名古屋地方裁判所 昭和59年(ワ)2636号 判決
一 原告の請求原因1ないし3の各事実は当事者間に争いがなく、原本の存在及び成立に争いのない甲第九、一〇号証及び弁論の全趣旨によれば、被告ジヤルダン武蔵野において原告の有する著作権及び意匠権を侵害するスヌーピーの縫いぐるみ人形を他から仕入れ、これを販売したこと、右の各仕入れ先、数量及び販売方法は原告の請求原因4に記載のとおりであることの各事実を認めることができる(原告は、右販売をなしたのは被告佐橋である旨主張するが、被告佐橋が事実行為として右販売をなしたことを認めるに足りる的確な証拠はない。)。
そして、前掲甲第九号証及び弁論の全趣旨によれば、被告ジヤルダン武蔵野及び被告佐橋において、右の販売行為が前記スヌーピーの著作権及び意匠権を侵害するものであることを、その販売当時知悉していたことを認めることができるから、被告ジヤルダン武蔵野において右販売行為について不法行為責任を負うことは当然である。
なお、原告は、被告ジヤルダン武蔵野の責任について民法四四条一項の適用を主張するが、右のとおり被告佐橋において事実行為として販売行為をなしたことが認められない以上、右同条を適用するに由ないものであるが、一方、原告は被告佐橋に対して商法二六六条の三に基づく請求をなしているのであるから、当然被告ジヤルダン武蔵野の不法行為を前提とするものと解され、かつ、被告ジヤルダン武蔵野が前記販売行為をしたことは被告らの自陳するところであるから、前記の如き、認定、判断をなすことは何ら差支えないものである。
二 次に被告佐橋の責任についてみるに、被告佐橋が被告ジヤルダン武蔵野の代表取締役であることは前記のとおりであり、被告佐橋が前記販売行為が原告の有する著作権及び意匠権を侵害するものであることを知悉していたことも前記のとおりであるから、被告佐橋は、被告ジヤルダン武蔵野の職務を行うにつき悪意を有していたものというべく、商法二六六条の三により原告に対して責任を負うべきことも、これまた当然である。
三 そこで、原告の被つた損害について判断するに、前記スヌーピーの縫いぐるみ人形の販売定価額が合計金四一一〇万円であることは当事者間に争いがない。被告らは、実際は約一〇パーセント引き程度で販売していた旨主張し、証人奥村芳雄も定価額よりも低く売つた場合もある旨供述するが、同証人は一方で定価額よりも高く売つた場合もある旨も供述するのであり、定価額よりも値引きして販売するのが通常であつたと認めることもできないうえ、前掲甲第九号証(被告佐橋の司法警察員に対する供述調書)においては、被告佐橋は司法警察員に対して実際の総販売価額としてほぼ前記争いのない定価額と同様の額を供述しているのであるから、右被告らの主張は採用し得ないし、更に、実施料相当額の算定基礎として実際の販売価額でなく定価額をもつてこれを採用したとしても必ずしも合理性を欠くものでもないから、前記金四一一〇万円を販売価額として原告の損害額を判断することとする。
そうすると、前記著作権及び意匠権の実施料相当額は、前記スヌーピーのキヤラクターが著名であること、縫いぐるみ人形殊にいわゆるキヤラクター人形はその人形がいかなるキヤラクターを模したかにより大きくその売れ行きが左右されるものであること(このことはいずれも公知の事実である。)を考慮すれば、少なくとも右定価額の一〇パーセントを下廻るものではないものと認めるのが相当であるから、原告の被つた損害は金四一一万円を下廻るものではないというべきである。
四 次に原告の付帯請求について考えるのに、原告の本件付帯請求は不法行為に基づく損害賠償請求に付帯する遅延損害金の請求であることが明らかなところ、前掲甲第一〇号証によれば、被告ジヤルダン武蔵野は、前記スヌーピー人形を昭和五七年一〇月二日以後に株式会社東輝に対し単価一個一七八〇円にて合計三〇個(その内訳は別表番号2以下のとおり)販売していることが明らかであり、原告の請求中に右の販売分も含まれていることはその主張上明らかであるから、付帯請求の起算日はいずれも別表記載のとおりとなる。
してみると、原告の本件付帯請求については別表記載の限度で理由があり、その余は失当である。
五 以上の次第で、原告の請求は、主文掲記の限度で理由があるからこれを認容し、その余は失当であるからこれを棄却することとする。
〔編註〕 本件における事実関係は左のとおりである。
第一 当事者の求める裁判
一 原告
1 被告らは、原告に対し、連帯して金四一一万円及びこれに対する昭和五七年一〇月一日から支払済みに至るまで、年五分の割合による金員を支払え。
2 訴訟費用は、被告らの負担とする。
3 仮執行宣言
二 被告ら
1 原告の請求をいずれも棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
第二 当事者の主張
一 原告の請求原因
1 原告は、米国人漫画家チヤールズ・エム・シユルツ氏著作にかかる「ピーナツツ・シリーズ」と呼ばれる漫画に登場するスヌーピーを始めとした各キヤラクターについて著作権を有している。
2 また、原告は、右スヌーピーに関し、左記の意匠権を有している。
記
出願日 昭和四三年二月九日
出願番号 意願昭四三―三三八〇
登録年月日 昭和四五年二月一六日
登録番号 第三一〇七八一号
意匠に係る物品 動物おもちや
意匠 別添意匠公報のとおり
3 被告株式会社ジヤルダン武蔵野(以下、「被告ジヤルダン武蔵野」という。)は、肩書地に本店を置き、人形類の製造・販売等を業とするものであり、被告佐橋五十雄(以下、「被告佐橋」という。)は、右会社の代表取締役として同会社の業務全般を統括掌理している。
4 被告佐橋は、被告ジヤルダン武蔵野の業務に関し、右スヌーピーのキヤラクターを具現化した縫いぐるみ人形で、前記登録意匠に酷似した意匠を有するものを、模造品であることを知りながら、昭和五七年五月二二日から同年一〇月一四日までの間に、訴外アイドル社こと浅井勝、同株式会社友愛玩具、及び同株式会社木田から合計二万〇八七八個購入し、それら侵害品を訴外株式会社東輝へ、あるいは、通信販売、職域訪問販売の方法により販売し、原告の有する著作権及び意匠権を侵害した。
5 従つて、被告佐橋は、原告に対し、右模造品を販売したことにより原告の被つた損害を賠償すべき義務あるところ、前記のとおり、被告佐橋は右行為を被告ジヤルダン武蔵野の業務に関して行い、かつ、被告佐橋は、被告ジヤルダン武蔵野の代表取締役であるので、被告ジヤルダン武蔵野は被告佐橋が負うべき損害賠償債務につき連帯して責任を負うものである。
6 被告ジヤルダン武蔵野(被告佐橋)は、右行為により少なくとも合計四一一〇万円の侵害品たる縫いぐるみ人形を販売した。この場合において、原告が右意匠権の実施ないし著作権の行使につき、通常受けるべき金銭の額(実施料相当額)は、右販売額に一〇パーセントを乗じた金四一一万円が相当である。
7 よつて、原告は被告佐橋に対しては民法七〇九条、商法二六六条の三に基づき、被告ジヤルダン武蔵野に対しては民法四四条一項に基づき、原告に対し前項の金員及びこれに対する昭和五七年一〇月一日から支払済みまで民法所定年五分の割合による遅延損害金を連帯して支払うべきことを求める。
二 請求原因に対する被告らの認否
1 請求原因1ないし3は認める。
2 同4は否認する。
原告主張のスヌーピーの類似品を販売したのは被告ジヤルダン武蔵野であつて、被告佐橋ではない。
また、被告ジヤルダン武蔵野は右スヌーピーの類似品を販売するにあたり、原告主張の登録意匠が存在することを知らなかつた。
なお、被告ジヤルダン武蔵野の販売した右スヌーピーの類似品の仕入時期、数量、仕入先、販売方法は原告主張のとおりである。
3 同6のうち、被告ジヤルダン武蔵野の販売した右スヌーピーの類似品の販売定価額が少なくとも合計四一一〇万円であることは認めるが、実施料相当額が右販売額に一〇パーセントを乗じた額であることは争う。実際の販売価額は定価額の一〇パーセント引き位である。
4 同7は争う。