大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

名古屋地方裁判所 昭和57年(わ)712号 判決 1982年9月17日

裁判所書記官

堀井茂雄

本店の所在地

名古屋市中川区太平通一丁目四二番地

法人の名称

大東建設株式会社

代表者の住居

名古屋市緑区作の山町八七番地

代表者の氏名

多田勝美

本籍並びに住居

名古屋市緑区作の山町八七番地

会社役員

多田勝美

昭和二〇年七月一二日生

右大東建設株式会社並びに多田勝美に対する法人税法違反被告事件について、当裁判所は、検察官庄地保並びに主任弁護人石原金三及び副主任弁護人花村淑郁各出席のうえ審理を遂げ、次のとおり判決する。

主文

被告人大東建設株式会社を罰金五〇〇万円に、被告人多田勝美を懲役六月に各処する。

被告人多田勝美に対し、この裁判確定の日から二年間右懲役刑の執行を猶予する。

理由

(罪となるべき事実)

被告人大東建設株式会社(以下「被告会社」という。)は、名古屋市中川区太平通一丁目四二番地に本店を置き、土木建築工事の設計・施工を目的とする資本金二〇〇〇万円の内国法人であり、被告人多田勝美は、被告会社の代表取締役としてその業務全般を統括するものであるが、被告人多田勝美は、被告会社の業務に関し、法人税を免れようと企て、その方法として(1)外注工事費につき架空の金額及び過大な金額を計上し、(2)給料手当につき退職した従業員に架空の退職金を計上し、かつ、実在しない従業員に架空の給料手当を計上し、(3)簿外預金からの受入利息を計上せず、他方(4)接待交際費を過少に計上し、(5)諸雑費中不正資金の預入れに利用していた公表外取引銀行である株式会社富士銀行柳橋支店の貸金庫使用料を計上せず、また(6)前期調査所得に対する事業税認定額を計上しない過誤と相俟って、所得の一部を秘匿したうえ、昭和五五年四月一日から同五六年三月三一日までの事業年度における被告会社の実際の所得金額が一億五四三一万七九二三円で、これに対する法人税額が五八七七万一九〇〇円であるのに、同五六年五月二八日、名古屋市中川区尾頭橋一丁目七番一九号所在中川税務署において、同税務署長に対し、その所得金額が一億〇〇一三万五六三四円で、これに対する法人税額が三八一〇万一〇〇〇円である旨の虚偽過少の法人税確定申告書を提出し、もって、不正の行為により、右正規の法人税額と右申告税額との差額二〇六七万〇九〇〇円の法人税を免れたものである(修正損益計算書、ほ脱所得の内容及び脱税額計算書は別紙(一)ないし(三)のとおり)。

(証拠の標目)

一  被告会社代表者兼被告人多田勝美の

1  当公判廷における供述

2  上申書二通(検乙第一及び第二号証)

3  大蔵事務官作成にかかる質問てん末書一二通

4  検察官に対する供述調書

一  多田政男の

1  大蔵事務官作成にかかる質問てん末書四通

2  検察官に対する供述調書

一  石川武久、小鹿昭孝、笠松安子、都築安彦の大蔵事務官作成にかかる各質問てん末書一 伊藤洋一作成の上申書

一  大蔵事務官作成の

1  告発書

2  脱税額計算書及び同説明資料

3  証明書二通(検甲第五及び第二九号証)

4  査察官調査書五通(検甲第六、第三五、第六六ないし第六八号証)

5  聴取書八通(検甲第一二ないし第一九号証)

6  差押てん末書三通(検甲第二二ないし第二四号証)

7  領置てん末書二通

8  写真撮影報告書

9  臨検てん末書

10  調査報告書

11  査察官報告書

一  登記官作成の登記簿謄本

一  検察事務官作成の電話聴取書

一  株式会社富士銀行柳橋支店長及び次長酒井明徳作成の照会票等(写)(検甲第三七号証)

一  株式会社名古屋相互銀行五月通支店長及び次長橋本力作成の名寄せ取引照会票等写(検甲第三八号証)

一  株式会社岐阜相互銀行中川支店次長神保鉦作成の定期預金出入明細等写(検甲第三九号証)及び普通預金元帳写(検甲第四〇号証)

一  中日信用金庫中川支店長及び支店長代理桑野秀樹作成の顧客元帳照会票写等(検甲第四一号証)

一  株式会社住友銀行栄町支店長及び営業課長吉田武作成のオンライン取引照会票写等(検甲第四二号証)

一  株式会社中京相互銀行上社支店長及び次長内藤章作成の定期預金印鑑紙等写(検甲第四三号証)

一  京都銀行門真支店長及び支店長代理沢田睦久作成の証明書(検甲第四四号証)

一  株式会社中京相互銀行本店営業部長及び次長池尾昌剛作成の照会カード等写(検甲第四五号証)

一  株式会社中央相互銀行高畑支店松葉町特別出張所長及び副長成田和伸作成の定期預金印鑑票等写(検甲第四六号証)

一  株式会社協和銀行名古屋支店長及び預金課長遠藤義祐作成の定期預金印鑑届写等(検甲第四七号証)

一  株式会社太陽神戸銀行名古屋栄町支店長及び副長原田尚志作成の定期預金印鑑届写等(検甲第四八号証)

一  株式会社三井銀行名古屋支店預金課副課長三富敬一郎作成の定期預金印鑑・署名鑑写等(検甲第四九号証)

一  株式会社駿河銀行名古屋支店副長及び支店長代理南條忠義作成の定期預金申込書兼印鑑届写等(検甲第五〇号証)

一  株式会社大和銀行名古屋支店長及び支店次長成田鋼作作成の証(検甲第五一号証)

一  株式会社太陽神戸銀行名古屋支店長及び預金課長村上喜八郎作成の定期預金印鑑届写等(検甲第五二号証)

一  株式会社東海銀行本店営業部長及び調査役佐藤由泰作成の定期預金帳票写(検甲第五三号証)

一  株式会社三和銀行栄町支店長及び支店長代理名和正勝作成の証(検甲第五四号証)

一  瀬戸信用金庫押切支店長代理石川成朗作成の普通預金申込書写等(検甲第五五号証)一 株式会社第一勧業銀行栄町支店長及び次長古田善三作成の証明書(検甲第五六号証)一 株式会社群馬銀行名古屋支店長及び次長長谷川弘二作成の証明書(検甲第五七号証)一 株式会社横浜銀行名古屋支店長及び次長中村邦弘作成の証(検甲第五八号証)

一  株式会社東海銀行前津支店長及び作成者榊原孝作成の定期預金取引明細表(検甲第五九号証)

一  株式会社富士銀行名古屋支店長及び営業課副長伊藤雅唯作成の定期預金収入伝票写等(検甲第六〇号証)

一  株式会社大和銀行新大阪駅前支店長及び営業副長木下実作成の定期預金印鑑届写等(検甲第六一号証)

一  株式会社東京銀行名古屋支店長代理神田良男作成の定期預金印鑑票写等(検甲第六二号証)

一  株式会社兵庫相互銀行上前津支店長及び次長深田和夫作成の定期預金印鑑票写等(検甲第六三号証)

一  蒲郡信用金庫瑞穂支店長及び支店長代理高橋敏文作成の証明書(検甲第六四号証)

一  株式会社住友銀行名古屋支店次長岩本太一作成の定期預金入金伝票写等(検甲第六五号証)

(法令の適用)

被告会社の判示所為は、法人税法一六四条一項、一五九条一項に該当するので、その所定罰金額の範囲内で被告会社を罰金五〇〇万円に処し、被告人多田勝美の判示所為は、法人税法一五九条一項に該当するので、所定刑中懲役刑を選択し、所定刑期の範囲内で被告人多田勝美を懲役六月に処し、情状により刑法二五条一項を適用してこの裁判確定の日から二年間右刑の執行を猶予する。

よって主文のとおり判決する。

(裁判官 早瀬正剛)

別紙(一)

修正損益計算書

自 昭和55年5月1日

至 昭和56年4月30日

<省略>

<省略>

別紙(三)

脱税額計算書

自 昭和55年4月1日

至 昭和56年3月31日

<省略>

別紙(二)

ほ脱所得の内容

自 55.4.1

至 56.3.31

△印は減

<省略>

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例