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名古屋地方裁判所 昭和61年(わ)961号 判決 1986年7月23日

国籍

韓国(全羅南道長城郡邑流湯里八〇七)

住居

愛知県豊川市諏訪一丁目二〇番地

会社役員

金光良昌こと金良昌

一九四三年四月一〇日生

右の者に対する所得税法違反被告事件について、当裁判所は検察官藤田昌徳出席のうえ審理を遂げ、次のとおり判決する。

主文

被告人を懲役一〇月及び罰金一〇〇〇万円に処する。

右罰金を完納することができないときは、金二〇〇〇〇円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置する。

この裁判確定の日から三年間右懲役の執行を猶予する。

訴訟費用は全部被告人の負担とする。

理由

(罪となるべき事実)

被告人は、愛知県豊川市諏訪一丁目二〇番地に居住し、同所において金光商店の屋号で金属くず商を営んでいたものであるが、自己の所得税を免れようと企て、所得税の確定申告に際しては、所得金額に関する収支計算をせず適宜の金額を計上するところのいわゆる「つまみ申告」を行う方法により、所得の一部を秘匿した上

第一  昭和五七年分の実際の所得金額が三、二二四万三、九八六円で、これに対する所得税額が一、二七四万一、八〇〇円であるのに、同五八年三月九日、同県豊川市諏訪一丁目一番地所在の豊川市役所確定申告特設会場において、豊橋税務署長に対し、所得金額が四七〇万円で、これに対する所得税額が四〇万四、七〇〇円である旨の虚偽過少の所得税確定申告書を提出し、正規の所得税額との差額一、二三三万七、一〇〇円を免れ

第二  同五八年分の実際の所得金額が四、三二二万九、四六六円で、これに対する所得金額一、九四三万一〇〇円であるのに、同五九年三月一日、前記豊川市役所確定申告特設会場において、豊橋税務署長に対し、所得金額が六三六万九、八六六円で、これに対する所得税額が六七万五、八〇〇円である旨の虚偽過少の所得税確定申告書を提出し、正規の所得税額との差額一、八七五万四、三〇〇円を免れ

第三  同五九年分の実際の所得金額が二、二〇五万九、九四二円で、これに対する所得税額が六九〇万六、〇〇〇円であるのに、六〇年三月一三日、前記豊川市役所確定申告特設会場において、豊橋税務署長に対し、所得金額が六三〇万円で、これに対する所得税額が六六万三〇〇〇円である旨の虚偽過少の所得税確定申告書を提出し、正規の所得税額との差額六二四万三、〇〇〇円免れ

もって、いずれも不正の行為により所得税を免れたものである。

(証拠の標目)

判示全事実につき

一  被告人の当公判廷における供述

一  被告人の大蔵事務官(八通)及び検察官に対する各供述調書

一  白清子の大蔵事務官(三通)及び検察官に対する各供述調書

一  大蔵事務官作成の脱税額計算書説明資料及び査察官調査書三二通

一  検察事務官作成の捜査報告書

判示第一の事実につき

一  大蔵事務官作成の脱税計算書(検甲二号)及び証明書二通(検甲三八号、四一号)

判示第二の事実につき

一  大蔵事務官作成の脱税計算書(検甲三号)及び証明書二通(検甲三九号、四二号)

判示第三の事実につき

一  大蔵事務官作成の脱税計算書(検甲四号)及び証明書二通(検甲四〇号、四三号)

(法令の適用)

被告人の判示第一、第二、第三の各所為は所得税法二三八条一項、二項にそれぞれ該当するが、懲役と罰金を併科すべく、以上は刑法四五条前段の併合罪であるから、懲役刑については同法四七条本文、一〇条により犯情の最も重い判示第二の罪刑に法定の加重をし、罰金刑については同法四八条二項により判示第一、第二、第三の各罪所定の罰金額を合算し、その刑期及び金額の範囲内で被告人を懲役一〇月及び罰金一〇〇〇万円に処し、右罰金を完納することができないときは、同法一八条により金二〇〇〇〇円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置し、情状により同法二五条一項を適用してこの裁判の確定した日から三年間右懲役刑の執行を猶予し、訴訟費用は、刑事訴訟法一八一条一項本文により全部被告人に負担させることとする。

よって、主文のとおり判決する。

(裁判官 杉山修)

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