名古屋地方裁判所 昭和63年(わ)2226号 判決 1989年3月23日
本籍
名古屋市中区松原一丁目一二〇八番地
住居
愛知県海部郡甚目寺町大字下萱津字宝一七番地
包装資材等加工販売従業員
山内幹夫
昭和七年一〇月三〇日生
右の者に対する所得税法違反被告事件につき、当裁判所は、検察官武田みどり出席の上審理し、次のとおり判決する。
主文
被告人を懲役一年二月及び罰金二〇〇〇万円に処する。
右罰金を完納することができないときは、五万円を一日に換算した期間、被告人を労役場に留置する。
この裁判が確定した日から三年間右懲役刑の執行を猶予する。
理由
(罪となるべき事実)
被告人は、名古屋市中区松原一丁目一二番一一号に居住して愛知県海部郡甚目寺町大字下萱津字宝一七番地において山内紙工業所の名称で包装資材等加工販売業を営んでいる山内まのの従業員として、同事業の財産管理等を行っているものであるが、右山内まのの業務及び財産に関し、同女の所得税を免れようと企て、所得税の確定申告に際しては、所得金額に関する収支計算をせず、適宜の過少な所得金額を計上するところのいわゆる「つまみ申告」を行う方法により、所得の一部を秘匿した上
第一 昭和五九年分の実際の所得金額が三八五五万一六三九円であり、これに対する所得税額が一五九三万三一〇〇円であるのに、昭和六〇年三月一三日、名古屋市中区三の丸三丁目三番二号所在の名古屋中税務署において、同税務署長に対し、所得金額が六〇〇万円であり、これに対する所得税額が五七万三九〇〇円である旨の虚偽過少の所得税確定申告書を提出し、正規の所得税額との差額一五三五万九二〇〇円を免れ
第二 昭和六〇年分の実際の所得金額が六六〇八万三一七六円であり、これに対する所得税額が三二〇八万円であるのに、昭和六一年三月一三日、前記名古屋中税務署において、同税務署長に対し、所得金額が六三六万円であり、これに対する所得税額が六五万三五〇〇円である旨の虚偽過少の所得税確定申告書を提出し、正規の所得税額との差額三一四二万六五〇〇円を免れ
第三 昭和六一年分の実際の所得金額が五九二八万六一一三円であり、これに対する所得税額が二八三八万一〇〇〇円であるのに、昭和六二年三月一三日、前記名古屋中税務署において、同税務署長に対し、所得金額が六五〇万円であり、これに対する所得税額が六八万八五〇〇円である旨の虚偽過少の所得税確定申告書を提出し、正規の所得税額との差額二七六九万二五〇〇円を免れ
もって、いずれも不正の行為により所得税を免れたものである。
(証拠の標目)
判示事実全部について
一 被告人の当公判廷における供述
一 被告人の検察官及び大蔵事務官(一〇通)に対する各供述調書
一 山内敏夫及び山内まのの検察官に対する各供述調書
一 大蔵事務官作成の査察官調査書九通
同第一の事実について
一 大蔵事務官作成の証明書(甲第一及び第二〇号証)
一 大蔵事務官作成の脱税額計算書(甲第二号証)
同第二の事実について
一 大蔵事務官作成の証明書(甲第三及び第二一号証)
一 大蔵事務官作成の脱税額計算書(甲第四号証)
同第三の事実について
一 大蔵事務官作成の証明書(甲第五及び第二二号証)
一 大蔵事務官作成の脱税額計算書(甲第六号証)
(法令の適用)
一 判示各所為 いずれも所得税法二四四条一項、二三八条
一 刑種の選択 所定刑中懲役刑及び罰金刑選択
一 併合罪加重 刑法四五条前段、四七条、一〇条、四八条二項
一 換刑処分 刑法一八条
一 刑執行猶予 刑法二五条一項
よって、主文のとおり判決する。
(裁判官 伊藤新一郎)