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名古屋地方裁判所 昭和54年(行ウ)26号 判決 1980年1月30日

名古屋市北区田幡町八三六番地

原告

城北冷蔵株式会社

右代表者代表取締役

小川寿美雄

名古屋市北区金作町四丁目一番地

被告

名古屋北税務署長

北野仁俊

右指定代理人

横山静

市川朋生

小野正裕

千賀清宏

清水利夫

主文

本件訴えを却下する。

訴訟費用は原告の負担とする。

事実

第一、申立て

(原告)

一、被告が昭和五三年一〇月一九日付で原告に対してなした昭和五二年二月一日より昭和五三年一月三一日至る事業年度分の法人税の更正処分及び過少申告加算税賦課決定処分は、これを取消す。

二、訴訟費用は被告の負担とする。

との判決を求めた。

(被告)

主文と同旨の判決を求めた。

第二、主張

(原告)

請求原因

一、原告は、訴外キリン不動産株式会社からの委任により、訴外斉藤志ように対し、同訴外人所有の名古屋市守山区大字瀬古字柴荷二八番の土地一、〇二四平方メートルにつき売買交渉をなし、約三か月余の接渉の結果右両名間に売買契約を成立させ、右土地は訴外斉藤志ようから訴外キリン不動産株式会社に売却された。

二、原告は、右売買交渉の謝礼として金三一〇万円を受領し、昭和五二年三月九日原告会社帳簿に雑収入として入金した。

三、しかるに、被告は、原告が右土地を訴外斉藤志ようから買受けたうえこれを訴外キリン不動産株式会社に売却したものと認定し、前記各処分を行った。

四、よって、右各処分は違法であるから、原告は被告に対し、右処分の取消しを求める。

(被告)

本案前の主張

国税不服審判所長は、本件各処分に対する原告の審査請求について、昭和五四年六月二七日付で棄却する旨の裁決をなし、同裁決書の謄本は同年七月二三日原告に送達されたので、原告は同日右裁決があったことを知ったものというべきところ、行政事件訴訟法一四条一項及び四項によれば、出訴期間は裁決があったことを知った日を初日とし、これを期間に算入して計算すべきであるから、本件訴えは昭和五四年一〇月二二日の経過をもって法定の出訴期間が満了したことになる。したがって、同月二三日に提起された本件訴えは法定の出訴期間を徒過した違法な訴えであるから却下されるべきである。

(原告)

本案前の主張に対する反論

一、右裁決書の謄本が昭和五四年七月二三日に原告に送達されたことは認める。しかし、前記裁決書の謄本は、原告会社の事務員がこれを受領したのであり、原告代表者はその日は他出中で営業上多忙のため帰社したのは翌二四日午前であった。原告代表者が右裁決書謄本を入手したのは当然その後であり実質的にみれば送達されたのは右二四日であるというべきである。

二、仮りに、右主張が理由がないとしても、行政処分に明白かつ重大な瑕疵があるときは、出訴期間経過後でも訴えを提起することができる。行政訴訟は国民の権利保護を目的とするものであり、原告は行政処分に明白かつ重大な瑕疵がある点を主張できるのであるから、これを主張している本件訴えにおいては、まずその理由を充分審理して明白かつ重大な瑕疵がないかを判断したうえ、出訴期間の徒過を論ずべきものである。

原告が出訴期間を一日だけ経過したのは、原告が出訴期間について国税局の担当官に尋ねたことが二、三度あるが、その答えは一か月であったり二か月であったりし、最後に漸く三か月であるとの確答を得たのである。従って、これらのことも当然原告の出訴の準備に支障を及ぼしたのである。

よって、本件訴えは適法である。

第三、証拠

(原告)

甲第一、二号証を提出し、乙第一号証の成立を認めた。

(被告)

乙第一号証を提出し、甲号各証の成立を認めた。

理由

国税不服審判所長が、本件各処分に対する原告の審査請求につき昭和五四年六月二七日付で棄却する旨の裁決をしたことは、弁論の全趣旨により認められ、右裁決書の謄本が同年七月二三日原告に送達されたことは、当事者間に争いがない。そして、右のとおり送達された右裁決書謄本を現実に受領した者は原告会社の事務員であることは、原告の自認するところである。

右の事実によれば、原告会社の右事務員は原告会社を代理して右裁決書謄本を受領する権限を有していたものと認めるべきであるから、仮に原告代表者が右送達の日に不在であったとしても、右送達の日をもって原告が行政事件訴訟法一四条一項にいう裁決があったことを知った日と認めるのが相当である。

そして、同法一四条一項及び四項によれば、取消訴訟は裁決のあったことを知った日から起算して三か月以内に提起しなければならないから、本件各処分に対する取消訴訟の出訴期間は同年一〇月二二日をもって満了したことになる。ところが、本件訴えが提起された日が同年一〇月二三日であることは本件記録上明らかであるから、本件訴えは出訴期間徒過後の訴えである。

原告は、行政処分に明白、かつ重大な瑕疵があるか否かをまず審理すべきであると主張するが、本訴請求は、取消訴訟であるから、出訴期間の制限を免れることはできない。また、仮りに出訴期間に関する税務担当官の指導が原告主張のとおりであったとしても、右のような事由は出訴期間の算定に影響を与えるものではない。

よって、本件訴えは不適法であるからこれを却下することとし、訴訟費用の負担については民事訴訟法八九条を適用し、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 松本武 裁判官 浜崎浩一 裁判官 山川悦男)

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