大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

名古屋地方裁判所 昭和58年(わ)1733号 判決 1984年3月07日

国籍

韓国(慶尚北道義城郡比安面玉渕洞三五七番地)

住居

愛知県岩倉市泉町板屋一番地の七

遊技場経営

松本和久こと

李相来

一九二八年八月三日生

右の者に対する所得税法違反被告事件について、当裁判所は検察官中松村夫、同中屋利洋並びに弁護人都築眞各出席のうえ審理を遂げ、次のとおり判決する。

主文

被告人を懲役一〇月及び罰金二五〇〇万円に処する。

右罰金を完納することができないときは、金四万円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置する。

この裁判確定の日から三年間右懲役刑の執行を猶予する。

理由

(罪となるべき事実)

被告人は、昭和二六年三月立命館大学経済学部を卒業後、岳父を助けて津島市内で福井フエルト工業所を経営し、同三九年頃以降パチンコ店の経営を始めたもので、愛知県岩倉市泉町板屋一番地の七に居住し、静岡県浜名郡新居町新居三三六〇番地の七において「新居オメガ」の名称によりパチンコ店を経営するほか、愛知県岩倉市本町神明西八番地の五で「岩倉オメガ」、同県西春日井郡西春町大字九之坪字西町三番地の一で「西春オメガ」、同県常滑市錦町四丁目八八番地の二で「ニユー公楽」の名称によりいずれもパチンコ店を共同で経営するものであるが、自己の所得税を免れようと企て、売上の一部を除外し、この資金を用いて架空名義の預金を設定するなどの方法により所得の一部を秘匿したうえ

第一  昭和五五年分の実際の所得金額が二九一三万九八〇六円で、これに対する所得税額が一一三五万三七〇〇円であるのに、同五六年三月一二日、同県小牧市小牧一九五〇番地所在の小牧税務署において、同税務署長に対し、所得金額が三三六万六五〇九円の欠損であり、これに対する所得税額が無い旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、正規の所得税額一一三五万三七〇〇円全額を免れ

第二  昭和五六年分の実際の所得金額が一億二八二八万三三七一円で、これに対する所得税額が八一四四万六三〇〇円であるのに、同五七年三月一一日、前示小牧税務署において同税務署長に対し、所得金額が三八八〇万二二四一円であり、これに対する所得税額が一七七九万四七〇〇円である旨の虚偽過少の所得税確定申告書を提出し、正規の所得税額との差額六三六五万一六〇〇円を免れ

もっていずれも不正の行為により所得税を免れたものである(修正損益計算書及び脱税額計算書は別紙のとおり)。

(証拠の標目)

判示全部の事実について

一  被告人の

1  当公判廷における供述

2  大蔵事務官に対する質問てん末書一五通(検乙第一ないし第一五号証)

3  検察官に対する供述調書二通(検乙第一六及び第一七号証)

一  孫一分の検察官に対する供述調書(検甲第四九号証)

一  山田茂こと李在絢(三通)、大杉雄こと全雄(二通)、大杉次郎こと全熙烈(二通)、福井武こと孫商本(二通)、岡山国男こと威國男、福井康祐こと孫光夫(三通)、伊藤ひで子の大蔵事務官に対する各質問てん末書(検甲第一三ないし第一五、第一八ないし第二一、第二九ないし第三五号証)

一  小牧税務署長大蔵事務官鈴木清彦作成の証明書三通(検甲第五、第六及び第四八号証)

一  名古屋国税局収税官吏大蔵事務官大原基平作成の

1  脱税額計算書説明資料(検甲第五〇号証)

2  査察官調査書八通(検甲第三六ないし第四三号証)

一  名古屋国税局収税官吏大蔵事務官甲賀勝好作成の査察官調査書一〇通(検甲第七ないし第一一、第一六、第一七、第二六ないし第二八号証)

一  名古屋国税局収税官吏大蔵事務官出口裕章(三通)、同福島嘉金作成の各写真撮影報告書(検甲第四四ないし第四七号証)

一  日東ペンデイング株式会社浜松営業所長高林栄一作成の回答書(検甲第一二号証)

判示第一の事実について

一  小牧税務署長大蔵事務官鈴木清彦作成の証明書二通(検甲第一及び第三号証)

判示第二の事実について

一  木村英介の大蔵事務官に対する質問てん末書二通(検甲第二四及び第二五号証)

一  小牧税務署長大蔵事務官鈴木清彦作成の証明書二通(検甲第二及び第四号証)

一  名古屋国税局収税官吏大蔵事務官甲賀勝好作成の査察官調査書二通(検甲第二二及び第二三号証)

(法令の適用)

被告人の判示第一の所為は、行為時においては昭和五六年五月二七日法律第五四号二条による改正前の所得税法二三八条一項に、裁判時においては右改正後の所得税法二三八条一項に該当するが、右は犯罪後の法令により刑の変更があったときにあたるから刑法六条、一〇条により軽い行為時法の刑によることとし、判示第二の所為は所得税法二三八条一項に該当するところ、判示第一及び第二の各罪につき情状により懲役と罰金とを併科し、罰金につき同法二三八条二項を適用して各免れた所得税の額に相当する金額以下とするべく、以上は刑法四五条前段の併合罪であるから懲役刑については同法四七条本文、一〇条により重い判示第二の罪の刑に法定の加重をし、罰金刑については同法四八条二項により判示第一及び第二の各罪の罰金額を合算し、その刑期及び金額の範囲内で被告人を懲役一〇月及び罰金二五〇〇万円に処し、右罰金を完納することができないときは同法一八条四項、一項により金四万円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置し、情状により同法二五条一項を適用してこの裁判確定の日から三年間右懲役刑の執行を猶予する。

よって主文のとおり判決する。

(裁判官 早瀬正嗣)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例