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名古屋地方裁判所 昭和58年(わ)213号 判決 1983年7月18日

本籍

愛知県豊田市十塚町二丁目一番地

住居

同県知立市広見三丁目四四番地

司法書士

岡田鎌太郎

昭和七年六月二三日生

右の者に対する所得税法違反被告事件について、当裁判所は、検察官宇野博出席の上審理して、次のとおり判決する。

主文

被告人を懲役一年六月及び罰金三、〇〇〇万円に処する。

右罰金を完納することができないときは、金五万円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置する。

この裁判の確定した日から三年間右懲役刑の執行を猶予する。

理由

(罪となるべき事実)

被告人は、愛知県知立市広見三丁目四四番地に居住し、同県豊田市十塚町二丁目一番地において司法書士、土地家屋調査士及び行政書士の各業務を営んでいるものであるが、自己の所得税を免れようと企て、各取扱件数及び報酬等の一部のみを記載した取扱事件年計報告書、取扱事件年計表及び業務報告書等に基づいて営業収入金額を計算する方法等により所得の一部を秘匿した上、

第一  昭和五四年分の実際の課税総所得金額が六、六九八万六、〇〇〇円で、これに対する所得税額(源泉徴収税額を控除したもの)が三、四九四万六、五〇〇円であるのに、同五五年三月一五日、愛知県刈谷市神明町三丁目三四番地刈谷税務署において、同税務署長に対し、みなし法人課税方式を選択した上、同五四年分の所得金額が課税みなし法人所得金額六二九万二、〇〇〇円、課税個人総所得金額一、二八四万二、〇〇〇円で、これに対する所得税額(事業主報酬に係る源泉徴収税額二一八万一、八四〇円以外の源泉徴収税額を控除したもの)が三九四万五、九〇〇円である旨の虚偽過少の所得税確定申告書を提出し、そのまま法定納期限を徒過させ、もって、不正の行為により同年分の正規の所得税額と右申告税額との差額三、一〇〇万〇六〇〇万を免れ、

第二  同五五年分の実際の課税総所得金額が九、九一五万六、〇〇〇円で、これに対する所得税額(源泉徴収税額を控除したもの)が五、七九一万二、八〇〇円であるのに、法定納期限後である同五六年三月一六日、前記刈谷税務署において、同税務署長に対し、前同様みなし法人課税方式を選択した上、同五五年分の所得金額が課税みなし法人所得金額六四七万六、〇〇〇円、課税個人総所得金額一、六三一万一、〇〇〇円で、これに対する所得税額(事業主報酬に係る源泉徴収税額三六二万八、四四〇円以外の源泉徴収税額を控除したもの)が五二一万九、五〇〇円である旨の虚偽過少の所得税確定申告書を提出し、もって、不正の行為により同年分の正規の所得税額と右申告税額との差額五、二六九万三、三〇〇円を免れ、

第三  同五六年分の実際の課税総所得金額が七、五八〇万七、〇〇〇円で、これに対する所得税額(源泉徴収税額を控除したもの)が四、〇九一万七、二〇〇円であるのに、同五七年三月一五日、前記刈谷税務署において、同税務署長に対し、前同様みなし法人課税方式を選択した上、同五六年分の所得金額がみなし法人所得金額五三三万六、〇〇〇円、課税個人総所得金額一、六〇五万一、〇〇〇円で、これに対する所得税額(事業主報酬に係る源泉徴収税額三六九万一、四〇〇円以外の源泉徴収税額を控除したもの)が四七七万三、六〇〇円である旨の虚偽過少の所得税確定申告書を提出し、そのまま法定納期限を徒過させ、もって、不正の行為により同年分の正規の所得税額と右申告税額との差額三、六一四万三、六〇〇円を免れ

たものである。

(証拠の標目)

判示事実全部について

一  被告人の当公判廷における供述

一  第一回公判調書中の被告人の供述部分

一  被告人の検察官に対する供述調書

一  被告人の大蔵事務官に対する質問てん末書一一通

一  福沢悌輔の大蔵事務官に対する質問てん末書三通

一  大蔵事務官作成の査察官調査書(一一通)及び証明書(欄外に「記録証第四一七号」と表示されたもの)

判示第一の事実について

一  大蔵事務官作成の証明書(欄外に「記録証第三八二号」と表示されたもの)

判示第二の事実について

一  大蔵事務官作成の証明書(欄外に「記録証第三八三号」と表示されたもの)

判示第三の事実について

一  大蔵事務官作成の証明書(欄外に「記録証第三八四号」と表示されたもの)

(法令の適用)

被告人の判示第一及び第二の各所為は、いずれも行為時においては昭和五六年法律第五四号脱税に係る罰則の整備等を図るための国税関係法律の一部を改正する法律による改正前の所得税法二三八条一項に、裁判時においては右改正後の同法二三八条一項に、判示第三の所為は、右改正後の同法二三八条一項にそれぞれ該当するところ、判示第一及び第二の各所為については、いずれも犯罪後の法律により刑の変更があったときに当たるから刑法六条、一〇条により軽い行為時法の刑によることとし、判示各所為は、いずれもその免れた所得税の額が五〇〇万円を超えるので、情状により、判示第一及び第二の各所為についてはいずれも右改正前の所得税法二三八条二項を、判示第三の所為については右改正後の二三八条二項をそれぞれ適用し、各所定刑中いずれも懲役刑及び罰金刑を選択し、以上は刑法四五条前段の併合罪であるから、懲役刑については同法四七条本文、一〇条により最も重い判示第三の罪の刑に法定の加重をし、罰金刑については同法四八条二項により各罪所定の罰金額を合算し、その刑期及び金額の範囲内で被告人を懲役一年六月及び罰金三〇〇〇万円に処し、右罰金を完納することができないときは、同法一八条により金五万円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置し、右懲役刑につき、情状により同法二五条一項を適用してこの裁判の確定した日から三年間その刑の執行を猶予することとする。

よって、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 水谷富茂人 裁判官 服部悟 裁判官 宮崎万壽夫)

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