名古屋地方裁判所 昭和62年(ワ)1200号 判決 1994年9月26日
第一事件原告、第二事件被告
別府光昭
(以下「原告別府」という。)
同
松本秀行
(以下「原告松本」という。)
同
山本博
(以下「原告山本」という。)
同
長谷川清
(以下「原告長谷川」という。)
同
三林裕治
(以下「原告三林」という。)
同
矢尾谷芳典
(以下「原告矢尾谷」という。)
同
中野豊
(以下「原告中野」という。)
同
志水章
(以下「原告志水」という。)
同
佐藤頌二
(以下「原告佐藤」という。)
同
高橋進
(以下「原告高橋」という。)
同
加藤隆司
(以下「原告加藤」という。)
第三事件原告、第二事件被告
岩田弘治
(以下「原告岩田」という。)
右一二名訴訟代理人弁護士
水野幹男
同
鈴木泉
同
岩月浩二
同
平松清志
同
藤井繁
同
松川正紀
同
樋口明
同
織田幸二
同
太田寛
同
藤田哲
第一、第三事件被告第二事件原告
株式会社サント
(以下「被告サント」という。)
右代表者代表取締役
寺西直勝
第一、第三事件被告
日本不動産流通株式会社
(以下「被告日本不動産流通」という。)
右代表者代表取締役
金森史朗
右二名訴訟代理人弁護士
村瀬尚男
第一、第三事件被告
株式会社太陽ホーム
(以下「被告太陽ホーム」という。)
右代表者清算人
米田親良
第一、第三事件被告
株式会社岐阜銀行
(以下「被告岐阜銀行」という。)
右代表者代表取締役
宇佐見鐵雄
右訴訟代理人弁護士
由良久(以下「原告ら」とは、右略称上の原告全員を指し、「被告ら」とは、右略称上の被告全員を指す。)
主文
一 被告らは各自、
1 原告別府に対し、金一六三万〇三〇〇円及びこれに対する昭和六〇年一二月二三日から支払済まで年五分の割合による金員を支払え。
2 原告松本に対し、金一三九万三五八〇円及びこれに対する昭和六〇年一二月二三日から支払済まで年五分の割合による金員を支払え。
3 原告山本に対し、金一七七万八一〇〇円及びこれに対する昭和六〇年一二月二三日から支払済まで年五分の割合による金員を支払え。
4 原告長谷川に対し、金一三五万二九八〇円及びこれに対する昭和六〇年一二月二三日から支払済まで年五分の割合による金員を支払え。
5 原告三林に対し、金一九〇万二二六〇円及びこれに対する昭和六〇年一二月二三日から支払済まで年五分の割合による金員を支払え。
6 原告矢尾谷に対し、金一一四万一六四〇円及びこれに対する昭和六〇年一二月二三日から支払済まで年五分の割合による金員を支払え。
7 原告中野に対し、金一三〇万七五四〇円及びこれに対する昭和六〇年一二月二三日から支払済まで年五分の割合による金員を支払え。
8 原告志水に対し、金四七一万四一一〇円及びこれに対する昭和六〇年一二月二三日から支払済まで年五分の割合による金員を支払え。
9 原告佐藤に対し、金二九四万四〇六〇円及びこれに対する昭和六〇年一二月二三日から支払済まで年五分の割合による金員を支払え。
10 原告高橋に対し、金二六〇万九九三〇円及びこれに対する昭和六〇年一二月二三日から支払済まで年五分の割合による金員を支払え。
11 原告加藤に対し、金一六七万〇九八〇円及びこれに対する昭和六〇年一二月二三日から支払済まで年五分の割合による金員を支払え。
12 原告岩田に対し、金一四一万四五六〇円及びこれに対する被告サント、被告日本不動産流通につき昭和六二年七月五日から、被告岐阜銀行につき昭和六二年八月一日から、被告太陽ホームにつき昭和六二年八月五日から各支払済まで年五分の割合による金員を支払え。
二 原告らの被告らに対するその余の請求をいずれも棄却する。
三 被告サントの原告らに対する請求をいずれも棄却する。
四 訴訟費用は被告らの負担とする。
五 この判決の一の1ないし12項は仮に執行することができる。
事実
第一 当事者の求めた裁判
一 原告らの請求の趣旨(第一、第三事件)
1 被告らは、各自、
(一) 原告別府に対し、金二〇〇万三九〇〇円及びこれに対する昭和六〇年一二月二三日から支払済まで年五分の割合による金員を支払え。
(二) 原告松本に対し、金一六九万七六八〇円及びこれに対する昭和六〇年一二月二三日から支払済まで年五分の割合による金員を支払え。
(三) 原告山本に対し、金二二〇万三〇〇〇円及びこれに対する昭和六〇年一二月二三日から支払済まで年五分の割合による金員を支払え。
(四) 原告長谷川に対し、金一七〇万三一八〇円及びこれに対する昭和六〇年一二月二三日から支払済まで年五分の割合による金員を支払え。
(五) 原告三林に対し、金二二七万九六六〇円及びこれに対する昭和六〇年一二月二三日から支払済まで年五分の割合による金員を支払え。
(六) 原告矢尾谷に対し、金一五〇万五八四〇円及びこれに対する昭和六〇年一二月二三日から支払済まで年五分の割合による金員を支払え。
(七) 原告中野に対し、金一六六万八九四〇円及びこれに対する昭和六〇年一二月二三日から支払済まで年五分の割合による金員を支払え。
(八) 原告志水に対し、金五一一万六七一〇円及びこれに対する昭和六〇年一二月二三日から支払済まで年五分の割合による金員を支払え。
(九) 原告佐藤に対し、金三三五万五八六〇円及びこれに対する昭和六〇年一二月二三日から支払済まで年五分の割合による金員を支払え。
(一〇) 原告高橋に対し、金二九七万一一三〇円及びこれに対する昭和六〇年一二月二三日から支払済まで年五分の割合による金員を支払え。
(一一) 原告加藤に対し、金二〇二万六五八〇円及びこれに対する昭和六〇年一二月二三日から支払済まで年五分の割合による金員を支払え。
(一二) 原告岩田に対し、金一七七万四五六〇円及びこれに対する被告サント、被告日本不動産流通につき昭和六二年七月五日から、被告岐阜銀行につき昭和六二年八月一日から、被告太陽ホームにつき昭和六二年八月五日から各支払済まで年五分の割合による金員を支払え。
2 訴訟費用は、被告らの負担とする。
3 仮執行宣言
二 被告サントの請求の趣旨(第二事件)
1 原告別府は、被告サントに対し、一〇一万四〇七〇円及び内金九一万三五〇九円について昭和六二年四月二六日から支払済まで年五分の割合による金員を支払え。
2 原告松本は、被告サントに対し、九九万一一七九円及び内金八九万三一九七円について昭和六二年四月二八日から支払済まで年五分の割合による金員を支払え。
3 原告岩田は、被告サントに対し、七一万〇一四四円及び内金六四万二九四四円について昭和六二年四月二六日から支払済まで年五分の割合による金員を支払え。
4 原告山本は、被告サントに対し、七一万九九六〇円及び内金六五万一三七八円について昭和六二年四月二六日から支払済まで年五分の割合による金員を支払え。
5 原告長谷川は、被告サントに対し、五〇万五九二六円及び内金四五万七七三三円について昭和六二年四月二八日から支払済まで年五分の割合による金員を支払え。
6 原告三林は、被告サントに対し、七六万八五八二円及び内金六九万五三六九円について昭和六二年四月二九日から支払済まで年五分の割合による金員を支払え。
7 原告矢尾谷は、被告サントに対し、一〇一万七五一三円及び内金九六万二四三五円について昭和六二年五月三一日から支払済まで年五分の割合による金員を支払え。
8 原告中野は、被告サントに対し、七五万一九〇五円及び内金六七万七三四二円について昭和六二年四月二八日から支払済まで年五分の割合による金員を支払え。
9 原告志水は、被告サントに対し、五五万七〇一二円及び内金五〇万一六八九円について昭和六二年五月一日から支払済まで年五分の割合による金員を支払え。
10 原告佐藤は、被告サントに対し、一二八万九一〇五円及び内金一一七万三四三四円について昭和六二年四月二六日から支払済まで年五分の割合による金員を支払え。
11 原告高橋は、被告サントに対し、五七万五六三四円及び内金五二万三九八三円について昭和六二年五月一二日から支払済まで年五分の割合による金員を支払え。
12 原告加藤は、被告サントに対し、七二万九六五五円び内金六四万九四六一円について昭和六二年四月二九日から支払済まで年五分の割合による金員を支払え。
13 訴訟費用は、原告らの負担とする。
14 仮執行宣言
三 原告らの請求の趣旨に対する被告サント、被告日本不動産流通、被告岐阜銀行の答弁
1 原告らの被告サント、被告日本不動産流通、被告岐阜銀行に対する請求をいずれも棄却する。
2 訴訟費用は原告らの負担とする。
四 被告サントの請求の趣旨に対する原告らの答弁
1 被告サントの原告らに対する請求をいずれも棄却する。
2 訴訟費用は被告サントの負担とする。
第二 当事者の主張
(第一事件、第三事件)
一 請求原因
1 当事者
(一) 被告サントは、不動産の売買、仲介、宅地建物の造成分譲、不動産の鑑定評価業務等を目的とする株式会社である。
(二) 被告太陽ホームは、被告サントと同様の目的をもって設立された株式会社である。
(三) 被告日本不動産流通は、不動産の売買仲介、賃貸、建売住宅の建設・販売等を目的とする株式会社である。
(四) 被告株式会社岐阜銀行(平成元年二月一日変更前の商号は、株式会社岐阜相互銀行。)は、銀行法による銀行の業務を目的とする株式会社である。
2 被告太陽ホームの違法な勧誘行為
被告太陽ホームの営業社員である菓あや子、佐藤人志、池田憲治、池田曉彦、吉井秀子、新海昌信、林某らは、以下の(一)ないし(三)記載の手口で原告らに対し、別紙物件目録一ないし一五の各土地(以下「本件各土地」という。)を、当該土地の客観的価値をかけ離れた著しい高価格で売却し、同記載のとおりの各出捐をさせた(いわゆる原野商法)。
(一) 原告別府
(1) 菓あや子と佐藤人志は、昭和五六年一月二〇日頃から数回にわたり、午後一〇時ないし一一時頃の時間帯に原告別府宅を訪問し、「銀行預金をしても利子は知れている。土地を買っておけば銀行の利子以上に値上がりする。この土地の近くには、産業道路ができ、絶対値上がりする。五年間で三倍くらいに値上がりする。五年ほどたって金がいるときには、いつでも太陽ホームが転売してあげます。この土地は岐阜相互銀行がローンを組んでくれるから分割で買えます。銀行はきちんとした土地にしか金を出さない。」などと、土地の利殖性を強調し、転売約束をして換金性を保証し、銀行の社会的信用性を悪用して、別紙物件目録一記載の土地(以下「本件土地一」という。)の購入を勧めた。
(2) 原告別府は、昭和五六年二月二二日、被告太陽ホームから本件土地一を二三三万一六〇〇円で購入し、同月二五日被告太陽ホームに対し頭金七三万一六〇〇円、登記費用五万三一〇〇円を支払い、その数日後、残金一六〇万円について、被告岐阜銀行(大須支店)との間で毎月二万五四四〇円、ボーナス月七万六三四〇円、合計五〇回の分割払いによって支払うローンを組み、合計八三万九六〇〇円を支払った。
(二) 原告松本
(1) 菓あや子と佐藤人志は、昭和五六年二月初旬、電話勧誘の後、午後八時頃原告松本宅を訪問し、午後一一時過ぎまで、「投資をするなら金、ダイヤより土地の方が有利だ。土地が一番値上がりする。荘川に高速道路が通るので、間違いなく荘川の土地は値上がりする。五年たてば太陽ホームが四〇〇万円か六〇〇万円で責任をもって買い戻す。銀行はこの土地を担保に金を貸すのだから、絶対おかしな土地ではない。もし変な物件だったら、銀行はローンを組んでくれない。」などと言って、別紙物件目録二記載の土地(以下「本件土地二」という。)の購入を勧めた。
(2) 原告松本は、昭和五六年二月二五日、被告太陽ホームから本件土地二を二〇五万三二〇〇円で購入した。
原告松本は、昭和五六年三月一六日、手付金四一万〇六四〇円、中間金四万二五六〇円を支払い、残額一六〇万円について被告岐阜銀行との間で六〇回分割払いのローンを組み、昭和五八年七月二八日まで合計八八万五二八〇円を支払い、更に、昭和五六年五月二七日、被告太陽ホームに登記費用五万三一〇〇円を支払った。
(三) 原告山本
(1) 池田憲治と二五才位の女子訪問販売員は、電話勧誘の後、昭和五五年九月二九日午後八時過ぎ、原告山本宅を訪問し、約一時間にわたって「荘川ビレッジという土地は、利殖価値があり、近々東海北陸自動車道が開通し、五年先には時価が二、三倍にも値上がりすることが確実な物件である。六メートルの道路に面し、電気もすぐに引き込め、今にも家が建てられる場所である。岐阜相互銀行と提携しているから、購入資金の融資が受けられるし、銀行が融資の対象にしている土地であるから間違いない土地で、十分な価値がある。」などと、利殖性を強調し、虚偽の事実を告げ、銀行の社会的信用性を悪用し、優良物件と偽って別紙物件目録三記載の土地(以下「本件土地三」という。)の購入を勧めた。
(2) 原告山本は、昭和五五年九月三〇日、被告太陽ホームから、本件土地三を二〇一万円で購入した。
原告山本は、同年一〇月一五日、売買代金のうち六一万円を支払い(うち二万円は、九月二七日ころ、土地を確保してもらう名目で支払った分を充当した。)、残金一四〇万円について被告岐阜銀行と五年間六〇回のローンを組み、昭和五五年一一月二三日から昭和五八年一〇月頃までの間に被告岐阜銀行に一〇九万〇八〇〇円を支払い、更に、昭和五五年一二月一八日までに被告太陽ホームに対し、登記費用五万一三〇〇円を支払った。
(四) 原告長谷川
(1) 菓あや子、池田曉彦は、原告長谷川の妻茂子に電話勧誘の後、昭和五五年九月頃から数回にわたって留守中の原告長谷川宅を訪れ、茂子に対して宅地建物取引業の免許証を示し、家族がいるので危険な仕事をしない等と言って信用させたうえ、「東海北陸自動車道のインターチェンジができるところの近くにいい土地がある。星ケ丘のように間違いなく値が上がる土地だ。近くに大きな工場も建つ予定で人もたくさん集まってくる。投資をするには格好の土地だ。二年の間に1.5倍に値上がりするので五年間で四〇〇万円になる。今回勧めている物件には岐阜相互銀行がローンを組んでくれている。太陽ホームがいい加減な会社であったり、今回の物件が変な物件だったりすれば、銀行は決してローンを組んでくれない。銀行がローンを組んでくれる位の土地だから絶対間違いない。」等と、利殖性を強調し、銀行の社会的信用性を悪用し、販売土地が優良物件であると偽って別紙物件目録記載四の土地(以下「本件土地四」という。)の購入を勧めた。
(2) 茂子は、昭和五五年一〇月七日、原告長谷川名義で被告太陽ホームから本件土地四を一五〇万七五〇〇円で購入し、原告長谷川は、同日右売買を了承し、追認した。
原告長谷川は、一〇月中旬、被告太陽ホームに対し、頭金、中間金合計五〇万七五〇〇円を支払い、その後登記費用四万九七〇〇円を支払った。残金一〇〇万円について被告岐阜銀行と六〇回分割払いのローンを組んで支払うこととし、昭和五八年一〇月二三日の第三六回分まで合計七七万六二八〇円を支払った。
(五) 原告三林
(1) 新海昌信と若い女性訪問販売員は、昭和五五年八月末頃の午後六時頃、原告三林宅を訪れ、「土地を買った方が銀行預金より利益があがる。貯金をしているよりその方がマイホームも早く立つ。この物件は近くに東海北陸自動車道のインターチェンジができるため、必ず値の上がる土地だ。銀行利率は年七〜八パーセントであるが、この土地は年三〇パーセント位の値上がりが見込める。四年後には必ず二倍以上になる。いつでも依頼して頂ければ、当社が責任をもってすぐにでも転売します。岐阜相互銀行がバックにいる取引なのだから絶対安心だ。」などと、利殖性を強調し、転売約束による換金性を保証し、銀行の社会的信用性を悪用し、販売物件が優良物件であると偽って別紙物件目録記載五の土地(以下「本件土地五」という。)の購入を勧めた。
(2) 原告三林は、昭和五五年九月二一日、被告太陽ホームから、本件土地五を二一五万二五〇〇円で購入し、九月二四日、手付金四三万〇五〇〇円、中間金二二万二〇〇〇円を被告太陽ホームに支払い、残金一五〇万円について被告岐阜銀行とローンを組み、昭和五五年一一月から昭和五八年一〇月まで合計一一七万一五六〇円を支払い、更に、昭和五五年一二月一〇日、被告太陽ホームに対し、登記費用五万一七〇〇円を支払った。
(六) 原告矢尾谷
(1) 菓あや子と池田憲治は、昭和五六年三月頃、二回にわたって、午後九時過ぎに原告矢尾谷宅を訪れ、午前〇時過ぎまで「近々高速道路ができるところで確実に値段が上がる。五年後にはこの土地の値段が二倍にはなる。銀行で預金するよりも有利である。換金したときは太陽ホームが責任をもって転売する。岐阜相互銀行が太陽ホームの提携会社であり、岐阜相互銀行がここまでしてくれるのは、太陽ホームと荘川の物件が間違いのないものだからだ。」などと、利殖性を強調し、転売約束による換金性を保証し、銀行の社会的信用性を悪用して販売土地が優良物件であると偽って別紙物件目録六記載の土地(以下「本件土地六」という。)の購入を勧めた。
(2) 原告矢尾谷は、昭和五六年四月一日、被告太陽ホームから、本件土地六を一九二万二七〇〇円で購入し、同月二一日、被告太陽ホームに手付金及び中間金六二万二七〇〇円、登記費用三万六九〇〇円を支払い、残金一三〇万円について被告岐阜銀行に昭和五六年七月から昭和六一年六月までのローンを組み、昭和五七年末までに合計四九万二五四〇円を弁済した。
(七) 原告中野
(1) 菓あや子と佐藤人志は、電話勧誘の後、昭和五六年一月頃、三回にわたって、原告中野宅を訪れ、「荘川ビレッジの近くにインターチェンジができるので、この土地は値が上がる土地です。普通の土地の売買ではなく、投資をして頂く話です。三年または五年の満期で値上がりしたところで当社が買い取るものです。また、希望があれば、いつでも当社で転売しておりますので、いつでもお金に換えられます。うちの場合は銀行が入っています。銀行が会社も土地も信用しているわけです。」などと、利殖性を強調し、買い取り約束により換金性を保証し、銀行の社会的信用性を悪用して販売土地が優良物件であると偽って別紙物件目録記載の土地(以下「本件土地七」という。)の購入を勧めた。
(2) 原告中野は、昭和五六年二月一七日、被告太陽ホームから、本件土地七を一八〇万〇九〇〇円で購入し、代金の一部として同日三六万〇一八〇円、同年四月頃二四万〇七二〇円を支払い、残金一二〇万円について被告岐阜銀行とローンを組み、合計六四万八六四〇円を弁済し、更に、昭和五六年五月二七日、被告太陽ホームに登記費用五万一五〇〇円を支払った。
(八) 原告志水
(1) 菓あや子と池田憲治は、昭和五五年二月頃、電話勧誘の後、四、五回にわたって、原告志水宅を訪れ、「銀行に預金しておくと目減りするので、土地を購入しておく方が利殖方法としては有利だ。土地の場合は年一五パーセント程度値上がりする。荘川ビレッジは、近く東海北陸自動車道のインターチェンジが建設されるので値上がりは絶対確実である。購入資金については、岐阜銀行から融資が受けられる。絶対に間違いのない物件である。」などと、利殖性を強調し、銀行の社会的信用性を悪用して販売土地が優良物件であると偽って別紙物件目録八記載の土地(以下「本件土地八」という。)の購入を勧めた。
(2) 原告志水は、昭和五五年三月一七日、被告太陽ホームから、本件土地八を二二〇万円で購入し、同日頭金一〇〇万円を支払い、残金一二〇万円について被告岐阜銀行と六〇回払いのローン契約を締結したが、約一か月後に全額を弁済し、更に、被告太陽ホームに登記費用五万八〇八〇円を支払った。
(3) 池田憲治は、原告志水にはまだ資金の余裕があると判断して、更に土地の購入を勧めた。そこで、原告志水は、昭和五五年五月二六日、被告太陽ホームから、別紙物件目録九記載の土地(以下「本件土地九」という。)を二三三万七五〇〇円で購入し、同日頭金一〇三万七五〇〇円を支払い、残金一三〇万円について被告岐阜銀行と六〇回払いのローンを組み、昭和五八年八月までに合計一一二万二〇三〇円を支払い、更に、被告太陽ホームに登記費用五万八〇〇〇円を支払った。
(九) 原告佐藤
(1) 菓あや子と佐藤人志は、昭和五六年二月二日の夜、原告佐藤宅を訪れ、「あなたは国土法による土地開発のための抽選で選ばれたので、特別に訪問しました。荘川ビレッジは、東海北陸自動車道のインターチェンジが近くにできるので間違いなく値上がりする物件である。預貯金の金利よりも物価の上昇の方が高いので預貯金は目減りするが、土地の場合価額上昇よりも高いので利殖としては一番有利だ。将来、太陽ホームが責任を持って転売するので、その転売代金をもとに住宅資金にして下さい。荘川ビレッジは購入資金について岐阜相互銀行でローンを組める物件であり、銀行も価値を認めている。」などと、土地の値上がりのグラフを見せながら、利殖性を強調し、転売約束による換金性を保証し、銀行の社会的信用性を悪用して販売土地が優良物件であると偽って別紙物件目録一〇、同一一記載の土地(以下「本件土地一〇、一一」という。)の購入を勧めた。
(2) 原告佐藤は、昭和五六年二月二日、被告太陽ホームから、本件土地一〇、一一を三五五万八三〇〇円で購入し、頭金一三五万八三〇〇円を支払い、残金二二〇万円について被告岐阜銀行と六〇回払いのローンを組み、昭和五八年一一月分まで合計一四七万四五六〇円を支払い、更に、被告太陽ホームに登記費用五万五七〇〇円を支払った。
(一〇) 原告高橋
(1) 吉井秀子と新海昌信は、昭和五五年二月頃、「今、あなたの持っているお金を増やしませんか。銀行の金利より数段良く、年二〇〜三〇パーセントの利回りになる利殖ですが、一度話しをして聞いて貰いたい。」旨の電話勧誘の後、原告高橋宅を訪れ、「東海北陸自動車道が開通し交通の便も良くなり、五年後には現在の販売価格の二倍に値上がりすることは確実で、銀行預金よりはるかによい利殖である。荘川ビレッジは、被告岐阜銀行と提携していて、銀行が融資してくれる土地であるから間違いない土地で、十分資産価値があるから銀行も融資してくれる。六メートルの舗装道路に面し、U字溝の設置や、電気、水道もすぐ引き込め、建物を今日にでも建てることができる土地である。」などと、利殖性を強調し、銀行の社会的信用性を悪用し、虚偽の事実を告げ、販売土地が優良物件であると偽って別紙物件目録一二、同一三記載の土地(以下「本件土地一二、一三」という。)の購入を勧めた。
(2) 原告高橋は、昭和五五年三月二四日頃、被告太陽ホームから、本件土地一二、一三を二五八万七五〇〇円で購入し、同月二九日に手付金、中間金一〇八万七五〇〇円を支払い(うち一万円は既払金を充当)、残金一五〇万円について被告岐阜銀行と六〇回払いのローンを組み、昭和五八年一一月二七日まで合計一三三万一二六〇円を支払い、更に、昭和五五年六月一七日、被告太陽ホームに登記費用六万四一七〇円を支払った。
(一一) 原告加藤
(1) 池田憲治と菓あや子は、昭和五五年一一月初旬、電話勧誘の後、二回にわたって原告加藤宅を訪れ、三時間にわたり、「荘川ビレッジは近々東海北陸自動車道も開通し、名古屋から一時間くらいで行けるようになり、五年先には二、三倍にも値上がりする良い土地であり、銀行金利や株式に比べ土地が一番有利である。電気もすぐに引け、今すぐ家を建てることができ、大企業も近くを開発予定している。岐阜相互銀行が太陽ホームのバックについていて、岐阜相互銀行も融資の対象にしている土地である。」などと、利殖性を強調し、虚偽の事実を告げ、換金性を強調し、銀行の社会的信用性を悪用して販売物件が優良物件であると偽って別紙物件目録一四記載の土地(以下「本件土地一四」という。)の購入を勧めた。
(2) 原告加藤は、昭和五五年一一月一五日、被告太陽ホームから本件土地一四を一九八万三六〇〇円で購入し、手付金、中間金合計六八万三六〇〇円を支払い、残金一三〇万円について被告岐阜銀行と六〇回払いのローンを組み、昭和五五年一二月二六日から昭和五八年七月二八日まで合計九〇万〇四八〇円を支払い、更に、昭和五五年一二月二八日、被告太陽ホームに登記費用五万〇九〇〇円を支払った。
(一二) 原告岩田
(1) 菓あや子と林は、昭和五五年一二月頃、電話勧誘の後原告岩田宅を訪れ、午後六時から午後一〇時にかけて、「荘川ビレッジは五年もすれば購入価額の五倍程度になる。東海北陸自動車道のインターチェンジが近くに建設されるので大幅に値上がりする。貯金は目減りするので土地を購入しておくほうが有利だ。代金支払いについては、銀行ローンも利用できる絶対に間違いのない物件です。」などと、利殖性を強調し、銀行の社会的信用性を悪用し、販売土地が優良物件であると偽って別紙物件目録一五記載の土地(以下「本件土地一五」という。)の購入を勧めた。
(2) 原告岩田は、昭和五六年一月一九日、被告太陽ホームから本件土地一五を一七四万円で購入し、同日手付金、中間金合計五四万円を支払い(うち一万円は既払金を充当)、残金一二〇万円について被告岐阜銀行と六〇回払いのローンを組み、昭和五八年一〇月分まで合計八〇万四五六〇円を支払い、更に、被告太陽ホームに登記費用五万円を支払った。
3 しかし、本件各土地は、右各取引当時、一平方メートルあたり、三〇〇円程度の価値しか有しておらず、被告太陽ホーム従業員らは、その事実を熟知していた。
4 被告サント及び被告岐阜銀行の関与
被告太陽ホームが右の違法な販売行為をするに至った経緯は以下のとおりである。
(一) 不動産業を目的とする株式会社大三土地(以下「大三土地」という。)は、昭和四八年頃、本件各土地を含む岐阜県荘川村大字町屋字西三洞五二六番、同五二七番、同村大字新渕字二俣瀬八八八番一等の山林を開発し、別荘地に造成して荘川ビレッジの名称で販売する事業を行っていた(以下、右開発ないし開発計画の対象となった一帯の土地を「荘川ビレッジ」という。)。
被告岐阜銀行は、大三土地に対し、融資、出資、役員の派遣をして営業活動を支援していたところ、昭和四七年から四九年にかけて、荘川ビレッジのうち、本件各土地の元地番を含む以下の物件について以下の根抵当権の設定を受けた。
(1) 荘川村大字町屋字西三洞五二七番三八三外二筆の山林
地積 計一万〇〇五二平方メートル
極度額 五〇〇〇万円
(2) 荘川村大字町屋字西三洞五二六番一外一四二筆の山林
地積 計四万四三一五平方メートル
極度額 五〇〇〇万円
(3) 荘川村大字新渕字二俣瀬八八八番一の山林
地積 計五万五二九一平方メートル
極度額 一億七五〇〇万円
(二) 大三土地は、昭和四八年一一月の石油ショック以降別荘地の売上げが激減したため、業績不振に陥り、昭和五一年一月一六日倒産し、同年二月五日破産宣告を受けた。被告岐阜銀行は、前記荘川ビレッジの物件等を担保として、大三土地に対し、四億円を超す融資をしていたが、右担保物件の評価額が著しく低く、更には根抵当権に優先する国税・地方税があったため、右融資金の回収が著しく困難な状況になった。
(三) そこで、被告岐阜銀行は大三土地の元社員らと謀り、別会社(被告サント)によって事業を継続し、第三者に対して荘川ビレッジの物件を時価より高値で売却して債権を回収することを計画した。なお、大三土地の社員は、既に大三土地が破産する直前である昭和五〇年四月一八日、被告サントを設立していた。そして、被告岐阜銀行と、大三土地破産管財人が協議して税務当局と折衝した結果、被告岐阜銀行の評価額で、前記抵当物件を被告サントが買い取り、代金支払に代えて国税・地方税等の滞納分を支払い、それによって滞納処分が解除されることとなった。
(四) このようにして被告サントは、昭和五三年七月三一日、大三土地破産管財人から本件土地を含む前記土地を買い受けたが、買受代金は被告岐阜銀行からの融資によるものであるうえ、買受け条件の一つとして、大三土地の被告岐阜銀行に対する債務のうち一億四一〇〇万円について債務引受をしたから、被告サントが被告岐阜銀行に対して負担する債務の額は、荘川ビレッジの現実取引価額を大きく超えるものになった。
(五)(1) 被告サントの代表取締役寺西直勝は、米田親良と共に、昭和五四年一一月一二日、荘川ビレッジの具体的な販売活動を委ねるため、被告サントの実質的な子会社として、被告太陽ホームを設立した。そして、被告サントは、被告太陽ホームに荘川ビレッジの土地を一括して売却し、被告太陽ホームは、昭和五五年初旬頃から昭和五六年春頃にかけて、右土地を細かく分筆登記し、本件各土地その他となった。
(2) 被告サントと被告太陽ホームとの間の右売買代金の決済は直ちに行われることなく、被告太陽ホームが原告らに本件各土地を売却する度に、被告サントは、被告太陽ホームからその分の売買代金の支払いを受け、被告太陽ホームに対し預かっていた権利証等を交付した。
(六) 被告岐阜銀行は、昭和五三年七月三一日から九月二六日にかけて、被告サントに対し、前記荘川ビレッジの土地滞納処分解除費用、所有権移転登記費用、補修工事費、宣伝広告費等として計五一七〇万円を融資した。
(七) 被告サントは、昭和五三年九月二五日、顧客の資金調達を容易にすると同時に、銀行の社会的信用性を利用し、本件土地が実際より価値が高く、値上がりが見込める物件であると偽るため、被告岐阜銀行と共謀して「ぎふぎんサント別荘地ローン」という名称の買受資金貸付制度を設けた。
そして、被告岐阜銀行は、これに基づき原告らに本件各土地の購入資金を貸付け、本件各土地に抵当権の設定を受けた。
5 被告日本不動産流通の関与
被告日本不動産流通は、以下のとおり、被告サントの責任追及を免れるために設立された会社であって、被告日本不動産流通と、被告サントは法的に同一視されるべきである。
(一) 被告日本不動産流通の代表取締役金森史郎は、名目的代表者であって、一週間に一回位しか出社せず、また、出社しても仕事らしい仕事をほとんどせず、会社の重要事項の決定には全く関与していなかった。そして、同人は、被告日本不動産流通の代表者印を事務室に放置して被告サント代表取締役寺西直勝の使用を黙認していた。
(二) 被告日本不動産流通は、被告サントの廃業の二週間前であり、寺西直勝が宅建業法違反で逮捕されて被告サントの宅地建物取引業法に基づく営業免許取消が必至であった昭和五六年一〇月二九日に設立された。
(三) 被告日本不動産流通は、被告サントの事務所、備品、電話加入権、電話番号、従業員を引き継ぎ、これにより、被告サントの会社としての実体は消滅した。
(四) 寺西直勝は、被告日本不動産流通の経営に実質的に関与し、営業全般を中心的になって推進し、同社が被告サントの債務を保証するなどの重要事項を全て独断で決定した。
6 責任
(一) 被告太陽ホーム
(1) 被告太陽ホームの従業員らは、本件各土地について値上がりの見込みがないのにこれがあるものとしてその利殖性を強調し、被告岐阜銀行がローンを組むから大丈夫であると説明し、銀行の社会的信用性を悪用して本件各土地が信頼できる物件であるように思わせて原告らを騙し、「電気もすぐに引ける。」「今すぐ家を建てることができる。」「五年内に東海北陸自動車道が開設する。」などと説明したほか、本件各土地が五年後には少なくとも二倍に値上がりするかの如き虚偽の事実を告げて、原告らに対し時価の数十倍の値段で本件各土地を売却した。
被告太陽ホームの従業員らは、右のような勧誘方法による販売を企業活動として組織的に行い、原告らに後記損害を与えたから、被告太陽ホームは、企業自体の不法行為として、民法七〇九条による不法行為責任を負う。
(2) 仮に、そうでないとしても、被告太陽ホームは、その従業員らが会社の事業の執行につき故意をもって違法に原告らに後記損害を与えたものであるから、民法七一五条による使用者として不法行為責任を負う。
(二) 被告サント
被告サントは、前記のとおり、被告岐阜銀行と共謀して、被告太陽ホームを設立するなどして、原告らに対する本件各土地の違法な販売活動を企画・実行したから、不法行為責任を負う。
(三) 被告日本不動産流通
被告日本不動産流通は、法人格否認の法理により、被告サントと同一の責任を負う。
(四) 被告岐阜銀行
(1) 共謀による不法行為
被告岐阜銀行は、被告サントと共謀して、大三土地に対する巨額の不良債権を回収するため、前記違法な販売活動の企画・実行に加担したことにより、不法行為責任を負う。
(2) 担保適正評価義務違反
被告岐阜銀行は、本件各土地の担保価値を不当に過大評価して、原告らが不当な高値で本件各土地を購入する原因を作ったことにより、不法行為責任を負う。
(3) 先行行為に基づく作為義務違反
被告岐阜銀行は、本件各土地が一平方メートルあたり四九円ないし二〇〇円であることを認識していたのに、被告太陽ホームの販売価格を熟知しながら担保適正評価義務に反して過大な評価をし、本件各土地が被告岐阜銀行の担保評価額程度の価値を有するものと原告らを誤信せしめ、現況を調査せず、およそ別荘地としての利用が実現不可能であって、特に二俣瀬地区については開発除外申請がされていたことを認識しながら本件各土地を別荘地と表示し、更には不適格企業である被告サントに資金の援助・提携ローンの締結をするなどして提携した上、被告サントが銀行の社会的信用性を利用して本件土地の販売活動を行う意図を有していたことを認識しつつ、これを黙認したことにより、不法行為責任を負う。
(五) また、被告太陽ホーム、被告サント、被告岐阜銀行の不法行為は、密接に関連し、共同して行われたものであるから、右被告らは共同不法行為責任を負う。
7 損害
原告らは、被告らの不法行為によって、①本件土地売買代金及びローンの支払金並びに登記費用の内支払済の金額、②本件の弁護士費用相当額、③慰謝料相当額の損害を被った。右合計額から本件土地の時価(一平方メートルあたり三〇〇円)を控除した額をもって、損害額とする。
(一) 原告別府
支払済金額 一六二万四三〇〇円
本件の弁護士費用 一六万〇〇〇〇円
慰謝料 三〇万〇〇〇〇円
購入物件時価控除分 八万〇四〇〇円
損害額 二〇〇万三九〇〇円
(二) 原告松本
支払済金額 一三九万一五八〇円
本件の弁護士費用 一三万〇〇〇〇円
慰謝料 三〇万〇〇〇〇円
購入物件時価控除分 七万〇八〇〇円
損害額 一七五万〇七八〇円
(三) 原告山本
支払済金額 一七五万二一〇〇円
本件の弁護士費用 一八万〇〇〇〇円
慰謝料 三〇万〇〇〇〇円
購入物件時価控除分 八万〇四〇〇円
損害額 二一五万一七〇〇円
(四) 原告長谷川
支払済金額 一三三万三四八〇円
本件の弁護士費用 一三万〇〇〇〇円
慰謝料 三〇万〇〇〇〇円
購入物件時価控除分 六万〇三〇〇円
損害額 一七〇万三一八〇円
(五) 原告三林
支払済金額 一八七万五七六〇円
本件の弁護士費用 一九万〇〇〇〇円
慰謝料 三〇万〇〇〇〇円
購入物件時価控除分 八万六一〇〇円
損害額 二二七万九六六〇円
(六) 原告矢尾谷
支払済金額 一一五万二一四〇円
本件の弁護士費用 一二万〇〇〇〇円
慰謝料 三〇万〇〇〇〇円
購入物件時価控除分 六万六三〇〇円
損害額 一五〇万五八四〇円
(七) 原告中野
支払済金額 一三〇万一〇四〇円
本件の弁護士費用 一三万〇〇〇〇円
慰謝料 三〇万〇〇〇〇円
購入物件時価控除分 六万二一〇〇円
損害額 一六六万八九四〇円
(八) 原告志水
支払済金額 四四七万五六一〇円
本件の弁護士費用 四五万〇〇〇〇円
慰謝料 三〇万〇〇〇〇円
購入物件時価控除分一〇万八九〇〇円
損害額 五一一万六七一〇円
(九) 原告佐藤
支払済金額 二八八万八五六〇円
本件の弁護士費用 二九万〇〇〇〇円
慰謝料 三〇万〇〇〇〇円
購入物件時価控除分一二万二七〇〇円
損害額 三三五万五八六〇円
(一〇) 原告高橋
支払済金額 二四八万二九三〇円
本件の弁護士費用 二五万〇〇〇〇円
慰謝料 三〇万〇〇〇〇円
購入物件時価控除分 六万一八〇〇円
損害額 二九七万一一三〇円
(一一) 原告加藤
支払済金額 一六三万四九八〇円
本件の弁護士費用 一六万〇〇〇〇円
慰謝料 三〇万〇〇〇〇円
購入物件時価 六万八四〇〇円
損害額 二〇二万六五八〇円
(一二) 原告岩田
支払済金額 一三九万四五六〇円
本件の弁護士費用 一四万〇〇〇〇円
慰謝料 三〇万〇〇〇〇円
購入物件時価 六万〇〇〇〇円
損害額 一七七万四五六〇円
8 結論
よって、被告らに対し、不法行為に基づき、原告別府は金二〇〇万三九〇〇円、原告松本は金一六九万七四八〇円、原告山本は金二二〇万三〇〇〇円、原告長谷川は金一七〇万三一八〇円、原告三林は金二二七万九六六〇円及、原告矢尾谷は金一五〇万五八四〇円、原告中野は金一六六万八九四〇円、原告志水は金五一一万六七一〇円、原告佐藤は金三三五万五八六〇円、原告高橋は金二九七万一一三〇円、原告加藤は金二〇二万六五八〇円、及びこれらに対する昭和六〇年一二月二三日から各支払済まで、原告岩田は金一七七万四五六〇円及びこれに対する被告サント、被告日本不動産流通につき昭和六二年七月五日から、被告岐阜銀行につき昭和六二年八月一日から、被告太陽ホームにつき昭和六二年八月五日から各支払済まで民法所定年五分の割合による遅延損害金の支払いを求める。
二 請求原因に対する被告サント、被告日本不動産流通の認否
1 請求原因1の事実のうち、(一)ないし(三)の事実は認め、(四)の事実は不知。
2 同2の事実は否認ないし争う。
3 同3の事実は否認する。
別荘地の販売は、少なくとも素地価格の一〇倍で行わなければ採算がとれないから、被告太陽ホームの販売価格は暴利ではない。
4(一) 同4(一)の事実のうち、大三土地が荘川ビレッジの造成販売を行っていた事実は認め、その余の事実は不知又は否認する。
(二) 同4(二)の事実は不知。
(三) 同4(三)のうち、被告サントの設立の事実は認め、その余の事実は否認する。
(四) 同4(四)の事実のうち、被告サントの債務引受の額が荘川ビレッジの現実取引価額を大きく超えるものであったことは否認し、その余の事実は認める。
(五)(1) 同4(五)(1)の事実は否認する。
寺西直勝は、米田親良による被告太陽ホームの設立に際し、同人に懇請されて名義を貸しただけである。
(2) 同4(五)(2)の事実は明らかに争わない。
(六) 同4(六)の事実は認める。
(七) 同4(七)の事実のうち、被告サントが被告岐阜銀行と「ぎふぎんサント別荘地ローン」によって、原告らに本件各土地の購入資金を貸し付け、本件各土地に抵当権の設定を受けた事実は認め、その余の事実は否認する。
5 同5の事実は否認し、法的主張は争う。
6 同6は争う。
7 同7の事実は不知又は争う。
三 請求原因に対する被告岐阜銀行の認否
1 請求原因1の事実は認める。
2 同2の事実は不知。
3 同3の事実は否認する。
4(一) 同4(一)の事実のうち、大三土地が荘川ビレッジの造成販売を行っていたこと、被告岐阜銀行が大三土地に融資をしていたことは認めるが、出資、役員の派遣の事実は否認する。
抵当権設定の事実は認めるが、(2)の極度額は、六五〇〇万円である。
(二) 同4(二)の事実のうち、被告岐阜銀行の大三土地に対する融資の事実は認めるが、その余の事実は否認する。
荘川ビレッジは、大三土地倒産時には荒廃していたが、資本を投下して開発を進めれば、販売を見込める状況であった。
(三) 同4(三)の事実は否認する。
(四) 同4(四)の事実のうち、被告サントが大三土地の被告岐阜銀行に対する一億四〇〇〇万円の債務について債務引受をしたこと、被告サントが被告岐阜銀行の融資により大三土地の税金滞納分を支払ったことは認め、その余の事実は否認する。
(五) 同4(五)(1)(2)の事実は不知。
(六) 同4(六)の事実は認める。
(七) 同4(七)の事実のうち、被告岐阜銀行が原告らに本件各土地の購入資金を貸し付け、本件各土地に抵当権の設定を受けた事実は認め、その余は争う。
6 同6は争う。
7 同7の事実は否認する。
(第二事件)
一 請求原因
1(一) 被告岐阜銀行は、昭和五六年四月二八日、原告別府に対し、一六〇万円を貸し付けた。うち、未払い金は、九一万三五〇九円であり、これに対する昭和五八年九月二九日から昭和六〇年四月二五日までの年7.0パーセントの割合による利息は一〇万〇五六一円である。
(二) 被告岐阜銀行は、昭和六〇年四月二五日、被告サントに対し、右債権を譲渡し、同年五月二三日、原告別府に対し、その旨の通知が到達した。
2(一) 被告岐阜銀行は、昭和五六年三月三〇日、原告松本に対し、一六〇万円を貸し付けた。うち、未払い金は、八九万三一九七円であり、これに対する昭和五八年一〇月一日から昭和六〇年四月二五日までの年7.0パーセントの割合による利息は九万七九八二円である。
(二) 被告岐阜銀行は、昭和六〇年四月二五日、被告サントに対し、右債権を譲渡し、同年六月一日、原告松本に対し、その旨の通知が到達した。
3(一) 被告岐阜銀行は、昭和五六年二月二七日、原告岩田に対し、一二〇万円を貸し付けた。うち、未払い金は、六四万二九四四円であり、これに対する昭和五八年一〇月二八日から昭和六〇年四月二五日までの年7.0パーセントの割合による利息は六万七二〇〇円である。
(二) 被告岐阜銀行は、昭和六〇年四月二五日、被告サントに対し、右債権を譲渡し、同年六月三日、原告岩田に対し、その旨の通知が到達した。
4(一) 被告岐阜銀行は、昭和五五年一〇月二三日、原告山本に対し、一四〇万円を貸し付けた。うち、未払い金は、六五万一三七八円であり、これに対する昭和五八年一〇月二四日から昭和六〇年四月二五日までの年7.0パーセントの割合による利息は六万八五八二円である。
(二) 被告岐阜銀行は、昭和六〇年四月二五日、被告サントに対し、右債権を譲渡し、同年五月二三日、原告山本に対し、その旨の通知が到達した。
5(一) 被告岐阜銀行は、昭和五五年一〇月二三日、原告長谷川に対し、一〇〇万円を貸し付けた。うち、未払い金は、四五万七七三三円であり、これに対する昭和五八年一〇月二四日から昭和六〇年四月二五日までの年7.0パーセントの割合による利息は四万八一九三円である。
(二) 被告岐阜銀行は、昭和六〇年四月二五日、被告サントに対し、右債権を譲渡し、同年五月二三日、原告長谷川に対し、その旨の通知が到達した。
6(一) 被告岐阜銀行は、昭和五五年一〇月二三日、原告三林に対し、一五〇万円を貸し付けた。うち、未払い金は、六九万五三六九円であり、これに対する昭和五八年一〇月二四日から昭和六〇年四月二五日まで年7.0パーセントの割合による利息は七万三二一三円である。
(二) 被告岐阜銀行は、昭和六〇年四月二五日、被告サントに対し、右債権を譲渡し、同年五月二七日、原告三林に対し、その旨の通知が到達した。
7(一) 被告岐阜銀行は、昭和五六年六月二九日、原告矢尾谷に対し、一三〇万円を貸し付けた。うち、未払い金は、九六万二四三五円であり、これに対する昭和五七年一二月三〇日から昭和五八年七月二八日まで年9.9パーセントの割合による利息は五万五〇七八円である。
(二) 被告岐阜銀行は、昭和五八年四月二八日、被告サントに対し、右債権を譲渡し、昭和六二年三月二〇日、原告矢尾谷に対し、その旨の通知が到達した。
8(一) 被告岐阜銀行は、昭和五六年四月二八日、原告中野に対し、一二〇万円を貸し付けた。うち、未払い金は、六七万七三四二円及びこれに対する昭和五八年九月二九日から昭和六〇年四月二五日まで年7.0パーセントの割合による利息は七万四五六三円である。
(二) 被告岐阜銀行は、昭和六〇年四月二五日、被告サントに対し、右債権を譲渡し、同年六月七日、原告中野に対し、その旨の通知が到達した。
9(一) 被告岐阜銀行は、昭和五五年六月二七日、原告志水に対し、一三〇万円を貸し付けた。うち、未払い金は、五〇万一六八九円であり、これに対する昭和五八年九月二八日から昭和六〇年四月二五日まで年7.0パーセントの割合による利息は五万五三二三円である。
(二) 被告岐阜銀行は、昭和六〇年四月二五日、被告サントに対し、右債権を譲渡し、同年六月七日、原告志水に対し、その旨の通知が到達した。
10(一) 被告岐阜銀行は、昭和五六年二月二七日、原告佐藤に対し、二二〇万円を貸し付けた。うち、未払い金は、一一七万三四三四円であり、これに対する昭和五八年一一月二八日から昭和六〇年四月二五日まで年7.0パーセントの割合による利息は一一万五六七一円である。
(二) 被告岐阜銀行は、昭和六〇年四月二五日、被告サントに対し、右債権を譲渡し、同年五月二三日、原告佐藤に対し、その旨の通知が到達した。
11(一) 被告岐阜銀行は、昭和五五年五月二七日、原告高橋に対し、一五〇万円を貸し付けた。うち、未払い金は、五二万三九八三円であり、これに対する昭和五八年一一月二八日から昭和六〇年四月二五日まで年7.0パーセントの割合による利息は五万一六五一円である。
(二) 被告岐阜銀行は、昭和六〇年四月二五日、被告サントに対し、右債権を譲渡し、同年六月三日、原告高橋に対し、その旨の通知が到達した。
12(一) 被告岐阜銀行は、昭和五五年一一月二八日、原告加藤に対し、一三〇万円を貸し付けた。うち、未払い金は、六四万九四六一円であり、これに対する昭和五八年九月二九日から昭和六〇年四月二五日まで年7.0パーセントの割合による利息は、七万一四九四円である。
(二) 被告岐阜銀行は、昭和六〇年四月二五日、被告サントに対し、右債権を譲渡し、同年五月二三日、原告加藤に対し、その旨の通知が到達した。
二 請求原因に対する認否
1 被告岐阜銀行の原告らに対する貸付の事実は否認する。
2 被告岐阜銀行から被告サントへの債権譲渡の事実は不知。
3 原告らへの債権譲渡通知の到達の事実は認める。
三 抗弁
被告サントは、被告太陽ホームと共謀して本件各土地の違法な販売行為をしたのであり、右行為によって生じた債権を被告岐阜銀行から譲り受けて原告らに請求することは、権利の濫用である。
四 抗弁に対する認否
否認する。
第三 証拠
本件訴訟記録中の書証目録及び証人等目録の記載を引用する。
第四 被告太陽ホームは、適式の呼出を受けながら、本件口頭弁論期日に出頭しないし、答弁書その他の準備書面も提出しない。
理由
一 被告太陽ホームについては、請求原因事実を明らかに争わないものと認め、これを自白したものとみなす(但し、損害額の点を除く。)。
二 当事者
被告岐阜銀行との間においては、請求原因1の事実は、全て争いがない。被告サント及び被告日本不動産流通との間においては、請求原因1(一)ないし(三)の事実は争いがなく、請求原因1(四)の事実は、弁論の全趣旨によってこれを認めることができる。
三 大三土地の荘川ビレッジの開発
成立に争いのない甲第一、第二号証によれば、以下の事実が認められる。
1 大三土地は、金森史郎が営んでいた不動産業を、会社組織に改めることとして、昭和三七年四月二日に設立された株式会社であり、昭和三七年から昭和四四年にかけて、愛知県知多半島方面、岐阜県郡上郡、三重県四日市市、三重県鈴鹿市等の土地について、別荘地開発、分譲住宅地造成、住宅団地造成の事業を行っていた。
2 昭和四五年夏頃からは、荘川ビレッジにおける高級別荘地開発に着手し、順次、岡崎市、岐阜市、名古屋市に支店を設置して事業を拡大した外、子会社として大三ハウス株式会社を設立し、別荘地の買主を施主とする建物建築工事の注文を受けたりもした。昭和四八年秋頃から、荘川ビレッジに六階建ての分譲マンションを建築する計画を立て、昭和四九年四月、株式会社トーメンと提携して、総工費七億円を要する工事に着手した。
3 しかし、昭和四八年一一月のいわゆる石油ショック以降、別荘地の売れ行きが著しく悪くなり、荘川ビレッジの外に、沖縄の分譲地の販売や、分譲マンションの一、二階を利用したメンバー制インペリアルクラブを手掛けたものの、いずれも成功することなく、経営難に陥った。
4 大三土地の主力銀行であった被告岐阜銀行は、昭和四八年末に一億二〇〇〇万円、昭和五〇年更に一億数千万円の融資をして大三土地の再建を図った。しかし、大三土地は、昭和五一年一月一六日、二回目の不渡手形を出して銀行取引停止処分を受け、同月二三日、名古屋地方裁判所に自己破産の申し立てをし、同年二月五日午前一〇時破産宣告を受け、弁護士古井戸義雄が破産管財人(以下「古井戸管財人」という。)に選任された。そして、被告岐阜銀行は、同年三月、五億三五一二万九八三四円(元金四億九三一八万四六八一円、利息四一九四万五一五三円)の破産債権届出をした。
四 荘川ビレッジの販売に至る経緯
甲第一、第二号証、成立に争いのない甲第三、第五ないし第一七号証、原本の存在及び成立に争いのない甲第二〇、第二一、第二七号証、被告サント代表者本人尋問の結果により成立が認められる乙第二号証、被告サント及び被告日本不動産流通との間においては原本の存在及び成立に争いがなく、被告岐阜銀行との間においては弁論の全趣旨により原本の存在及び成立が認められる甲第六八号証、被告サント代表者本人尋問の結果、被告日本不動産流通代表者本人尋問の結果、証人平井初秋、同遠藤峰史の各証言並びに弁論の全趣旨によれば、以下の事実が認められる。
1 被告サントの設立
寺西直勝は、昭和四七年六月二一日から昭和五〇年一〇月三一日まで、大三土地経理部に勤務していたものであるが、大三土地の経営が悪化し、同社の先行きに不安を覚えたこと、同人自身も宅地建物取引主任者の資格を有していたことから、大三土地が倒産したときに備えて、昭和五〇年四月一八日、大三土地の従業員仲間を誘い、資本金一〇〇万円を自ら全額出資して、緑都産業株式会社を設立した。そして、大三土地が破産宣告を受けた一か月後の昭和五一年三月頃、緑都産業の商号を「株式会社サント」と変更し、大三土地の所在地であった名古屋市中区大須に事務所を移転し、同年五月、被告サントとして宅地建物取引業の免許を取得し、宅地建物の売買・仲介業を始めた。
2 被告サントへの荘川ビレッジ販売の委託
(一) 被告岐阜銀行は、大三土地に対する昭和四七年から四九年にかけての銀行取引、手形取引、小切手取引によって生じた債権を担保するため、荘川ビレッジについて、荘川村大字町屋字西三洞五二七番三八三外二筆の山林(計一万〇〇五二平方メートル)につき、極度額五〇〇〇万円、荘川村大字町屋字西三洞五二六番一外一四二筆の山林(計四万四三一五平方メートル)につき、極度額六五〇〇万円、荘川村大字新渕字二俣瀬八八八番一の山林(計五万五二九一平方メートル)につき、極度額一億七五〇〇万円等の根抵当権の設定を受けていたが、大三土地倒産後において被告岐阜銀行が行った荘川ビレッジに対する評価は、右極度額よりもはるかに低いものであったうえ、抵当権を実行しても競落される見込みがほとんどなく、また、抵当権設定時より納期限の早い国税・地方税等の財団債権があったことからも抵当権の実行が困難な状態にあった。
そして、被告岐阜銀行は、荘川ビレッジのうち、二俣瀬の物件については、株式会社トーメンに買い取ってもらうように折衝をしたが、結局同社は買い取らなかった。
(二) 他方、古井戸管財人も、荘川ビレッジからは抵当権実行後の剰余を期待できない一方、開発途中のまま放置すると、荒廃が進み、破産債権者や近隣の土地所有者の利益を害するため、これを有利な価格で売却し、別荘地として存続させることを望んでいた。そして、大三土地に勤務していた寺西直勝が、荘川ビレッジの事情を良く知っていたことから、古井戸管財人と被告岐阜銀行は、協議のうえ、寺西直勝の設立した被告サントに荘川ビレッジを買い取らせることにした(なお、証人平井初秋は、被告サントから、荘川ビレッジを買い取ったうえこれを売り出すことを被告岐阜銀行に持ちかけてきたと証言するが、甲第七号証に照らし、措信できない。)。
そこで、古井戸管財人が、昭和五三年五月頃、寺西直勝に対し、荘川ビレッジの土地を買って販売するように勧めたところ、寺西直勝は、被告岐阜銀行と信頼関係を作れば、今後の営業資金の融資を受けることが容易になると考え、被告岐阜銀行大須支店の次長(当時)の平井初秋と相談したうえ、被告サントが従来の大三土地の荘川ビレッジに関する事業を引き継いで不動産業を経営することとなった。
被告サントは古井戸管財人から荘川ビレッジの土地を買い取ることとなったが、被告サントには資金がなかったため、次のような方法がとられた。すなわち、荘川ビレッジに設定してあった根抵当権の極度額は、合計三億九六〇〇万円に至ったところ、被告サント、被告岐阜銀行及び古井戸管財人の三者は、昭和五三年七月二六日、被告サントは大三土地の被告岐阜銀行に対する三億九六〇〇万円の被担保債務のうち、一億四一〇〇万円について、重畳的に債務を引き受けるとともに、その旨の登記をすること、被告岐阜銀行は当分の間抵当権を実行しない(その結果、破産配当からも除外される。)こと、古井戸管財人は被告サントに対し同被告において大三土地の国税・地方税の滞納金一三六九万三八〇〇円を代納することを対価として荘川ビレッジを譲渡することを合意し、その後右租税の代納は実行され、滞納処分が解除されたうえ、同年八月一四日大三土地から被告サントに対する所有権移転登記が経由された。
(三) 被告サントは、昭和五三年から昭和五六年にかけて、工事請負業者、設計業者に依頼して、荘川ビレッジの荘川村町屋字西三洞五二六番、同五二七番について、道路整備工事を、荘川村新渕字二俣瀬八八八番の土地について、道路整備工事、緑道整備工事、測量分筆、道路の手直しをして、代金合計六〇一〇万七五〇〇円を支出した。
被告岐阜銀行は、被告サントとの間で、昭和五三年九月二五日、被告サントが顧客に対して荘川ビレッジを中心とする別荘地を売却した場合に、顧客は、被告サントの連帯保証のもとに被告岐阜銀行から土地購入価格の七〇パーセントを限度して融資を受けることができるという内容の「ぎふぎんサント別荘地ローン」と称する提携ローンに関する契約を締結した。そして、右契約によれば、融資された金銭は、被告サントの被告岐阜銀行大須支店に開設してある口座に入金されることになっていた。
被告サントは、自ら直接販売活動を行わず、初め不動産会社の協栄ホームに荘川ビレッジの販売活動を任せ、その後、協栄ホームを退社した社員によって設立された星和ホームに荘川ビレッジの販売活動を任せた。
(四) 被告岐阜銀行は、被告サントに対し、前記荘川ビレッジの造成資金と、被告サントによる大三土地の国税・地方税の支払いのため、①昭和五三年七月三一日二四〇万円、②同年八月一日一〇三〇万円、③同月八日一三七〇万円、④同月二五日一九〇万円、⑤同日二〇〇万円、⑥同年九月二六日二一四〇万円、計五一七〇万円の融資をした。
3 昭和五四年八月三一日、金森史郎が被告サントの取締役に就任し、寺西直勝と共に被告サントの経営の中心となった。
寺西直勝は、前記協栄ホームの営業部長をしていた米田親良と共に、昭和五四年一一月一二日、被告太陽ホームを設立し、右米田が代表取締役に就任した。寺西直勝は、被告サントの代表取締役に就任していたが、更に、昭和五五年一二月三一日、被告太陽ホームの監査役に就任した(昭和五六年四月二七日退任)。
被告太陽ホームは、設立後約半年の間、被告サントの隣の部屋に事務所を有し、専任取引主任者は金森史郎であったが、金森史郎への報酬を被告サントが支給するなど、被告太陽ホームと被告サントの営業は、事実上一体化していた。
そして、被告サントは、昭和五五年一一月頃、被告太陽ホームに対し、岐阜県大野郡荘川村大字町屋字西三洞五二六番一一、二四、三四、三五、五一、一一九、一二七、一四二、一四四、一八三、二〇七、二一七、二二二、二二八ないし二三〇、二三五ないし二三七、二四〇ないし二四三、二四五、二四六、二四八、二五〇、二五二、二五三、二五八ないし二六五を一平方メートルあたり五〇〇〇円ないし六〇〇〇円で、同五二七番九〇、二二六、三二四、三三〇、三三三、三三四、三八三、三八五、三八九ないし三九五、四〇一ないし四〇四、四〇六、四〇七、四〇九ないし四一二、四二〇ないし四二五、四二八ないし四三六、四三九ないし四四六、四五〇、四五六、四五七を一平方メートルあたり三〇〇〇円ないし五〇〇〇円で、岐阜県大野郡荘川村大字新渕字二俣瀬八八八番八九を一平方メートルあたり二五〇〇円ないし三〇〇〇円で、岐阜県大野郡荘川村新渕字上洞八八四番三八三ないし三八五、四五六ないし四五八を一平方メートルあたり三〇〇〇円ないし三五〇〇円で、岐阜県大野郡荘川村大字町屋字作助谷五二四番一七〇ないし一七三を一平方メートルあたり五〇〇〇円で、岐阜県大野郡荘川村大字野々俣字中ノ谷一〇一三番三九ないし八六を一平方メートルあたり一二一二円で、同一〇一二番、五、八、一二、二八、二九、五〇、六二、六四、七一、八二ないし八八、九〇ないし一〇四を一平方メートルあたり一五〇〇円ないし三〇〇〇円で売却し、その頃その旨の登記を了した。その際、米田親良は、被告太陽ホームが被告サントに対して負担する債務を連帯保証した。
右売買契約における売買代金の支払方法として、①被告太陽ホームが第三者に現金で転売したときに被告サントに現金で支払う「現金支払」、②被告太陽ホームが銀行ローンを利用して第三者に転売した場合銀行ローン実行と同時に被告サントに現金で決済する「銀行ローンの利用」、③被告太陽ホームが被告サントに割賦手形で転売した場合被告サントに対して税法で認められている範囲の割賦販売基準に従い割賦販売手形をもって決済するものとする「割賦手形支払」の三方式が定められた。
五 本件各取引
弁論の全趣旨によって成立が認められる甲第二六、第二九、第三五ないし第三八、第四一、第四四、第四九ないし第五二号証、弁論の全趣旨によって原本の存在及び成立が認められる甲第二八、第三〇、第三二、第三三、第四八号証、証人長谷川茂子の証言によって原本の存在及び成立が認められる甲第三一号証、官署作成部分の原本の存在及び成立は争いがなくその余の部分の原本の存在及び成立は証人長谷川茂子の証言によって認められる甲第四二号証、原告中野本人尋問の結果によって成立が認められる甲第三四、第四五号証、官署作成部分の成立に争いがなくその余の部分の成立は弁論の全趣旨によって認められる甲第四〇、第四三、第四六、第四七号証、官署作成部分の原本の存在及び成立は争いがなくその余の部分の原本の存在及び成立は弁論の全趣旨によって認められる甲第六六号証の一ないし三、原告中野本人尋問の結果、証人長谷川茂子、同遠藤峰史、同木下守の証言並びに弁論の全趣旨によれば、以下の事実が認められる。
1 被告太陽ホームの営業社員であった菓あや子、佐藤人志、池田憲治、池田曉彦、吉井秀子、新海昌信、林某らは、以下のようにして、原告らに対し、本件各土地を売却した。
(一) 原告別府
(1) 原告別府は、昭和二五年生まれの独身男性であり、中学校卒業後、昭和四四年紡績会社に集団就職した後、昭和四四年に退職して、豊田自動車工業株式会社に転職した。
(2) 菓あや子と同佐藤人志は、昭和五六年一月二〇日頃原告別府宅を訪れ、「普通の人には買えないもので、あなたは選ばれた人です。」「銀行に預金しても利子はしれている。土地を買っておけばそれ以上に値上りする。」「この土地の近くには産業道路ができ、絶対値上りします。」などと言って、本件土地一の購入を勧めた。その後、数回夜一〇時ないし一一時頃原告別府宅を訪れ、一時間位の間勧誘し、原告別府宅から被告太陽ホームの事務所に電話して、荘川ビレッジが売れているかのようなやりとりをして、原告別府を欺罔した。また、「この土地には、岐阜相互銀行(被告岐阜銀行)がローンを組みますから、分割でも買えますよ。銀行はきちんとした土地にしか手は出しませんよ。」と言った。
(3) 原告別府は、昭和五六年二月二二日、被告太陽ホームから本件土地一を二三三万一六〇〇円(一平方メートルあたり八七〇〇円)で購入し、同月二五日被告太陽ホームに対し頭金七三万一六〇〇円、登記費用五万三一〇〇円を支払い、数日後、菓あや子と同佐藤人志に連れられて被告岐阜銀行大須支店に赴き、被告岐阜銀行との間で残金一六〇万円を借り受け、これを毎月二万五四四〇円、ボーナス月七万六三四〇円合計五〇回の分割払いによって支払う旨のローンを組み、その後合計八三万九六〇〇円の分割金を支払った。
(二) 原告松本
(1) 原告松本は、昭和二八年生まれの独身男性であり、商業高校卒業後の昭和四六年から、日本電装株式会社に勤めて、自動車部品の製造に従事しており、約四〇〇万円の年収を得ている。
(2) 菓あや子は、昭和五六年二月初め頃、電話で訪問の約束をとったうえ、佐藤人志と共に原告松本宅を訪問し、「金、ダイヤを買うより、土地を買っていた方が、はるかに有利だ。土地が一番値上りする。目減りもしないから絶対安心だ。」と言った後、新聞記事を示して、「このように、岐阜県の荘川村を高速道路が通るので、間違いなく、荘川村の土地の値段が上がる。今の内なら二〇〇万円位と手頃な値段で買うことができる。安い内に買っておいたらどうか。五年たてば当社が四〇〇万円か六〇〇万円で責任をもって買い戻すので心配もありません。ただ、後僅かしか残りがないので、早く決めてもらわないと困る。」「実は、土地の支払いは、支払いやすいように、銀行のローンでできるのです。銀行はこの土地を担保に金を貸すのだから、おかしな土地であるはずはない。もし変な会社や物件だったら、銀行はとてもローンを組んでくれない。銀行の審査はとても厳しいからだ。我々も銀行が間に入っているので、信用のない人にはこの土地を勧めていない。銀行がローンを組んでくれる人にだけこの土地の話を勧めている。日本電装にお勤めのあなただから、熱心に勧めているのだ。」などと言って本件土地二の購入を勧めた。
(3) 原告松本は、昭和五六年二月二五日、被告太陽ホームから本件土地二を二〇五万三二〇〇円で購入し(一平方メートルあたり八七〇〇円)、同年三月一六日頃、被告太陽ホームに対し手付金四一万〇六四〇円、中間金四万二五六〇円を支払い、残金一六〇万円について被告岐阜銀行と六〇回払いのローンを組んで支払うこととし、昭和五八年七月二八日まで右分割弁済金合計八八万五二八〇円を支払い、更に、昭和五六年五月二七日、被告太陽ホームに本件土地の登記費用五万三一〇〇円を支払った。
(三) 原告山本
(1) 原告山本は、昭和二三年生まれの既婚男性であり、工業高校卒業後、親類の経営する鉄工所に勤務した後、喫茶店を経営して生計をたてていた。
(2) 昭和五五年九月二七日頃、若い女性が原告山本宅に電話をして、良い利殖の話があるから訪問したいと言って面会の約束を取り付けた。同月二九日午後八時過ぎ、池田憲治と二五才くらいの女性が、原告山本宅を訪れ、約一時間にわたり、荘川ビレッジが、東海北陸自動車道が完成すれば値上りは確実であり、五年後には二、三倍の値段になること、荘川ビレッジの土地を購入する際、被告太陽ホームが提携している被告岐阜銀行から購入代金の融資を受けることができ、間違いのない土地であること、本件土地は六メートルの道路に面し、電気もすぐに引け、すぐに家を建てることができる、荘川ビレッジの二〇〇万円位の物件は残り少ないなどと言って、本件土地三の購入を勧め、土地を確保すると言う名目で、原告山本に二万円を支払わせた。
(3) 昭和五五年九月三〇日、池田憲治と浜田均が原告山本宅を訪れ、原告山本は、被告太陽ホームから、本件土地三を二〇一万円(一平方メートルあたり七五〇〇円)で購入した。
原告山本は、同年一〇月一五日、売買代金のうち六一万円を被告太陽ホームに支払い(うち二万円は、同年九月二七日ころ支払ったものを充当した。)、残金一四〇万円を被告岐阜銀行と五年間六〇回のローン契約を組み支払うこととし、昭和五五年一一月二三日から昭和五八年一〇月頃までの間に被告岐阜銀行に分割弁済金一〇九万八〇〇円を支払い、更に、昭和五五年一二月一八日、被告太陽ホームに対し、登記費用五万一三〇〇円を支払った。
(四) 原告長谷川
(1) 原告長谷川は、昭和二〇年生まれの既婚男性であり、中学校卒業後、株式会社日本碍子に入社して、設計関係の仕事に従事している。
(2) 昭和五五年九月頃、被告太陽ホームの女性従業員が、電話で、原告長谷川の妻長谷川茂子に「確実に値上りのするよい土地がある。」と本件土地の購入を勧め、翌日から、菓あや子、池田曉彦は、数回にわたって原告長谷川宅を訪れ、長谷川茂子に対し、新聞のコピーを見せ、「このように、星ケ丘の土地は高速道路ができてから、一〇倍、二〇倍に上がった。早い内に土地を手に入れた人は、ずいぶんいい投資になった。」「実は東海北陸自動車道のインターチェンジができるところの近くにいい土地がある。星ケ丘のように、間違いなく値が上がる土地だ。近くに大きな工場も建つ予定で、人もたくさん集まってくる。投資をするには格好の土地だ。」「実は、自分も二年前に同じ土地を買った。私が買ったときの単価はこの契約書に書いてあるとおり一平方メートルあたり五二五〇円だが、現在では、これ位上がるのですから、値上りは絶対に間違いない。五年間で四〇〇万円くらいにはなる。」「太陽ホームという会社は、サントという大きなビルを建てる大きな会社から独立した会社だ。サントでの宅地売買の仕事量が増え、処理しきれなくなったので、太陽ホームが独立することになった。すこし調べてもらえば、サントや太陽ホームがしっかりした会社であることが分かってもらえると思う。」「実は、今回の物件については、岐阜相互銀行がローンを組んでくれているのです。太陽ホームがいい加減な会社なら銀行はローンを組んでくれないし、また、今回の物件が変な物件なら、銀行は決してローンを組んでくれません。しっかりした銀行がローンを組んでくれるくらいの土地ですから、絶対、間違いありません。」「また、銀行がローンを組んでいる以上、太陽ホームも誰にも彼にもこの土地を勧めているわけではありません。銀行の厳しい審査をパスできる人にだけこの話をしているのです。」などといって本件土地四の購入を勧めた。
(3) 昭和五五年一〇月七日、菓あや子、池田曉彦はもう一名の営業社員を伴って原告長谷川宅を訪れ、更に勧誘を続けた結果、長谷川茂子は、原告長谷川名義で被告太陽ホームから本件土地四を一五〇万七五〇〇円(一平方メートルあたり七五〇〇円)で購入し、被告岐阜銀行とローンを組んだ。同日夜、仕事から帰った原告長谷川は、長谷川茂子から、右契約の話をきき、これを了承した。数日後、長谷川茂子は、菓あや子、池田曉彦と被告岐阜銀行で、融資の審査を受け、同月中旬、被告太陽ホームに対し、頭金、中間金合計五〇万七五〇〇円を支払い、その後登記費用四万九七〇〇円を支払った。残金一〇〇万円を被告岐阜銀行と六〇回分割払いのローン契約を組んで支払うこととし、昭和五八年一〇月二三日の第三六回分まで合計七七万六二八〇円を支払った。
(五) 原告三林
(1) 原告三林は、昭和五〇年から同人の父親の経営する三林工作所に勤め、昭和五八年から株式会社富士技研に勤務している既婚男性である。
(2) 新海昌信と被告太陽ホームの若い女性訪問販売員が、昭和五五年八月末の午後六時頃、原告三林宅を訪れ、「土地を買った方が銀行預金より利益があがる。貯金をしているよりその方がマイホームも早くたつ。」などと言い、更に、本件土地五の近くに東海北陸自動車道のインターチェンジができるため、必ず値の上がる土地であること、銀行利率は年七、八パーセントであるが、本件土地五は年三〇パーセント位の値上がりが見込まれ、四年後には必ず二倍以上になるなどと言って本件土地五の購入を勧めた。また、他の者も荘川ビレッジの土地を購入しているかのごとく装い、「岐阜相互銀行がバックにいる取引なのだから、絶対安心だ。」「頭金を三、四割払えば、登記簿はすぐお宅の名義になるからすぐにでも売れます。」などと言って勧誘した。一、二週間後、新海昌信らは、原告三林と妻を本件土地五に案内して、本件土地五と既に開発された他の土地を見せた。
(3) 原告三林は、昭和五五年九月二一日、被告太陽ホームから、本件土地五を二一五万二五〇〇円で購入し(一平方メートルあたり七五〇〇円)、九月二四日、手付金四三万〇五〇〇円、中間金二二万二〇〇〇円を被告太陽ホームに支払い、残金一五〇万円について被告岐阜銀行とローン契約を締結して、昭和五五年一一月から昭和五八年一〇月まで合計一一七万一五六〇円の分割弁済金を支払い、更に、昭和五五年一二月一〇日、被告太陽ホームに対し、登記費用五万一七〇〇円を支払った。
(六) 原告矢尾谷
(1) 原告矢尾谷は、昭和三一年生まれの男性であり、中学校を卒業してすぐに就職し、現在に至っている。
(2) 菓あや子と池田憲治は、昭和五六年三月頃の夜九時過ぎ、二回にわたって、原告矢尾谷宅を訪れ、一回目は、「株式会社太陽ホームの者だが、非常にいい土地を売っている。近々高速道路ができるところで、値段が上がる。この土地の販売は太陽ホームが岐阜相互銀行と提携して行っており、間違いのないものである。」と一時間位の間説明し、二回目は、「現地は現在山林であるが、このように道もあり、区画が分けられている。この土地のすぐ近くを高速道路が通るので、五年後にはこの土地の値段は二倍にはなる。岐阜相互銀行が提携会社であり、支払いは岐阜相互銀行のローンを組む、これは太陽ホーム及び売買物件が間違いのないものだからできるのだ、土地を買うことは預金するのと同様確実なものであり、荘川の物件は優良物件であるから銀行預金するよりも有利である。」と夜一二時頃まで、本件土地六の購入を勧めた。
(3) 原告矢尾谷は、昭和五六年四月一日、被告太陽ホームから、本件土地六を一九二万二七〇〇円で購入し(一平方メートルあたり八七〇〇円)、同月二一日、被告太陽ホームに手付金及び中間金六二万二七〇〇円、登記費用三万六九〇〇円を支払い、残金一三〇万円について被告岐阜銀行に昭和五六年七月から昭和六一年六月まで分割弁済する旨のローン契約を締結して、昭和五七年末までに合計四九万二五四〇円を弁済した。
(七) 原告中野
(1) 原告中野は、昭和二二年生まれの既婚男性であり、中学校卒業後、東芝セラミックスに半年間勤務した後、日本電装株式会社に勤めて現在に至っている。
(2) 若い女性が、昭和五六年一月頃、原告中野宅に電話で「普通の不動産の売買ではなく、投資をしていただく話です。お金を出して土地を持っていただき、三年又は五年の満期で値上りしたところで、当社が買い取るものです。また、希望すればいつでも当方で転売してお金にできますよ。」と勧誘し、その一週間後、菓あや子と佐藤人志は、三回にわたって、原告中野宅を訪れ、「岐阜県荘川村の『荘川ビレッジ』という名の土地で、自動車道ができて、近くにインターができる良い土地です。」「うちの場合は、銀行が入っています。銀行が会社も土地も信用しているわけです。」「代金については岐阜相互銀行がローンを組みます。」などと言って本件土地七の購入を勧め、更に、同日他にも荘川ビレッジの土地を購入した者があるかのような仕草を見せ、被告太陽ホームの事務所に電話をして、「あの物件はまだあるか。売れたか。」と言って、荘川ビレッジの土地が残り少ないかのような印象を抱かせた。
(3) 菓あや子と佐藤人志は、昭和五六年二月一七日、原告中野宅を訪れ、原告中野は、被告太陽ホームから、本件土地七を一八〇万〇九〇〇円で購入し(一平方メートルあたり八七〇〇円)、代金の一部として同日三六万〇一八〇円、同年四月頃二四万〇七二〇円を支払い、一週間後、原告中野は、被告岐阜銀行大須支店に行き、残金一二〇万円について被告岐阜銀行とローン契約を締結して、分割弁済金計六四万八六四〇円を弁済し、更に、昭和五六年五月二七日、被告太陽ホームに登記費用五万一五〇〇円を支払った。
(八) 原告志水
(1) 原告志水は、昭和一一年生まれの既婚男性であり、中学校卒業後、製薬会社に五年間勤務した後、三菱上山田炭坑等の炭坑で一五年間勤務した。昭和四八年から東芝セラミックでプレス工員として勤務し、現在に至っている。
(2) 昭和五五年二月頃、被告太陽ホームから、原告志水宅に女性の声で電話がかかり(原告志水の妻栄子が応対した。)、「土地の購入による利殖についてお話ししたいので、一度訪問したい。」と言ってきた。その二、三日後の午後八時頃から一か月の間に四、五回にわたって、菓あや子と池田憲治が被告太陽ホームの従業員と名乗って、原告志水宅を訪れ、「銀行に預金しておくと目減りするので、土地を購入しておく方が有利です。」「土地の場合は、年一五パーセント程度の値上りをするので銀行金利より有利です。」などと言い、荘川ビレッジが別荘地として有望な土地であり、近い将来、本件土地八の附近に東海北陸自動車道のインターチェンジが建設されるから値上りが確実である、すぐにひるがののような別荘地になる、荘川ビレッジの場合は、購入資金について岐阜相互銀行から融資が受けられる、などと言って、本件土地八の購入を勧めた。
(3) 原告志水は、昭和五五年三月一七日、被告太陽ホームから、本件土地八を二二〇万円で購入し(一平方メートルあたり一万二五〇〇円)、同日手付金四四万円と中間金五六万円を支払い、残金一二〇万円について、被告岐阜銀行と六〇回払いのローン契約を締結したが、一か月後に全額を弁済し、更に、被告太陽ホームに登記費用五万八〇八〇円を支払った。
(4) 原告志水は、昭和五五年五月二六日、池田憲治の勧誘により、被告太陽ホームから、本件土地九を二三三万七五〇〇円で購入し(一平方メートルあたり一万二五〇〇円)、同日手付金四六万七五〇〇円、中間金五七万円を支払い、残金一三〇万円について、池田憲治が手続を代行して、被告岐阜銀行と六〇回払いのローン契約を締結し、昭和五八年八月まで分割弁済金合計一一二万二〇三〇円を支払い、更に、被告太陽ホームに登記費用五万八〇〇〇円を支払った。
(九) 原告佐藤
(1) 原告佐藤は、昭和一九年一〇月一一日生まれの既婚男性であり、高校卒業後、長崎県でしばらく働いた後、愛知県知立市の株式会社津田鈑で勤務し、現在に至っている。
(2) 菓あや子、佐藤人志は、昭和五六年一月二〇日夜頃の八時頃、原告佐藤宅を訪れ、原告佐藤に対し、「実は、あなたが抽選であたり、当たった人にだけ当社が荘川ビレッジの土地を売ります。」「自動車道が途中までできており、近くにはインターを工事中です。」「この土地は、五年後には自動車道が開通して倍になりますよ。」「いくら貯金しても、金利より地価上昇の方が大きいから、この土地を買った方が得ですよ。」などと言い、勧誘の途中で、原告佐藤宅から被告太陽ホームの事務所に電話をして、「荘川はまだ残っているか。」などと言って早く契約を締結しないと荘川ビレッジの土地が売り切れるかのような素振りを示した。更に、「支払いについては、銀行ローンがついているから、分割でできます。」「岐阜相互銀行がローンを組んで、この土地に抵当権をつけますが、銀行は北海道の原野のような変なものには手は出しませんよ。」と言って原告佐藤に本件土地一〇、一一の購入を勧め、また、土地の名義人は被告太陽ホームの親会社である被告サントであることを説明した。
(3) 原告佐藤は、昭和五六年二月二日、被告太陽ホームから、本件土地一〇、一一を三五五万八三〇〇円で購入し(一平方メートルあたり八七〇〇円)、昭和五六年二月二日までに手付金七一万一六六〇円、頭金六四万六六四〇円を支払い、残金二二〇万円については、原告佐藤の妻の佐藤千保子が菓あや子と被告岐阜銀行大須支店に行き、六〇回払いのローン契約を締結して、昭和五八年一一月分まで分割弁済金合計一四七万四五六〇円を支払い、更に、被告太陽ホームに登記費用五万五七〇〇円を支払った。
(一〇) 原告高橋
(1) 原告高橋は、昭和二六年生まれの既婚男性であり(昭和五五年一〇月結婚)、高校卒業後、日本電装株式会社で金型の仕上げの仕事をして、現在に至っている。
(2) 昭和五五年二月頃の午後六時頃、原告高橋宅に若い女性から電話がかかり、「今、あなたの持っているお金を増やしませんか、銀行預金の定期でも年五パーセント位ですが、私の所では年二〇パーセントも二五パーセントにもなる利回りのよい利殖ですが、一度話だけでも聞いてもらえないでしょうか。」と言って、面会の約束を取り付け、同日午後八時頃、吉井秀子、新海昌信と二三才位の男性が原告高橋宅を訪れ、「私の所の会社は荘川村に荘川ビレッジという土地を持っていて、この土地は、別荘地として最適で東海北陸自動車道も開通が間近で、ひるがの高原よりも交通の便が良くなり、別荘地としては荘川の方が良く、自動車道ができると一時間ちょっとで行けることになります。」「五年後には二倍になることは間違いなく、お金を増やすには銀行よりもはるかに有利です。」「パンフレットにかいてあるとおり、岐阜相互銀行が、この土地について融資してくれることになっており、銀行はおかしな土地なら融資してくれるはずがないから、間違いのない土地だから心配ないし、もう二、三の区画しかあいていないので、早く手付だけでも出してくれないとなくなりますよ。」などと言って本件土地一二、一三の購入を勧めた。更に、本件土地一二、一三は、六メートルの舗装道路とU字溝も入っており、電気、水道もすぐ引き込め、すぐに別荘を建てることができ、周りにも既に別荘が建っていると言って、手付金一万円を交付させた。
(3) 新海昌信と前記二三才位の男性は、昭和五五年三月二四日頃、原告高橋宅を訪れ、原告高橋は、被告太陽ホームから、本件土地一二、一三を二五八万七五〇〇円で購入し(一平方メートルあたり一万二五〇〇円)、同月二九日に手付金五一万七五〇〇円、中間金五七万円を支払い(うち一万円は手付金を充当した。)、更に、新海昌信と被告岐阜銀行大須支店に行き、残金一五〇万円について被告岐阜銀行と六〇回払いのローン契約を締結して、昭和五八年一一月二七日まで分割弁済金計一三三万一二六〇円を支払い、更に、昭和五五年六月一七日、被告太陽ホームに登記費用六万四一七〇円を支払った。
(一一) 原告加藤
(1) 原告加藤は、昭和四七年生まれの既婚男性であり、昭和四七年に自動車整備会社を卒業後、愛知トヨタ販売株式会社で勤務し、昭和五五年からは、自動車改造・修理等の自営業をして、現在に至っている。
(2) 昭和五五年一一月初旬、被告太陽ホームから、原告加藤宅に女性の声で電話があり、「非常に有利な利殖がありますから、一度説明に伺いたい。」と言った後、同日夜一一時三〇分頃、池田憲治と菓あや子が、原告加藤宅を訪れ、原告加藤はその日は二人に帰ってもらったが、その後、再び池田憲治と菓あや子が原告加藤宅を訪れ、荘川ビレッジの説明をして、高速道路が開通することを言い、「物価上昇から考え、土地が一番有利な利殖であり、この荘川村の土地は、これから高速道路もできニュータウンとして発展していき、今購入すれば、五年先には、二倍にも三倍にも、いやそれ以上に値上りする土地です。」「また、あなたが購入され、翌日不要になれば、すぐに転売でき、太陽ホームで買い取ってもよいし、その場合でも利益がでます。」「岐阜相互銀行がバックアップしていて、岐阜相互銀行より購入資金を借り入れできますから、うちの会社間違いありませんから信用して下さい。」などと言って、本件土地一四の購入を勧めた。
(3) 原告加藤は、昭和五五年一一月一五日、被告太陽ホームから本件土地一四を一九八万三六〇〇円で購入し(一平方メートルあたり八七〇〇円)、手付金三九万六七二〇円、中間金二八万六八八〇円を支払い、池田憲治と被告岐阜銀行大須支店に行って、残金一三〇万円について被告岐阜銀行と六〇回払いのローン契約を締結し、昭和五五年一二月二六日から昭和五八年七月二八日まで分割弁済金合計九〇万〇四八〇円を支払い、更に、昭和五五年一二月二八日、被告太陽ホームに登記費用五万〇九〇〇円を支払った。
原告加藤は、契約締結前から、現地の案内を頼んでいたが、被告太陽ホームは、何かと理由をつけて、これに応じなかった。
(一二) 原告岩田
(1) 原告岩田は、昭和四〇年から豊和工業株式会社に勤務している既婚男性である。
(2) 被告太陽ホームの従業員が、昭和五五年一二月頃、原告岩田宅に電話をした後、菓あや子と林は、原告岩田宅を訪れ、土地の造成の工事現場の写真を見せ、午後六時から午後一〇時にかけて、「荘川ビレッジは五年もすれば、五倍の価格になる。」「東海北陸自動車道のインターが近くにできるので、これからは大幅に値上りする。」「貯金では目減りするので土地の方が有利である。」「とにかく手付金を支払ってくれ、後でだめなら返すので支払ってほしい。」「手付金一万円をもらわなければ帰れない。」などと執拗に本件土地一五の購入を勧めたため、原告岩田は手付金として一万円を支払った。
(3) 昭和五六年一月、菓あや子と林が、原告岩田宅を訪れ、代金支払については銀行のローンが利用できるなどと更に強引に勧誘をしたところ、原告岩田は、昭和五六年一月一九日、被告太陽ホームから本件土地一五を一七四万円(一平方メートルあたり八七〇〇円)で購入し、同日手付金、中間金合計五四万円を支払い(うち一万円は既払金を充当した。)、翌日、被告岐阜銀行大垣支店において、被告岐阜銀行と、残金一二〇万円について被告岐阜銀行と六〇回払いのローン契約を締結して、昭和五八年一〇月分まで分割弁済金合計八〇万四五六〇円を支払い、更に、被告太陽ホームに登記費用五万円を支払った。
2 被告サントは、原告らに対し、被告岐阜銀行に行ってローンの手続きをするように指示し、被告岐阜銀行は、原告らから、売買契約書、借用金証書、印鑑証明、借入申込書、所得証明、住民票、担保設定のための登記委任状、担保設定契約書を受領して、原告らの融資資格の審査をした後、ローン契約を締結した。
そして、被告岐阜銀行は、「ぎふぎんサント別荘地ローン」の融資金を、被告岐阜銀行の被告サント名義の口座に入金した。これによって、原告らが被告太陽ホームに対して負担する売買代金債務、被告太陽ホームが被告サントに対して負担する売買代金債務が共に決済された。
次いで、被告サントの被告岐阜銀行に有する口座に入金された金銭が、被告サントの被告岐阜銀行に対する債務の弁済に充当され、被告岐阜銀行が本件各土地についてそれまで有した根抵当権設定登記が抹消され、新たに、被告岐阜銀行の原告らに対するローンの担保として、本件各土地に抵当権が設定された。
3 しかし、寺西直勝が、被告サントの名義で、星和ホーム株式会社に宅地建物取引業を営ませたことから、宅地建物取引業法違反により逮捕され、営業免許の取消し、被告サントの廃業が確実となったことから、被告サントから被告岐阜銀行(当時の支店長木下守)に対し、「ぎふぎんサント別荘地ローン」の取扱中止を申し入れ、昭和五六年六月、右ローンの提携が解消された。
六 本件各土地の価値
1 甲第七号証(不動産名義変更の許可申請書)及び弁論の全趣旨によれば、被告岐阜銀行は昭和五三年六月一九日古井戸管財人が破産裁判所に提出した文書に添付されている支払い税金計算表を作成したこと、同表は、固定資産税評価額を参考に、未造成の状態の荘川ビレッジの土地について、西三洞地区につき、一平方メートルあたり二〇〇円、二俣瀬地区につき、一平方メートルあたり四九円の評価をして古井戸管財人に提出したものであることが認められる。
2 甲第二一号証によれば、被告サントと被告岐阜銀行の債務引受契約書において、二俣瀬地区が一平方メートルあたり六〇〇円、西三洞地区が一平方メートルあたり一〇三九円の評価がされていたことが認められる。
3 弁論の全趣旨により原本の存在及び成立が認められる乙第三号証、丙第一号証によれば、山下三郎鑑定士は、本件各土地の昭和五五年八月二〇日時点の時価を一平方メートルあたり六六〇〇円と評価したことが認められる。
4 成立に争いのない甲第四号証によれば、山下三郎鑑定士は、大三土地が本件各土地を所有していた昭和五四年一月二〇日時点で、本件各土地と関連する岐阜県大野郡荘川村大字町屋字西三洞五二六番七五、同九一、同九二、同一一四について、一平方メートルあたり一七〇円から二五〇円と評価したことが認められる。
5 弁論の全趣旨により成立が認められる甲第一八号証によれば、不動産鑑定士西尾敏は、昭和五八年一〇月二八日時点の本件各土地のうち原告矢尾谷の所有する本件土地六について、一平方メートルあたり三〇〇円の評価をしたことが認められる。
6 弁論の全趣旨により成立が認められる甲第一九号証によれば、不動産鑑定士武藤正行は、昭和五六年一月一九日ないし昭和五九年八月二日時点における本件土地の近隣地(岐阜県大野郡荘川村大字新渕字二俣瀬八八八番二三六、同二三七、同一七二、同二六九、同二七〇)について、一平方メートルあたり八〇〇円と評価したことが認められる。
7 これに対し、被告らは、荘川ビレッジ付近の土地の取引事例や、荘川ビレッジの土地に六四三一万七五七〇円の費用を投下したことを理由に、本件各土地の時価が原告の主張するような低いものではなく、被告太陽ホームの売却価額をもって妥当な額であると主張する。
しかし、被告太陽ホームの売却価額は、被告太陽ホームが本件各土地を別荘地として造成することを前提として価格設定がされているのに、造成途中で開発計画除外の変更申請が出されており、また、被告サント及び被告日本不動産流通との間では撮影対象物が荘川ビレッジの土地であることは争いがなく弁論の全趣旨により本件各取引後に撮影されたことが認められ、被告岐阜銀行との間では弁論の全趣旨により撮影対象物が荘川ビレッジの土地であり、本件各取引後に撮影されたことが認められる甲第三九号証によれば、本件各土地は、別荘地として造成されたような形跡は全く窺われない。
しかも、被告サントは既に廃業しているから、被告サントによる造成も見込まれず、原告らが独自に造成工事をするとしても、多大な費用負担が強いられることが必定である。
そして、荘川ビレッジは、元来、大三土地が別荘地として造成して売り出そうとしたところ、買い手が付かなかったものであって、大三土地の破産の原因となるほど採算性のない物件であったこと、更に、被告岐阜銀行が抵当権を設定していたにもかかわらず、競落される見込みがない状態だったのであった等の事情を総合すれば、被告サントが大三土地の手法を承継して本件各土地を造成したところで、大三土地の失敗を繰り返す可能性が大きかった。
8 したがって、本件各土地については、いわゆる素地価格として評価する外なく、被告サントが造成のために投下した費用や、今後別荘地として値上がりする可能性を考慮することはできない。
9 そこで、前掲各証拠による評価額を比較すると、
(一) 甲第二一号証の評価額は、被告岐阜銀行の有していた荘川ビレッジの抵当不動産の評価額について、固定資産税の評価額を二倍にして求めたものであり、証人平井初秋、同遠藤峰史、同北野彦士の証言外本件全証拠によっても、その算定根拠が明らかでなく、右評価額が本件各土地の客観的な価値とはいい難い。
(二) 丙第一号証、乙第三号証の評価額は、未着手であった道路舗装工事・水道工事・排水工事・電気工事が既に完成されていることを前提としたものであり、更に、開発行為の許可による反射的利益を考慮しているが、二俣瀬地区については昭和五五年一〇月七日に開発計画除外区域になったことが認められるなど、開発がされるという前提を欠くに至った土地もある(甲第一八号証、第一九号証)。更に、本件各土地の価格を素地価格と投下費用の合計額としているが、素地価格を合理的根拠もなく根抵当権極度額としていること、投下費用六四三一万七五七〇円によって、実際に本件各土地の価値が増加したか否かについて検討を加えることもなく、投下費用分本件各土地の価値が増加したものと判断している。したがって、同鑑定書の評価額は採用できない。
(三) これに対し、甲第四号証の評価額は、取引事例比較法を採用し、熟成度の低い宅地見込地としての特性を加味し、林地標準価格林-33との規準を考慮して算定したものであり、甲第一八号証の評価額は、対象土地が標高一〇〇〇メートルを超える山岳地帯の雑木林であり、荘川村は過疎化が進行中であり、鉄道がなく、バスの運行回数も少なく、自家用車に対する依存度が高いことを考慮して、被告サントの所有する幅六メートルの未舗装私道に接していること、標高一〇〇〇メートルを超える山岳地帯、雑木林であり、今後も雑木林地として推移していくことが予想されること等を考慮して算定したものであり、甲第一九号証の評価額も、甲第一八号証と同様の事情を考慮して算定したものである。
(四) 右証拠を総合すると、甲第四、第一八、一九号証は、本件各土地ないしその近隣地の特性を的確かつ詳細に検討したうえ、他の取引事例を参考に評価額を算定しており、甲第七号証が本件各土地の現実取引価格を一平方メートルあたり四九円ないし二〇〇円としているのも、最も利害関係を有する被告岐阜銀行が、右鑑定に際し斟酌した事情を熟知しつつ出した数値と推認される。
また、甲第四、第一八、第一九号証は、ともに開発計画除外のされた二俣瀬地区に関する鑑定であるが、西三洞地区についても、被告サントが今後造成工事を行って開発をする見込みはないから、開発計画除外がされていないことをもって、二俣瀬地区よりも高い評価をすべき事情があるものと解することはできない。
そして、甲第四、第一八、一九号証は、他を排斥していずれか一つを絶対的なものとして採用することはできないから、右三者を比較総合して、本件各土地の価格について考えると、本件各土地の価額は、一平方メートル当たり五〇〇円を上回ることはないと認められる。
七 被告らの責任
1 被告太陽ホーム
前記のとおり、被告太陽ホーム従業員らは、無差別的に電話勧誘をして原告ら宅を訪問し、本件各土地が今後別荘地として造成できる見通しも立たず、利用可能性も換金可能性も殆どないのに、東海北陸自動車道のインターチェンジができ、数倍に値上りすることが確実である、本件各土地が五年後に二倍ないし三倍に値上がりする、などと虚偽の事実を言い、更には、被告岐阜銀行がローンを組んでくれるから安心だ、などと言って銀行の社会的信用を利用して原告らの警戒心を解かせ、原告山本、原告長谷川、原告三林に対しては、一平方メートルあたり七五〇〇円、原告別府、原告松本、原告岩田、原告佐藤、原告矢尾谷、原告中野、原告加藤に対しては一平方メートルあたり八七〇〇円、原告志水、原告高橋に対しては一平方メートルあたり一万二五〇〇円で本件各土地を購入させた。
しかし、現実には、本件各土地は、一平方メートルあたり五〇〇円の価値しかなかったのであるから、被告太陽ホーム従業員は、虚構の事実を申し向けて原告らに本件各土地を時価の一五倍から二五倍の不当な高値で売却し、売買代金、その他の費用を支払わせたことになり、原告らが本件各土地の実際の価値を知っていたなら、決してそれらを購入しなかったであろうと考えられるから、被告太陽ホーム従業員の行為は詐欺として不法行為を構成するものといわなければならない。
2 被告サントの責任
被告サントは、大三土地の被告岐阜銀行に対する債務一億四一〇〇万円を引き受け、滞納している公租公課一三六九万三八〇〇円を大三土地に代わって納付することを対価として、大三土地から本件各土地を購入し、本件各土地の具体的販売活動は、協栄ホームの営業部長であった米田親良を代表取締役とし、被告太陽ホームの事務所を被告サントの隣に設置する被告太陽ホームに委ねた。そして、被告岐阜銀行の融資を受けて、荘川ビレッジに六四三一万七五七〇円を投入し、造成工事を行ったものの、大三土地の荘川ビレッジ開発計画がいわゆる石油ショックのために失敗に終わってから、何ら別荘地の需要の回復が見込まれないまま、漫然と従来と同様の方法で、無計画に資金を導入したものであって、現実には、ほとんど未整備のままで販売されたことからすれば、造成工事が土地の値段に反映すると認識していたなどとは到底解することができない。
したがって、被告サントは、寺西直勝、金森史朗が中心となり、荘川ビレッジが一平方メートルあたり五〇〇円程度の価値しか有さないことを知りうべき状態にありながら、いわゆる原野商法の手口に通じた米田親良の協力を得て、被告太陽ホームと共謀のうえ、荘川ビレッジの販売行為を行ったものといわなければならない。
3 被告日本不動産流通の責任
証人金森史朗、同寺西直勝、同木下守の証言及び弁論の全趣旨によれば、以下の事実が認められる。
(一) 寺西直勝が、宅地建物取引業法違反で逮捕されて、被告サントの営業免許の取消が確実となった後、金森史朗を中心として、昭和五六年一〇月二九日、資本金を四〇〇万円として被告日本不動産流通が設立され、金森史朗自ら代表取締役に就任した。被告日本不動産流通は、被告サントが使用していた事務所を使用し、事務所の備品、電話加入権、電話番号、従業員は全て被告サントから引き継ぎ、これによって被告サントの実体は消滅した。そして、被告日本不動産流通は、被告サントの被告岐阜銀行に対する債務を事実上引き受けて、支払った。
(二) 被告サントの商業登記簿に記載された目的のうち、中心となっているのは、「不動産の売買、仲介、宅地建物の造成分譲、不動産の賃貸借、不動産の管理、保全、不動産の鑑定評価業務、一般建設業。」であり、被告日本不動産流通の商業登記簿には、目的として、「1 不動産の売買、仲介、賃貸、2 建売住宅の建設ならびに販売、3 上記に付帯する一切の業務」と記載されている。
(三) 金森史朗は、被告日本不動産流通に一週間に一、二回位しか出社せず、寺西直勝は、昭和五八年一月五日、被告日本不動産流通の営業部に勤務し、平成元年一一月三〇日取締役に、平成二年三月三一日代表取締役に就任し、被告日本不動産流通の経営に実質的に関与するようになった。
(四) 以上の事実を総合すれば、被告サントと被告日本不動産流通は経済的には同一の企業体であり、被告日本不動産流通が、原告らに対し、被告サントと法人格を異にすることを主張することは権利の濫用といわなければならない。
4 被告岐阜銀行の責任
(一) 前記認定事実によれば、本件各土地の違法な販売活動をしたのは、被告太陽ホームで、その黒幕となったのが被告サントであるところ、被告岐阜銀行の大三土地に対する主力銀行としての地位、被告サントに対する資金援助、提携ローン契約の締結の事実をもってしても、被告太陽ホームと被告サントの共謀に、被告岐阜銀行も参加していたと推認することは証拠上なお困難である。
しかし、以下の点に鑑みれば、被告岐阜銀行は、重大な過失によって、被告サント、被告太陽ホームの違法な販売活動に結果的に加担したものといわなければならない。
(二) これまでに認定したところ及び弁論の全趣旨によれば、以下の事実が認められる。
被告岐阜銀行は、大三土地の主力銀行として、大三土地の経営が悪化した際、追加融資によって経営の建て直しに協力しており、大三土地が破産してからは、五億三五一二万九八三四円の破産債権、遅延損害金債権を有していたことから、大三土地の破産財団の情況について重大な関心を抱いており、特に荘川ビレッジの処理については古井戸管財人との協議を重ねていた。
そして、被告岐阜銀行は、大三土地が採算性のない荘川ビレッジの開発計画によって破産したこと、被告サントが、大三土地の社員であった寺西直勝によって設立され、その後、大三土地の経営者であった金森史朗が経営に加わり、この二人が被告サントの経営の中心となっていたこと、被告サントが、大三土地の社員を引き継いでいることを知っていたものであり、また、荘川ビレッジの造成前の素地の時価を認識し、そのため荘川ビレッジに対して有していた抵当権の実行を見合わせることもしており、荘川ビレッジ開発計画が石油ショックにより挫折し、その後、別荘地の需要が回復することは容易に見込めない状況が続いていること、荘川ビレッジに資金を投入しても、容易に成果は上がらない状況にあることも十分に認識していた。
そうした状況下にありながら、被告岐阜銀行は、「ぎふぎんサント別荘地ローン」という使用目的が本件各土地を買うことに限定されているローンを用意し、本件各土地の担保提供を受けるにあたり、本件各土地の時価を知っていながら、不当に高額な評価をして、原告らにおいて本件各土地の価値の判断を誤る原因を作った。そして、いうまでもなく、「ぎふぎんサント別荘地ローン」契約の締結を通じて、被告太陽ホームが原告らに本件各土地を不当な高値で売却していることを知っていた。
(三) 以上の事実を総合すれば、被告岐阜銀行は、自己が債権回収に力を入れれば、原告らが損害を被ることを認識していたか又は容易にこれを認識しえたのであるから、同被告としては右結果の発生を防止すべき高度の注意義務を負っていたにもかかわらず、右義務に違反し、ぎふぎんサントローンの締結、杜撰な担保の評価等、原告らの本件各土地の購入に関しての判断を誤らせるような行為に出たものであり、右重大な過失により、原告らに後記損害を被らせたものといわなければならない。
八 損害
1(一) 財産的損害
原告らが既に支払った金額及び費用額から、本件各土地の時価(一平方メートルあたり五〇〇円)を差し引いた金額の全額が損害と認められる。
(二) 慰謝料
原告らは、本件土地の時価を控除した売買代金の返還により、財産的損害の全額を回復することができること、前記認定したところによれば、原告らにも、本件各土地の購入に際し、本件各土地の価値について十分な検討を加えることなく、被告太陽ホームのセールスマンの説明を鵜呑みにして、転売による利益を見込むなど、軽率・無思慮な点があったことも否定し難いことに鑑み、慰謝料による救済を相当とするまでの事情は存在しないといわなければならない。
(三) 弁護士費用
本件事案の内容、損害認定額、その他諸般の事情を考慮すると、本件不法行為と因果関係のある弁護士費用分の損害は、2に記載のとおりであると認めるのが相当である。
2 以上によれば、原告らの損害は、次のとおりである。
(一) 原告別府
被告太陽ホーム及び被告岐阜銀行に支払った一六二万四三〇〇円から、本件土地の時価一三万四〇〇〇円(二六八平方メートル×五〇〇円)を控除した額一四九万〇三〇〇円に、本訴弁護士費用相当額の一四万円を加えた一六三万〇三〇〇円
(二) 原告松本
被告太陽ホーム及び被告岐阜銀行に支払った一三九万一五八〇円(原告昭和六一年四月二八日付準備書面別紙(二)の二3記載の手付金「四一万〇〇四〇円」は、「四一万〇六四〇円」の誤記と解する。)から、本件土地の時価一一万八〇〇〇円(二三六平方メートル×五〇〇円)を控除した額一二七万三五八〇円に、本訴弁護士費用相当額の一二万円を加えた一三九万三五八〇円
(三) 原告山本
被告太陽ホーム及び被告岐阜銀行に支払った一七五万二一〇〇円から、本件土地の時価一三万四〇〇〇円(二六八平方メートル×五〇〇円)を控除した額一六一万八一〇〇円に、本訴弁護士費用相当額の一六万円を加えた一七七万八一〇〇円(訴状請求債権目録原告番号4記載の支払済金額「一八〇万三四〇〇円」は、登記費用五万一三〇〇円を二重に計上したものと解する。)
(四) 原告長谷川
被告太陽ホーム及び被告岐阜銀行に支払った一三三万三四八〇円から、本件土地の時価一〇万〇五〇〇円(二〇一平方メートル×五〇〇円)を控除した額一二三万二九八〇円に、本訴弁護士費用相当額の一二万〇〇〇〇円を加えた一三五万二九八〇円
(五) 原告三林
被告太陽ホーム及び被告岐阜銀行に支払った一八七万五七六〇円から、本件土地の時価一四万三五〇〇円(二八七平方メートル×五〇〇円)を控除した額一七三万二二六〇円に、本訴弁護士費用相当額の一七万〇〇〇〇円を加えた一九〇万二二六〇円
(六) 原告矢尾谷
被告太陽ホーム及び被告岐阜銀行に支払った一一五万二一四〇円から、本件土地の時価一一万〇五〇〇円(二二一平方メートル×五〇〇円)を控除した額一〇四万一六四〇円に、本訴弁護士費用相当額の一〇万〇〇〇〇円を加えた一一四万一六四〇円
(七) 原告中野
被告太陽ホーム及び被告岐阜銀行に支払った一三〇万一〇四〇円から、本件土地の時価一〇万三五〇〇円(二〇七平方メートル×五〇〇円)を控除した額一一九万七五四〇円に、本訴弁護士費用相当額の一一万〇〇〇〇円を加えた一三〇万七五四〇円
(八) 原告志水
被告太陽ホーム及び被告岐阜銀行に支払った四四七万五六一〇円から、本件土地の時価一八万一五〇〇円(①一七六平方メートル×五〇〇円、②一八七平方メートル×五〇〇円)を控除した額四二九万四一一〇円に、本訴弁護士費用相当額の四二万〇〇〇〇円を加えた四七一万四一一〇円
(九) 原告佐藤
被告太陽ホーム及び被告岐阜銀行に支払った二八八万八五六〇円から、本件土地の時価二〇万四五〇〇円(①二〇七平方メートル×五〇〇円、②二〇二平方メートル×五〇〇円)を控除した額二六八万四〇六〇円に、本訴弁護士費用相当額の二六万〇〇〇〇円を加えた二九四万四〇六〇円
(一〇) 原告高橋
被告太陽ホーム及び被告岐阜銀行に支払った二四八万二九三〇円から、本件土地の時価一〇万三〇〇〇円(①一〇三平方メートル×五〇〇円、②一〇三平方メートル×五〇〇円)を控除した額二三七万九九三〇円に、本訴弁護士費用相当額の二三万〇〇〇〇円を加えた二六〇万九九三〇円
(一一) 原告加藤
被告太陽ホーム及び被告岐阜銀行に支払った一六三万四九八〇円から、本件土地の時価一一万四〇〇〇円(二二八平方メートル×五〇〇円)を控除した額一五二万〇九八〇円に、本訴弁護士費用相当額の一五万〇〇〇〇円を加えた一六七万〇九八〇円
(一二) 原告岩田
被告太陽ホーム及び被告岐阜銀行に支払った一三九万四五六〇円から、本件土地の時価一〇万〇〇〇〇円(二〇〇平方メートル×五〇〇円)を控除した一二九万四五六〇円に、本訴弁護士費用相当額一二万〇〇〇〇円を加えた一四一万四五六〇円
九 第二事件(被告サントの請求)について
1 請求原因事実のうち、債権譲渡の通知に関する事実は争いがない。
2 前記認定事実によれば、被告岐阜銀行は、本件各土地の売買代金の残代金について「ぎふぎんサント別荘地ローン」を組み、原告らに対し、請求原因のとおり金銭を貸し付け、売買契約に基づく代金債権を有していた被告サントがこれを受領したことが認められる。
したがって、原告らは、右行為により、経済上現実の金銭の授受と同一の利益の授受をしたものと解され、第二事件請求原因記載のとおり、原告らと被告岐阜銀行の間の消費貸借契約の成立が認められる。
3 被告岐阜銀行が被告サントに対し、右消費貸借契約によって生じた債権を譲渡した事実は、乙第一一ないし第二二号証の各一、二(各号証の一は、官署作成部分の原本の存在及び成立に争いがなく、その余の部分の原本の存在及び成立は弁論の全趣旨によって認められ、各号証の二は、弁論の全趣旨によって原本の存在及び成立が認められる。)によって認められる。
なお、原本の存在及び成立に争いのない甲第二〇号証、証人木下守の証言によれば、「ぎふぎんサント別荘地ローンに関する契約書」は、土地の買主(原告ら)が三か月(三回)以上ローンの支払いを怠ったときには、被告岐阜銀行が被告サントに保証債務の履行の請求を行えることになっていた。
4 しかし、前記認定のとおり、被告サントは、自らが被告太陽ホームと共謀して行ったいわゆる原野商法により生じた債権を被告岐阜銀行から譲り受けて、原告らに右債権の履行を請求しているのであるから、被告サントの原告らに対する請求は、権利の濫用であるといわなければならない。
5 したがって、被告サントの原告らに対する請求は理由がない。
一〇 結論
よって、原告らの被告らに対する請求は前記損害額及びこれに対する各訴状送達の翌日から各支払済まで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払を求める限度において理由があるからこれを認容し、その余は失当であるからこれをいずれも棄却し、被告サントの原告らに対する請求は失当であるからこれをいずれも棄却し、訴訟費用の負担につき民事訴訟法八九条、九二条但書き、九三条本文を、仮執行の宣言につき同法一九六条一項を適用して主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官清水信之 裁判官酒井良介 裁判官松永眞明は転勤のため署名捺印することができない。裁判長裁判官清水信之)
別紙物件目録
一(原告別府購入物件)
所在 岐阜県大野郡荘川村大字新渕字二俣瀬八八八―二七八
地積 二六八平方メートル
地目 山林
二(原告松本購入物件)
所在 岐阜県大野郡荘川村大字新渕字二俣瀬八八八―三一四
地積 二三六平方メートル
地目 山林
三(原告山本購入物件)
所在 岐阜県大野郡荘川村大字新渕字二俣瀬八八八―一九七
地積 二六八平方メートル
地目 山林
四(原告長谷川購入物件)
所在 岐阜県大野郡荘川村大字新渕字二俣瀬八八八―一七九
地積 二〇一平方メートル
地目 山林
五(原告三林購入物件)
所在 岐阜県大野郡荘川村大字新渕字二俣瀬八八八―一九六
地積 二八七平方メートル
地目 山林
六(原告矢尾谷購入物件)
所在 岐阜県大野郡荘川村大字新渕字二俣瀬八八八―三一三
地積 二二一平方メートル
地目 山林
七(原告中野購入物件)
所在 岐阜県大野郡荘川村大字新渕字二俣瀬八八八―一七三
地積 二〇七平方メートル
地目 山林
八(原告志水購入物件 その1)
所在 岐阜県大野郡荘川村大字町屋字西三洞五二七―二二六
地積 一七六平方メートル
地目 山林
九(原告志水購入物件 その2)
所在 岐阜県大野郡荘川村大字町屋字西三洞五二七―四三二
地積 一八七平方メートル
地目 山林
一〇(原告佐藤購入物件 その1)
所在 岐阜県大野郡荘川村大字新渕字二俣瀬八八八―二〇三
地積 二〇七平方メートル
地目 山林
一一(原告佐藤購入物件 その2)
所在 岐阜県大野郡荘川村大字新渕字二俣瀬八八八―二三〇
地積 二〇二平方メートル
地目 山林
一二(原告高橋購入物件)
所在 岐阜県大野郡荘川村大字町屋字西三洞五二七―四一一
地積 一〇三平方メートル
地目 山林
一三(原告高橋購入物件 その2)
所在 岐阜県大野郡荘川村大字町屋字西三洞五二七―四四四
地積 一〇三平方メートル
地目 山林
一四(原告加藤購入物件)
所在 岐阜県大野郡荘川村大字新渕字二俣瀬八八八―一七四
地積 二二八平方メートル
地目 山林
一五(原告岩田購入物件)
所在 岐阜県大野郡荘川村大字新渕字二俣瀬八八八―二四三
地積 二〇〇平方メートル
地目 山林