなる手続を採用するかは、一応、行政庁たる被告の裁量に委ねられているものというべきところ、このように、成法上の規定はないものの、被告としては、本件決定が原告に対する不利益処分であることにかんがみ、手続の公正さを確保するため、左記のとおり、原告に対し事前に十分な説明をなして弁明の機会を与え、原告より提出された詳細な意見書についても、審議会において慎重かつ十分な検討を加え、更に審議会の審議経過についても逐一これを説明しており、何ら不当なところはない。

また支払方法についても、原告の収支計算書を提出してもらい、原告の要望を入れて、年二回の分割払いを認めるなど、原告の立場に十分の配慮をなしている。

<1> 昭和五二年八月一一日 原告に対し、本件計画の概要を説明

<2> 同 年一一月一六日  原告と本件計画について協議

<3> 昭和五三年二月二二日 原告より意見書提出

<4> 同 年五月一五日   原告に対し、汚染対策計画の概要を説明

<5> 同 年六月一六日   第二回岩倉市環境保全審議会費用負担部会において原告の意見書について審議

<6> 同 年七月六日    原告に対し、右部会の審議経過等を説明

<7> 同 月一九日     右 同

<8> 同 年八月一日    右 同

<9> 同 月一四日     第三回部会において原告の意見書について審議

<10> 同 年九月九日    原告に本件計画の審議経過を説明し、負担金の支払方法等について協議

第三証拠<省略>

理由

一  本件処分の存在などについて

請求原因1、2項の事実はいずれも当事者間に争いがない。

二  本件処分に至る経緯、手続等について

いずれも成立について争いのない甲第一号証、乙第一、二号証、第一七、一八号証、第二一ないし二三号証、第二九号証、証人伊達征人の証言及びこれによりいずれも真正に成立したものと認められる乙第三ないし第一六号証、第一九、二〇号証、第二四ないし第二六号証、弁論の全趣旨によりいずれも真正に成立したものと認められる乙第二七、二八号証、第三〇、三一号証、証人東條精二の証言並びに原告代表者尋問の結果を総合すると、

1  愛知県は、昭和四八年ころ、土壤汚染防止法一二条に基づく対策事業の一環として、岩倉市周辺の農用地約七〇ヘクタールについて細密調査を実施した結果、調査地点の一か所(岩倉市大地町)から同法施行令に定める対策基準値(玄米中のカドミウム濃度一ppm)以上の数値を示す米が検出されたため、更にその汚染原因について調査したところ、調査地域に関連のある各用水路の水質検査においてはカドミウムは検出されなかつたものの、底質調査においては、別紙IIIに示すとおり、原告岩倉工場の排水経路である郷東用水及び江川用水の<コ>、<サ>の両地点並びに同工場東側付近において小用水路により郷東用水と接続している新堀用水の<ケ>地点において高濃度のカドミウム(それぞれ一一・〇ppm、一三・〇ppm、四・二ppm)が検出され、右事実から、過去においてカドミウムを含む工場廃水を郷東用水から江川用水の経路で排出していた原告岩倉工場が汚染原因者であるとの調査結果が、昭和四九年五月二日、愛知県環境部特殊公害課より公表された。

2  そして、同月七日、原告代表者らは県より呼出を受け、赴くと右調査結果を示されたうえ、汚染規模が小さいので行政指導によつて解決を計りたい旨協力を求められ、これを承諾した原告と地元住民らで構成する土壤汚染対策委員会とは、市の斡旋により数回にわたつて交渉を重ね、その結果、同年一二月ころ、作付禁止措置のとられた農地〇・七七ヘクタールにつき客土事業を実施し、その費用は原告が負担する、汚染作物の廃棄等に伴う補償を原告がなす、ことで合意が成立し、原告は、それぞれ約金二〇〇〇万円、約金二五〇万円の金員を支払つた。

3  その後、愛知県は、昭和五〇年ころ、前回調査より下流域にあつて汚染の可能性があると見られた農地約二六・三ヘクタールについても調査を実施したところ、江川用水及び川井用水の灌漑区域から新たに前記基準値を上廻る数値が検出されたため、引続き汚染原因究明調査を実施した結果、下流域に関係する用水路等の水質検査においてはカドミウムは検出されず、底質調査においては、前回の調査と合わせると別紙IVに示すとおり、郷東用水から江川用水の経路で<G>、<J>、<K>の三地点及び川井用水路で<N>、<O>の二地点において高濃度のカドミウム(それぞれ一一・〇ppm、一三・〇ppm、六・三ppm及び三・三ppm、四・五ppm)が検出される結果となつたところ、川井用水の汚染についてはその原因が明確とはいいがたく、あるいはかつて同用水を利用していた事業所からの廃水による影響が考えられないわけではないが、いずれにしても、同用水灌漑区域内の水田土壤のカドミウム濃度は、一地点で〇・六五ppmが検出された他は、非汚染区域の平均濃度〇・四ppmに近似する〇・二五ppmから〇・五ppmに過ぎず、右一地点も対策地域外にあるから汚染農用地への影響はないと考えられること、また右一地点付近は昭和四六年度に土地改良事業が実施されているところ、同付近の水田は、それ以前は旧江川用水の灌漑区域に隣接しており、江川用水の汚染土が右事業の際に移動してきたとも推測できること、これらの事情から、対策地域内の汚染原因は、過去において郷東用水から江川用水の経路で工場廃水を排出していたことによるものであり、川井用水の汚染とは関係がないとの推定を得た。更に、立地工場調査の結果、汚染源の可能性があると見られた原告岩倉工場、訴外石塚硝子株式会社岩倉工場、同日通商事株式会社名古屋支店岩倉工場のうち、二番目については、ガラス製品の製造工程で使用する装飾絵具の一部にカドミウムを含んでいるものの、その使用に際し水は使用されておらず、また工場廃水は浄化後、ヒユーム管により直接五条川へ放出されていること、三番目については、トラツクボデイーの塗料の一部にカドミウムを含んでいるが、塗装工程において水は使用されておらず、一般廃水が流出している川井用水の水質調査からもカドミウムは検出されていないこと、その他、既に操業を停止している事業所のうち、昭和二〇年ころまでミシン部品を製造していた訴外三菱電機の工場の廃水は、新堀用水へ排出されており、汚染地域とは水系が異なること、昭和二五年ころまで航空機部品等を製造していた訴外橋本工業は、工場廃水を川井用水へ放出していたが、前記のとおり、土壤調査から判断して、同用水底質に含まれるカドミウムによる汚染農用地への影響は考えられないこと、昭和四六年ころまで非鉄金属製品を製造していた訴外秋山化学工業所は、郷中用水へ工場廃水を放出していたが、同用水のみによる灌漑地域のカドミウム濃度は低いこと、などの事実が判明し、前記推定と総合して、専門家より成る土壤汚染研究会は、汚染原因を原告岩倉工場に求めるとの判断をなし、その結果は昭和五二年二月四日に公表された他、同年八月ころ、1項で述べた第一回目の調査結果を合わせた総合調査結果が、愛知県環境部より公表された。

4  前記調査結果を受けて、愛知県知事は昭和五二年四月二〇日、土壤汚染防止法三条一項に基づき、岩倉地域の二六ヘクタール(うち、農用地の面積は一四・二ヘクタール)を農用地汚染対策地域に指定したが、同法五条による汚染対策事業及び負担法による費用負担計画を立案するにあたり、予め、従前の調査結果から費用負担者となる蓋然性の高かつた原告と協議の場を設定することとし、同年八月一一日、岩倉市長室にて、原告、愛知県及び岩倉市の各関係者が参集し、主として県の係官から費用負担計画の根拠法令等について説明があり、他方、原告側より費用負担に関する法令上の疑義、単独汚染原因者とされたことへの疑問などが出された。次いで同年一一月一六日にも同様の協議の場がもたれ、主として県の係官から、試算段階にあつた農用地土壤汚染対策計画の概要(汚染農用地のうち九・五ヘクタールについて排土客土工事を実施する)について説明があり、また前回の協議の際に原告より出された疑問点について他の例を引用しての補足説明がなされたが、原告を了解させるには至らなかつた。

5  前記各協議を通じて、費用負担を求められることを予期した原告は、

(一)  岩倉地区のカドミウム汚染の原因が原告のみに求められたのは不当であること、すなわち、犬山地区においてもカドミウム汚染が認められ、その原因は入鹿池を源とする五条川の水質にあると判定されているところ、岩倉地区は五条川の下流域にあつて、同地区を灌漑する新堀用水、郷東用水、郷中用水、郷西用水などは五条川より取水していること、また、郷西用水の更に西方にある野合用水と川井用水が合流した前記石塚硝子岩倉工場西側の二地点(別紙IVの<N>、<O>)において、用水底質から高濃度のカドミウムが発見されているところ、この地域は原告岩倉工場から相当離れていて用水系も異なつているから、同工場の廃水による影響は考えられないこと、汚染原因調査は、より広範囲にかつ総合的になされなければ十分とはいえないこと、

(二)  原告岩倉工場は、昭和三二年九月から昭和四四年一二月までの間、航空機用螺子のカドミウムメツキ業務を行つていたところ、右は当初より防衛庁の指示に基づく設備工程に従つて行われたものであつて、その間、防衛庁より廃水処理等について何らの指摘を受けたこともなく、当時の一般的科学知識からは土壤汚染のおそれ等を認識することはできなかつたから、その後の科学知識等の変化により、原告が遡つて責任を負担する理由はなく、仮に責任があるとすれば、国においても責任を分担すべきこと、

(三)  土壤汚染防止法及び負担法は、それぞれ昭和四六年七月一日、同年五月一〇日に施行されたものであつて、いずれも原告岩倉工場のメツキ業務廃止後であるところ、負担法三条は、文理解釈上、法施行前に事業活動を行つた事業者を適用対象外としていること、仮に原告に費用負担を命ずる場合には、事後法を禁じた憲法に違反する処分と思われること、

以上の要旨からなる意見書を昭和五三年二月二〇日ころ、被告と愛知県知事宛に提出し、その意思を明確にした。

6  他方、愛知県は、立案中の農用地土壤汚染対策計画案が具体化したので、その事業主体に関して岩倉市と協議し、その結果、同年四月ころ、市が施行者となつて事業を遂行することが決定されたので、同年五月一五日、市の助役室において三度目の協議の場が持たれ、係官が対策計画の概要などについて説明し、更に費用負担計画については、岩倉市環境保全審議会及びその専門部会である費用負担部会において審議、検討する予定である旨説明した。

なお、原告からは右審議会への参加希望が出されていたが岩倉市は、前記意見書に原告の意思が要約されていると考え、その写しを委員全員に配布することで代替することとした。

かくして同月一六日、被告から岩倉市環境保全審議会に対し、農用地土壤汚染対策事業にかかる費用負担計画について諮問があつたのを受け、第一回の審議会が開催され、対策事業の概要や汚染原因についての説明がなされた後、費用負担計画については専門的事項を審議する必要上、同審議会規則六条に基づいて、専門部会たる費用負担部会において調査、審議することとし、愛知県の公害対策委員会の中の費用負担部会委員でもあつた学者数名を中心として委員を選任したうえ、同部会への審議依頼がなされた。

7  そして、第一回の部会が同月二七日に開催され、愛知県の作成、公表にかかる前記各資料に基づいて、従前の経緯、汚染対策事業の概要、汚染原因、費用負担計画の概要などにつき審議した後、費用負担計画の雛形の作成を二委員に嘱託して閉会したので、岩倉市は同年六月一四日、原告岩倉工場の工場長を呼んで右審議経過を説明したところ、同人より従前の原告の主張につき十分に審議してもらいたい旨要望があつたので、市としてこれを確約し、次いで同月一六日の第二回部分においては費用負担計画の各項目ごとに審議がなされ、愛知県の作成、公表にかかる前記資料などを参考のうえ、費用負担者を原告とすること、公害防止事業費については、昭和五二年一二月設計省略単価表(愛知県農地林務部)を基に試算すると、総額金一億六三〇〇万円(内訳は被告の主張4項のとおり)となること、などを決定した後、原告からの意見書について審議を移し、

(一)  愛知県公害対策審議会委員をも兼ねる一委員から報告された調査結果、すなわち、犬山地区と岩倉地区における灌漑用水の水源は別個であること、具体的には、岩倉地区の灌漑は木曽川を源とする木津用水から分水する五条川(中、下流部)を利用しているのに対し、犬山地区は入鹿池を源とする入鹿用水から分水する五条川(上流部)を利用しているところ、後者の灌漑区域は入鹿用水を利用している灌漑区域約一〇〇〇ヘクタールのうち一五・三ヘクタールであつて、その比率は非常に小さく水量も少ないので、この水が木津用水との平面交差地点まで到達したとしてもごく微量と考えられること、他方、木津用水の灌漑区域は約三〇〇〇ヘクタールで水量も多いので、仮に五条川(上流部)の水が木津用水に流入したとしても、平面交差の状態などからみて、その殆どは木津用水を左岸沿いに流れ、同用水右岸から五条川(中、下流部)に入ることはないと考えられること、また、五条川流域の水田土壤のカドミウム濃度は、〇・三ppmから〇・四ppmであつて、非汚染地区の平均値〇・三二ppmとの間に有意差は認められないこと、などの事実から考えて、犬山地区のカドミウム汚染と岩倉地区のそれとは関係がない、

(二)  前記立地工場及び廃止工場の調査結果からみて、原告以外の者が汚染への影響を与えたとは考えられない、

(三)  本件の費用負担については、防衛庁は無関係である、

(四)  原告は、負担法に基づいて遡及的な責任を負担すべきである、

などと判断し、次回までに二委員が原案を作成することを了解して閉会した。

8  その後、同年七月六日、同月一九日、同年八月一日の三回にわたつて、第二回部分での審議経過を中心に原告と市との間で話し合いがなされ、ことに三回目の話し合いにおいては原告代表者と市長とが直接会談するに至つたが、原告側は、防衛庁の監理の下に業務を行つていた事実を負担計画の中に明記することを強く求め、全面的な解決には至らなかつた。

しかして、同年八月一四日には第三回部会が開催され、まず再度、原告の意見書について検討し、前記の調査結果からみて、犬山地区のカドミウム汚染が岩倉地区のそれとは関係がないことを確認した後、二委員作成の原案の審議に入り、最終的に、灌漑用水系統調査、農用地土壤調査、水質調査、底質調査、立地工場等調査等の各結果からみて、岩倉地区の汚染は原告岩倉工場以外に原因を求めることはできず従つて、費用を負担させる事業者を原告とすること、総事業費を金一億六三〇〇万円とすること、原告の汚染に対する寄与度は一〇〇パーセントであること、原告がカドミウム使用を廃止した後である昭和四五年に土地改良事業が実施され、従来畑であつた〇・七ヘクタールが水田に転換されたことから汚染面積が拡大したと判断されるため、右面積の全対策地域面積(九・六ヘクタール)に対する割合(約七パーセント)を減額すること、更に、他県における例を参考にして、原告がカドミウムを使用していた期間(昭和三〇年六月より昭和四四年一二月までの一七五か月)のうち、イタイイタイ病の原因に関する厚生省見解が公表された昭和四三年五月以前の一五五か月については、カドミウムの有害性に関する知識が社会的に認識されていなかつたことから三分の一を減額し、それ以降の二〇か月については四分の一を減額するのが相当であること、従つて、原告の事業者負担金額は、左記計算のとおり、金一億〇一〇六万円となること、以上のような内容を審議会に対する部会報告とする旨決定され、次いで同年九月四日に開かれた第二回審議会において、右報告書が提出、説明された。

(計算式)

155/175×1/3=0.3 20/175×1/4 ≒ 0.03

1-(1-0.07)×(1-0.33) ≒ 0.38

163000000円×(1-0.38) = 101060000円

9  このような過程を経て、同月九日、原告と市との最後の協議会が持たれ、市より、対策計画及び費用負担計画策定の審議経過が説明されたのに対し、原告からは、従前からの主張である負担法の遡及的適用と減額割合の根拠に対する疑問が出された他、負担金の支払などに関して質問がなされた。

かくして、同月一八日、第三回審議会が開かれ、前記部会報告を審議してこれを市長に対する答申とすることを決め、同日、答申書が市長宛に提出され、次いで市長において右答申を検討のうえ、同月二〇日、正式に岩倉地域農用地土壤汚染対策事業にかかる費用負担計画として別紙IIのとおり決定し、岩倉市告示第二一号にて告示するとともに、原告に対し、結論に至る経緯を記載した資料を添付して本件処分の通知がなされた。

以上の事実が認められ、これを覆すに足りる証拠はない。

右事実を前提として、被告の主張1、2項について検討するに、本件汚染対策事業は、負担法二条二項三号に規定する公害防止事業に該当するところ、同法六条一項に定める審議会への諮問手続を履践したうえで、同条二項の内容を有する本件計画が定められ、その要旨は、同条五項に基づき、施行者たる被告によつて遅滞なく公表されたものと認められる。そして、本件処分自体も、同法九条一項に則り、決定及び通知がなされているから、結局、本件処分に至る経緯、手続において、負担法の規定する右要件すべてが充足されていると判断することができる。

三  本件処分の適法性について

1  まず、本件処分が、前記カドミウム汚染の原因を原告岩倉工場の工場廃水のみに求める立場をとつている(被告の主張3項)ことについて検討するに、前記認定のとおり、愛知県による調査によれば、汚染地域に関係する用水路等の水質検査においてはカドミウムは検出されず、底質検査において、郷東用水から江川用水の経路(別紙IIIの<コ>、<サ>点、同IVの<G>、<J>、<K>点)で高濃度のカドミウムが検出されているから汚染原因は、過去において右経路で工場廃水を排出した事業所にあるとの愛知県がした前記推定は合理的なものというべきところ、前記立地工場調査によれば、右条件に適合する事業所は原告岩倉工場のみであることが認められるから、本件処分が前記カドミウム汚染の原因を原告岩倉工場の工場廃水のみに求めたことには十分な根拠がある。

この点について、原告側は、いずれも成立について争いのない甲第二号証、乙第一号証、証人東条精二の証言及び原告代表者尋問の結果などにおいて、

(一)  犬山地区のカドミウム汚染は、その原因が入鹿池を源とする五条川の水にあるとされているところ、同水系の下流にある本件岩倉地区の汚染に対する影響の有無が解明されていないこと、

(二)  原告岩倉工場からの廃水が流れない川井用水の底質において(別紙IVの<N>、<O>点)、高濃度のカドミウムが検出されていること、

(三)  同じく、原告岩倉工場の廃水が流れない新堀用水の底質において(別紙IIIの<ケ>点、同IVの<F>点)、高濃度のカドミウムが検出されていること、

(四)  その他、原告岩倉工場の廃水と関わりのない二の杁用水(別紙IVの<E>点)、野寄用水(同<S>点)、郷西用水(<I>点)などの底質においても、一ppm以上のカドミウム(それぞれ一・九ppm、一・〇ppm、二・〇ppm)が検出されていること、

などの疑問点を指摘している。

しかしながら、前記のとおり、

(一)  犬山地区と岩倉地区の灌漑用水の水源は、基本的には別個というべきであり、両者の間を流れる五条川流域の水田土壤のカドミウム濃度は、非汚染地区のそれと比べて有意差がないこと、

(二)  川井用水による灌漑区域内の水田土壤自体のカドミウム濃度は、一地点を除いて高いとはいえず、右地点も対策地域外にあるから、同地域内の汚染農用地への影響はないと考えられること、

(三)  原告岩倉工場の東側付近において、郷東用水と新堀用水とを接続する小用水路があり、右経路により工場廃水が流れたと推測しうること、

(四)  他に、やや濃度の高いカドミウムが検出された地点があるとはいえ、郷東用水から江川用水の経路で検出されたカドミウム濃度と比較すれば、はるかに低い数値であること、以上の事実が認められるから、原告側指摘の前記各疑問点は前記判断を覆すには足りないというべく、本件処分の前記汚染原因の判断は、適法なものというべきである。

2  次に、費用負担の対象となる公害防止事業費の範囲については、負担法施行令二条において、「当該公害防止事業の実施のため直接必要な実施計画調査費、本工事費、附帯工事費、用地費、補償費、操作費、維持修繕費、機械器具費、事務取扱費及び附属諸費」などと定められているところ、愛知県農地林務部の昭和五二年一二月設計省略単価表による積算の結果、本件汚染対策事業に要する総事業費及び内訳が、被告の主張四項記載の金額になることは、前記認定から明らかである。

3  また、本件公害防止事業の負担総額については、負担法四条二項により、「その公害防止の機能以外の機能、当該公害防止事業に係る公害の程度、当該公害防止事業に係る公害の原因となる物質が蓄積された期間」などの事情を勘案して妥当と認められる額を総事業費より減ずる旨規定されているが、その減額割合の決定については行政庁の合目的々な裁量に属するというべきところ、負担法七条三号は、同法二条二項三号に係る公害防止事業のうち農用地の客土事業その他の政令で定めるもの(公害の原因となる物質が長期にわたつて蓄積された農用地に係るものに限る。)については、同法四条二項を適用して減ずべき額を算定することが困難であると認められるときは、施行者は同条一項の金額の四分の一以上二分の一以下の割合を減額した金額を基準として負担総額を決定することができる旨定めていること、本来、土壤への汚染物質の堆積は、排出者が防止措置を怠つていたことに起因するものであるから、事業費全部を事業者に負担させても必ずしも不当とはいえないこと、今日においてはカドミウムの有害性は一般常識の部類に属するというべきところ、前記認定のとおり、このことが公に明らかにされたのは、昭和四三年五月の厚生省見解によつてであるから、その前後において減額割合に差を設けるのは合理的であること、などの事情を考慮すると、被告が右見解以前の期間の減額割合を三分の一、それ以降については四分の一として負担総額を決定し、原告の負担金額を定めた措置は、裁量を逸脱したものということはできず、従つて、原告に対する負担金額金一億〇一〇六万円(その算出過程は前記認定のとおり)は、適法なものというべきである。

この点に関し、原告は、カドミウムの使用が防衛庁からの受注に基づくものであり、派遣監督官による監理下にあつたことを強調するが、両者の関係は私法上の契約に基づくものであり、監理も品質確保のための製品監理にすぎないことが主張自体より明らかであるので、右事実を減額要素として斟酌しなかつたからといつて、被告の措置が違法となるものではない。

四  本件処分と法律不遡及の原則との関係について

原告が岩倉工場においてカドミウムメツキの業務を行つていた期間は昭和三〇年から昭和四四年までであり、負担法が施行された昭和四六年五月一〇日には既に右業務を廃止していたこと、以上の事実は当事者間に争いがないところ、原告は、本件処分は負担法三条の文言解釈に反し、又は憲法二九条、三九条などに違反すると主張する(原告の反論1項)。

しかしながら、負担法三条は、公害防止事業に要する費用を負担させることができる事業者の範囲につき、「…公害の原因となる事業活動を行ない、又は行なうことが確実と認められる事業者」と規定しているところ、国語上の用法としては、「行ない」は現在及び過去の両時制を含みうるので、右表現の文言解釈から、直ちに原告が右事業者に該当しないとはいえない。

かえつて、証人室井力の証言によれば、負担法は昭和四五年一二月のいわゆる公害国会において成立したものであるが、当時、既に発生し、社会問題となつていた公害(田子の浦港のヘドロ汚染、カドミウム汚染農地等)の除去、防止事業を行つて地域環境の汚染を防止し、また、汚染された環境の回復を図るべきであるとの社会的要請があり、右公害防止事業を行う費用は、公害の原因をもたらした事業者が負担すべきであるとの見解が支配的であつたこと、右のような要請、見解を社会的背景として、同法が成立したことが認められ、このことは、同法が定めた公害防止事業の内容(同法二条二項各号)をみても、また、公害防止事業の費用は公害の原因を作る事業者に、それぞれ公害をもたらす度合に応じて負担させる趣旨を定めた規定(同法三条、四条一項、五条)に照らしても明らかである。このような立法に至る経緯、当時の状況に鑑みると、同法が、同法成立以前の事業活動による既発生の公害の防止のための事業を行うに当たり、同法成立以前にその原因をもたらした事業者については、同法の埓外であつて、その費用を一切負担せしめ得ない趣旨で立法されたものとは到底、解し得ないところである。また、同法四条二項が、公害の原因となる物質が蓄積された期間等の事情を、当該公害防止事業についての事業者の負担総額を定める上で、特に減額について考慮すべき要素としており、同法七条三号が、同法二条二項三号に係る公害防止事業のうち公害の原因となる物質が長期にわたつて蓄積された農用地の客土事業について概定割合による負担総額決定の方法を定めているが、これらの規定は、当時、既に発生し、社会問題となつていたカドミウムによる農用地の汚染の例にみられるように、有害物質の毒性や人体に対する影響などについて科学的な解明がされず、誰も人の健康に重大な問題を引き起こすことなど考えない時代から長期にわたつて蓄積されてきたといつた事情、また、事業者においても、法的規制もない時代に平穏かつ公然と事業活動を行つていたといつた事情を負担総額決定の際における減額の考慮要素とする趣旨の定めであることは明らかであり、これらの規定は、同法が、同法立法以前に発生した右の類型に属する公害を念頭に置き、その原因となつた事業者の事業活動をも対象とし、右事業者に対しても応分の費用負担を求め得ることを当然の前提としている趣旨が窺えること、更に、成立に争いのない乙第三二号証によれば、内閣総理大臣官房公害対策室長は、昭和四六年六月二六日付各都道府県知事宛の通達「公害防止事業費事業者負担法の施行について」において、負担法三条の事業者には、過去に当該公害の原因となる事業活動を行つたことがあるが現に事業活動を行つていない者を含むと解説していることが認められることなどの事情並びに鑑定人室井力の鑑定の結果を併せ考慮すると、負担法三条の事業者には、過去において当該公害の原因となる事業活動を行つたことがあるが、同法施行後は右事業活動を行つていない原告のような事業者もこれに該当するものと解するのが相当である。

もつとも、このように解した場合、憲法二九条や三九条との関係が問題となりうるが、憲法三九条は刑事上の責任に関する規定であつて、行政法規などについてはその適用がないことは明らかであるから、仮にそれが国民に不利益を与え、あるいは義務を課するものであつても、これを正当化する合理的な理由あるいは公共の福祉の要請が存する限り、一概に遡及適用が否定されるものではなく、ことに財産権については、憲法二九条二項が「財産権の内容は、公共の福祉に適合するように、法律でこれを定める。」と規定しているから、たとえ既得の地位であつても、公共の福祉上の要請のある場合には、法律によつて変更することができるというべきである。そして、右の変更が公共の福祉に適合するようにされたものであるか否かは、既得の地位の性質、その内容を変更する程度、及び変更によつて保護される公益の性質などを総合的に勘案して決せられるべきところ(最高裁昭和五三年七月一二日判決民集三二巻五号九四六頁参照)、

1  公害の原因となる事業活動を行つた者に対し、その公害防止事業に要する費用の負担を求めることは、仮にその者に有害性に関する故意、過失がなかつたとしても、右負担金の性質を刑事罰や不法行為に基づく損害賠償とは異なつた公法上の負担としてとらえる限り、正義、公平の観念に沿うものであると考えられること、

2  負担法は、三条において、費用を負担させることができる事業者の要件を規定してその範囲を絞り、かつ四条、七条において負担額の減額措置を定めるなど、処分が過酷にわたらないように配慮していること、

3  負担法によつて、当時、社会的要請となつていた公害防止事業の財政的基礎が強化され、右事業の早急かつ円滑な実施が可能となり、地域環境の汚染が防止され、また汚染された環境の回復が図られること、

などの点から判断すると、負担法による遡及的適用は、合理的な理由があつて公共の福祉に適合するというべく、従つて、憲法二九条、三九条などに違反するものではないと解するのが相当である。原告の反論1項は採用できない。

五  理由付記について

次に原告は、本件処分は原告に対する重大な不利益処分であつて、具体的な負担の理由が示されるべきであるのに、これを欠いている旨主張する(原告の反論2項)。

ところで、本件処分には、前記認定のとおり、付属資料が添付されていて、これを検討すれば結論に至る経緯は十分に認識しえたといいうるが、それはさておき、負担法九条一項は、「施行者は・・・費用負担計画を定めたときは、・・・当該各事業者に対し、その者が納付すべき事業者負担金の額及び納付すべき期限その他必要な事項を通知しなければならない。」と規定しているところ、右の「その他必要な事項」とは、文脈上、納付方法などの納付に関する事項を指すと解するのが自然であり、かつ理由付記を要求する他の法令(例えば、青色申告に対する更正処分に関する所得税法一五五条二項、法人税法一三〇条二項)との対比からしても、具体的な負担の理由の記載を命ずる趣旨であるとは、到底、解されない。そして、このように、法律上、処分理由の付記が要求されているわけではない場合には、それが被処分者に対する不利益処分であつたとしても、これを欠いたからといつて処分が直ちに違法となるものではないと解するのが相当であり(白色申告に対する更正処分に関する最高裁昭和四三年九月一七日判決訟務月報一五巻六号七一四頁参照)、かつこのように解したからといつて、前記負担法が憲法に違反するということはできない。

ちなみに、本件処分に対する異議申立についてなされた決定が理由の付記を要するのは、行政不服審査法四八条、四一条一項の規定から当然であり、本件において右要件が具備されていることは、成立について争いのない甲第三号証の一により明らかである。

従つて、原告の反論2項は、主張自体失当というべきである。

六  適正手続について

更に原告は、本件処分のような不利益処分については、被処分者に対し、告知、聴聞の機会を与えることが憲法三一条によつて保障されているところ、これらを与えられず、一方的に負担を命ぜられた旨主張する(原告の反論3項)。

この点に関し、負担法は六条一項において、「施行者は・・審議会の意見をきいて・・・費用負担計画を定めなければならない。」と規定する(この要件が本件において充足されていることは前記のとおり)以外に、何らの定めもしていないことは被告主張のとおりであるが、右の趣旨は、処分行政庁が諮問機関たる審議会の答申を慎重に検討し、これに十分な考慮を払い、特段の合理的な理由のない限りこれに反する処分をしないように要求することにより、当該行政処分の客観的な適正妥当性と公平を担保することにあると考えられるのであり、また、事業者負担金額の決定が事業者に対し、相当多額の金員の負担を義務付けるものであることに鑑みると、当該審議会における審議手続も、成立について争いのない乙第二二号証によつて認められる審議会規則によつて定められた手続を履践するだけでは足りず、答申の基礎となる諸事項に関する主張及び証拠の提出の機会を被処分者に与え、答申に反映させることを実質的にも可能ならしめなければならないと解するのが相当である(最高裁昭和五〇年五月二九日判決民集二九巻五号六六二頁参照)。

もつとも、その具体的な手続は多様であり、被処分者を直接審議会に出席せしめて陳述させる方法に限定されないと解すべきところ、本件においては前記認定のとおり、審議会の審議開始前又は審議中に、適宜、愛知県ないし岩倉市との協議の場が設定され、審議内容の概要の説明を受けて処分の根拠を知ることができ、また係官に対して必要な質問をなしえたほか、原告の主張を要約した意見書が審議会の委員全員に配布され、審議の対象とされたのであるから、これらを総合すれば、前記の法の要請は十分に満たされているというべく、手続上の違法はないと解するのが相当である。

七  結論

以上の次第で、本件処分は適法であつて、原告の本訴請求は理由がないから棄却し、訴訟費用の負担につき行政事件訴訟法七条、民事訴訟法八九条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判官 加藤義則 高橋利文 加藤幸雄)

別紙I~IV<省略>

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