名古屋地方裁判所 昭和59年(ワ)434号 判決
一 申立人は、本件を静岡地方裁判所沼津支部へ移送する旨の裁判を求め、その理由として次のとおり申立てた。
すなわち、本件訴訟は被申立人を原告、申立人を被告とする被申立人所有の意匠権に基づく差止請求並びに損害賠償請求訴訟であるところ、申立人の普通裁判籍は申立人所在地である静岡県富士市に存し、かつ、申立人は名古屋市に支店、営業所を設置しておらず、名古屋市内において販売等の営業活動も一切行つていないから、本件訴訟は名古屋地方裁判所の土地管轄に属すべき根拠は存しない。したがつて、本件訴訟は申立人の普通裁判籍の管轄裁判所たる静岡地方裁判所富士支部が土地管轄を有するが、同支部は乙号支部であり、本件訴訟はその性質からして合議部を有する静岡地方裁判所沼津支部に移送されるのが妥当である。
よつて、申立人は民事訴訟法三〇条により管轄違に基づく移送の申立てをする。
二 よつて検討するに、本件記録によれば、申立人の普通裁判籍が静岡県富士市に存することが認められ、また、本件において申立人が名古屋市に支店、営業所を設置していることを認むべき証拠は何ら存しない。
しかしながら、本件記録によれば、本件訴訟が被申立人を原告、申立人を被告とする訴訟であつて、申立人が別紙物品目録記載のタオル(以下「本件タオル」という。)を昭和五五年六月頃から製造、販売していること、本件タオルの製造、販売は被申立人所有の意匠権を侵害するものであることを請求原因とする意匠法三七条一、二項に基づく差止請求並びに民法七〇九条に基づく損害賠償請求訴訟であることは明らかであるところ、証人水川史雄の証言及び同証言によつて成立を認め得る甲第一、二号証によれば、申立人が名古屋市内に所在する白菊紙業株式会社に、昭和五六年ごろから本件タオルを直接販売している事実を認めることができる(右認定に反する証拠はない。)
のであつて、右申立人の白菊紙業株式会社に対する本件タオルの販売行為が本件損害賠償請求訴訟における請求原因たる被申立人主張の不法行為を構成するものであることは明らかである。
そうすると、本件訴訟のうち、民法七〇九条に基づく損害賠償請求訴訟について、当裁判所は民事訴訟法一五条一項による管轄を有するというべきである。
次に、本件訴訟のうち、意匠法三七条一、二項に基づく差止請求訴訟について検討するに、右訴訟は前記損害賠償請求訴訟と一の訴えをもつて提起されているものであることは本件記録上明らかであつて、右損害賠償請求訴訟について当裁判所が管轄を有する以上、右差止請求訴訟についても、民事訴訟法二一条により、当裁判所は管轄を有するというべきである。
三 以上の次第で、本件は当裁判所の管轄に属し、申立人の民事訴訟法三〇条に基づく本件移送申立ては理由がないから主文のとおり決定する。