大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

名古屋地方裁判所 昭和63年(わ)1115号 判決 1988年10月25日

本籍

名古屋市南区霞町五九番地

住居

右同

鍼灸師

安藤收

昭和二五年三月二二日生

右の者に対する所得税法違反被告事件につき、当裁判所は、検察官田中 良出席の上審理し、次のとおり判決する。

主文

被告人を懲役一年および罰金一八〇〇万円に処する。

被告人において右罰金を完納することができないときは、金五万円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置する。

この裁判が確定した日から三年間右懲役刑の執行を猶予する。

理由

(罪となるべき事実)

被告人は、名古屋市南区霞町五九番地に居住し、同市中区栄三丁目一一番五号栄マンションN棟五〇五号室において、「リハビリック治療センター栄鍼灸室」の名称で鍼灸師業を営むものであるが、自己の所得税を免れようと企て、所得税の確定申告に際しては、収入の一部を除外するなどの方法により、所得の一部を秘匿した上

第一  昭和五九年分の実際の所得金額が三六九七万三〇八五円であり、これに対する所得税額が一五五五万三〇〇円であるのに、同六〇年三月一二日、同市熱田区花表町七番一七号所在の熱田税務署において、同税務署長に対し、所得金額が四七三万五〇二八円であり、これに対する所得税額が四〇万一五〇〇円である旨の虚偽過少の所得税確定申告書を提出し、正規の所得税額との差額一五一四万八八〇〇円を免れ

第二  同六〇年分の実際の所得金額が四七八九万七九八七円であり、これに対する所得税額が二二一一万四九〇〇円であるのに、同六一年三月一〇日、前記熱田税務署において、同税務署長に対し、所得金額が五六二万六三九八円であり、これに対する所得税額が五九万二八〇〇円である旨の虚偽過少の所得税確定申告書を提出し、正規の所得税額との差額二一五二万二一〇〇円を免れ

第三  同六一年分の実際の所得金額が五七九三万三八二三円であり、これに対する所得税額が二八四二万一〇〇〇円であるのに、同六二年三月一二日、前記熱田税務署において、同税務署長に対し、所得金額が六〇七万七六八五円であり、これに対する所得税額が七〇万一〇〇〇円である旨の虚偽過少の所得税確定申告書を提出し、正規の所得税額との差額二七七二万円を免れ

もって、いずれも不正の行為により所得税を免れたものである。

(証拠の標目)

判示各事実について、被告人の当公判廷における供述のほか、記録中の証拠等関係カード(検察官請求分)に記載されている次の番号の各証拠

判示第一ないし第三の各事実について

甲の13、14、21、22、24から35まで、37から74まで乙の1から13まで

判示第一の事実について

甲の2、5、6、7、16

判示第二の事実について

甲の3、8、9、17

判示第三の事実について

甲の4、10から12まで、18

(法令の適用)

判示第一ないし第三の各所為につき(罰条)

いずれも所得税法二三八条(懲役と罰金を併科)

併合加重

懲役刑につき刑法四五条前段、四七条本文、一〇条(犯情最も重い判示第三の罪の刑に法定の加重)

罰金刑につき同法四五条前段、四八条二項

労役場留置

罰金刑につき刑法一八条

執行猶予

懲役刑につき刑法二五条一項(前科がなく、修正申告し、本税と延滞税は納付済、重加算税を分割納付中、経理事務を改善、反省の情顕著)

よって主文のとおり判決する。

(裁判官 大山貞雄)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例