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名古屋地方裁判所 昭和60年(ワ)110号 判決 1993年11月26日

名古屋市中川区本前田町二五八番地

両事件原告

池本滋

(以下「原告池本」という。)

名古屋市中川区本前田町二五八番地

第一一〇号事件原告

五月自動機工業株式会社

(以下「原告会社」という。)

右代表者代表取締役

池本滋

右両名訴訟代理人弁護士

内藤義三

東京都杉並区堀ノ内二丁目一二番一〇号

第一一〇号事件被告

株式会社ムサシノキカイ

(以下「被告ムサシノキカイ」という。)

右代表者代表取締役

加藤孝

東京都杉並区堀ノ内二丁目一七番一八号

第一一〇号事件被告

武蔵野産業株式会社

(以下「被告武蔵野産業」という。)

右代表者代表取締役

加藤孝

名古屋市港区土古町三丁目一七番地

第一一〇号事件被告

株式会社吉良紙工

(以下「被告吉良紙工」という。)

右代表者代表取締役

吉良清

仙台市宮城野区扇町二丁目三番二号

第一二九号イ事件被告

旭包装工業株式会社

(以下「被告旭包装工業」という。)

右代表者代表取締役

後藤昇

右被告ら訴訟代理人弁護士

大崎康博

右三木祥史

主文

一  原告らの請求をいずれも棄却する。

二  訴訟費用は、原告らの負担とする。

事実及び理由

第一  申立て

一  被告ムサシノキカイは、

1  原告池本に対し一〇〇〇万円及び原告会社に対し一五〇万円並びに右各金員に対する昭和五八年一月一日から各支払済に至るまで年五分の割合による金員を支払え。

2  原告池本に対し三〇〇万円及び原告会社に対し一〇〇万円並びに右各金員に対する平成元年三月三日から各支払済に至るまで年五分の割合による金員を支払え。

二  被告武蔵野産業は、

1  原告池本に対し九〇〇万円及び原告会社に対し一〇〇万円並びに右各金員に対する昭和五八年一月一日から各支払済に至るまで年五分の割合による金員を支払え。

2  原告池本に対し一五〇万円及び原告会社に対し五〇万円並びに右各金員に対する平成元年三月三日から各支払済に至るまで年五分の割合による金員を支払え。

三  被告吉良紙工は、

1  原告池本に対し三〇〇万円及び原告会社に対し五〇万円並びに右各金員に対する昭和五八年一月一日から各支払済に至るまで年五分の割合による金員を支払え。

2  原告池本に対し六〇万円及び原告会社に対し二〇万円並びに右各金員に対する平成元年三月三日から各支払済に至るまで年五分の割合による金員を支払え。

四  被告旭包装工業は、原告池本に対し、一〇〇万円及びこれに対する昭和五八年一月一日から支払済に至るまで年五分の割合による金員を支払え。

五  訴訟費用は、被告らの負担とする。

六  仮執行宣言

第二  事案の概要

本件は、被告らによる包装装置の製造販売行為について、被告らに対し、原告池本が実用新案権に基づき補償金の支払及び損害賠償を、原告会社が実用新案権の独占的通常実施権に基づき損害賠償を、それぞれ求めた事案である。

一  争いのない事実等(以下、書証番号は第一一〇号事件の書証を指す。)

1  原告らの権利

(一) 原告池本は、次の実用新案権(以下「本件実用新案権」といい、その考案を「本件考案」という。)を有していた。

考案の名称 包装装置

出願日 昭和五一年一二月二〇日

出願公開日 昭和五三年七月二〇日

出願公告日 昭和五七年一月二五日

登録日 昭和六〇年五月一四日

登録番号 第一五九四六二四号

(二) 原告池本は、本件実用新案権につき、実施料を一台当たり二〇〇〇円(当初は五〇〇〇円)とする定めのもとに原告会社に対し独占的通常実施権を設定する旨の契約を原告会社との間で締結した(弁論の全趣旨)。

2  実用新案登録請求の範囲

本件考案の実用新案登録出願(以下「本件出願」という。)の願書に添付した明細書(以下「本件明細書」という。)の「実用新案登録請求の範囲」の記載(ただし、昭和五五年一二月一八日付け手続補正書(甲七の三)により訂正されたもの。)は、別添実用新案公報(以下「本件公報」という。)の「実用新案登録請求の範囲」欄記載のとおりである。

3  本件考案の構成要件

本件考案の構成要件を分説すると、以下のとおりである。

A 長尺な帯状フィルムを引出し可能に収納し、前記帯状フィルムを外方に引き出すための導出口を有する本体と

B 枢支部を有し前記導出口の前方に位置するようにして、前記枢支部を前記本体に回動可能に枢支した回動体と

C この回動体の後部に立設され、上端に設けた密着部に前記帯状フィルムを密着させることにより該帯状フィルムのそれ以上の引出しを阻止すると共に、帯状フィルムの引張力を受けて、前記回動体を回動させる後立上部と

D この後立上部の密着部よりも下位であって、前記回動体の前方に位置して設けられ、前記帯状フィルムを切断する切断装置と

E この切断装置の後方に位置して、前記回動体の前部に立設され、上端部が常時は前記切断装置よりも上位に位置し、前記回動体が回動すると、前記切断装置よりも下位に位置し、前記帯状フィルムの切断により前記回動体が復帰回動すると、前記帯状フィルムの切断端に遭遇して、これを自身の上端部に保持する前立上部とを

F 具備して成る包装装置

4  本件考案の作用効果

本件考案の作用効果は、本件明細書の考案の詳細な説明欄の記載(ただし、昭和五五年一二月一八日付け手続補正書(甲七の三)及び昭和五七年一〇月一二日付け手続補正書(甲七の六)により訂正されたもの。)によれば、以下のとおりである(甲一、甲七の三、六、弁論の全趣旨)。

(一) 後立上部13の平坦部13aに対する密着力により帯状フィルム4を緊張させた状態で物品を包装することができる。したがって、包装フィルムがたるんで皺を生じこれにより見栄えが悪くなるといった不都合を除去することができる。

(二) 電熱刃21を後立上部15の平坦部15aよりも下方に位置して設けたので、帯状フィルム4を緊張させるべく引っ張る方向を引っ張りやすいほぼ水平方向とすることができ、かつ、このようにしても帯状フィルム4が不用意に溶断されてしまうといったおそれがない。

(三) 帯状フィルム4を切断する場合、該帯状フィルム4を引っ張って緊張させた状態で行うことができるので、帯状フィルム4の使用量を軽減することができる。

(四) 帯状フィルム4は、切断後、両立上部13及び15の平坦部13a、15a間に橋架状態に保持され、かつ、両立上部13及び15特に後立上部13の平坦部13aに対する密着力により帯状フィルム4の本体1内への引き込みを有効に防止することができるので、次に帯状フィルム4を引き出す場合に、両立上部13及び15の平坦部13a、15a間に手指を差し入れることにより帯状フィルム4を容易に摘むことができ、作業がしやすくなる。

(五) 本考案は、以上の実施例から明らかなように、帯状フィルムを緊張させ得るので皺の少ない包装状態を得ることができると共にフィルムの使用量を節減できる包装装置を提供できる。

5  被告らの行為

(一) 被告ムサシノキカイは、本件実用新案権の出願公開日以降、別紙ハ号物件目録記載の包装装置(以下「ハ号物件」という。)を製造販売した。

(二) 被告武蔵野産業、同吉良紙工及び同旭包装工業は、いずれも右公開日以降、ハ号物件を販売した。

6  ハ号物件の構成要件該当性

ハ号物件の構成のうち、本体1は本件考案の構成要件Aを、回動部材11は構成要件Bを、カッター刃21は構成要件Dを、部材15は構成要件Eをそれぞれ充足し、かつ、ハ号物件は構成要件Fを充足する。

7  公知物件

株式会社大伸製作所(以下「大伸製作所」という。)は、本件出願前から、「フレッシュパッカーDF103」という包装装置(以下「フレッシュパッカー」という。)を製造販売しており、その構造は、別紙物件目録(一)第1図記載のとおりである(ただし、回動体11の構造並びにフェルト14の厚み及び貼付される位置については、後記二2及び3のとおり争いがある。)(検証〔第一、二回〕)。

二  争点

1  ハ号物件は本件考案の技術的範囲に属するか(争点1)

(一) 原告ら

ハ号物件の回動部11の部材13は、次のとおり、本件考案の構成要件Cを充足するので、ハ号物件は本件考案の技術的範囲に属する。

(1) 構成要件Cにおける「密着部」とは、フィルムの引出しの際に、フィルムに抵抗力を与え、かつ、回動体を回動させ得ることが必要かつ十分な条件であるところ、ハ号物件の部材13の屈曲部Zは、平滑な金属面からなり、塩化ビニールフィルムと密着性がよく、フィルムを引っ張るとき抵抗を与えることができるから、右の「密着部」に該当する。

(2) なお、ハ号物件のローラー5に設けられているブレーキは、侵害の成否とは関係がない。すなわち、ブレーキによって負荷をかけるか否かは使用する者の任意である上、この負荷を大きくすれば、ほぼ水平方向への引出しに要する力と共に垂直方向への引出しに要する力も増加し、逆であればいずれも減少するというだけのものである。したがって、本件考案が目的とする垂直方向への引出しに要する力は増加させずに、ほぼ水平方向への引出しに要する力を増大させるという作用効果はまったくない。

(3) したがって、部材13は本件考案の構成要件Cを充足する。

(二) 被告ら

(1) 本件考案にいう密着部とは、後立上部13の上端部に折曲形成されている平坦部13a全体を指すものであるが、原告らの主張によれば、ハ号物件においては、密着部は部材13の上部の屈曲部Zを指すものとされているので、この点についての原告らの主張は、それ自体失当である。

(2) ハ号物件の屈曲部Zには原告らのいう密着力はなく、フィルムの引出しに抵抗力を与えるのは、ハ号物件目録第4図に示されているフィルムローラー5に取り付けられているブレーキ板及びブレーキ調整ねじ並びに同目録第1図に示されている回動体11に取り付けられているバネ18の作用によるものである。

(3) したがって、部材13は本件考案の構成要件Cを充足しない。

2  被告ムサシノキカイの先使用権の有無(争点2)

(一) 被告ら

(1) フレッシュパッカーの回動体の構造並びにその後立上部に貼付されたフェルトの位置及び切断装置との位置関係は、別紙物件目録(一)第1図及び第2図のとおりであり、仮に、ハ号物件の屈曲部Zが本件考案の構成要件Cの「密着部」に該当するとすれば、フレッシュパッカーも、本件考案の構成要件をすべて充足していたものである。

(2) 被告武蔵野産業は、大伸製作所からフレッシュパッカーを購入し、これを販売していたところ、昭和五一年になって大伸製作所が業績不振に陥ったことから、フレッシュパッカーと同一構造の製品を他の会社に製造させる必要が生じた。そこで、被告武蔵野産業は、関連会社である被告ムサシノキカイにその製造を依頼し、被告武蔵野産業がこれを購入して販売することとなった。

(3) 被告ムサシノキカイは、フレッシュパッカーと同一構造の包装装置を製造するため、昭和五一年一一月八日、大伸製作所の従業員であった者二名(野溝厚及び長森寛行)を雇傭し、同月二〇日ころ、社内に包装機械部を設け、右両名を配置し、ハ号物件製造のための工場を既存工場の一画に設けることにより、ハ号物件の製造準備に入った。

なお、被告ムサシノキカイは、その後、右両名を中心として、図面の作成、部材の発注等をし、昭和五二年五月初めには、ハ号物件を完成させ、電気用品取締法所定の手続をとった。

(4) 以上のように、被告ムサシノキカイは、本件出願以前に本件考案の内容を知らないで、大伸製作所から本件考案と同じ内容の技術を知得し、フレッシュパッカーと同一構造のハ号物件を製造すべく、人的配置、設計図面の作成、工場、設備の用意をしていたのであるから、本件考案の実施である事業の準備をしていたものである。

なお、前記の経緯に照らせば、被告ムサシノキカイが製造準備に入った段階で、同被告が製造しようとしていた製品の構造は客観的に明らかであったというべきである。

(5) したがって、被告ムサシノキカイは、ハ号物件を製造販売する限度において本件実用新案権について先使用による通常実施権を有する。

(二) 原告ら

(1) 本件出願前に販売されていたフレッシュパッカーの回動体は、別紙図面第1図ないし第5図のとおりの構造を有していたものであって、フレッシュパッカーは本件考案の構成要件をすべて備えていたものではなかったから、それを理由とする先使用権の主張は失当である。

すなわち、回動体11の後立上部13の上端ぎりぎりまで厚さ三ミリメートルのフェルト(パッド)14が貼られていたため、別紙図面第4図又は第5図のとおり、帯状フィルム4は後立上部13そのものには密着できず、したがって、密着部13aも存在しない。また、前立上部15の上端部には平端部が形成されておらず、前立上部は常時は前記切断装置21よりも上位に位置するものではなかった。

被告らの主張する構造を有するフレッシュパッカーは、本件出願後、大伸製作所が倒産した際に、大伸製作所の元にあった材料を引き取った債権者らが、原告会社の製造に係る本件考案の実施品の形状を真似て回動体の部分を加工して製造販売したものであって、本件出願前の公知物件ではない。

(2) また、被告らの主張する程度の準備活動があったとしても、図面や金型すら完成していない段階で、他に当時被告ムサシノキカイが製造を計画していた製品の構造を客観的に明らかにする事実の存在しない本件では、せいぜい「包装機一般」を製造、販売する準備であって、本件考案の実施である事業のための準備活動とはいえない。

被告らの主張事実からは、先使用権の対象となる構造が確定したのは昭和五二年五月以降であり、本件出願後であるといわざるを得ない。

3  自由技術の抗弁ないし権利濫用の主張(争点3)

(一) 被告ら

(1) 大伸製作所が昭和四六年ころから製造販売していたフレッシュパッカーが本件考案の構成要件をすべて充足するものであったことは前記2(一)(1)のとおりである。

また、原告会社は、本件出願前から、「マルパックスM-1976・6」という包装装置(以下「マルパックス旧型」という。)を製造販売しており、その構造は、別紙物件目録(二)記載のとおりであり、本件考案の構成要件をすべて充足するものであった。

したがって、本件考案は、本件出願時である昭和五一年一二月二〇日当時には既に公知公用の技術であった。

(2) 実用新案権は、出願時の技術水準を超えた考案に対して付与されるべきものであるから、出願時において公知公用の技術は、本来万人共通の財産であって、そのような技術に対し誤って与えられた実用新案権による差止等の権利の行使を認めるのは、実用新案法の基本的原理に反する。このような場合、仮に対象物件が考案の技術的範囲に属するとしても、右対象物件に対しては、実用新案権の効力は及ばないと解すべきである。

したがって、本件において、仮にハ号物件が本件考案の技術的範囲に属するとしても、これに対して本件実用新案権の効力は及ばない。

(3) 被告ムサシノキカイは、本件実用新案登録に対し、特許庁に無効審判の申立てをしており、右のとおり、本件考案は出願時において公知公用の技術に対し誤って付与されたものである以上、特許庁において実用新案登録無効の審判がされることは明らかである。このような場合、形式的に原告らに実用新案権等があることを理由に本訴請求を認めることは、被告らに対し回復し難い損害を与えるものである。

したがって、原告らの本訴請求は、権利の濫用に当たり許されない。

(二) 原告ら

(1) フレッシュパッカー及びマルパックス旧型が本件考案の構成要件をすべて備えていたとの主張は争う。

フレッシュパッカーは、前記2(二)(1)のとおり、本件考案の構成要件C及びEを充足しないものであったし、マルパックス旧型においても、フィルムに対してよく滑る材質のフェルトが部材13の屈曲部をカバーするように上端まで覆っていたので、フィルムをほぼ水平方向に引っ張っても部材13自体には接触せず、したがって、密着することが不可能な構造であり、構成要件Cを充足しないものであった。

(2) 実用新案権の有効、無効は特許庁の処分によって決まり、裁判所はその効力を判断すべきではないとの原則に照らせば、被告らの主張するいわゆる自由技術の抗弁が採用される余地はない。

(3) また、前記原則に照らせば、当該考案が公知であるから権利者の請求が権利の濫用に当たるとの理論は、右原則に矛盾するものであり、採用されるべきではない。

4  損害及び被告らの責任(争点4)

(一) 原告ら

(1) ハ号物件の販売時期及び台数

<1> 被告ムサシノキカイは、出願公開日である昭和五三年七月二〇日から出願公告日である昭和五七年一月二五日までの間にハ号物件を約二万八000台、その後昭和五七年末までの間に約六000台、更にその後五000台を下らない台数を製造、販売した。

<2> 被告武蔵野産業は、出願公開日から出願公告日までの間に約二万台、その後昭和五七年末までの間に約四000台、更にその後三000台を下らない台数を販売した。

<3> 被告吉良紙工は、出願公開日から出願公告日までの間に約六000台、その後昭和五七年末までの間に約一五00台、更にその後一000台を下らない台数を販売した。

<4> 被告旭包装工業は、出願公開日から出願公告日までの間に少なくとも一000台以上、その後同被告に対する訴状送達の日である昭和六0年二月一二日までの間に少なくとも一000台以上を販売した。

(2) 警告

原告池本は、前記出願公開に先立ち、又は遅くとも出願公開直後に、被告らに本件明細書の写しを送付して、ハ号物件が本件考案の技術的範囲に属する旨を警告し、右書面はそのころ被告らに到達した。

したがって、原告池本は、被告らに対し、出願公告前の製造、販売に係るハ号物件について、補償金請求権を有している。

(3) 実施料相当額

本件実用新案権の実施に対し通常受けるべき金銭の額は、一台当たり二000円(被告旭包装工業との関係では三八00円)である。

(4) 原告会社の損害

原告会社は、本件実用新案権の実施品である包装装置を一台当たり一万円ないし二万円で販売しており、一台につき五000円(実施料を差し引くと三000円)の販売利益を得ている。

(5) 結論

<1> 原告池本は、補償金請求権及び実用新案権の侵害による損害賠償請求権に基づき、前記(1)の販売台数に前記(3)の金額を乗じた金員の一部として、以下の金員の支払を求める。

イ 被告ムサシノキカイに対し一000万円、被告武蔵野産業に対し九00万円及び被告吉良紙工に対し三00万円並びに右各金員に対する不法行為の後である昭和五八年一月一日から各支払済に至るまで民法所定年五分の割合による遅延損害金

ロ 被告ムサシノキカイに対し三00万円、被告武蔵野産業に対し一五0万円及び被告吉良紙工に対し六0万円並びに右各金員に対する不法行為の後である平成元年三月三日から各支払済に至るまで民法所定年五分の割合による遅延損害金

ハ 被告旭包装工業に対し一00万円及びこれに対する不法行為の後である昭和五八年一月一日から支払済に至るまで民法所定年五分の割合による遅延損害金

<2> 原告会社は、実用新案権の侵害による損害賠償請求権に基づき、前記(1)の販売台数(ただし、出願公告日以降のもの)に前記(4)の金額を乗じた金員の一部として、以下の金員の支払を求める。

イ 被告ムサシノキカイに対し一五0万円、被告武蔵野産業に対し一00万円及び被告吉良紙工に対し五0万円並びに右各金員に対する不法行為の後である昭和五八年一月一日から各支払済に至るまで民法所定年五分の割合による遅延損害金

ロ 被告ムサシノキカイに対し一00万円、被告武蔵野産業に対し五0万円及び被告吉良紙工に対し二0万円並びに右各金員に対する不法行為の後である平成元年三月三日から各支払済に至るまで民法所定年五分の割合による遅延損害金

(二) 被告ら

(1) 被告らのハ号物件(商品名Mパッカー)の製造販売台数は、次のとおりである。

<1> 被告ムサシノキカイ(製造販売)

昭和五三年七月二一日から昭和五七年一月二五日まで 八三二七台

同月二六日から同年一二月三一日まで 二一七三台

<2> 被告武蔵野産業(販売)

昭和五三年七月二一日から昭和五七年一月二五日まで 八〇六二台

同月二六日から同年一二月三一日まで 二一七一台

<3> 被告吉良紙工(販売)

昭和五三年七月二一日から昭和五七年一月二五日まで 一九一台

同月二六日から同年一二月三一日まで 0台

<4> 被告旭包装工業(販売)

昭和五三年七月二0日から昭和五七年一月二五日まで 六二台

同月二六日から昭和六0年二月一二日まで 九台

(2) 原告池本による警告の事実は否認する。

(3) 実施料相当額及び原告会社の損害についての主張は争う。

第三  争点に対する判断

一  ハ号物件は本件考案の技術的範囲に属するか(争点1)

1  本件考案の構成要件Cにいう「密着部」の意義

(一) 前記第二の一3によれば、構成要件Cにいう後立上部の「密着部」は、後立上部の上端に設けられるもので、帯状フィルムを密着させることによりそれ以上の引出しを阻止すると共に、帯状フィルムの引っ張り力を受けて、回動体を回動させる機能を有するものでなければならないが、その形状及び材質は、実用新案登録請求の範囲には具体的に示されていないし、帯状フィルムをどのようにしてどの程度密着させることを意味するものであるかは、明らかではない。

そこで、以下、「密着部」の意義を明らかにするために、本件明細書の内容、出願の経緯及び出願当時の技術水準について検討する。

(二) 本件明細書の内容について

(1) まず、本件明細書に添付された図面及びその簡単な説明は、本件公報記載のとおりであり、また、本件明細書に記載された考案の詳細な説明によれば、回動板11の後縁部に折曲形成した後立上部13の上端部に、密着部として斜め上向きに傾斜せる平坦部13aが折曲形成され(なお、本件公報の第3図によれば、平坦部13aの表面部分は後立上部の垂直部分13に対して約八0度の角度をなしている。)、後立上部13の後面にはモール状の布14が固着されている。15は回動板11の前部に切起しにより形成した前立上部で、その上端部にはほぼ水平な平坦部15aを折曲形成し、18は回動板14を常時矢印A方向に回動付勢するねじりコイルばねで、回動板11はこのねじりコイルばね18のばね力により常には後立上部13を布14を介してローラー9に圧接させているとされている。

(2) この実施例の作用としては、以下のとおり記載されている。すなわち、帯状フィルム4の巻終端をほぼ真上に引っ張るようにして導出口7から所定長さ引き出す。この場合、本件公報の第2図に二点鎖線B及びCで示す範囲内(同図によれば水平面に対して約三0度から約九五度の範囲)で上方に引っ張れば、帯状フィルム4は後立上部13には接触せず、滑性ある布14上をスリップするから容易に引き出すことができる。そして、帯状フィルム4を同図に二点鎖線D及びEで示す範囲内(同図によればほぼ水平から水平面に対して約一0度の範囲)に引き下げて前方に強く引っ張ると、帯状フィルム4は後立上部13の平坦部13aに密着する。この密着力により帯状フィルム筒体3からのそれ以上の引出しが阻止された状態で緊張状態になると共に、回動板11は軸12を中心にねじりコイルばね18のばね力に抗して矢印Aと反対の方向に回動し、この回動により前立上部15及びカバー部16は電熱刃21よりも下方に下がって該電熱刃21を露出させる。すると帯状フィルム4は電熱刃21に接触してG部において溶断される。帯状フィルム4が溶断されると、それまで緊張状態にあった帯状フィルム4は収縮しようとするが、回動板11がねじりコイルばね18のばね力により矢印A方向に瞬時に復帰回動するため、前立上部15は帯状フィルム4の切断部分に遭遇して該切断部分を平坦部15aに密着させる。したがって、帯状フィルム4は両立上部13及び15間に橋架状態となる。

(3) なお、モール状の布14の位置については、本件明細書に添付された図面の第3図では、後立上部13の垂直部分をほぼ覆い、平坦部13aとの境目付近(屈曲部)が露出するような位置が示されているが、考案の詳細な説明欄では具体的な説明はされていないし、また、フィルムをほぼ水平方向に引っ張った場合にその引出しを阻止する力としては、後立上部13の密着部13aの密着力のみが挙げられており、フィルム筒体を載せるローラー5にブレーキ板を設けるような手段については、何ら触れられていない。

(三) 出願の経過について

証拠(甲七の一、三、五)によれば、以下の事実が認められる。

(1) 本件出願当時の明細書においては、後立上部の上端に「平坦部」を設けることとされていたが、昭和五五年一二月一八日付け手続補正書によって、「平坦部」が「密着部」と訂正された。

(2) 本件出願に関しては、昭和五六年四月二0日付けの拒絶の理由通知に対し、原告池本は昭和五六年七月二三日付けで意見書を提出しているが、これによれば、本件考案の作用効果として「回動体の後部に後立上部を立設し、該後立上部の上端に、帯状フィルムを密着させてフィルムのそれ以上の引き出しを阻止する密着部を設けたので、帯状フィルムを所定長さ引き出してこれを密着部に密着させると、その密着力により帯状フィルムを強く引っ張って緊張させることができ、かつこのように引っ張っても帯状フィルムはそれ以上引き出されることはない。このため、帯状フィルムを強く引っ張って緊張させた状態で包装物品を包むことができ、したがって包装フィルムがたるんで皺を生じ、見栄えが悪くなるといった不都合を解消することができる。」「以上のように(引例の)案内プレート5の端部が本願の密着部と同一の作用効果、即ちフィルム13を強く引っ張ってもその密着力により捲出ロール2からの引き出しを阻止するという作用効果を有するとは考え難く、引例公報の……文章のうち「緊張状態」はフィルム13のヒーターワイヤー6による溶断を可能ならしめる程度の緊張状態と考えるのが至当で、案内プレート5の端部は、その程度の緊張状態を呈するが、しかし捲出ロール2からのフィルム13の引き出しを阻止はしない程度の密着力を有すると解すべきである。したがって、密着部に密着させれば、フィルムを強く引っ張ってもその引き出しは行われなくなる本願とは異なり、強い緊張状態のもとで物品を包んでゆくことは困難で」本件出願の作用効果を得ることはできないとされていた。

(四) さらに、本件出願当時の技術水準について検討する。

(1) まず、証拠(甲八、二三ないし二七、乙一七ないし一九の各一ないし五、乙二七ないし三0、証人長森寛行、同木谷進、原告池本滋本人、検証〔第一ないし三回〕)によれば、以下の事実を認めることができる。

<1> 大伸製作所は、昭和四四年から塩化ビニールフィルムで野菜等を包装するための包装装置を「フレッシュパッカー」という名称を付して製造販売してきたが、昭和四七年には、「フレッシュパッカーDF103」という型番の製品の製造販売を始めた。

<2> 昭和四九年ころまでに製造された製品では、回動体は別紙図面の第2図のような構造を有し、前立上部の上端に平坦部は形成されていなかった(この種の回動体は、別紙図面第3図のとおり穴が開いていた。)が、昭和四九年後半に改良が加えられ、別紙物件目録(一)第1図ないし第3図記載の構造となり、前立上部の上端に平坦部を有するものが製造されるようになった(別紙図面第3図のような穴はない。)。ただし、前立上部の上端の平坦部を欠く改良前の製品についても需要があったため、大伸製作所では改良後のフレッシュパッカーと並行して製造販売していた。

<3> フレッシュパッカーの回動体11(右改良後のもの)は、厚さ0・八ミリメートルのステンレス製であるが、これは、フィルムとの密着性が良い材質として選ばれたものである。また、後立上部13の平坦な密着部13aは、別紙物件目録(一)第3図のとおり、長さ八・三ミリメートルであって、後立上部13に対して九六・五度の角度で斜め上向きに形成されているが、これは、フィルム切断の際にフィルムを密着させてフィルムの戻りをなくし、かつ、フィルムの引出しを止めて切りやすくするために設けられたものである。

<4> 他方、フィルムの引出しをスムーズにするため、回動体11の後立上部13の垂直部分に、幅一0ミリメートル、厚さ一ミリメートルのフェルト14を貼付したが、その位置は後立上部の垂直部分一杯として、引出しの際にフィルムがステンレス部分に触れないようにしてあり、後立上部の屈曲部を露出させるかどうかという点については特に意識して製造されたものではなかった。

<5> フレッシュパッカーには、フィルム筒体を載せるローラー5にブレーキ板が設けられており、その調整つまみを締めると、フィルムの引出しに抵抗を与える機能を果たしていた。

(2) なお、原告らは、フレッシュパッカーの回動体は、別紙図面第2図のとおりの構造であり、前立上部の上端に平坦部を有するものは本件出願前には製造販売されていなかったと主張する。しかしながら、検乙第一号証として提出された物件は、その製造番号から昭和五0年に製造されたものであることが明らかである(証人長森寛行)ところ、回動体の部分が後に取り替えられた形跡は窺われず、また、大伸製作所が自らフレッシュパッカーの回動体に改良を加えたことも証拠(甲二三、乙二九、三0、証人木谷進)に照らし明らかである。これに対し、原告らの右主張に沿うものとしては、原告池本自身、大伸製作所が倒産した後である昭和五二年春以降になって初めて右(1)<3>認定のような構造の回動体を有するフレッシュパッカーを見たこと(甲二六、二七、乙三一、原告池本滋本人)及び大伸製作所発行のカタログ(甲一四ないし一六、一九ないし二一)に登載されている写真の装置の回動体にはいずれも穴があいていることを挙げているに過ぎず、これらをもって右(1)の認定を左右するものではないというべきである。

また、原告らは、フレッシュパッカーでは、回動体11の後立上部13の上端ぎりぎりまで厚さ三ミリメートルのフェルト(パッド)14が貼られていたため、別紙図面第4図又は第5図のとおり、帯状フィルム4は後立上部13そのものには密着できなかったと主張する。しかし、まず、フェルトの厚みが一ミリメートルであったことは、証拠(甲八、乙二七、証人木谷進)上明らかである(検証〔第二回〕によれば、原告ら提出の検甲第1号証のフェルトは二・五ないし三・五ミリメートルの厚みを有しているが、このフェルトが製造当時のものでないことは外見上明らかである。)。また、大伸製作所代表者の木谷進の供述調書(甲八)中には、「屈曲部ができるだけフェルトに触らないように、屈曲部の最上部までフェルトでカバーできるように一杯一杯に貼ってある」との部分があるが、同時に、屈曲部についてはフィルムを触らせまいとしたが、平坦部については触らせて密着させようとしたというのであり、フレッシュパッカーの回動体の構造自体は別紙物件目録(一)第3図のとおりであって、屈曲部と呼ぶべき部分はごく限られた範囲であること、フェルトの幅は一0ミリメートルであって、後立上部の垂直部分の幅とほぼ同一であることからみて、フェルトの上端は、後立上部13の垂直部分の上端付近にとどまり、屈曲部すべてを覆うものではなく、フィルムをほぼ水平方向に引っ張った場合にはフィルムが後立上部の平坦部13aに密着するようになっていたとみるべきである。

(3) したがって、フレッシュパッカーには、ほぼ水平方向にフィルムを引っ張った場合にフィルムと密着する平坦部と、常時は切断装置よりも上位にあり、回動体が回動した際には切断装置よりも下位に下がって切断装置を露出させる前立上部を有する回動体が備わっていたものであって、本件考案の構成要件を、構成要件Cの「密着部」を除いて、すべて充たしていたということができる。しかし、プレッシュパッカーには、フィルムの筒体を載置するローラーにブレーキ板及び調整つまみが設けられており、これによって、フィルムを引き出しにくくすることができたものであって、これらの機能を合わせることにより、後立上部の平坦部に、フィルムの引出しを阻止し、回動体を回動させる密着力を生じさせていたものとみるのが相当である。

そして、フレッシュパッカーが本件出願前から製造販売されていたことにより、右のような構造を有する包装装置は、本件出願前において公知であったということができる。

(五) 右(二)ないし(四)に判示したところを総合して検討するに、本件明細書においては回動体の後立上部の上端に斜め上向きに形成した平坦部を設け、これにフィルムを密着させることによってそれ以上の引出しを阻止し、かつ、その状態で回動体を回動させる実施例が示されていること、また、原告池本は、拒絶理由の通知に対して提出された意見書において、密着部に密着させるとフィルムを強く引っ張ってもその引出しが行われなくなるとの説明をしていたこと、本件出願時において、後立上部の平坦部及びフィルム筒体を載せたローラーに設けられたブレーキ板の作用によってフィルムの引出しを阻止して緊張包装を実現する技術が公知であったことを考慮すると、本件考案の構成要件Cにいう「密着部」とは、フィルムと接することによってフィルムの引出しに抵抗力を与えるだけではなく、フィルムを引っ張っても引き出すことができない程度の強い密着力を有し、かつ、ブレーキ板によってフィルム筒体を載せたローラーの回転に抵抗力を与えるといった手段を用いることなく、密着部にフィルムを密着させること自体によって、フィルムのそれ以上の引出しを阻止し、回動体を回動させる機能を有するものを意味するものと解すべきであり、そのような機能を有する密着部としては、本件公報の図面及び発明の詳細な説明に記載されているように、回動体の後立上部の屈曲部を露出させ、かっ、後立上部の上端に斜め上向きに平坦部を形成したもの、又はこれと同程度の強い密着力を有する構造を備えたものを意味するものと解するのが相当である。

原告らは、右のブレーキ板には、本件考案が目的とする垂直方向への引出しに要する力は増加させずに、ほぼ水平方向への引出しに要する力を増大させるという作用効果はまったくないから、ブレーキ板の有無は侵害の成否には関係がないと主張するけれども、右のようなブレーキ板を設けることにより、フィルムの引出しを阻止し、緊張包装を実現する機能を持たせることができるのであるから、本件考案の構成要件Cにいう「密着部」の解釈に当たってブレーキ板の有無を考慮に入れることは必要であり、緊張包装を実現するという本件考案の作用効果と関係がないとはいえない(なお、フレッシュパッカーのようなブレーキ板を備える包装装置であっても、「密着部」自体の密着力により本件考案の構成要件Cにいうような機能を有することが明らかであれば、ブレーキ板が設けられている一事をもって、「密着部」を備えていないとすることはできないと解される。)。

2  ハ号物件の構成要件充足性

(一) 右1の判示を前提として、ハ号物件の回動体の後立上部には本件考案の構成要件Cにいう密着部があるといえるかどうかについて検討する。

(二) ハ号物件のフェルト14の位置はハ号物件目録第2図及び第3図のとおりであって、フィルムをほぼ水平方向に引っ張った場合でも屈曲部Zの全体に接触するような構造にはなっておらず、フィルムをほぼ水平方向に引っ張った場合のフィルムと後立上部の上端部付近との関係は、ハ号物件目録第3図のとおりであり、フィルムは部材13の屈曲部Zの上端付近で接するに過ぎない。

また、ハ号物件のローラーには、フレッシュパッカーと同様のブレーキ板が備えられている。

(三) さらに、証拠(甲三、四)によれば、原告会社において、ハ号物件に塩化ビニールフィルムを装着して、同フィルムを引っ張り、その張力をばね秤を用いて測定したところ、フィルムを水平面に対し六0度の方向でフィルムが屈曲部に触れないようにして引っ張った場合の張力は一一一一グラムであったのに対し、一0度の方向で屈曲部に触れるようにして引っ張った場合は一四九五グラム、屈曲部に油を塗ってステンレスの密着力が働かないようにして同様に測定すると、六0度の方向では一一二五グラム、一0度の方向では一二六一グラムであったことが認められる。

これによれば、屈曲部自体の密着力により二三四グラム(一四九五グラムと一二六一グラムの差)の張力の差が生じているといえるが、この値は、フィルムが屈曲部に触れないようにして引っ張った場合の張力(一一一一グラム)の約二一パーセントに過ぎない。

(四) 以上の事実によれば、ハ号物件の回動体の後立上部の屈曲部は、フィルムの引出しに対してある程度の抵抗力を有することは明らかであるが、フィルムをほぼ水平方向に引っ張った場合にフィルムと接するのは屈曲部の上端付近であって、本件明細書の図面と比較してフィルムと接する面積は小さく、また、原告会社の実験結果によっても、フィルムの引出しに要する力が屈曲部の密着力によって増加する割合は約二一パーセントに過ぎないから、フィルムを引っ張っても引き出すことができない程度の強い密着力を有するものではなく、しかも、ハ号物件には、フレッシュパッカーと同様のブレーキ板が設けられていて、これによってフィルムの引出しを阻止する機能を有しているのであるから、ハ号物件の屈曲部は、本件考案の構成要件Cにいう「密着部」に該当するものとは認められないというべきであり、ハ号物件は本件考案の技術的範囲に属さないというべきである。

二  したがって、その余分点につき判断するまでもなく、原告らの請求はいずれも理由がないというべきである。

第四  総括

以上のとおりであるから、原告らの請求をいずれも棄却することとし、訴訟費用の負担につき、民事訴訟法八九条、九三条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 岡久幸治 裁判官 後藤博 裁判官 入江猛)

ハ号物件目録

ハ号物件は、「Mパッカー701U」等の型番で呼ばれているものであり、およそ、第1図に示された全体の形状を有し、第2図に示された要部の形状を有しており、フィルムを前方向に引っ張るときの様子は、第3図に示したとおりである(なお、文中の前後は使用者に近い方を前とする。)

本体1には、後部にフィルムローラー5、5が取り付けられており、巻フィルム3が載置できるようになっている。

本体1の中央部にはローラー9が設置され、このローラー9と後記部材13との間は、巻フィルム3から引き出された帯状フィルム4が通過できるようになっている。

本体1の中央部前方には回動部材11が設けられ、この回動部材11はばね18によって張られながらも、軸12を中心として回動するよう軸12に取り付けられている。

回動部材11は、部材13、部材15、部材16等を有している(順番は後方から)。

部材13のローラー9に対する面にはフェルト14が取り付けられているが、このフェルト14の上端は、部材13の角の部分を覆うことなく、それより少し下位に止どまっている。

カッター刃21は、加熱装置(図示せず)を有し、回動部材11が帯状フィルム4の引っ張りにより回動すると、部材15より上に位置するよう、本体1に固定されている。

ハ号物件には、第4図のとおり、フィルムローラー5の部分にブレーキ板が設置されており、ブレーキ調整つまみを調節することによって、フィルムローラーの回転に影響を与え、フィルムの引出しに対し、抵抗力を与える作用をもたらす。

第1図

<省略>

第2図

<省略>

第3図

<省略>

第4図

<省略>

物件目録(一)

(図面の説明)

1は包装器の本体、

3はフィルムをロール状に巻いた筒体、

4は筒体3から巻き戻された帯状フィルム、

5は筒体3を載せている一対のローラー、

7は筒体3から巻き戻された帯状フィルム4を外方に引き出すための導出口、11は回動体、

11aは回動体11の下部に固設された枢支片、

12は枢支片11aを支持する軸、

13は回動体11の後部に形成されている後立上部、

13aは後立上部13の上端に斜め上向きに傾斜して形成された平坦部、

15は回動体11の前部に形成されている前立上部、

15aは前立上部15の上端に形成された平坦部

18はばねであって、常時は回動体11を矢印Rの反対方向に回動付勢している。

21は電熱線よりなる、帯状フィルムの切断装置、

22は電熱盤であって、被包装物が最終的にこの盤の上で包装される。

本体1は長尺の帯状フィルム4を引き出し可能に収納し、前記帯状フィルムを外方に引き出すための導出口7を有する。

回動体11は枢支片11aを有し、前記導出口7の前方に位置して本体1に回動可能に枢支されている。

ローラー5の右端にはブレーキ板及びブレーキ調整つまみが設置されており、ブレーキ調整つまみを締めるとブレーキ板がローラー5を圧して、ローラー5が動きにくくなる。

第1図

<省略>

第2図

<省略>

大伸製作所製

フレッシュパッカ-DF-103型概略図

第3図

<省略>

物件目録(二)

原告会社製「マルパックスM-1976・6」の構造は、別紙図面のとおりである。

(図面の説明)

1は、包装機の本体で、その前部には配電函2が設けられている。

3は、長尺な帯状フィルム4を円筒状に巻いた筒体で、本体1内の下部後方に枢設した一対のローラー5、5の上に回転可能に載置してある。

7は、筒体3に巻かれている帯状フィルム4を外方に引き出すための導出口である。

11は、回動体としての回動板で、導出口7の前方に位置し、11aは回動体11の下部に固設された枢支部であり、12は枢支部11aを支持する軸である。

13は、回動体11の後縁部に折曲形成された後立上部で、その上端部にはフィルム4を密着させる密着部としての平坦部13aを折曲形成している。

14は、後立上部13の後面に固着された布(フェルト)である。

15は、回動体11の前縁部に折曲形成された前立上部で、その上端部にはフィルム4を密着させる密着部としての平坦部15aを折曲形成している。

18は、ばねで、回動体11を常時矢印Rと反対方向に回動付勢している。

21は、電熱線よりなる帯状フィルムの切断装置である。

22は、電熱盤であって、被包装物が最終的にこの盤の上で包装仕上げされる。

本体1は、長尺な帯状フィルム4を引出し可能に収納し、この帯状フィルム4を外方に引き出すための導出口7を有する。

回動体11は枢支部11aを有し、導出口7の前方に位置するように、本体1に回動可能に枢支されている。

後立上部13は、回動体11の後部に立設され、その上端に形成された平坦状に密着部13aに帯状フィルム4を密着させることにより、該帯状フィルム4のそれ以上の引出しを阻止すると共に、帯状フィルム4の引っ張り力を受けて回動体11を回動させる構造を有する。

切断装置21は後立上部13の密着部13aよりも下位であって、回動体11の前方に位置して、帯状フィルム4を切断する構造を有する。

前立上部15は、切断装置21の後方に位置して回動体11の前部に立設され、その上端に形成された平坦状の密着部15aが、常時は切断装置21よりも上位に位置し、回動体11が回動すると切断装置21より下位に位置し、帯状フィルム4の切断により回動体11がばね18の作用により復帰回動すると、帯状フィルム4の切断端に遭遇して、これを自身の上端の密着部15aに保持する構造を有する。

<省略>

<19>日本国特許庁(JP) <11>実用新案出願公告

<12>実用新案公報(Y2) 昭57-3923

<51>Int.Cl.3B 65 B 67/10 61/10 識別記号 庁内整理審号 7153-3E 7123-3E <24><44>公告 昭和57年(1982)1月25日

<54>包装装置

<21>実願 昭51-170483

<22>出頭 昭51(1976)12月20日

公開 昭53-88459

<43>昭53(1978)7月20日

<72>考案者 池本滋

名古屋市中川区本前田町36

<71>出願人 池本滋

名古屋市中川区本前田町36

<74>代理人 弁理士 佐藤強 外1名

<56>引用文献

実公 昭43-11116(JP.Y1)

<57>実用新案登録請求の範囲

長尺な帯状フイルムを引き出し可能に収納し前記帯状フイルムを外方に引き出すための導出口を有する本体と、枢支部を有し前記導出口の前方に位置するようにして前記枢支部を前記本体に回動可能に枢支した回動体と、この回動体の後部に立設され上端に設けた密着部に前記帯状フイルムを密着させることにより帯状フイルムのそれ以上の引き出しを阻止すると共に帯状フイルムの引張力を受けて前記回動体を回動させる後立上部と、この後立上部の密着部よりも下位てあつて前記回動体の前方に位置して設けられ前記帯状フイルムを切断する切断装置と、この切断装置の後方に位置して前記回動体の前部に立設され上端部が常時は前記切断装置よりも上位に位置し前記回動体が回動すると前記切断装置よりも下位に位置し前記帯状フイルムの切断により前記回動体が復帰回動するこ前記帯状フイルムの切断端に遭遇してこれを自身の上端部に保持する前立上部とを具備して成る包装装置。

考案の詳細な説明

本考案は長尺な帯状フイルムにより物品を包装しつつ該帯状フイルムを切断する包装装置に関するもので、その目的は作業性が良く、しかもフイルムを緊張状態にして物品を包装することができる包装装置を提供するにある。

以下本考案の一実施例を図面に基づいて説明する。1は本体で、その前部には配電函2を配設している.3は長尺な帯状フイルム4を円筒状に巻回して成るフイルム筒体で、本体1内の下部後方に枢設した一対のローラ5、5上に回転可能に載置してある.フイルム筒体3はローラ5、5に密着し、帯状フイルム4の引き出しにより自転してローラ5、5を回転させる.6は本体1の上部に開閉回動可能に枢設した蓋板で、これは常時は本体1の開放上面を閉鎖しており、その前縁部と配電函2との間に帯状フイルム4を外方に導出するための導出口7を形成している。3、8は配電函2の後方上部の左右両端に一体に延設した支持片で、これら両支持片8、8間には二個のローラ9、10を上縁に回転自在に枢設している.11は回動体としての回動板で、その下部後方寄りの部位には枢支部たる枢支片11aを下向きに折曲形成している.この回動板11は枢支片11aを配電函2に12を介して回動可能に枢支し、導出口7の前方に位置している.13は回動板11の後縁部に折曲形成した後立上部で、その上端部には密着部とずて斜め上向きに傾斜せる平担部13aを折曲形成している.14は後立上部13の後面に固着したモール状の布である。15は回動板11の前部に切起しにより形成した前立上部で、その上端部には略水平な平担部15aを折曲形成している.16は回動板11の前方に一体に延設した略逆L字状のカバーで、その上端部と前立上部15の平担部15aの先端との間には隙間17を形成している.18は回動板14を常時矢印A方向に回動付勢するねじりコイルばねで、回動板11はこのねじりコイルばね18のばね力により常には後立上部13を布14を介してローラ9に圧接させている.19は回動板11の反矢印A方向の回動限界位置に定めるストツバーである。20、20は配電函2の前部の左右両側に立設した支柱で、これら両支柱20、20間に切断装置としての電熱刃21を架設している。この電熱刃21は前力上部15とカバー部16とで形成する空間内、即ち回動板11の前方であつて後立上部13の平担部13a及び前立上部15の平担部16aよりも若干下位に位置しおり、回動板11が反矢印A方向に回動することにより隙間17から外方に露出するようになつている。22は本体1前部の偏平部1aに設けた電熱盤である尚、23は配電函2内に配設された電熱盤22を通断電するスイツチ装置である。

次に上記構成の作用を説明する。まず帯状フイルム4のを終端をローム10に架けすと共に、ローラ9と後立上部13との間に挿通するようにして導出口7から外方に導出する。またスイツチ装置23を投入して電熱刃21及び電熱盤22を加熱しておく.而して、帯状フイルム4の巻終端を真上に引張るようにして導出口7から所定長さ引き出す。この場合、第2図に二点鎖B及びCで示す範囲内で上方に引張れば、帯状フイルム4に後立上部13には接触せず、滑性ある布14上をスリツプするから容易に引き出すことができる。そして、帯状フイルム4を第2図に二点鎖D及びEで示す範囲内に引き下げ前方に強く引張ると、帯状フイルム4は後立上部13の平担部13aに密着する.この密着力により帯状フイルム筒体3からのそれ以上の引き出しが阻止された状態で緊張状態になると共に、回動板11は12を中心にねじりコイルばね18のばね力に抗して反矢印A方向に回動し、この回動により前立上部15及びカバー部16は電熱刃21よりも下方に下がつて該電熱刃21を露出させる。この状態で、包装すべき物品Fを一回転させて緊張状態にある帝状フイルム4を物品Fに巻回し(第3図参照)、帯状フイルム4の巻回始端と巻回終端とを物品Fの底部で重ね合わせ、この後物品Fを第3図に示すように若干斜めに傾けながら若干下方に下げる。すると帯状フイルム4は電熱刃21に接触してG部において溶断される.この後、物品Fを包囲したフイルムのうち物品Fの左右両側から外側に突出している部分を物品Fの底部に折り込んで重ね合わせ、つして物品Fを電熱盤22上に載せてフイルムの重合部分を互に溶着するものである。

一方、前述のようにして帯状フイルム4が溶断されると、それまで緊張状態にあつた帯状フイルム4は収縮しようとするが、回動板11がねじりコイルばね18のばね力により矢印A方向に瞬時に復帰回動するため、前立上部15は帯状フイルム4の切断部分に遭遇して該切断部分を平担部15aに密着させる。従つて、帯状フイルム4は両立上部13及び15間に橋架状態となる(第2図参照).

このように本実施例によれば、後立上弐13の平担部13aに対する密着力により帯状フイルム4を緊張させた状態物品を包装するとができる。従つて包装フイルムがたるんでを生じこれにより見栄えが悪くなるといつた不都合を除去することができる.また電熱刃21を後立上部15の平担部15aよりも下方に位置して設けたので、帯状フイルム4を緊張させるべく引張る方向を引張り易い略水平方向とすることができ、且つこのようにしも帯状フイルム4が不用意に溶断されしまうといつたれはない.更に帯状フイルム4を切断する場合、帯状フイルム4を引張つて緊張させた状態で行うことができるので、帯状フイルム4をG部のような個所で切断することがてきる.然るに帯状フイルム4を緊張させることができない従来の包装装置では、帯状フイルム4をG部で切断しようとすると、帯状フイルム4がたるみ、これによつて電熱刃21が物品Fの底部に当たるれがあるため、帯状フイルウ4を更に引き出して物品Fの後縁部Hよりも更に後方の部分が電熱刃21に当たるようにする必要があつて帯状フイルム4の使用量が長くなる欠点があつたが、本実施例では斯る欠点を除去でき、帯状フイルム4の使用量を軽減することができるものある。

しかも、帯状フイルム4は切断後、両立上部13及び15間に橋架状態に保持され、且つ両立上部13及び15特に後立上部13の平担部13aに対する密着力により帯状フイルム4の本体1内への引き込みを有効に防止することができるので、次に帯状フイルム4を引き出す場合に、両立上部13及び15間に手指を差し入れることにより帯状フイルム4を容易に摘むことができ、作業がし易くなる.

図面の簡単な説明

図面は本考案の一実施例を示し、第1図は全体を示す側面図、第2図は要部の拡大縦断側面図、第3図は作用説明図である。

図面中、1は本体、3はフイルム筒体、4は帯状フイルム、7は導出口、11は回動板(回動体)、11aは枢支片(枢支部)、13は後立上部、13aは平坦部密着部、14は布、15は前立上部、15aは平坦部、16はカバー部、18はねじりコイルばね、21は電熱刃(切断装置)、22は電熱盤である。

第1図

<省略>

第2図

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第3図

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別紙図面

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実用新案公報

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