名古屋地方裁判所 昭和61年(わ)1543号 判決 1986年10月31日
本籍
名古屋市中村区大閤一丁目三番
住居
同市千種区見附町一丁目三三番地 シャルム本山一B
会社役員
鬼頭敬英
昭和八年一月四日生
右の者に対する所得税法違反被告事件について、当裁判所は検察官藤田昌徳出席のうえ審理を遂げ、次のとおり判決する。
主文
被告人を懲役一〇月及び罰金一二〇〇万円に処する。
右罰金を完納することができないときは、金三万円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置する。
この裁判確定の日から三年間右懲役刑の執行を猶予する。
理由
(罪となるべき事実)
被告人は、名古屋市中村区大閤一丁目三番一四号において「シーエス東海」の屋号で装飾材料販売業を営んでいたものであるが、自己の所得税を免れようと企て、売上の一部を除外する等の方法によって所得の一部を秘匿した上
第一 昭和五七年分の実際の所得金額が三三五四万五〇〇七円でこれに対する所得税額が一四〇八万七八〇〇円であるのに、昭和五八年三月一四日、名古屋市中村区大閤三丁目四番一号所在の名古屋中村税務署において、同税務署長に対し、所得金額が五五四万九九八四円であり、これに対する所得税額が六八万四九〇〇円である旨の虚偽過少の所得税確定申告書を提出し、正規の所得税額との差額一三四〇万二九〇〇円を免れ
第二 昭和五八年分の実際の所得金額が四〇七八万三一九三円で、これに対する所得税額が一八三四万八三〇〇円であるのに、昭和五九年三月一五日、前記名古屋中村税務署において、同税務署長に対し、所得金額が一〇三〇万六八七〇円であり、これに対する所得税額が二一四万七四〇〇円である旨の虚偽過少の所得税確定申告書を提出し、正規の所得税額との差額一六二〇万九〇〇円を免れ
第三 昭和五九年分の実際の所得金額が三八八七万二三五円で、これに対する所得税額が一六九三万円であるのに、昭和六〇年三月一五日、前記名古屋中村税務署において、同税務署長に対し、所得金額が一二一九万八二七一円であり、これに対する所得金額が二七三万九七〇〇円である旨の虚偽過少の所得税確定申告書を提出し、正規の所得税額との差額一四一九万三〇〇円を免れ
もって、いずれも不正の行為により所得税を免れたものである。
(証拠の標目)
判示事実全部につき
一 被告人の当公判廷における供述
一 被告人の大蔵事務官(九通)及び検察官に対する各供述調書
一 大蔵事務官作成の脱税額計算書説明資料及び査察官調査書(一一通)
判示第一の事実につき
一 大蔵事務官作成の証明書三通(検甲二号証、同五号証、同九号証)及び脱税額計算書(検甲一二号証)
判示第二の事実につき
一 大蔵事務官作成の証明書三通(検甲三号証、同六号証、同一〇号証)及び脱税額計算書(検甲一三号証)
判示第三の事実につき
一 大蔵事務官作成の証明書三通(検甲四号証、同七号証、同一一号証)及び脱税額計算書(検甲一四号証)
(法令の適用)
被告人の判示第一、第二、第三の各所為は所得税法二三八条一項に該当するところ、判示第一、第二、第三の各罪につき情状により懲役と罰金とを併科し、罰金につき同法二三八条二項により各免れた所得税の額に相当する金額以下とするべく、以上は刑法四五条前段の併合罪であるから、懲役刑については同法四七条本文、一〇条により犯情の最も重い判示第二の罪の刑に法定の加重をし、罰金刑については同法四八条二項により判示第一、第二、第三の各罪の罰金額を合算し、その刑期及び金額の範囲内で被告人を懲役一〇月及び罰金一二〇〇万円に処し、右罰金を完納することができないときは、同一八条により金三万円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置し、情状により同法二五条一項を適用してこの裁判の確定の日から三年間右懲役刑の執行を猶予することとする。
よって、主文のとおり判決する。
(裁判官 杉山修)