名古屋地方裁判所 昭和57年(行ウ)11号 判決 1986年1月31日
名古屋市瑞穂区弥富町清水ヶ岡六三番地
原告
平島清子
右訴訟代理人弁護士
石川則
名古屋市中川区尾頭橋一丁目七ノ一九
被告
中川税務署長
安田政義
右指定代理人
畑中英明
同
小久保稚弘
同
福田昌男
同
吉野満
主文
一 原告の請求をいずれも棄却する。
二 訴訟費用は原告の負担とする。
事実
第一当事者の求める裁判
一 原告
1 被告が昭和五五年一二月二日付をもつて原告に対してした、原告の昭和五二年六月二三日相続開始に係る相続税の更正処分のうち課税価格金四八三六万三〇〇〇円、相続税額金一四一八万九八〇〇円を超える部分及び無申告加算税の賦課決定処分は、いずれもこれを取消す。
2 訴訟費用は被告の負担とする。
二 被告
主文同旨
第二当事者の主張
一 原告の請求原因
1 原告は、昭和五二年六月二三日に死亡した被相続人伊藤弥十郎(以下「亡弥十郎」という。)の相続人である。
2 原告は、亡弥十郎の死亡によつて開始した相続について、昭和五四年八月二九日被告に対し別紙課税処分表(以下「経緯表」という。)の期限後申告欄記載のとおり相続税の申告をしたが、被告は昭和五五年一二月二日付で原告の右相続に係る相続税について経緯表の更正欄記載のとおりの更正及び経緯表の賦課決定(五五・一二・二)欄記載のとおりの無申告加算税の賦課決定(以下、一括して「本件各処分」という。)をした。
3 原告は、本件各処分に対し被告に異議申立てをしたが、被告は昭和五六年一月三〇日右異議申立てを棄却する決定をし、次いで原告は昭和五六年五月二九日国税不服審判所長に対し審査請求をしたが、同所長は昭和五七年四月一二日右審査請求を棄却する旨の裁決をし、同裁決書は同年五月一〇日原告に送達された。
4 しかしながら、本件各処分は、亡弥十郎の相続財産の評価を誤つた違法なものである。
5 よつて、本件各処分(更正処分については申告額を超える部分)の取消しを求める。
二 請求原因に対する被告の認否
1 請求原因1ないし3は認める。
2 同4、5は争う。
三 被告の主張
1 本件課税方法について
亡弥十郎に係る相続財産(以下「相続財産」という。)は、未だ遺産分割されていないことから、相続税法五五条(昭和五五年法律第五一号による改正前のもの、以下同じ)に基づき、弥十郎の相続人である原告平島清子、訴外伊藤照雄、同松浦八重子、同伊藤英明、同戸谷勢津子、同伊藤きくらの共同相続人らが民法所定の法定相続分の割合で相続財産を取得したものとして、原告の課税価格を算出すべきことになる。そして、民法は、共同相続人の相続分について九〇〇条から九〇三条までに規定しており、前記相続税法五五条本文の「民法の規定による相続分」とは、右民法九〇〇条から九〇三条までに規定する相続分をいうものと解すべきであるから、相続税法上、弥十郎の共同相続人である原告ほか五名がそれぞれ取得する相続財産の額は、民法九〇〇条から九〇三条の規定に従つて計算することになる。
2 本件各処分に係る相続財産及びその価額は、別表一(相続財産種類別価額表)の被告主張額欄に記載のとおりであり、その内訳は以下に述べるとおりである。
(一) 宅地について(別表五の(一)及び(二)に記載のもの)
相続税法における相続財産の価額は、法定された特定資産(相続税法二三条ないし二六条に規定する財産)を除き、財産の取得における時価によるものとされ(相続税法二二条)、具体的な評価は、国税庁長官が各国税局あてに通達した「相続財産評価に関する基本通達」(昭和三九年四月二五日付け直資五六・直審(資)一七)、「相続税財産評価に関する基本通達の一部改正について」(昭和五五年一二月一五日直評二〇・直資二-三九三)(以下二通達をまとめて「評価基本通達」という。)及び毎年各国税局長が定めた相続税財産評価基準(以下「評価基準」という。)に基づき評価している。
宅地を評価基本通達及び評価基準に基づいて評価すると、その価額は、別表五の(一)及び(二)「相続財産の明細(宅地)」のとおりとなり、右別表の番号<21>及び<22>を除く各宅地の一平方メートル当たりの価額は、別表一二の(一)ないし(一二)「一平方メートル当たりの価額の計算」のとおりである。
(二) 家屋等について(別表六に記載のもの)
家屋及び庭園を、評価基本通達及び評価基準に基づいて評価すると、それらの価額は別表六「相続財産の明細(家屋等)」のとおりとなる。
庭園は、亡弥十郎の居住地である名古屋市港区中之島通三丁目五番地外(別表五の(一)の番号<6>ないし<9>)に築造された日本庭園であるが、庭園の現況及び原告を除く他の共同相続人らが当初から被告にその価額を七五万円であると申告していることから、被告においても庭園の価額を七五万円を下廻らないものと認めたものである。
(三) 有価証券について(別表七に記載のもの)
有価証券を、評価基本通達及び評価基準に基づいて評価すると、その価額は別表七「相続財産の明細(有価証券)」のとおりとなる。
なお、別表七の番号<9>ないし<11>の各貸付信託受益証券の評価額の明細は、別表一三の()一のとおりである。
(四) 現金・預貯金について(別表八に記載のもの)
預貯金を評価基本通達に基づいて評価すると、その価額は、別表八「相続財産の明細(現金・預貯金)」のとおりである。
なお、名古屋相互銀行港支店の亡弥十郎名義の定期預金(別表八の番号<8>、<9>)の評価額の計算の明細は別表一三の(三)のとおりである。
(五) 家庭用財産及びその他について(別表九に記載のもの)
家庭用財産及びその他(貸付金、未収入金、電話加入権及び配当期待権)の財産を評価基本通達に基づいて評価すると、その価額は別表九「相続財産の明細(家庭用財産及びその他)」のとおりである。
(1) 家庭用財産について
亡弥十郎が保有していた家庭用財産については、亡弥十郎が死亡直前に家庭用電気器具、ジユータン、ベツト及び寝具を総額七七万円で購入しており、右動産以外にも他の家庭用動産を保有しているのが常であるところ、原告を除く他の共同相続人らは、当初から被告にその価額を八〇万円であると申告していることから、被告においても家庭用財産の価額は八〇万円を下廻らないものと認めたものである。
(2) 国税還付金について
未収入金のうち国税還付金の価額は、原告が被告に申告した額である五八万七〇九八円の外に、亡弥十郎に係る昭和五一年分の所得税還付金の額五〇万一九〇〇円が存するから、それらの合計一〇八万八九九八円を国税還付金と認めたものである。
(3) 定期預金未収利息について
未収入金のうち定期預金未収利息が相続財産となる事由及びその価額は、次に述べるとおりである。
三菱銀行熱田支店に所在する無記名定期預金四口(別表一三の(二)参照)は、弥十郎の死亡した日において既に満期日を経過しているにもかかわらず弥十郎が生前に右預金に係る利息を受領していないことから、右利息が未収入金となり、その額は別表一三の(二)の合計の番号<10>「未収入金」欄記載の額のとおりである。
(4) 電話加入権について
亡弥十郎は、名古屋港電話局において、電話番号六六一-二一五一番の電話加入権を死亡時に保有していたものであり、その価額は、亡弥十郎の死亡した直近の名古屋電話仲値相場によれば、四万円を下廻らないものであること、原告を除く他の共同相続人らが右価額で当初から被告に申告書を提出していることから、被告においても電話加入権の価額を四万円を下廻らないものと認めたものである。
(5) 配当期待権について(別表一四)
前記のとおり、別表七の番号<4>ないし<7>記載の中部電力、北海道電力、中部日本放送及び東邦ガスの各株式は、相続財産であると認められ、右各株式に対する昭和五二年三月期の配当金の支払決議は各会社とも亡弥十郎の死亡日以降に行われており、亡弥十郎の死亡時には、右決議が末だなされていないことから、右各株式に配当期待権が存するものである。
そして、それらの配当期待権の価額の評価の明細は、別表一四「配当期待権の評価額の計算」のとおりである。
(六) 債務等について(別表一〇)
亡弥十郎に係る債務と葬式費用は、別表一〇「相続財産の明細(債務等)」のとおりである。
なお、同番号<3>の「未納源泉所得税」は、定期預金未収利息から源泉徴収されるべき所得税を債務としたものである。
(七) 贈与加算について(別表一一)
亡弥十郎が生前に同人の妻(伊藤きく)へ贈与した内容及びその価額は、別表一一「相続財産の明細(贈与加算)」のとおりである。
右贈与は、民法九〇三条にいう「生計の資本としての贈与」にあたるものである(その額、時期、弥十郎と伊藤きくの身分関係や従来の生活関係、伊藤きくが右贈与を相続法上特別受益とされることについて異議を唱えていないこと、他方、これを伊藤きくに対する「生計の資本たる贈与」と解することと矛盾するような事情は特段存しないこと、などからして、右贈与が民法九〇三条にいう贈与にあたることは明らかというべきである。)から、これを前提として課税の基礎となる相続人各自の相続分が計算されるべきこととなる。
3 したがつて、以上のところから、民法九〇三条に規定する弥十郎の「みなし相続財産」の価額は、弥十郎が相続開始の時において有していた未分割遺産の総額(別表一の<19>欄に記載の金額)に、伊藤きくに対する特別受益とみられる右二六〇〇万円の贈与の価額を加算したものとなり、これを弥十郎の相続人である原告、訴外伊藤照雄、同松浦八重子、同伊藤英明、同戸谷勢津子、同伊藤きくの共同相続人らが民法所定の法定相続分の割合でそれぞれ取得したものとして計算すると、原告の課税価格は、別表二「相続税法五五条により原告が取得したものとされる相続税の課税価格」の被告主張額欄の「<8>原告の課税価格」欄記載の額のとおりとなり、亡弥十郎が死亡したことにより原告の納付すべき相続税額を計算すると、別表四「原告の納付すべき相続税額及び無申告加算税の計算」の被告主張額欄の「<5>原告の納付すべき税額」欄記載の額のとおりとなり、国税通則法六六条一項に規定する無申告加算税の賦課決定額は、同表の被告主張額欄の「<7>無申告加算税額」欄記載の額のとおりとなる。
なお、同表の被告主張額欄の番号<2>(課税価格の合計額)の算出過程は別表一の被告主張額欄に、番号<3>(相続税の総額)の算出過程は別表三の被告主張額欄に各記載のとおりである。
4 したがつて、右金額の範囲内でなされた本件各処分は、いずれも適法である。
四 被告の主張に対する原告の認否、反論
1 被告の主張1のうち、亡弥十郎に係る相続財産が未分割であること、亡弥十郎の相続人が被告主張のとおりであることは認める。
2 同2について
(一) 同2柱書は争う。
(二) 同2(一)のうち、別表五の(一)及び(二)の各宅地が亡弥十郎の相続財産であることは認める。右同表記載の各宅地の地積、利用区分、一平方メートル当りの価額等、控除割合の各項目のうち、右各土地の一平方メートル当りの価額はいずれも否認し、番号<18>、<19>の各土地の控除割合は争う。その余が別表五の(一)及び(二)に記載のとおりであることは認める。
右番号<18>、<19>の各土地には使用借権が設定されているに過ぎないのであるから、被告が、賃借権が設定されているに過ぎないのであるから、被告が、賃借権が設定されていることを前提とし、借地権割合を五割と評価して、これを右各土地の更地価格から控除したことは違法である。
(三) 同1(二)のうち、別表六の番号<8>(庭園)が亡弥十郎の相続財産であることは否認する。その余の同表記載の家屋が亡弥十郎の相続財産であること及び同表の固定資産税評価額、利用区分、控除割合の各欄はいずれも認める。
(四) 同1(四)のうち、別表七の番号<6>(北海道電力)、<7>(中部日本放送)の各株式が亡弥十郎の相続財産であることは否認する。その余の有価証券が亡弥十郎の相続財産であることは認める。別表七の一株当りの価額等欄は争う。
(五) 同1(四)のうち、別表八の番号<1>(現金)、<10>(大和銀行名古屋支店)の預金が亡弥十郎の相続財産であることは否認する。その余の各預金については、その額を争う。
(六) 同1(五)のうち、別表九の番号<1>(立木)及び<10>(北海道電力)、<11>(中部日本放送)の各配当期待権が亡弥十郎の相続財産であることは否認する。
(七) 同1(六)、(七)は争う。
亡弥十郎の相続財産は、昭和五四年四月六日付名古屋家庭裁判所の審判によつて確定済みであり、右審判書に記載のない相続財産は存在しない。
また、被告主張の現金一五〇〇万円及び生前贈与二六〇〇万円については、仮に被告主張のとおり存在していたとしても、原告は右現金及び生前贈与の存在を知らず、現金の処分にも全く関与していない。
したがつて、右現金については相続税法九条により当然その処分者において贈与税の納税義務が存するのであり、右処分者及び生前贈与の受贈者が納税義務を負担する以上、原告に対して相続税法一九条を適用することは、税法における公平、公正課税の理念を歪めたものである。すなわち、原告は右財産の処分に何ら関与しないのにもかかわらず、相続税法一九条が適用される結果連帯責任を負わされ、一方、本来贈与税として納税しなければならない前記処分者若しくは受贈者であるところの他の相続人らは、相続税として申告することにより(原告以外の他の相続人は当初原告と同様の相続税の申告をしたが、被告の指導により前記現金、生前贈与の存在を前提とする修正申告書を被告に提出した。)、贈与税に比してより税率が低率の相続税として納税することができ、約三〇パーセントもの節税を得たもので、これが不合理、不公平極まりないことは明らかである。そして、このことは前記現金同様、原告以外の他の相続人らの支配、占有下にあつて、原告において到底処分、換金しえない家財道具等についても全く同断である。
3 同3、4は争う。
第三証拠関係
本件記録中の書証目録、証人等目録調書に各記載のとおりであるから、これをここに引用する。
理由
一 請求原因1ないし3の各事実(課税の経緯)は、いずれも当事者間に争いがない。
二 次に、被告の主張1のうち、亡弥十郎の相続財産が未分割であることは当事者間に争いがないから、原告の本件相続に係る課税価額は、民法の規定による相続分に従つて当該財産を取得したものとして算出されることとなる(相続税法五五条)。
そこで、以下、被告の主張2の亡弥十郎の相続財産の総額について判断する。
1 宅地について
まず、相続税法における相続財産の価額は、相続税法二三条ないし二六条に規定する財産を除き、財産の取得の時における時価による(相続税法二二条)ものとされているところ、成立について争いのない乙第二、三号証、証人岡人譲の証言により成立を認め得る乙第一号証の一、二及び同証人の証言並びに弁論の全趣旨によれば、相続財産の時価を評価するについては、国税庁長官が各国税局長あてに通達した「相続財産評価に関する基本通達」(昭和三九年四月二五日付け、直資五六・直審(資)一七)が存すること、また、事業または居住の用に供されていた宅地の評価については、右評価についての個別通達(昭和五〇年六月二〇日付け、直資五-一七)が存すること及び右基本通達においては、宅地の評価については一画地毎に路線価方式(基本通達一三)または倍率方式(基本通達一二)によつてこれを評価すべきものとされており、名古屋国税局長は右基本通達を受けて相続財産評価基準をもつて評価しようとする宅地が路線価方式と倍率方式のいずれの評価方式によるのかを定め、右評価基準の付属路線価設定地域図をもつて路線価を定めていることの各事実を認めることができ、右認定に反する証拠はない。そして、右各通達及び相続財産評価基準に従つて相続財産に属する宅地の時価を評価することには合理性があるものというべきであるから、特段の事由の存する場合は格別(そのような事由は本件において何ら存しない。)、そうでない場合は右各通達及び相続財産評価基準に従つた相続財産に属する宅地の評価は時価の評価として適正なものであるというべきである。
そこで、別表五の(一)及び(二)の各土地(同各土地が亡弥十郎の相続財産であることは、当事者間に争いがない。)についてこれをみるに、右各土地の地積、利用区分、控除割合の各項目のうち、番号<18>、<19>の各土地の控除割合を除く各項目がいずれも別表五の(一)及び(二)の各項目に記載のとおりであることはいずれも当事者間に争いがなく、右事実に前掲乙第一号証の一、二、第二号証、成立について争いのない乙第四、五号証、及び証人岡島譲の証言並びに弁論の全趣旨を併せれば、別表五の(一)及び(二)の各土地について右各通達及び評価基準に従つて亡弥十郎死亡時(すなわち、相続開始時)における時価を評価すれば別表五の(一)及び(二)の被告主張額欄記載のとおりとなること(但し、番号<18>、<19>及び<21>、<22>の各土地を除く)、番号<18>、<19>の各土地の一平方メートル当たりの価額は、別表五の(一)の該当欄記載のとおりとなることを認めることができる。
そうすると、別表五の(一)及び(二)の各土地(但し、番号<18>、<19>及び<21>、<22>の各土地を除く)の本件相続開始時における時価は別表五の(一)及び(二)の被告主張額欄記載のとおりのものというべきである。
次に、右別表五の(一)の番号<18>、<19>の各土地についてみるに、相続開始時における右各土地の一平方メートル当たりの価額は別表五の(一)の該当欄記載のとおりとみるべきものであることは前説示から明らかというべきであり、右一平方メートル当たりの価額からすれば、右各土地の時価が少なくとも別表五の(一)の番号<18>、<19>の各土地の被告主張額欄を超えるものであることは明らかである。
なお、原告はこの点について右各土地には使用借権が設定されているに過ぎないのにもかかわらず、被告が、賃借権が設定されていることを前提とし、借地権割合を五割と評価して、これを右各土地の更地価格から控除したことが違法である旨主張するが、右原告の主張は、結局、被告主張の右各土地の時価が、本来、控除すべきでない借地権割合を控除したもので、本来の時価より低額に過ぎるものであるというに帰着するのであつて、右各土地の時価が被告主張の額よりも低額であつて、被告が右各土地の価格を過大に認定、評価したとの主張ではないから、右原告の主張は、本件各処分の適否を検討する上で、判断する必要がないことは多言を要しないところである。
また、別表五の(二)の番号<21>、<22>の各土地については、成立について争いのない乙第六、七号証の各一、二によれば、右各土地は熱海市上多賀郡自然郷分譲地区に存することが認められるところ(右認定に反する証拠はない。)、前掲乙第一号証の一、第三号証及び弁論の全趣旨によれば名古屋国税局長は前記基本通達の定めにより前記路線価方式及び倍率方式による評価が著しく不適当である場合に該るものとして右熱海市上多賀郡自然郷分譲地区内の土地については前記評価基準において直接その評価額を定めていること(その一平方メートル当たりの評価額は別表五の(二)の番号<21>、<22>の各土地の一平方メートル当たりの価額等欄に記載のとおりである。)が認められ(右認定に反する証拠はない。)、弁論の全趣旨によれば、右評価額は、本件相続開始時における右各土地の一平方メートル当たりの時価評価額として適正なものということが認められるから、右各土地の本件相続開始時における右各土地の相続開始時における時価は別表五の(二)の番号<21>、<22>の被告主張額欄記載のとおりのものというべきである。
2 家屋等について
前掲乙第一号証の一、第二号証及び弁論の全趣旨によれば、前記基本通達は、相続財産に属する家屋については原則として一棟毎に固定資産税評価額に一定の倍率(一・〇倍)を乗じて計算した金額をもつて時価と評価すべきこととしていること、貸家については国税局長の定める借家権割合を控除することとしていること及び名古屋国税局長は右基本通達を受けて前記相続財産評価基準中においては名古屋市内に存する家屋については右借家権割合を四〇パーセントとして定めていることの各事実を認めることができる(右認定に反する証拠はない。)。そして、右基本通達及び相続財産評価基準に従つて相続財産に属する家屋の時価を評価することには合理性があるものというべきであるから、特段の事由の存する場合は格別(そのような事由は本件においては何ら存しない。)、そうでない場合は、左基本通達及び相続財産評価基準に従つた相続財産に属する家屋の評価は、時価の評価として適正なものというべきである。
そこで別表六の家屋(番号<8>の庭園を除く)についてこれをみるに(右各家屋が亡弥十郎の相続財産であることは当事者間に争いがない。)、別表六の各家屋の各固定資産税評価額、利用区分、控除割合の各項目はいずれも当事者間に争いがないから、同表の各家屋の本件相続開始時における時価を右基本通達及び相続財産評価基準に従い評価すれば、同表の被告主張額欄記載のとおりとなることを認めることができる。従つて、右各家屋の本件相続開始時における時価は別表六の被告主張額欄記載のとおりのものというべきである。
次に、庭園(別表六の番号<8>)について判断するに、一般に庭園とは土地及び庭園設備(庭木、庭石、あずまや、庭池等)により一体として構成されるものであり、少なくとも庭園設備については、立木若しくは工作物または動産として相続財産としての時価評価の対象となるものであるから、これらをその一体性に着目して、一括して庭園として評価することも合理性があるものというべきところ(前掲乙第一号証の一によれば、前記基本通達も九二(3)において庭園設備の価額について評価方法を定め、一二五において庭園内の立竹木については庭園設備と一括しての評価を基準としているところである。)、証人岡島譲の証言により成立を認め得る乙第三二ないし第三四号証及び同証人の証言並びに弁論の全趣旨によれば、別表六の番号<8>の所在地番等欄記載の所在地(亡弥十郎の相続財産中に含まれる土地)に庭園が存すること、右庭園設備を原告を除く亡弥十郎の共同相続人はすべて金七五万円と評価して申告していること(但し、修正申告書においては右をすべて立木として評価している。)の各事実を認めることができる。
従つて右からすれば右庭園設備は亡弥十郎の相続財産に含まれるものと推認され(右推認を覆すべき証拠は本件においては何ら存しない。)、その価額についても金七五万円をもつて本件相続開始時における時価と認めるのが相当である。
3 有価証券について
別表七の番号<6>(北海道電力)、<7>(中部日本放送)の各株式を除くその余の有価証券が亡弥十郎の相続財産であることは当事者間に争いがない。
右北海道電力、中部日本放送の各株式については、証人岡島譲の証言により成立を認め得る乙第一三、一四号証により、右各株式(その各株式数は別表七の番号<8>、<9>の株式数欄に記載のとおり)が亡弥十郎の相続財産に含まれるものであることは明らかである。
そこで別表七記載の各株式の一株当りの金額についてである、前掲乙第一号証の一によれば、前記基本通達は、銘柄の異なるごとに、<1>上場株式、<2>気配相場のある株式及び<3>取引相場のない株式に区分し、その区分に従い、一株ごとに評価することとし、<3>の取引相場のない株式の価額は、その株式の価額は、その株式の発行会社が大会社、中会社又は小会社であるかの別によつて更に区分して評価し、<1>の上場株式の価額は、その株式が上場されている証券取引所の公表する課税時期の最終価格又は課税時期の属する月以前三か月間の毎日の最終価格の各月ごとの平均額のうち最も低い価額によつて評価することとしているところ、右の各区分による評価及びその具体的評価方法には、いずれも合理性が存するから、右基本通達の定める方法によりされた株式の一株当たりの価額評価は、時価評価として適正なものであるというべきである。そして、成立について争いのない乙第八ないし第一〇号証、第一五号証、第一六号証の一、弁論の全趣旨により成立を認め得る乙第一六号証の二、三及び証人岡島譲の証言並びに弁論の全趣旨によれば、右基本通達の定めに従い別表七記載の各株式の本件相続開始時の一株当たりの株価を算出すると、同表の一株当たりの価額等欄記載のとおりとなることが認められ(右認定に反する証拠はない。)、右からすれば、別表七の各株式の本件相続開始時の合計価額は同表の被告主張額欄のとおりと評価すべきである。
次に、貸付信託受益証券についてであるが、別表七記載の貸付信託受益証券が亡弥十郎の相続財産に含まれるものであることは前記のとおりであるところ、前掲乙第一号証の一によれば、前記基本通達は、貸付信託の受益証券の価額は、課税時期において貸付信託設定日から一年以上を経過している貸付信託の受益証券については、その証券の受託者が課税時期においてその証券を買取るとした場合における次の算式により計算した金額によつて評価することとしている。
(算式) <省略>
そして、右基本通達に従つて相続財産に属する貸付信託の受益証券の時価を評価することには合理性が存するものというべきであるから、右基本通達に従つた相続財産に属する貸付信託の受益証券の評価は時価の評価として適正なものというべきところ、成立について争いのない乙第一七号証の一ないし三、第一八号証の一、二、第一九号証及び弁論の全趣旨によれば、別表七記載の各貸付信託の受益証券の元本、信託設定日、信託期間、本件相続開始直前に収益を受領した日、源泉徴収されるべき所得税額元本一万円当たりの買取割引料の各項目がいずれも別表一三の(一)の各該当欄記載のとおりであることが認められ(右認定に反する証拠はない。)、右から前記基本通達に従つて、右各貸付信託の受益証券の本件相続開始時における時価評価をなすと、別表七の各貸付信託の受益証券の被告主張額欄記載のとおり(その算出過程は別表一三の(一)のとおり)となる。
従つて、右各貸付信託の受益証券の本件相続開始時の時価は別表七の被告主張額欄のとおりと評価すべきである。
4 現金等について
(一) まず、亡弥十郎の相続財産中に、現金一五〇〇万円が存したかについて判断するに、成立について争いのない乙第二八号証、二九号証の各一、二、第三〇号証、前掲乙第三二ないし第三四号証、証人岡島譲の証言により成立を認め得る乙第二〇号証、証人岡島譲の証言により成立を認め得る乙第二〇号証、第二二号証の一ないし三、第二三号証の一ないし四、第三一号証及び同証人の証言並びに弁論の全趣旨によれば、
(1) 亡弥十郎が名古屋掖済会病院へ再入院した昭和五二年三月一六日から死亡した昭和五二年六月二三日までの間(一〇〇日)に同人名義の預貯金から払戻しされた現金は、合計金二二五二万九五六一円であること。
(2) 亡弥十郎が右の再入院期間中に伊藤建設工業株式会社及び中部倉庫運輸株式会社から現金で受領した給与並びに賞与の額は、金二〇二万四八七〇円であること。
(3) 亡弥十郎が右再入院期間中に現金で支出した医療費、家具等の購入費及び家屋改造費の額は、合計金一九〇万四二〇〇円であること。
(4) 原告を除く他の共同相続人らは、その修正申告において、現金一五〇〇万円が相続財産中に存した旨申告していること。
以上の各事実が認められ、右認定に反する証拠はないところ、右(1)、(2)の現金合計金二四五五万四四三一円から右(3)の支出金一九〇万四二〇〇円を差引いた差額金二二六五万〇二三一円もの多額の金員の大半が亡弥十郎の右再入院期間中に亡弥十郎の生活費として費消されるような事態は通常あり得ないものというべく、右(4)の事実を考え併せれば、少なくとも亡弥十郎の相続財産中に現金一五〇〇万円が存在したものと推認することができる(右推認を覆すに足る証拠はない。)。
なお、原告は、右現金一五〇〇万円は、原告以外の他の共同相続人らにおいてこれを費消したものである旨主張するが、右主張を認めるに足りる証拠は何ら存しないのみならず、仮に右原告主張のとおり原告以外の他の共同相続人らにおいてこれを費消したものとしても、右現金は結局、相続財産に加算されるのであるから、相続財産の総額に変動はなく(それ故、原告の具体的相続分にも変動はない。)、右事実の存否は、本件の判断に何ら影響がない。従つて、右原告の主張は失当である。
(二) 別表八の預金中、番号<10>(大和銀行名古屋支店)の預金を除くその余の預金が亡弥十郎の相続財産中に存することは、当事者間に争いがなく、前掲乙第二〇号証、第二二号証の一、第二三号証の一、二、証人岡島譲の証言により成立を認め得る乙第二一号証の二、五、六、九及び同証人の証言並びに弁論の全趣旨によれば、別表八の番号<10>(大和銀行名古屋支店)の預金が亡弥十郎の相続財産中に含まれること、右預金を含め別表八の各預金(但し、番号<2>ないし<5>、<7>、<8>の各定期預金を除く)の本件相続開始時における現在高が同表の被告主張額欄記載のとおりであること、同表の番号<2>ないし<5>(三菱銀行熱田支店の各定期預金)及び、同<7>、<8>(名古屋相互銀行名古屋支店の各定期預金)の各元本、預入年月日、年利率が別表一三の(二)、(三)(三菱銀行分については別表一三の(二)、名古屋相互銀行分については同表一三の(三))の各該当欄記載のとおりであることの各事実を認めることができる(右認定に反する証拠はない。)。
従つて右各定期預金を除くその余の各預金については、本件相続開始時において右別表八の被告主張額欄記載のとおりの価額を有するものと評価すべきことは当然である。
また、右各定期預金については、前掲乙第一号証の一によれば、前記基本通達は、預貯金の価額は、課税時期における預入高と同時期現在において解約するとした場合に既経過利子の額として支払を受けることができる金額から当該金額につき源泉徴収されるべき所得税の額に相当する金額を控除した金額との合計額によつて評価することとしているが、右方法による評価が合理的であることは明らかであり、前記認定事実を前提として右各定期預金を評価すると、別表八の右各定期預金の被告主張額欄記載のとおりとなる(その算出過程は別表一三の(二)、(三)のとおり)。
従つて、右各定期預金の本件相続開始時における時価は、右被告主張額欄記載のとおりのものとして評価すべきである。
5 家庭用財産及びその他について
(一) 家庭用財産について
前掲乙第三一号証によれば、亡弥十郎がその死亡直前である昭和五二年五月二〇日から同年六月三日までの間にベツト・ジユータン等の家庭用財産の購入代金合計金七七万円を支払つていることが認められること、及び右動産以外にも亡弥十郎において家庭用財産を保有していることは当然と考えられるところ、前掲乙第三二号証ないし第三四号証及び弁論の全趣旨によれば、原告以外の他の共同相続人において家庭用動産を金八〇万円と評価して申告していることが認められることからすると、本件相続開始時において、亡弥十郎の相続財産に含まれる家庭用財産の時価は金八〇万円を下廻ることはないものと推認される(右推認を覆すに足りる証拠はない。)
(二) 国税還付金について
その方式及び趣旨により公務員が職務上作成したものと認められるから、真正に成立したものと推定すべき乙第二四号証によれば、亡弥十郎に係る昭和五一年分の所得税還付金五〇万一九〇〇円が存することは明らかである。
(三) 定期預金未収入利息について
前記別表八の番号<2>ないし<5>の各定期預金について、亡弥十郎が右各定期預金の満期日(亡弥十郎の死亡の日までに既に経過している。)までの利息を受領していないことは前掲乙第二〇号証により明らかであり、その額は、前記別表一三の(二)の番号<10>「未収入金」の合計欄記載のとおり、金三五万七五〇〇円であると認められる。
(四) 電話加入権について
成立について争いのない乙第二五、二六号証によれば、亡弥十郎が死亡時に番号六六一-二一五一番(名古屋港電話局)の電話加入権を保有していたこと、その価額は四万円を下らないものであることの各事実を認めることができる。右認定に反する証拠はない。
(五) 配当期待権について
亡弥十郎が別表七の番号<4>ないし<7>の各株式を有していたことは前記認定のとおりであるところ、右各株式について決算年度と支払確定日までの間に相続が開始した場合には、相続財産中に相続開始後に受領すべき配当金が含まれることとなるのであつて、これを配当期待権として評価すべきことは勿論である。そして、前掲乙第一号証の一及び弁論の全趣旨によれば、前記基本通達は、配当期待権の価額は、相続開始後に受取ると見込まれる予想配当金額から、当該金額につき源泉徴収されるべき所得税の額に相当する金額を控除した金額によつて評価することとしていることが認められるところ、右方法が合理的であることはいうまでもないから、右方法に従い、右各株式に係る配当期待権を評価すると、前掲乙第一三、一四号証、成立について争いのない乙第一一号証、証人岡島譲の証言により成立を認め得る乙第一二号証及び同証人の証言並びに弁論の全趣旨によれば、別表一四の<6>「配当期待権の評価額」欄記載のとおりとなり、その合計金額は金一七八万二九六二円であることが認められる。
(六) 貸付金及び未収入利息金について
別表九の番号<3>「貸付金」欄の被告主張額金六五〇万円及び番号<5>の「貸付金に対する未収入利息」欄の被告主張額金六六万四四五八円については原告において、その存在を明らかに争わないから、これを自白したものと看做す。
(七) 立木について
原告は、別表九の番号<2>の「立木」が相続財産に含まれるものであることを否認するが、被告は、本訴において右「立木」に該当するものを前記庭園(別表六の番号<8>)として主張するものであることは、その主張上明らかであり、前記のとおり、既にその点は判断済みであるから、更に右立木が相続財産中に含まれるものか否かの判断をする必要がないことは明らかである。
6 債務等について
被告は亡弥十郎に係る債務と葬式費用として、別表一〇の被告主張額欄記載の金額を主張するところ、本件においては、亡弥十郎に係る債務と葬式費用が右金額を超えるものであつたとの主張・立証は何ら存しない。
従つて右金額を超える亡弥十郎に係る債務と葬式費用は存しないものとして亡弥十郎の相続財産の総額を算出するほかはない。
7 贈与加算について
前掲乙第二二号証の二、三、第三二ないし第三四号証及び証人岡島譲の証言並びに弁論の全趣旨によれば、
(一) 亡弥十郎に帰属する東海銀行名古屋港支店の無記名定期預金三〇〇万円が、昭和五一年一月一七日に同銀行の伊藤きく名義の定期預金とされていること。
(二) 亡弥十郎に帰属する東海銀行名古屋港支店の無記名定期預金三〇〇万円が、昭和五一年六月一五日に同銀行の伊藤きく名義の定期預金とされていること。
(三) 東海銀行名古屋港支店の亡弥十郎名義の普通預金から昭和五二年五月一七日に金五〇〇万円が同銀行の伊藤きく名義の普通預金へ振替えられていること及び、同日に同銀行の弥十郎の定期預金九口合計金一五〇〇万円が出納振替により同銀行の伊藤きく名義の定期預金九口合計金一五〇〇万円に振替えられていること。
以上の各事実を認めることができ、右認定に反する証拠はないところ、右各事実からすれば、伊藤きくが亡弥十郎から右各日時に右各金額(合計金二六〇〇万円)の贈与を受けたものと推認することができる(この推認を覆すに足りる証拠はない。)。
そして、右各贈与の額及び時期、亡弥十郎と伊藤きくとの身分関係等からすれば、右各贈与が「生計の資本たる贈与」として民法九〇三条にいう贈与に当たることは明らかであるというべきところ、相続税法五五条本文の「民法の規定による相続分」とは民法九〇〇条から九〇三条までに規定する相続分をいうものであるから、右各贈与も、原告の課税価格の計算上はこれを亡弥十郎の相続財産に含ませて計算するべきものである(従つて、原告及び他の共同相続人の各相続分も右を前提として算定されることとなる。)。一方、伊藤きくが亡弥十郎の相続人であることは当事者間に争いがなく、右各贈与は亡弥十郎が死亡した日(すなわち本件相続開始の日)前三年以内になされたものであることは明らかであるから、右各贈与された金員(合計金二六〇〇万円)は、相続税法一九条の規定により伊藤きくの相続税の課税価額に加算されることとなるのであるが、前記のとおり、亡弥十郎の相続財産は未分割であつて、原告の本件相続に係る相続税額を算出するうえにおいては亡弥十郎の相続財産を取得したすべての者に係る相続税の総額を確定しなければならない(相続税法一七条参照)のであるから、右各贈与された金員は、相続税の総額の計算上も亡弥十郎の相続財産に加算されるべきものであることは当然である。
原告はこの点について、原告に対して相続税法一九条を適用することは、(ア)原告は連帯責任を負わされる一方、(イ)受贈者は本来は贈与税としての納税をしなければならないのに、これを相続税として納税することが可能となる点で不公平である旨主張する。
しかしながら、右(ア)については、前説示のところから明らかなとおり、伊藤きくが亡弥十郎から贈与を受けた前記金員(特別受益分)を亡弥十郎の相続財産に加算するのは、右相続財産についての相続税の総額を算出するためにこれを行うものであつて、右加算をした結果として、伊藤きくが受領した右特別受益分についてまでも原告が納税義務を負担することになるわけではなく、原告は、あくまでも自らの相続分についてのみ相続税の納税義務を負うという点については、何ら変わりがないこと(未分割状態がその後において分割され課税価格が異なることとなつた場合には原告において申告書を提出し、若しくは相続税法三二条の更正の請求をし、又は税務署長において更正若しくは決定をすることを妨げない-相続税法五五条ただし書参照-ことからもこのことは明らかである。)右(イ)については、相続税法一九条により当然に受贈者は相続税としての申告をすることができ(既に贈与税の申告・納税をしていた場合は、その金額を控除することができる。)、このことは当該相続財産が未分割か否かにより変わるものではないことからして、右(ア)、(イ)を理由として、原告と本件相続の共同相続人である伊藤きくとの間に不公平が存するということはできず、原告の右主張は失当である。
なお、原告は、他に前記4で認定の現金一五〇〇万円、5で認定の家庭用財産についても右と同様の主張をするが、右原告の主張が失当であることは前説示から明らかである。
三 以上のとおりであるから、本件相続に係る相続財産についての被告の主張は、すべてこれを認めることができるところ、右相続財産の総額及び亡弥十郎の各相続人の法定相続分(弁論の全趣旨によれば、別表三の番号<4>ないし<9>のとおりである。)債務等の価格から、原告の課税価格を算出すると、別表二の被告主張額欄の番号<8>に記載のとおりとなり、これから、原告の相続税額を算出すると別表四の被告主張額欄の番号<5>に記載のとおりとなる。
四 してみると、本件更正処分は右認定額を下廻るものであるから、適法なものというべきであり、したがつて、本件賦課決定もまた適法である。
よつて、原告の請求はいずれも理由がないからこれを棄却することとし、訴訟費用の負担について行政事件訴訟法七条、民訴法八九条を適用して、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 加藤義則 裁判官 高橋利文 裁判官 綿引穣)
課税処分表
<省略>
別表一
相続財産の種類別価額表
<省略>
(注) 各相続人の課税価格ごとに、1,000円未満を切捨てた後に合計したもの。
別表二
相続税法55条により原告が取得したものとされる相続税の課税価格
<省略>
(注1) 民法昭和55年法51号改正前のもの。
(注2) 1,000円未満切捨て。
別表三
相続税の総額の計算
<省略>
(注1) 1,000円未満切捨
(注2) 税率等
<省略>
別表四
原告の納付すべき相続税額及び無申告加算税の計算
<省略>
(注1) 原告の算出税額<4>の100円未満切捨てた後の額。
(注2) (被告主張額の<5>)-(申告額の<5>)又は、(更正額の<5>)-(申告額の<5>)の各1,000円未満切捨てた後の額。
別表五の(一)
相続財産の明細(宅地)
<省略>
表五の(二)
相続財産の明細(宅地)
<省略>
(注1) 被相続人伊藤弥十郎が居住の用に供していた宅地の地積200平方メートルまでの部分の価額は、自用の価額の100分の80に相当する金額によって評価する(昭和50年6月20日付け国税庁長官通達直資5-17)。
自用の評価額 <省略>
(注2) 本宅地の1平方メートル当たりの価額は、名古屋国税局長が相続税財産評価基準においてその価額を定めている。
別表六
相続財産の明細(家屋等)
<省略>
別表七
相続財産の明細(有価証券)
<省略>
別表八
相続財産の明細(現金・預貯金)
<省略>
別表九
相続財産の明細(家庭用財産及びその他)
<省略>
別表一〇
相続財産の明細(債務等)
<省略>
別表一一
相続財産の明細(贈与加算)
<省略>
別表一二の(一)
1平方メートル当たりの価額の計算
<省略>
別表一二の(二)
1平方メートル当たりの価額の計算
<省略>
別表一二の(三)
1平方メートル当たりの価額の計算
<省略>
別表一二の(四)
1平方メートル当たりの価額の計算
<省略>
別表一二の(五)
1平方メートル当たりの価額の計算
<省略>
別表一二の(六)
1平方メートル当たりの価額計算
<省略>
別表一二の(七)
1平方メートル当たりの価額の計算
<省略>
別表一二の(八)
1平方メートル当たりの価額の計算
<省略>
別表一二の(九)
1平方メートル当たりの価額の計算
<省略>
別表一二の(一〇)
1平方メートル当たりの価額の計算
<省略>
別表一二の(一一)
1平方メートル当たりの価額の計算
<省略>
別表一二の(一二)
1平方メートル当たりの価額の計算
<省略>
別表一三の(一)
貸付信託受益証券の評価額の計算
<省略>
別表一三の(二)
三菱銀行熱田支店無記名定期預金の評価額の計算
<省略>
(注1)
預入年月日から1年経過する日までの年数及び年利率
(注2)
預入年月日から1年経過した日以後相続開始日までの日数及び年利率
(注3)
<省略>
別表一三の(三)
名古屋相互銀行港支店 伊藤弥十郎名義定期預金の評価額の計算
<省略>
別表一四
配当期待権の評価額の計算
<省略>
(株)は株式会社を示す。