名古屋地方裁判所 昭和63年(行ウ)17号 判決 1995年7月24日
稲沢市奥田寺切町三八番地
原告
石田勲
右訴訟代理人弁護士
森山文昭
同右
松本篤周
同右
加藤美代
同右
渥美雅康
同右
仲松正人
一宮市栄四丁目五番七号
被告
一宮税務署長 保木実
右指定代理人
玉越義雄
同右
松井運仁
同右
木村勝紀
同右
小田嶋範幸
主文
一 被告が原告に対し昭和六二年二月二七日付でした原告の
1 昭和五八年分の所得税の更正のうち総所得金額が金一五三万円を超える部分
2 昭和五九年分の所得税の更正及び過少申告加算税の賦課決定のうち総所得金額が金二五七万二三七八円を超える部分
3 昭和六〇年分の所得税の更正及び過少申告加算税の賦課決定(いずれも異議決定において一部取り消された後のもの)のうち総所得金額が三六三万四五五九円を超える部分
をいずれも取り消す。
二 原告のその余の請求をいずれも棄却する。
三 訴訟費用は、これを一〇分し、その八を被告の負担とし、その余を原告の負担とする。
事実
第一当事者の求めた裁判
一 請求の趣旨
1 被告が原告に対し昭和六二年二月二七日付でした原告の
(一) 昭和五八年分の所得税の更正のうち総所得金額が金一五三万円を超える部分
(二) 昭和五九年分の所得税の更正のうち総所得金額が金一六五万円を超える部分及び過少申告加算税の賦課決定
(三) 昭和六〇年分の所得税の更正のうち総所得金額が一七〇万四〇〇〇円を超える部分及び過少申告加算税の賦課決定(いずれも異議決定において一部取り消された後のもの)
をいずれも取り消す。
2 訴訟費用は、被告の負担とする。
二 請求の趣旨に対する答弁
1 原告の請求をいずれも棄却する。
2 訴訟費用は、原告の負担とする。
第二当事者の主張
一 請求原因
1 原告は、鉄工業(以下「本件事業」という。)を営む者である。
2 原告は、被告に対し、いずれも法定期限内に、昭和五八年分ないし昭和六〇年分の各総所得金額を別紙1「本件課税処分等の経緯」記載の別表一ないし三の各「確定申告」欄記載のとおりであるとして確定申告をしたところ、被告は、昭和六二年二月二七日、原告に対し、別紙1の別表一ないし三の各「更正及び賦課決定」欄記載のとおりの各更正(以下「本件各更正」という。)及び過少申告加算税の各賦課決定(以下「本件各賦課決定」といい、本件各更正と合わせて「本件各処分」という。)をした。
3 原告は、被告に対し、昭和六二年三月九日、本件各処分につき異議申立てをしたところ、被告は、同年六月二二日、昭和六〇年分の更正及び過少申告加算税の賦課決定につき、総所得金額を金六〇二万七三二四円、納付すべき税額を金七九万二二〇〇円、過少申告加算税の額を金五万円として一部を取り消したのみで、その余の申立てをいずれも棄却する旨の決定をした。そこで、原告は、同年七月一〇日、国税不服審判所長に対し、審査請求をしたが、同所長は、昭和六三年二月二三日、審査請求棄却の裁決をし、右裁決書謄本は、同年二月二九日、原告に送達された。
4 しかし、被告のした本件各処分は、原告が実額計算の十分可能な帳簿等を有していたから、これらに基づき実額で課税すべきであるにもかかわらず、これを無視して一方的に推計に基づいてしたものであり、また、その推計方法は、製品の種類によって単価や加工時間が異なり、技能者の年齢や技能によっても加工時間が大いに異なるにもかかわらず、一律に消費電力によって原告の売上を推計する方法であって合理性がなく、これにより原告の所得を過大に認定した違法なものである。
5 よって、原告は、請求の趣旨1記載の範囲で本件各処分の取消しを求める。
二 請求原因に対する認否
1 請求原因1ないし3の各事実は認める。
2 同4及び5は争う。
三 被告の主張
1 本件各処分に至る経緯
(一) 被告は、原告が提出した昭和五八年分ないし昭和六〇年分(以下「本件各係争年分」という。)の確定申告書に記載された所得金額が適正なものか否かを確認するため、被告所部係官(以下「係官」という。)に税務調査をさせた。
(二) 係官は、昭和六一年四月二日から同年九月二六日までの間四回にわたって原告方に臨場するなどして、原告の本件各係争年分の所得税について実地調査を行った。その概要は、以下のとおりである。
(1) 昭和六一年四月二日
係官三品博之(以下「三品」という。)及び同後藤洋一(以下「後藤」という。)は、原告方工場に赴き、原告に対し、身分証明書及び質問検査章を提示し、所得税調査のため来訪したことを告げた上、本件各係争年分の事業所得金額(総所得金額)について、その算定に必要な帳簿書類等の提示及びその根拠についての具体的な説明を求めた。これに対し、原告は「何もない。うちの都合もあるので、今日はだめだ。整理もしなければならないので、今週中に連絡する。」と述べ、調査に応じようとしなかった。
(2) 同年四月一〇日
三品及び後藤は、原告から連絡がないので、引き続いて調査のため原告方工場に赴き、原告に対し、調査に協力するよう重ねて要請したが、原告は「何しに来たんだ。連絡すると言っただろう。連絡するまで来なくてよろしい。」等と述べ、当日の調査に応じようとしなかったため、三品らは、原告に翌週中に必ず連絡することを約束させて辞去した。
(3) 同年四月一二日
原告から電話で、「妻の産後が思わしくない。しばらく様子をみて良くなったら連絡する。」との連絡があった。
(4) 同年五月七日
三品は、一か月近く経っても原告から連絡がないことから、原告宅に電話をしたところ、原告は不在であるとのことであったため、応答に出た原告の妻に、同月九日までに連絡するようにとの原告への伝言を依頼した。
(5) 同年同月八日
原告から電話で、「参議院選挙の役になっているから今忙しい。六月に入ってから連絡する。」との連絡があった。
(6) 同年六月二五日
三品は、六月の下旬になっても原告からの連絡がないことから、原告宅に電話をしたところ、原告は不在であるとのことであったため、応答に出た原告の妻に、翌日の朝九時ころに連絡するようにとの原告への伝言を依頼するとともに、原告の妻が出産したか、身内で出産した者がいるかなどの質問をしたところ、原告の言に反して同人の妻は出産しておらず、身内で出産した者もいない旨の返答を得た。
(7) 同年同月二六日
原告から電話で、「七月二〇日でなければ都合がつけられない。二〇日がだめなら来年になる。」との申し出があり、三品においてもう少し早くしてほしいと要請したが、原告は、これを聞き入れなかった。
(8) 同年七月一五日又は一六日
原告から電話で、「七月二三日に来てほしい。」との連絡があった。
(9) 同年七月二三日
係官岩田幸雄(以下「岩田」という。)及び後藤は、原告方に赴き、原告に対し、従前同様に調査協力を要請したところ、原告は「申告額の確認なら、ここに昭和六〇年分の書類があるが、この年分だけでよい。三年分確認する理由はどこにある。反面調査はしないように約束してくれ。」等と述べ、本件各係争年分にわたる帳簿書類等を全部提示することには応じない様子であったが、やがて本件各係争年分の「営業所得収支基本計算書」及び昭和六〇年分の帳簿書類等を提示するに至った。そこで、岩田らは、まず右基本計算書を書き写したが、すでに午後五時近くとなったため、やむなく辞去することとし、原告に対し、日を改めて次回に原始記録又は昭和六〇年分を含む本件各係争年分の帳簿書類等の提示及びその根拠についての具体的な説明を受けたい旨説明し、原告から連絡する旨の返答を受けた。
なお、右基本計算書は、収支計算書及び各集計表等からなっているが、各勘定科目毎に一年分の集計金額が記載されているだけであり、取引先の住所の記載がないこともあって、原告から説明を受けなければその内容を十分把握できず、少なくとも数値等を確認するため原始記録等の資料との突き合わせが必要であり、これだけでは本件各係争年分の所得の実額を把握できないものであった。また、岩田らは、原告が昭和六〇年分だけなら書類を見せる旨述べた際、机にビニール袋に入った書類が置かれていることに気付いたが、右書類が昭和六〇年分の書類であるとの確認はできなかった。
(10) 同年八月八日、二〇日、九月八日
この間係官は、原告と二回目の調査期日の連絡調整を試みたが、原告は「反面調査はしないと約束しないのなら、いつになるか分からない。一年分だけなら考えてもいい。」と繰り返し述べ、調整に応じなかった。
(11) 同年九月二六日
岩田及び後藤は、原告方に赴き、原告に対し、調査未了となっていた原始記録又は本件各係争年分の帳簿書類等の提示及びその根拠についての具体的な説明を求めたが、原告から、「調査理由や調査年分について納得したわけではない。前回は(収支計算書を)好意で見せてやっただけだ。収支計算書を写したのだからそれで十分検討できる。」等の抗議が繰り返しなされ、帳簿等の提示は受けられなかった。
また、原告は、岩田らに対し、昭和六〇年分についてだけ書類の確認をさせて、その場で誤りがあれば他の年分を見せるとの条件を付し、もって調査に不当な制限を加えた上で、昭和六〇年分の書類だけを提示する旨述べた。
岩田らは、原告の条件を受け入れた上で昭和六〇年分の書類を確認したとなると原告の調査に対する不当な制限を承認する結果にもなりかねないと危惧した上、原告から書類の提示を受けても、その場で直ちに誤りを指摘することは極めて困難であり、かつ、昭和六〇年分の所得金額の適否を判断するためには他の年分の書類も必要になること、仮に、昭和六〇年分については正しい申告がなされていたとしても、これをもって、他の年分の申告も適正であるとまで認められないことから、あえて原告の条件には同意しなかった。
岩田らは、三年分の帳簿等を提示するよう原告への要請を更に続け、調査協力を求めたが、この日の調査においても帳簿不提示という原告の非協力な態度は全く変わるところがなかったことから、これ以上原告に調査協力を求めることは到底困難であり、もはや本件各係争年分の事業所得について、その算定に必要な帳簿書類等の提示を受け、また、その根拠についての具体的な説明を受けることはできないものと判断した。
(三) そこで被告は、やむを得ず、原告の取引先に対する反面調査及び銀行調査を可能な限り行い、それによって把握できた収入金額を前提とし、必要経費を推計した上で、所得金額を推計することとし、原告の事業内容等についての調査結果に基づいて昭和五八年分ないし昭和六〇年分の所得金額を算定したところ、いずれの年分も原告の申告額を上回ったので本件各処分をした。
2 事業所得金額
推計によって原告の本件各係争年分の事業所得金額を算出すると、その金額は以下のとおりとなる。
(一) 昭和五八年分
(1) 総収入金額 九八九万〇五二一円
右金額は、原告の本件事業に係る総収入金額が不明のため、以下の<1>自家生産(作業工程を自己が行う場合)に係る収入金額と<2>外注生産(作業工程を外部に委託する場合)に係る収入金額の合計額である。
<1> 自家生産に係る収入金額 九六二万七六九六円
右金額は、被告が把握した原告の事業上の年間使用電力量八、六五八キロワット時に、別紙2「昭和58年分同業者比率計算表」記載の類似同業者六件に係る電力一キロワット時当たりの収入金額の平均値一一一二円を乗じて算定したものである。
<2> 外注生産に係る収入金額 二六万二八二五円
右金額は、原告の外注生産に係る収入金額が不明であるため、一般的に外注生産に係る収入金額が、その支払外注費の金額と同額又はそれ以上であると推認されることから、原告の外注生産に係る収入金額は、少なくとも原告の外注費の支払額と同額の二六万二八二五円であると推計したものである。
(2) 一般経費の額 四二一万六三三〇円
右金額は、原告の本件事業に係る一般経費の額が不明であるため、推計により求めた額であり、右(1)の総収入金額に別紙2「昭和58年分同業者比率計算表」記載の類似同業者の一般経費率の平均値四二・六三パーセントを乗じて算定したものである。
(3) 特別経費の額 五五万二三八〇円
右金額の内訳は、以下のとおりである。
<1> 外注費 二六万二八二五円
<2> 支払利息 二五万〇四九五円
<3> 建物に係る減価償却費 三万九〇六〇円
(4) 事業専従者控除額 四〇万円
右金額は、原告の妻訴外石田公子(以下「公子」という。)に係る事業専従者控除額(原告の申告額)である。
(5) 事業所得金額 四七二万一八一一円
右金額は、右(1)の総収入金額から、右(2)ないし(4)の額を控除したものである。
(二) 昭和五九年分
(1) 総収入金額 二〇二六万六五八六円
右金額は、原告の本件事業に係る総収入金額が不明のため、前記(一)の(1)と同様の推計により求めたものであり、以下の<1>と<2>の合計額である。
<1> 自家生産に係る収入金額 一八一四万六二七四円
右金額は、前記(一)の(1)<1>と同様の方法で把握した原告の事業上の年間使用電力量二万〇〇二九キロワット時に、別紙3「昭和59年分同業者比率計算表」記載の類似同業者四件に係る電力一キロワット時当たりの収入金額の平均値九〇六円を乗じて算定したものである。
<2> 外注生産に係る収入金額 二一二万〇三一二円
右金額は、前記(一)の(1)<2>と同様、少なくとも原告の外注費と同額の収入を得たものと推計したものである。
(2) 一般経費の額 六八五万二一三三円
右金額は、原告の本件事業に係る一般経費の額が不明であるため、推計により求めたものであり、右(1)の総収入金額に、別紙3「昭和59年分同業者比率計算表」記載の類似同業者の一般経費率の平均値三三・八一パーセントを乗じて算定したものである。
(3) 特別経費の額 五〇八万八六二九円
右金額の内訳は、以下のとおりである。
<1> 給料・賃金 二八六万七三三五円
<2> 外注費 二一二万〇三一二円
<3> 支払利息 六万一九二二円
<4> 建物に係る減価償却費 三万九〇六〇円
(4) 事業専従者控除額 四五万円
右金額は、公子に係る事業専従者控除額(原告の申告額)である。
(5) 事業所得金額 七八七万五八二四円
右金額は、右(1)の総収入金額から、右(2)ないし(4)の額を控除したものである。
(三) 昭和六〇年分
(1) 総所得金額 二二五〇万八六一二円
右金額は、原告の本件事業に係る総収入金額が不明のため前記(二)の(1)と同様推計により求めたものであり、以下の<1>と<2>の合計額である。
<1> 自家生産に係る収入金額 一九四一万七八四二円
右金額は、前記(二)の(1)<1>と同様の方法で把握した原告の事業上の年間使用電力量一万六五五四キロワット時に、別紙4「昭和60年分同業者比率計算表」記載の類似同業者六件に係る電力一キロワット時当たりの収入金額の平均値一一七三円を乗じて算定したものである。
<2> 外注生産に係る収入金額 三〇九万〇七七〇円
右金額は、前記(二)の(1)<2>と同様、少なくとも原告の外注費と同額の収入を得たものと推計したものである。
(2) 一般経費の額 八二〇万四三九〇円
右金額は、原告の本件事業に係る一般経費の額が不明であるため、推計により求めた額であり、右(1)の総収入金額に別紙4「昭和60年分同業者比率計算表」記載の類似同業者の一般経費率の平均値三六・四五パーセントを乗じて算定したものである。
(3) 特別経費の額 六八四万四六七三円
右金額の内訳は、以下のとおりである。
<1> 給料・賃金 三六四万三九八〇円
<2> 外注費 三〇九万〇七七〇円
<3> 支払利息 七万〇八六三円
<4> 建物に係る減価償却費 三万九〇六〇円
(4) 事業専従者控除額 四五万円
右金額は、公子に係る事業専従者控除額(原告の申告額)である。
(5) 事業所得金額 七〇〇万九五四九円
右金額は、右(1)の総収入金額から、同(2)ないし(4)の額を控除したものである。
3 推計の必要性
本件税務調査の経過は前記1のとおりであって、被告は、原告から、実額計算をなし得る帳簿書類の提示等調査への協力を得られず、その所得金額を実額で把握することが不可能であったから、原告の本件各係争年分の所得金額を推計によって認定する必要性があった。
4 推計の合理性
本件における推計は、以下のとおり合理性がある。
(一) 推計方法としての合理性
本件においては、前記2のとおり、いわゆる類似同業者の電力一キロワット時当たりの平均収入金額及び平均一般経費率を求め、平均収入金額に原告の使用電力量を乗じて自家生産に係る収入金額を算出し、右金額に外注費相当額を加算した額を原告の総収入金額とし、総収入金額に平均一般経費率を乗じて算出した金額を一般経費の額とし、総収入金額から、一般経費の額、特別経費の額(実額で把握した給料・賃金、外注費、支払利息、建物に係る減価償却費)及び事業専従者(公子)控除の額を控除することにより、原告の総所得金額を算出したものであり、このような効率法及び一般経費率を用いた同業者比率による推計方法は、信頼性が高く、合理性のあるものである。
(二) 類似同業者の抽出基準、抽出過程及び抽出件数の合理性
被告が主張する類似同業者は、被告において、原告の業種、業態、事業所の所在地、事業規模等を念頭に置き、別紙5「同業者抽出基準」記載の抽出基準により選定されたもので、右抽出基準は、原告の業種、業態との同一性、事業所の近接性、事業規模の近似性を有し、抽出基準としての合理性を有するものである。そして、その抽出も、名古屋国税局長発遣の「昭和五八年分ないし昭和六〇年分の機械部品受託加工業の同業者調査報告書の提出について(一般通達)」に従い、無作為かつ機械的に行い、被告の恣意が介在する余地もなく客観性が担保されているから、抽出過程にも合理性があり、抽出件数も十分に合理性を担保する件数である。
また右抽出基準により選定された類似同業者の収入金額、外注生産に係る収入金額、自家生産に係る収入金額、一般経費の額、一般経費率、年間使用電力量及び電力一キロワット時当たりの収入金額は、別紙2「昭和58年分同業者比率計算表」、別紙3「昭和59年分同業者比率計算表」及び別紙4「昭和60年分同業者比率計算表」に各記載のとおりであり、右一般経費率及び電力一キロワット時当たりの収入金額は、機械部品受託加工業の同業者調査報告書に従って正確に算出した。
(三) 同業者率の合理性
右同業者の電力使用量の平均値及び原告の使用量は、次のとおりである。
同業者の平均値 原告
昭和五八年分 一万〇九九八 八六五八
昭和五九年分 一万七四六五 二万〇〇二九
昭和六〇年分 一万四四三八 一万六五五四
(単位・キロワット時、小数点以下四捨五入)
右のとおり、右同業者の平均値は、原告に対して一二七パーセント(昭和五八年分)及び八七パーセント(昭和五九、六〇年分)となっており、両数値が近似していることから、右同業者の平均値を使用して、原告の所得金額を推計することには、合理性があるというべきである。
5 そして、本件各更正(異議決定において一部取り消された後のもの)に係る原告の事業所得金額(総所得金額)は前記一の請求原因2のとおりであり、いずれも右推計による金額の範囲内であるから、本件各更正は、いずれも適法である。
また、本件各賦課決定(異議決定において一部取り消された後のもの)は、国税通則法(昭和六二年法律第九六号による改正前のもの)六五条一項及び二項の規定に従い、本件各更正により納付すべき税額について一〇〇分の五の割合を乗じて計算した金額に、右納付すべき税額のうち五〇万円を超える金額に一〇〇分の五の割合を乗じて計算した金額を加算した金額を、過少申告加算税として賦課したものであり、いずれも適法である。
四 被告の主張に対する認否及び反論
1 被告主張1項について
(一) 同項(一)の事実は認める。
(二) 同項(二)の前文の事実中、係官が昭和六一年四月二日から同年九月二六日までの間に四回原告方を訪れた事実は認め、その余は否認する。
(三) 同項(二)(1)の事実中、昭和六二年四月二日係官が原告方を訪れ、身分証明書のようなものを提示して所得税調査のために来訪した旨告げたことは認め、その余の事実は、以下のとおりである。
原告は、係官の来訪を突然受けたため、仕事から手を離すことができなかったので、「突然来てもらっても困る。うちにも都合があるので、改めて時間の取れる日を連絡する。」と述べた。係官は、原告のこの申出を了承し、同日は何ら調査することなく原告方を去った。
(四) 同項(二)(2)の事実中、同年四月一〇日、係官が原告方を訪れた事実は認め、その余の事実は、以下のとおりである。
右(三)のとおり、原告の方から改めて調査に都合の良い日を連絡する旨告げていたにもかかわらず、係官は原告からの連絡を待たず、同年四月一〇日、再び急に原告方を訪れた。そのため、原告には都合のつけようもなかった。そこで、原告は、再び「都合のつく日をこちらから連絡するから、それまで待ってほしい。」と述べたところ、係官は再度これを了承して帰った。
(五) 同項(二)(3)の事実は否認する。
(六) 同項(二)(4)ないし(8)の事実中、同年五月から六月にかけて、係官から原告に対し、何度か電話のあった事実は認める。
原告は、仕事がたてこんでいた上、参議院選挙(投票日は同年七月六日)の準備もあって多忙であり、係官の電話に対し、多忙であるから後で必ず都合のつく日を知らせる旨回答し、了承を得た。選挙が終わると、原告は、同年七月中旬、係官に対し、同月二三日に都合をつけるので調査に来てもらいたいと連絡した。
(七) 同項(二)(9)の事実中、同年七月二三日、係官が原告方を訪れたことは認める。
しかしながら、調査に入るに当たり、原告は、係官に対し、「調査の理由は何か。」と質問したところ、係官は「所得の確認のため。」と返答するのみで、調査理由を開示せず、また、原告の「なぜ三年分もの調査を受けなければならないのか。」との質問に対しても、「分らない。」とか「署の言いつけで。」と答えるのみであった。原告は、とりあえず本件各係争年分の営業所得収支基本計算書を提示して、調査に協力することにした。これに対し、係官は、原告がすでに「次回には調査理由を開示し、あわせてなぜ三年分の調査をするのか説明してほしい。これをきちんとしてくれれば、いつでも三年分の帳簿書類及び領収書等をお見せする。」と述べていたにもかかわらず、続けて三年分の帳簿書類及び領収書等も見せるよう再度要求し、らちがあかなかったので、原告は、やむを得ず昭和六〇年分の帳簿書類及び領収書等を提示した。それにもかかわらず、係官は「三年分いっしょでないとだめだ。」「一年分だけだったら見るわけにはいかない。」と答えるのみで、一向に調査しようとしなかった。そのうちに、係官は一方的にその日の調査を打ち切った。
なお、右収支計算書は、帳簿書類及び領収書等の原始記録に基づいて作成したものであって、全取引先の記載があるものであり、これをもって本件各係争年分の所得の実額を把握することは可能であった。
(八) 同項(二)(10)の事実中、同年八月ころより九月ころまでの間、係官から原告に対し、二回目の調査期日の打診があったことは認め、その余は否認する。
(九) 同項(二)(11)の事実中、同年九月二六日、係官が原告方を訪れた事実は認める。その余の事実は、以下のとおりである。
原告は、その日に調査理由の開示及びなぜ三年分調査するのかの説明が係官からなされるものと考え、説明さえあれば、本件各係争年分の営業所得収支基本計算書、帳簿書類、領収書等を提示できるよう卓上にすべて置き、調査に応ずべく係官の来訪を待った。しかしながら、来訪した係官は、右説明を拒否したので、原告はやむを得ず「まず六〇年分の調査に協力する。六〇年分を調査して不審があったら、五九、五八年分も見せよう。」と申し出て、昭和六〇年分の営業所得収支基本計算書、帳簿書類及び領収書等を差し出し、さらに「三年分の調査を行う理由を説明してくれたら、三年分の調査について、いつでも協力する。」旨申し述べた。それにもかかわらず、係官は「全部でなければ見ない。協力してくれ。」「三年でなければならない。」と繰り返し、そのうちに一方的に調査を打ち切ってしまった。その後、被告は、原告に対する調査を継続することなく一方的に反面調査を開始した。これに対し、原告は、一宮税務署を訪れ、調査理由の開示と三年分の調査をする理由の説明を要求し、説明があれば三年分一括の調査にも協力する旨述べたが、係官は「署の方針に基づいてやっている。」と答えるのみであった。
以上のとおり、本件各処分は、被告が、調査に対する原告の協力を一方的に拒否し、必要な調査を放棄して推計課税を行ったものであり、推計課税の必要性を欠く違法なものである。
2 被告主張2項について
同項(一)ないし(三)の各特別経費の額及び各事業専従者控除額はいずれも認め、その余は争う。
3 被告主張3項について
同項は争う。
被告が、原告の帳簿書類等を調査することができなかったのは、係官が、原告の十分な納得を得て調査を進める努力を怠った上、合理的な理由のない三年分の一括調査に固執し、原告が三年分の調査をすべて拒否しているわけではないのに(単に、順番に見るよう述べただけであり、三年分を一括して調査する理由を教えてほしいと述べただけである。)、自ら調査を放棄して帰ってしまったからであって、原告が調査に協力的でなかったからでは決してない。
4 被告主張4項について
同項は争う。理由は、以下のとおりである。
(一) 被告の推計方法の不合理性
(1) 被告の推計方法は、そもそも本件推計の基礎とした原告の使用電力量が、本件課税期間である各年一月から一二月までのものではなく、それぞれ前年の一二月からその年の一一月にかけてのものであるから、基礎事実に誤りがあり、合理性を有しない。
すなわち、本件各係争年における原告の業務上の正しい年間使用電力量は、以下のとおりである。
昭和五八年度 八二三七キロワット時
昭和五九年度 二万〇七三九キロワット時
昭和六〇年度 一万六一五八キロワット時
また、仮に右数値を前提として推計したとしても、被告が把握した同業者の単位消費電力量当たりの売上の平均を算出するために使用した同業者の消費電力量自体も、同様に一か月のずれをもって把握されているから、やはり合理性がない。
(2) さらに、被告の推計方法は、以下のような原告の個別事情を一切無視している点で合理性を有しない。
<1> 原告が使用していた機械について
本件各係争年において、原告が製品加工のため使用していた機械(旋盤)は、次の四種である。
Ⅰ 油圧式単能機(三台) 昭和五八年から昭和六〇年まで
Ⅱ 五尺旋盤(一台) 同 右
Ⅲ タレット旋盤(一台) 昭和五九年から昭和六〇年まで
Ⅳ ボール盤(一台) 同 右
すなわち、原告は油圧式単能機(以下「単能機」という場合もある。)を主力機として使用しており、昭和五八年の単能機の台数は全体の四分の三、昭和五九年及び昭和六〇年はいずれも二分の一を占めていた。したがって、原告の年間使用電力量のうちに占める単能機の使用電力量の割合も、当然に高かったのである。
<2> 単能機の特性について
単能機は、毎日業務を開始する前にならし運転を行い、油温を上げないと、精度が出ない特性がある。そのならし運転の時間は、最低でも一時間程度は必要であり、特に冬期においては長時間を要する場合もある。したがって、単能機の使用する電力のうち、毎日最低一時間以上はならし運転に使用した電力なのであり、製品の製造には全く使用されていない。
被告の推計方法は、電力を使用しているときには等しく製品が製造されていることを前提としているものであるが、原告においては、右のとおり製品の製造に使用されていない無駄な電力が存在するのであり、他の「類似同業者」の単位電力量当たりの売上とは全く比例しない。したがって、被告の抽出した類似同業者すべてが、原告と同様単能機を主力とする業者でなければ、被告の推計方法は合理性が認められない。
<3> 単能機の単位電力量当たりの売上について
単能機を使用するには高度の技術を必要とせず、これによって製造する製品は小型の物ばかりであり、その上単能機のみでは半製品しか製造できない。これらの事情から、単能機の製造する製品の単価は非常に安い。原告の営業は、単能機で半製品を製造して納品することを中核としている。そして、単能機の使用電力量一キロワット時当たりにおける売上は、約金五〇〇円程度に過ぎないが、被告の抽出した類似同業者の単位電力量当たりの収入金額は、いずれもこれよりはるかに高額となっている。したがって、右類似同業者は、いずれも原告と異なり単能機を主力とはしていない業者であることが推認されるのであり、原告とは業態を異にするものであることは明らかである。
<4> 原告方における機械調整試運転に要した電力について
原告は、昭和五九年一月、中古のタレット旋盤及びボール盤各一台を購入したが、二台とも調子が悪く、長期にわたって機械の調整試運転を余儀なくされた。その結果、昭和五九年五月ころまでは、度々修理業者に修理を依頼し、その都度修理のための空電力を使用しなければならなかった。したがって、この間、右二台の機械からは、使用した電力に見合うような売上は全くなかった。
さらに、原告は、昭和六〇年五月、中古旋盤(前記五尺旋盤とは別)一台を購入したが、これも非常に調子が悪く、購入した直後から修理を繰り返し、同年五月から同年一二月まで修理運転を継続したのであるが、使用に耐え得る性能を有するに至らなかったので、同年一二月に売却した。この間、右中古旋盤からは一切売上がなかったのであり、右修理運転のために使用した電力は、一切製品の製造には結びついていない。
以上のとおり、原告は右各修理期間中において、普通の業者では考えられないほど修理運転等のために大量の空電力を消費したもので、総使用電力量に対する割合はかなりのものとなった。したがって、この点からも、原告の単位使用電力量当たりの売上が、類似同業者のそれと同じであるとは決していえない。
(二) 被告の同業者抽出基準の不合理性(より合理性のある推計方法の存在)
被告は、右抽出基準の中で、NC旋盤を使用している業者を除外しているが、油圧式単能機と普通旋盤との違いが単なる機能上の違いに過ぎないというのであれば、NC旋盤と普通旋盤も、NC旋盤がコンピューター制御によって複雑な加工をすることができ、生産効率が高いという機能上の違いがあるに過ぎないのであるから、むしろ単能機の特性に着目した基準を設けなければ首尾一貫しないというべきであり、この点で被告の抽出基準には合理性がない。
したがって、同業者率によって推計するのであれば、油圧式単能機を主力にしている業者のデータに基づいて推計するのでなければ、推計の合理性は認められないし、それがより合理的な推計方法というべきである。
仮に被告が抽出した同業者のデータに基づいて原告の所得を推計するのであれば、少なくとも、まず、原告の年間総使用電力量を、普通旋盤が使用した電力量と油圧式単能機が使用した電力量とに分け、次に、普通旋盤の使用電力量に対して、同業者の単位時間当たりの売上金額を乗じてその年間売上金額を推計し、油圧式単能機の使用時間に対しては、同業者の単位時間当たりの売上金額の二分の一を乗じてその年間売上金額を推計し、その後は被告の推計方法と同じという手法を採用するのでなければ、推計の合理性は認められない。
同業者率によってより合理的に推計した場合の原告の所得金額は、以下(1)のとおりである(油圧式単能機を主力としている同業者Aのデータ(別紙5「油圧式単能機同業者データ」記載のとおりである。)を用いて算定し、また、原告の年間使用電力量は、被告の把握した数値を前提とした。なお、以下において、△はマイナスを示す。)。
また、被告の抽出した同業者のデータに基づいてより合理的に推計した場合の原告の所得金額は、以下(2)のとおりである(原告の年間使用電力量は、原告の把握した数値を前提とした。)。
(1) 同業者率による方法
<1> 昭和五八年分
(a) 総収入金額 四九二万〇八二九円
右金額は、以下の<イ>と<ロ>の合計である。
<イ> 自家生産に係る収入金額 四六五万八〇〇四円
右金額は、原告の事業上の年間使用電力量八六五八キロワット時に、同業者Aに係る電力一キロワット時当たりの収入金額の平均値五三八円を乗じて算定したものである。
<ロ> 外注生産に係る収入金額 二六万二八二五円
右金額は、被告主張額と同額である。
(b) 一般経費の額 二〇二万四九二二円
右金額は、右(a)の総収入金額に同業者Aの一般経費率の平均値四一・一五パーセントを乗じて算定したものである。
(c) 特別経費の額 五五万二三八〇円
右金額は、被告主張額と同額である。
(d) 事業専従者控除額 四〇万円
右金額は、被告主張額と同額である。
(e) 事業所得金額 一九四万三五二七円
右金額は、右(a)の総収入金額から、右(b)ないし(d)の額を控除したものである。
<2> 昭和五九年分
(a) 総収入金額 一二八九万五九一四円
右金額は、以下の<イ>と<ロ>の合計である。
<イ> 自家生産に係る収入金額 一〇七七万五六〇二円
右金額は、原告の事業上の年間使用電力量二万〇〇二九キロワット時に、同業者Aに係る電力一キロワット時当たりの収入金額の平均値五三八円を乗じて算定したものである。
<ロ> 外注生産に係る収入金額 二一二万〇三一二円
右金額は、被告主張額と同額である。
(b) 一般経費の額 五三〇万六六六九円
右金額は、右(a)の総収入金額に、同業者Aの一般経費率の平均値四一・一五パーセントを乗じて算定したものである。
(c) 特別経費の額 五〇八万八六二九円
右金額は、被告主張額と同額である。
(d) 事業専従者控除額 四五万円
右金額は、被告主張額と同額である。
(e) 事業所得金額 二〇五万〇六一六円
右金額は、右(a)の総収入金額から、右(b)ないし(d)の額を控除したものである。
<3> 昭和六〇年分
(a) 総収入金額 一一九九万六八二二円
右金額は、以下の<イ>と<ロ>の合計である。
<イ> 自家生産に係る収入金額 八九〇万六〇五二円
右金額は、原告の事業上の年間使用電力量一万六五五四キロワット時に、同業者Aに係る電力一キロワット時当たりの収入金額の平均値五三八円を乗じて算定したものである。
<ロ> 外注生産に係る収入金額 三〇九万〇七七〇円
右金額は、被告主張額と同額である。
(b) 一般経費の額 四九三万六六九三円
右金額は、右(a)の総収入金額に同業者Aの一般経費率の平均値四一・一五パーセントを乗じて算定したものである。
(c) 特別経費の額 六八四万四六七三円
右金額は、被告主張額と同額である。
(d) 事業専従者控除額 四五万円
右金額は、被告主張額と同額である。
(e) 事業所得金額 △二三万四五四四円
右金額は、右(a)の総収入金額から、右(b)ないし(d)の額を控除したものである。
(2) 被告抽出の同業者のデータによる方法
<1> 昭和五八年分
(a) 総収入金額 五六九万四三八九円
<イ> 自家生産に係る収入金額 五四三万一五六四円
・ 普通旋盤 一七〇万三五八四円
原告の年間総使用電力量は八、二三七キロワット時であり、これに占める普通旋盤の使用電力量の割合は一八・六パーセントであるから、普通旋盤の年間総使用電力量は一、五三二キロワット時となる(八二三七キロワット時×〇・一八六)。
同業者の一キロワット時当たりの収入金額は一一一二円であるから、原告の普通旋盤による年間収入金額は一七〇万三五八四円と推計される(一一一二円×一五三二キロワット時)。
・ 油圧式単能機 三七二万七九八〇円
原告の年間総使用電力量は八二三七キロワット時であり、これに占める油圧式単能機の使用電力量の割合は八一・四パーセントであるから、油圧式単能機の年間総使用電力量は六、七〇五キロワット時となる(八二三七キロワット時×〇・八一四)。
同業者の一キロワット時当たりの収入金額は一、一一二円であり、油圧式単能機の収入金額はその二分の一であると考えられるから、原告の油圧式単能機による年間収入金額は三七二万七九八〇円と推計される(一一一二円÷二×六七〇五キロワット時)。
・ 合計 五四三万一五六四円
<ロ> 外注生産に係る収入金額 二六万二八二五円
右金額は、被告主張額と同額である。
<ハ> 合計 五六九万四三八九円
(b) 一般経費の額 二四二万七五一八円
右金額の計算方法は被告主張と同じであり、右総収入金額に同業者の一般経費率を乗じて計算した(五六九万四三八九円×〇・四二六三)。
(c) 特別経費の額 五五万二三八〇円
右金額は、被告主張額と同額である。
(d) 事業専従者控除額 四〇万円
右金額は、被告主張額と同額である。
(e) 事業所得金額 二三一万四四九一円
右金額は、右(a)の総収入金額から、右(b)ないし(d)の額を控除したものである。
<2> 昭和五九年分
(a) 総収入金額 一四九五万三三四九円
<イ> 自家生産に係る収入金額 一二八三万三〇三七円
・ 普通旋盤 六八七万六五四〇円
原告の年間総使用電力量は二万〇七三九キロワット時であり、これに占める普通旋盤の使用電力量の割合は三六・六パーセントであるから、普通旋盤の年間総使用電力量は七、五九〇キロワット時となる(二万〇七三九キロワット時×〇・三六六)。
同業者の一キロワット時当たりの収入金額は九〇六円であるから、原告の普通旋盤による年間収入金額は六八七万六五四〇円と推計される(九〇六円×七、五九〇キロワット時)。
・ 油圧式単能機 五九五万六四九七円
原告の年間総使用電力量は二万〇七三九キロワット時であり、これに占める油圧式単能機の使用電力量の割合は六三・四パーセントであるから、油圧式単能機の年間総使用電力量は一万三一四九キロワット時となる(二万〇七三九キロワット時×〇・六三四)。
同業者の一キロワット時当たりの収入金額は九〇六円であり、油圧式単能機の収入金額はその二分の一であると考えられるから、原告の油圧式単能機による年間収入金額は五九五万六四九七円と推計される(九〇六円÷二×一万三一四九キロワット時)。
・ 合計 一二八三万三〇三七円
<ロ> 外注生産に係る収入金額 二一二万〇三一二円
右金額は、被告主張額と同額である。
<ハ> 合計 一四九五万三三四九円
(b) 一般経費の額 五〇五万五七二七円
右金額の計算方法は被告主張と同じであり、右総収入金額に同業者の一般経費率を乗じて計算した(一四九五万三三四九円×〇・三三八一)。
(c) 特別経費の額 五〇八万八六二九円
右金額は、被告主張額と同額である。
(d) 事業専従者控除額 四五万円
右金額は、被告主張額と同額である。
(e) 事業所得金額 四三五万八九九三円
右金額は、右(a)の総収入金額から、右(b)ないし(d)の額を控除したものである。
<3> 昭和六〇年分
(a) 総所得金額 一六六五万一八二三円
<イ> 自家生産に係る収入金額 一三五六万一〇五三円
・ 普通旋盤 八一六万八七七二円
原告の年間総使用電力量は一万六一五八キロワット時であり、これに占める普通旋盤の使用電力量の割合は四三・一パーセントであるから、普通旋盤の年間総使用電力量は六九六四キロワット時となる(一万六一五八キロワット時×〇・四三一)。
同業者の一キロワット時当たりの収入金額は一一七三円であるから、原告の普通旋盤による年間収入金額は八一六万八七七二円と推計される(一一七三円×六九六四キロワット時)。
・ 油圧式単能機 五三九万二二八一円
原告の年間総使用電力量は一万六一五八キロワット時であり、これに占める油圧式単能機の使用電力量の割合は五六・九パーセントであるから、油圧式単能機の年間総使用電力量は九一九四キロワット時となる(一万六一五八キロワット時×〇・五六九)。
同業者の一キロワット時当たりの収入金額は一、一七三円であり、油圧式単能機の収入金額はその二分の一であると考えられるから、原告の油圧式単能機による年間収入金額は五三九万二二八一円と推計される(一一七三円÷二×九、一九四キロワット時)。
・ 合計 一三五六万一〇五三円
<ロ> 外注生産に係る収入金額 三〇九万〇七七〇円
右金額は、被告主張額と同額である。
<ハ> 合計 一六六五万一八二三円
(b) 一般経費の額 六〇六万九五八九円
右金額の計算方法は被告主張と同じであり、右総収入金額に同業者の一般経費率を乗じて計算した(一六六五万一八二三円×〇・三六四五)。
(c) 特別経費の額 六八四万四六七三円
右金額は、被告主張額と同額である。
(d) 事業専従者控除額 四五万円
右金額は、被告主張額と同額である。
(e) 事業所得金額 三二八万七五六一円
右金額は、右(a)の総収入金額から、右(b)ないし(e)の額を控除したものである。
(三) 被告の通達回答方式による立証方法
被告は、一般通達に対する回答に基づいて原告の所得を推計し、これを本件訴訟で主張立証する方法を採用しているが、その特徴は、同業者の住所・氏名等が一切明らかにされないもので、原告の反証を封ずることを目的とした不公正な立証方法であり、訴訟法上の信義誠実の原則に照らして、許されるべきではない。
5 被告主張5項は争う。
五 推計の合理性に関する被告の再反論
1 使用電力量のずれについて
(一) 推計が合理的であるためには、推計の基礎数値が正確に把握されていることが必要であるが、基礎数値の正確性は、絶対的な正確性まで要求されるものではなく、推計という事柄の性質上、課税庁が把握し得る限りにおいて正確に把握されていれば足りるというべきである。
本件において、被告が推計の基礎数値とする原告の使用電力量は、中部電力作成の電気使用実績証明書によって把握したものであるから、この限りにおいては正確である。
さらに、原告が主張する本件各係争年分の使用電力量と対比してみても、被告が把握した原告の使用電力量が、推計の合理性を失わせるほどに不正確であるとは到底いえない。
(二) 仮に、原告の主張する使用電力量を基礎数値として、原告の本件各係争年分の事業所得金額を、被告の推計方法に従って算定すると、以下のとおりであり(詳細は別紙7記載のとおりである。)、いずれも本件各更正の額(異議決定において一部取り消された後もの)を上回るから、この点でも、本件各更正は適法である。
昭和五八年分 四四五万三二三三円
昭和五九年分 八三〇万一五九八円
昭和六〇年分 六七一万四三五五円
2 原告の個別事情について
同業者の平均差益率及び一般経費率による推計の場合には、業者間に通常存在する程度の営業条件の差異は無視し得るのであるから、課税庁においてかかる推計による所得の認定を行い、かつ、その方法が業種の同一性、営業規模の一応の類似性、平均値算出過程の整合性等推計の基礎的要件に欠けるところがない以上、納税者の個別的営業条件の如何は、それが当該平均値による推計自体を全く不合理ならしめる程度に顕著なものでない限り、これを斟酌することを要しないものと解すべきであること、また、課税庁の主張する同業者の率による推計自体が納税者の事業と比較して不合理であると納税者が主張するのであれば、納税者はその事由を具体的に数額を挙げて主張立証すべきであることからすると、原告の主張する個別事情は、以下(一)ないし(三)のとおり、いずれも平均値による推計自体を全く不合理ならしめる程度に顕著なものとは到底認められないものであって、推計の合理性を失わしめるものではない上、「修理運転のために大量の空電力を消費した」点について、何ら具体的にその事実及び程度を立証しない以上、この点は、原告の個別事情と認めることはできない。
(一) 油圧式単能機のならし運転、空電力について
まず、油圧式単能機以外の普通旋盤においても、ならし運転は必要とされており、また、旋盤により製品加工を行う事業形態においては、機械の故障に伴う修理・調整試運転によって、製品の製造に結びつかない電力消費が不可避的に生ずる上、旋盤の主軸が回転して生産運転を行っている時間の中には、実際に製品を加工している実切削時間のみならず、実際に製品を加工していない空転時間(ならし運転に要する時間もこれに属する。)が存在する点でも、製品の製造に直接結びつかない電力消費が不可避的に生ずるのであるから、本件同業者抽出基準に従って行った被告の推計方法は、電力を使用しているときには等しく製品が製造されていることを前提とするものではない。したがって、油圧式単能機のならし運転の存在自体は、原告の個別事情とはなり得ない。
次に、単能機は、製品についてプラスマイナス一〇〇分の二ミリメートルの精度を要求される場合にならし運転が必要なのであり、右精度を要求される製品を製造する業者は一様にならし運転をしていたものと推定されること、熟練工とはいえない原告の妻も扱っていたことからすると、原告製品が特に高い精度を求められていたとはいえないと考えられること、ならし運転の時間は、冬ならば三〇分、春や秋ならば一五分程度必要だが、夏場ではならし運転は不要であること、原告の油圧式単能機にも装置されているフローコントロールバルブを使用すれば、ならし運転時間中においてさえも、製品の製造が可能であることからすると、原告の油圧式単能機については、ならし運転を最低一時間以上も行う必要も特段の事情もない。
仮に、ならし運転が一時間行われていたとした場合でも、ならし運転で消費される電力量は、作業時の消費電力量のおおむね四〇パーセントないし八〇パーセント程度であるから、一日の作業時間を八時間とすると、油圧式単能機における一日の消費電力量のうち、ならし運転時に消費される電力量の割合は、次のとおり計算される。
<1> ならし運転の電力量が作業時の消費電力量のおおむね四〇パーセントの場合
一〇〇×〇・四÷(一〇〇×〇・四+一〇〇×八)=〇・〇四八
<2> ならし運転の電力量が作業時の消費電力量のおおむね八〇パーセントの場合
一〇〇×〇・八÷(一〇〇×〇・八+一〇〇×八)=〇・〇九一
右計算のとおり、油圧式単能機一日の消費電力量のうち、ならし運転時に消費される電力量の割合は、約五ないし九パーセントにとどまるものである。しかも、本件推計課税においては、年間使用電力量一キロワット時当たりの収入金額を求めているのであり、原告の年間使用電力量には、油圧式単能機のほかに、旋盤(五尺)、研削盤、タレット旋盤、ボール盤等の機械装置の使用によって消費される電力量も含まれるのであるから、原告の年間使用電力量に対する油圧式単能機のならし運転に消費される電力量の割合は、右計算の結果に比べ、相当低いものであるといわざるを得ず、また、機械の実働時間を九時間半とした場合には、更に低くなることは明らかである。
したがって、ならし運転時によって消費される電力量の存在によって、直ちに被告の推計の合理性を否定することはできないというべきである。
(二) 油圧式単能機の製造する製品の単価について
そもそも、低い単価の製品であれば、一般的には単価の高い製品及び付加価値の高い製品に比べ、製造工程も少なく製造にかかる時間も少なくて済むのであるから、同一の稼働時間であれば、製造工程の少ない製品はより多くの製造が可能であり、さらに油圧式単能機を複数台使用して加工工程を組み合わせることによって、普通旋盤で製造可能な製品をより効率的に製造できるのであるから、製品単価が低いことを理由に、抽出した類似同業者全部が単能機を主力としている業者である必要はない。
また、本件においては、単位使用電力量当たりの収入金額の平均値をもって推計計算を行っているのであるから、同一の使用電力量当たりに製造される製品の総数及び当該製品の売上金額総額をもって、普通旋盤と油圧式単能機とを対比しなければ、推計の合理性に対する反論としては、無意味である。
(三) 修理運転等のための大量の空電力消費について
一般的に、原告と同様の事業においては、使用機械の故障・修繕というのは不可避なのであるから、仮に、機械の故障・修繕が原因で修理・調整試運転が必要となるのであれば、それは、原告固有の事情ではなく、同業者間に共通の事情というべきである。
したがって、修理・調整試運転による空電力の消費は、本件推計の合理性を覆すに足りる個別事情とはいえない。
3 NC旋盤及び油圧式単能機の特性と同業者抽出基準について
油圧式単能機は旋盤を機能別に分類した場合の名称であって、本件推計課税における同業者抽出に当たり、油圧式単能機を使用している業者を排除したものではない。
普通旋盤とNC旋盤(数値制御旋盤)とでは、旋盤としての機能が格段に異なり、<1>精度の高い均質な製品が大量に作れる、<2>複雑な形状の加工ができる、<3>省力化ができるなど、NC旋盤は、普通旋盤に比べ、加工精度、機能の向上及び労力等の省力化が著しく、両者には明白な格差がある。また、油圧式単能機の特性は、普通旋盤によって行う作業のうちの一つを、単一に行うというものであって、同一工程での多量加工には能率が良いという利点はあるものの、普通旋盤の工作機能とは異なるものではなく、その使用が業種の類似性を損なうものとはいえないから、類似同業者全部が単能機を主力としている業者である必要はない。
六 原告の本件各係争年分における実額主張
原告の昭和五八年分ないし昭和六〇年分の事業所得金額の実額は、次のとおりであり、被告の推計額は、これらと相当かけ離れているから、そもそも推計の合理性が欠けている。また、仮に、被告の推計に合理性があるとしても、推計額より実額が優先されるべきである。
1 昭和五八年分
(一) 総収入金額 四六五万六二二九円
(二) 一般経費 四二六万三八一七円
(1) 仕入れ 七万五四一二円
(2) 公租公課 八万七四三三円
<1> 本件事業に供している土地建物の固定資産税 五四三三円
原告が所有している家屋の面積六八坪のうち、工場部分は一七坪で全体の約二五パーセントを占めている。さらに、原告は、営業上事務室及び応接用として居住部分を使用しているので、その使用割合として五パーセントを加え、土地家屋全体の三〇パーセントを本件事業に供しているので、固定資産税の年総額一万八一一〇円の三〇パーセントに当たる五四三三円が経費となる。
<2> 事業用自動車の自動車税 七〇〇〇円
<3> 原告が加入する民主商工会の会費 七万五〇〇〇円
(3) 運賃 二九万一五〇〇円
機械を修繕に出すために、機械の運送を依頼した運賃である。
(4) 水道光熱費 四二万一六四一円
<1> 水道費 四九五七円
原告が、生活用も含めて使用した全水道料金一万六五二五円のうち、事業用に使用した部分である三〇パーセントに当たる金額である。
<2> 電気代 三九万一三八六円
右金額のうち、三七万七三八三円は工場の動力料金の合計であり、残額一万四〇〇三円は、電灯料金四万六六七七円のうち、工場部分に使用している電灯料金及び居住部分を事務室、応接室として事業用に使用している電灯料金の合計割合である三〇パーセントに当たる金額である。
<3> ガス代 二万五二九八円
原告が、生活用も含めて使用した全ガス料金八万四三二八円のうち、事業用に使用した部分である三〇パーセントに当たる金額である。
(5) 通信費(電話代) 五万六二〇〇円
(6) 接待交際費 三三万五〇四〇円
原告が顧客と商談等のために飲食した費用である。
(7) 修繕費 八七万二三〇〇円
<1> 工場の修繕費 一四万八〇〇〇円
<2> 機械設備の修繕費 六一万〇五〇〇円
<3> 事業用車両の修繕費 一一万三八〇〇円
(8) 消耗品費 一〇〇万二一六四円
<1> 事業用の事務用品費 一万六四七〇円
<2> 事業用自動車のガソリン代 二六万四六七九円
<3> 事業用消耗工具の購入費 七二万一〇一五円
(9) 福利厚生費(労働保険料) 一五万二三八〇円
(10) 事業用機械・車両の減価償却費 九六万九七四七円
(三) 特別経費及び専従者控除 九五万二三八〇円
(1) 外注費 二六万二八二五円
(2) 支払利息 二五万〇四九五円
(3) 事業用建物の減価償却費 三万九〇六〇円
(4) 専従者控除 四〇万円
公子に係る専従者控除額である。
(四) 事業所得金額 △五五万九九六八円
右(一)の総収入金額から、右(二)及び(三)の額を控除した額である。
2 昭和五九年分
(一) 総収入金額 一五六五万四一一七円
(二) 一般経費 七九八万八七三〇円
(1) 仕入れ 一五万九九八〇円
(2) 公租公課 九万〇四〇五円
<1> 本件事業に供している土地建物の固定資産税 五六〇五円
固定資産税の年総額一万八六八二円の三〇パーセントに当たる金額である。
<2> 事業用自動車の自動車重量税 八八〇〇円
<3> 原告の加入する民主商工会の会費 七万六〇〇〇円
(3) 水道光熱費 一〇〇万五一九六円
<1> 水道費 五六三二円
原告が、生活用も含めて使用した全水道料金一万八七七五円のうち事業用に使用した部分である三〇パーセントに当たる金額である。
<2> 電気代 九七万三六五三円
右金額のうち、九五万八六二九円は工場の動力料金であり、残額一万五〇二四円は、電灯料金五万〇〇八〇円のうち、工場部分に使用している電灯料金及び居住部分を事務室、応接室として事業用に使用している電灯料金の合計割合である三〇パーセントに当たる金額である。
<3> ガス代 二万五九一一円
原告が、生活用も含めて使用した全ガス料金八万六三七〇円のうち事業用に使用した部分である三〇パーセントに当たる金額である。
(4) 通信費(電話代) 六万八八三〇円
(5) 接待交際費 五一万四七五〇円
原告が顧客と商談等のために飲食した費用である。
(6) 宣伝費 二万四六〇〇円
(7) 損害保険料 五万一九四〇円
(8) 修繕費 七六万〇六九〇円
<1> 工場の修繕費 五四万六五〇〇円
<2> 機械設備の修繕費 九万三二四〇円
<3> 事業用車両の修繕費 一二万〇九五〇円
(9) 消耗品費 二九八万七〇九四円
<1> 事業用の事務用品費 九六六〇円
<2> 事業用のガソリン代 四六万一〇二四円
<3> 事業用消耗工具の購入費 二四五万七二五〇円
<4> その他 五万九一六〇円
(10) 福利厚生費 三一万六二二一円
(11) 事業用機械・車両の減価償却費 二〇〇万九〇二四円
(三) 特別経費及び専従者控除 五五三万八六二九円
(1) 外注費 二一二万〇三一二円
(2) 給料・賃金 二八六万七三三五円
(3) 支払利息 六万一九二二円
(4) 事業用建物の減価償却費 三万九〇六〇円
(4) 専従者控除 四五万円
公子に係る専従者控除額である。
(四) 事業所得金額 二一二万六七五八円
右(一)の総収入金額から、右(二)及び(三)の額を控除した額である。
3 昭和六〇年分
(一) 総収入金額 一八〇八万七七八六円
(二) 一般経費 七三三万八三八四円
(1) 仕入れ 一八万九九六四円
(2) 公租公課 九万五四九七円
<1> 本件事業に供している土地建物の固定資産税 五八九七円
固定資産税の年総額一万九六五七円の三〇パーセントに当たる金額である。
<2> 事業用自動車の自動車重量税 一万七六〇〇円
<3> 原告の加入する民主商工会の会費 七万二〇〇〇円
(3) 水道光熱費 九七万六七九三円
<1> 水道費 六七八七円
原告が、生活用も含めて使用した全水道料金二万二六二五円のうち事業用に使用した部分である三〇パーセントに当たる金額である。
<2> 電気代 九四万二四九五円
右金額のうち、九二万七四三八円は工場の動力料金であり、残額一万五〇五七円は、電灯料金四万六六七七円のうち、工場部分に使用している電灯料金及び居住部分を事務室、応接室として事業用に使用している電灯料金の合計割合である三〇パーセントに当たる金額である。
<3> ガス代 二万七五一一円
原告が、生活用も含めて使用した全ガス料金九万一七〇四円のうち事業用に使用した部分である三〇パーセントに当たる金額である。
(4) 通信費(電話代) 六万九四八〇円
(5) 接待交際費 九二万一八〇〇円
原告が顧客その他と商談のために飲食した費用である。
(6) 損害保険料 一一万二三六〇円
(7) 広告宣伝費 二万一六〇〇円
(8) 修繕費 四四万六〇五〇円
<1> 機械設備の修繕費 二九万三七〇〇円
<2> 事業用車両の修繕費 一五万二三五〇円
(9) 消耗品費 一五八万五一六八円
<1> 事業用の事務用品費 六三〇円
<2> 事業用自動車のガソリン代 三七万九三一三円
<3> 事業用消耗工具の購入費 一〇五万〇五五五円
<4> その他の消耗品費 一五万四六七〇円
(10) 福利厚生費 四〇万一三一七円
(11) 事業用機械・車両の減価償却費 二五一万八三五五円
(三) 特別経費及び専従者控除 七二九万四六七三円
(1) 外注費 三〇九万〇七七〇円
(2) 支払利息 七万〇八六三円
(3) 事業用建物の減価償却費 三万九〇六〇円
(4) 給与・賃金 三六四万三九八〇円
(5) 専従者控除 四五万円
公子に係る専従者控除額である。
(四) 事業所得金額 三四五万四七二九円
右(一)の総収入金額から、右(二)及び(三)の額を控除した額である。
七 原告の実額主張に対する被告の反論
実額を主張して推計課税を争う原告は、当然にその実額が存在することを「合理的な疑いを容れない程度」にまで立証しなければならないのであって、その存在をある程度合理的に推測させるに足りる具体的立証を行えば足りるというものではない。したがって、単にその主張する収入及び経費の各金額を証明するだけでは足りず、その主張する収入金額がすべての取引先からのすべての収入金額であること及びその主張する経費の金額がその収入と対応することまで証明しなければならない。
1 収入金額について
原告が主張する収入金額については、納品書(控)、それが欠落している部分は入金状況の分かる預金通帳、金銭出納簿の該当部分及び請求書の控え等を根拠とするが、これのみでは不十分であり、これ以外に売上の段階で作成される請求書控え、領収書控え、売上帳等により根拠付ける必要がある。
また、本訴において原告から提出された納品書(控)には、別紙8「書証検討表」記載のとおり、欠落しているもの、日付が逆転しているもの、日付の記載のないもの、単価及び金額のいずれも記載のないもの、名宛人の記載のないもの、納品書(控)、納品書及び請求書の三枚一組からなる未使用納品書のうち、請求書のみがないものが存在している上、審査請求の際に、原告が提出した請求書控え及び領収書控えには、それぞれ三四枚、一三枚の欠落が認められ、白紙の領収書控えが一二〇枚含まれており、控えと様式は同一であるが記載内容が異なる請求書八枚、納品書二枚及び領収書三枚が取引先に保存されていることも確認された。
さらに、原告の主張する事業所得金額は、確定申告段階、審査請求段階及び本訴段階においてことごとく異なっている。
以上からすると、原告の主張する収入金額が、すべての取引先からのすべての収入金額であるとは到底認められない。
2 必要経費について
原告が主張する必要経費のうち、少なくとも固定資産税、民主商工会の会費、水道光熱費、接待交際費及び消耗品費は、その全額について業務遂行のために通常必要なものとして客観的に必要経費と認識できるものとは認められない。
八 実額主張に関する原告の再反論
推計の必要性・合理性については推計課税の適法性を主張する被告の側に主張立証責任があるから、原告の実額反証は、被告の推計方法による課税が、実額に近似するかどうか不明であるという心証を抱かせる程度の反証で足り、必ずしも実額を証明する必要はない。
そもそも、実額反証について「合理的な疑いを容れない程度にまで立証」する必要があるというのは、被告の独自の立場であって、本来実額反証について必要とされる証明の程度は、民事訴訟の一般的な証明の程度と何ら異なるところはないのであり、証明の程度は「証拠の優越」で足りるというべきである。実質的にみても、本来納税義務を果たし、調査に協力していた納税者は、もともと調査の段階で課税庁が正しく調査を行っていれば、訴訟のような厳格な立証手続を経ることなく、自己の申告が正当であることを認定されたはずであるにもかかわらず、たまたま課税庁の不当な「調査拒否」と「違法な推計課税」が行われたために、訴訟手続において「合理的な疑いを容れない程度の証明」を要求されるのは、違法な推計課税をたまたま受けたというだけで、他の納税者より不利益な立場に置かれることになり、他の納税者との関係で極めて不公平であるのみならず、課税庁が本来適正な課税を実現すべきであるにもかかわらず、これに反して違法な推計課税を行ったために、その被害者である納税者がかえって立証において多大な負担を強いられるというのは、極めて不合理である。
また、一般的な立証責任の原則として、ある事実が「ないこと」を証明することは不可能であるから、ある事実が存在することによって利益を得る側が、その事実の存在を主張立証すべきものと解すべきであり、原告が主張する以外にも収入が存在することについては、被告に立証責任があると解するのが自然である。
被告は、原告の主張する事業所得金額が、確定申告段階、審査請求段階及び本訴段階においてことごとく異なっていることを根拠に、原告の実額主張が、すべての取引先からのすべての収入金額とは認められない旨主張するが、各段階における原告の主張額が異なるのは、基本的には経費の各年度への対応のさせ方のずれと、争点を絞るために被告から指摘のあったものにつき、経費を一部自己否認をしたり、ごく一部の売上漏れを認めたりしたこと等から生じたものに過ぎない。
第三証拠
本件訴訟記録中の書証目録及び証人等目録の記載を引用する。
理由
一 請求原因について
請求原因1ないし3の事実は当事者間に争いがない。
二 本件各処分の適法性について
1 推計の必要性について
(一) 証拠(証人三品博之、同岩田幸雄(第一回)、同山岸専吾(第一回))と弁論の全趣旨によれば、以下の事実が認められ(前記第二の四1の争いのない事実を含む。)、右認定に反する証人山岸専吾の証言(第一回)の該当部分は前掲証拠に照らして採用できず、他に右認定を覆すに足りる証拠はない。
(1) 被告係官三品及び同後藤は、統括官から原告の本件各係争年分の所得税調査をするよう指示を受け、昭和六一年四月二日午前一〇時三〇分ころ、原告方工場を訪れ、原告に対し、本件各係争年分の所得税の調査のために来訪した旨告げた上、申告の方法、事業概況、記帳状況を尋ねたい旨述べたが、原告は、自分の都合もあるから、都合の良い日を後日連絡する旨返答したので、三品及び後藤は、事業概況等につき幾つか質問した上、その週中に一度連絡をしてほしいと申し入れ、原告から、連絡する旨の返事を得た後辞去した。
(2) しかし、原告からの連絡がなかったので、三品及び後藤は、同月一〇日、再度原告方を訪れ、原告に対し調査に協力してもらいたい旨述べたが、原告は、「何しに来たんだ。連絡すると言っただろう。連絡するまで来なくてよろしい。」等と述べたので、翌週中に連絡するよう原告に告げてそのまま辞去した。
(3) 同月一二日、一宮税務署の杉田調査官は、原告から「妻の産後の経過が思わしくない。しばらく様子を見てから連絡する。」との電話連絡を受けた。
(4) しかし、原告から連絡がないことから、三品が、同年五月七日ころ、原告方に電話をしたところ、原告は不在であるとのことであったので、応答に出た原告の妻に対し、同月九日までに税務署に連絡すべき旨原告に伝言して欲しいと依頼した。
(5) 同月八日、一宮税務署の天野調査官は、原告から、「参議院選挙の担当役になっているから今忙しい。六月に入ってからまた連絡する。」との電話連絡を受けた。
(6) しかしながら、同年六月下旬になっても原告から連絡がないことから、三品は、同月二五日ころ、原告方に電話連絡をしたが、原告は不在であるとのことであった。そこで、三品は、応答に出た原告の妻に対し、翌日の朝九時ころに連絡をもらいたい旨の原告への伝言を依頼した。また、その際、三品は、原告の妻等が出産した事実があるかを尋ねたところ、原告の妻は、同人が出産した事実はなく、同人の知っている範囲内では身内の中で出産した者はいない旨返答した。
(7) 同月二六日、三品は、原告から、同年七月二〇日ころでないと都合がつけられない旨の電話連絡を受けたので、原告に対し、はっきりした日にちが決まったら、再度連絡するよう依頼したところ、同月半ばころ、原告から、三品に対し、同月二三日に来てほしい旨の電話連絡があった。
(8) 三品から引き継ぎを受けた被告係官岩田は、右連絡に基づき、同月二三日午後一時ころ、後藤と共に原告方を訪れたが、原告以外に七名ほどの立会者がいた。そこで、岩田は、調査に関係のない者は退席するよう依頼したが、原告は、自分は困らない旨述べ、その点について押し問答が繰り返された。その後、岩田が、原告に対し、本件各係争年分である三年分の記帳状況や事業概況について尋ねたところ、原告は、「事業内容や所得金額の確認であれば、昭和六〇年分だけでいいのではないか。三年分の調査をする必要があるのか。」等と述べ、その点についてのやりとりが続いた。その後、原告は、反面調査をしないでほしいと申し入れた上、三年分の営業所得収支計算書を提示したが、岩田及び後藤は、その内容の根拠あるいは裏付けとなる納品書や請求書等の原始記録、現金出納簿や銀行帳等の諸帳簿を確認できなかったので、それらを確認するため、原告に対し、次回の調査日を決めるよう依頼して辞去した。
(9) その後、岩田が三度ほど原告方に電話連絡をして、次回調査日が同年九月二六日と決まり、岩田及び後藤が、同日午後一時三〇分ころ、原告方を訪れ、右収支計算書の基となる原始記録及び諸帳簿を見せてもらえるよう依頼したものの、原告が、「調査理由や調査年分について納得したわけではない。収支計算書だけで十分検討できるのではないか。六〇年分だけなら見せてもいい。六〇年分をその場で確認して誤りがあれば他の年分も見せる。」等と述べたので、岩田は、三年分の書類全部を見せるようさらに要請を続けたが、原告がこれに応じなかったので、それ以上協力を依頼しても無理だと判断した。
(10) そこで被告は、原告の取引先に対する反面調査及び銀行調査を可能な限り行い、それによって把握できた収入金額を前提とし、必要経費を推計するなどした上で、原告の所得金額を推計し、本件各処分をした。
(二) ところで、国税庁、国税局又は税務署の調査権限を有する職員は、必要があるときは、質問検査権を行使することができ(所得税法二三四条一項)、質問検査の範囲、程度、時期、場所等実定法上特段の定めのない実施細目については、質問検査の必要があり、かつ、これと相手方の私的利益との衡量において社会通念上相当な限度にとどまる限り、権限ある税務職員の合理的な選択にゆだねられているのであり、さらに、調査実施の日時、場所の事前通知、調査の理由及び必要性の個別的、具体的な告知は、法律上一律の要件とされているものではない(最高裁昭和四八年七月一〇日第三小法廷決定)。
そこで、右の点を前提として、本件について見るに、前示の事実からすると、原告が、被告係官に対し、本件各係争年分の所得の根拠あるいは裏付けとなる原始記録等の提示を拒否したことについては、なんら正当な理由があるとは認められず、被告係官の質問検査権の行使に協力したものと評価することはできない。
なお、原告は、昭和六〇年分の原始記録等を一応提示しているが、被告係官が昭和六〇年分について誤りを指摘すれば、昭和五八年分及び昭和五九年分の原始記録等も提示する旨条件を付しており、そのことは、被告係官の質問検査権の行使を不当に制限する結果となるから(被告係官は、本件各係争年分の調査を行っているのであるから、昭和六〇年分に問題がなくとも、他の年分の原始記録等を調査する必要があることは明らかである。また、昭和六〇年分を検討する場合にはそれより前の原始記録等を見る必要がある場合も生じ得る。)、被告係官が原告の昭和六〇年分の原始記録等を検査しなかったことには理由があるというべきであり、被告係官は、原告の非協力的な態度により、原告の本件各係争年分すべての原始記録等を検査できなかったものと認められる。
(三) したがって、被告は、原告の非協力が原因で、原告の本件各係争年分の課税標準を実額で把握することができなかったのであるから、本件においては、推計の必要性が存在したものと認められる。
なお、前示のように、被告係官は、反面調査等により、原告の収入をほぼ正確に把握していたものと認められるが、一般の必要経費については、これを推計する必要があったものと認められるから、本件においては、原告の本件各係争年分の所得金額について推計の必要があったものと認められる。
2 推計の合理性
所得金額の推計(所得税法一五六条)は、国民の納税義務や租税負担公平の原則からして、納税義務者の所得金額を捕捉するのに十分な資料がないだけで課税を見合わせることは許されないことから、実額調査を行うことのできないときにやむを得ず課税庁にその代替手段として認められる所得金額の認定方法である。したがって、推計の合理性の有無は、採用された推計方法が、納税義務者の所得を認定する方法として一応の合理性を有すると認められるかどうかという観点から判断すべきである。
以上を前提に、以下本件における被告の推計方法につき検討する。
(一) 原告の自家生産に係る収入金額
(1) 証拠(甲A四五の二、六、八、一〇、一一、一三、一六、一八、二〇、二四、甲A七四の一ないし七、九、一二、一九、甲A一〇三の一ないし一二、甲二九ないし三二、乙一、乙二の一ないし三、乙四、六、七、証人石川誠治、同岩田幸雄(第二回)、同山岸専吾(第一、第二回))と弁論の全趣旨によれば、以下の事実が認められ、右認定に反する証拠はない。
<1> 原告は、旋盤を使用した機械部品の加工業を営んでおり、本件各係争年において事業上使用していた旋盤の種類は、次のとおりであり、NC旋盤は含まれていない。
油圧式単能機(三台) 昭和五八年から昭和六〇年まで
五尺旋盤(二台) 同 右
タレット旋盤(一台) 昭和五九年から昭和六〇年まで
ボール盤(一台) 同 右
<2> 原告が、右各旋盤を使用したことにより消費した本件各係争年分の(低圧)電力量の合計は、次のとおりである。
昭和五八年一月から同年一二月まで 八二三七キロワット時
昭和五九年一月から同年一二月まで 二万〇七三九キロワット時
昭和六〇年一月から同年一二月まで 一万六一五八キロワット時
<3> これに対し、被告が把握した、原告が旋盤の使用により消費した本件各係争年分の電力量の合計は、次のとおりである。
昭和五八年分(昭和五七年一二月から同年一一月まで) 八六五八キロワット時
昭和五九年分(昭和五八年一二月から同年一一月まで) 二万〇〇二九キロワット時
昭和六〇年分(昭和五九年一二月から同年一一月まで) 一万六五五四キロワット時
<4> 被告が、原告の本件各係争年分の自家生産に係る収入金額を推計するに当たっては、同業者の電力使用量一キロワット時における平均的な収入金額を原告の電力一キロワット時の収入金額とし、原告の年間電力使用量を乗じることにより算定した。そして、被告が、右の平均的な収入金額を算定するに当たって採用した同業者の抽出基準は、別紙5「同業者抽出基準」記載のとおりであり、抽出地域の範囲が、原告の管轄税務署である一宮税務署管内とされ、事業者の特徴としては、青色申告書を提出している者であって、材料の提供を受け、NC旋盤以外の旋盤を使用して機械部品受託加工業を継続的に営み、年間使用電力量が、被告が把握した原告の本件各係争年分の事業上の年間使用電力量の半分から二倍の範囲内にある者等の内容となっている。被告は、右基準に順次従って同業者を抽出し、その結果、本件各係争年に対応する同業者の数は、昭和五八年分が別紙2記載のとおり六件、昭和五九年分が別紙3記載のとおり四件、昭和六〇年分が別紙4記載のとおり六件であって各同業者の収入金額等は、別紙2ないし4記載のとおりであり、一般経費率は、最低二九・〇二パーセントから最高五四・〇二パーセント、電力一キロワット時当たりの収入金額は、最低金七三四円から最高金一八二二円となっており、各係争年において同一の記号で表された同業者は、いずれも同一である。
(2) 以上の事実からすると、被告の採用した同業者抽出基準自体には一応の合理性が認められ、また、被告が抽出した同業者の間には、一般経費率及び電力一キロワット時当たりの収入金額に多少のばらつきが認められるものの、各係争年分において抽出された同業者の中に、除外しなければ到底同業者の平均値と評価できなくなるほど顕著に業態が異なっていると推認されるような同業者が含まれているものとはいえない上、抽出過程に恣意が介在しておらず、抽出件数も特段不合理ではない。さらに、経験則上、工作機械の使用電力量とこれにより加工された機械部品の売上総額は概ね比例すると認められることを併せて考えると、被告が、原告の本件係争年分における原告の自家生産による収入金額を推計した方法(効率法)は、一応の合理性を有するものと認められる。
この点、原告は、第一に、被告の推計方法は、原告の本件各係争年分の所得金額を、それぞれ前年の一二月からその年の一一月までの使用電力量により推計するものであって、推計の基礎事実の認定を誤っており、合理性がない旨主張する。
しかしながら、右(1)の<2>及び<3>の各事実からすると、被告が本件各係争年分として把握した原告の使用電力量は、昭和五八年分については実際より約五パーセント多く、昭和五九年分については実際より約三パーセント少なく、昭和六〇年分については実際より約二パーセント多いものであり、本件各係争年分全体をみても、実際より約二・四パーセント多いという程度であり、一か月のずれが、推計方法の合理性を失わしめる程度の基礎事実の誤りであるとすべき特段の事情は認められないから、右のずれのみでは、被告の推計方法が一応の合理性を有するとの評価を失わしめるものということはできない(なお、弁論の全趣旨によると、使用電力量の基礎数値を原告の主張する数値として、原告の所得金額を推計しても、別紙7のとおり、その所得金額は、本件各係争年分について、本件更正において認定された額(異議決定において一部取り消された後のもの)を上回ることになる。)。
原告は、第二に、NC旋盤を同業者抽出基準から除くのであれば、油圧式単能機の特性、すなわち、作業開始前にならし運転が要求されること及び製造される半製品の単価が非常に低いことからして、油圧式単能機を同業者抽出基準としなければ一貫せず、被告の推計方法には合理性がない旨主張するが、証拠(甲三三、四四、乙五、一一、一二、一六、一九、二六)と弁論の全趣旨によれば、NC旋盤の生産性は、省力化により従来の生産性の約三、四倍であり、他方、油圧式単能機に要求される作業前のならし運転は、長ければ長いほど良いものであるところ、二時間に及ぶ者もあれば、逆に三〇分程度の者もあり、必ずしも一律ではないこと、油圧式単能機のならし運転時における消費電力は、せいぜい作業時の八〇パーセント程度であること、油圧式単能機は、普通旋盤に比べ、省力化により大量生産が可能となり、一製品当たりの電力使用量も少ないことが認められるのであり、以上の事実からすると、NC旋盤のみを同業者抽出基準から除き、油圧式単能機に着目した抽出基準を採用しなかったとしても、その抽出基準が一応の合理性を有するとの評価を失わしめるものとはいえないというべきである。
原告は、第三に、本件各係争年度における原告の使用電力量の中には、機械調整試運転に要した大量の空電力量が存在するから、これを含めて所得を推計するのは合理性がない旨及び被告の推計方法以上に合理的な推計方法が存在する旨主張するが、機械調整試運転に要した電力量を具体的に認めるに足りる証拠はないので、それを原告の個別事情として特に考慮することはできないし、所得金額の推計は、前示のとおり、納税者の真実の所得金額を把握できなかった場合にやむを得ず課税庁に代替手段として認められる所得金額の認定方法であるから、その方法に一応の合理性が認められる以上、より合理的な推計方法が存在することによっては、その推計の合理性そのものを争うことはできないと解すべきである(ただし、より合理的な推計方法があり、それを適用するための基礎事実も認められる場合には、その方法により所得金額を推計することができるから、その金額を前提として課税すべきことになる。もっとも、本件においては、後に判示するように、実額により所得金額を認定することができ、その場合には、いずれの推計方法も排除されるので、原告主張の推計方法の合理性等については判断しない。)。
(二) 原告の外注生産に係る収入金額
本件各係争年分における原告の外注費に係る収入金額につき、被告は、実額で把握した外注費と少なくとも同額であるとして、その金額を外注費に係る収入金額と推計している。
一般に、外注生産に係る収入金額が、その支払外注費の金額と同額以上であることは、経験則として認められるところであるから、その最低金額である支払外注費をもって、外注生産に係る収入金額を推計した被告の推計方法には、一応の合理性が認められるというべきである。
(三) 原告の一般経費の額
本件各係争年分における原告の本件事業に係る一般経費の額につき、被告は、類似同業者の平均一般経費率を用いて推計している。
そして、証拠(乙一、乙二の一ないし三)と弁論の全趣旨によれば、右類似同業者は、右(一)の(1)<4>で抽出された本件各係争年の同業者と同一であり、被告は、本件各係争年毎に、該当する右同業者の平均一般経費率を用いて原告の一般経費を推計したことが認められるから、右(一)の(2)において判示したとおり、右同業者の抽出基準及び抽出過程等に不合理な点がない以上、その同業者の平均一般経費率により、原告の一般経費を推計した被告の推計方法には、一応の合理性が認められる。
(四) 以上により、被告の推計方法は、一応の合理性が認められる。
なお、原告は、同業者の住所・氏名等を明らかにしない資料による被告の立証方法は、信義則に反し許されない旨主張するが、原告は、当該資料の作成者に対する尋問など、かかる立証に対する反証の手段を全く奪われるわけではないから、訴訟の追行上、原告に著しい不利益を与える結果が生ずるわけでもないし、被告のかかる立証は、被告に法律上課された守秘義務の結果であるから、被告の立証方法又は態度が、信義則に反するということはできない。
三 原告の所得金額について
右二のとおり、被告が原告の本件各係争年分の所得を推計により算出したことは適法であり、また、その推計方法に一応の合理性は認められるが、推計は、実額により所得金額を認定することができない場合に、法により、その代替手段として特に認められた所得金額の算出方法であって、その性質上、真実の所得金額になるとは限らないから(むしろ、通常は、その近似値が得られるに過ぎない。それゆえ、前示のような推計の必要性のあることがその適法要件となる。)、推計による課税処分の取消訴訟において当事者の主張立証した訴訟資料により実額による所得金額を認定することができる場合には、それを基に課税されるべきであることはいうまでもない。
もっとも、推計による課税処分の取消訴訟において、推計による所得金額を排斥し、実額による所得金額により課税すべきものとするには、収入及び経費が存在すること、その収入がすべての取引先からのすべての収入であること、その経費がその収入と対応するものであることが認められなくてはならないというべきである。
しかしながら、右の事実認定においては、通常の民事訴訟と異なり特に厳格な事実認定がされなければならないというものではない。
そこで、右のような観点から、本件における原告の実額主張につき検討する。
1 収入金額について
収入金額については、主張又は提出された証拠に係る収入以外の収入がないことが前提であるから、以下、原告提出の証拠において、収入の捕捉漏れ又は売上操作(以下、合わせて「売上漏れ等」という。)があることをうかがわせる事情があるのかどうかを検討する。
(一) 原告の帳簿及び関係書類等の作成状況
証拠(甲A一ないし三一、三四、三五(いずれも枝番を含む。)、証人山岸専吾(第一回))と弁論の全趣旨によれば、以下の事実が認められる。
(1) 原告は、一冊五〇組の納品書綴(一組は三枚で構成され、一枚目が納品書(控)、二枚目が納品書、三枚目が請求書であり、一括複写式となっている。)を使用し、納品するときは、一組のうちの、二枚目の納品書を付けて相手方に届け、一枚目の納品書(控)と三枚目の請求書が手元に残る。
(2) 各取引先の請求締切日になると、五〇組の合計請求書綴(一組は二枚で構成され、一枚目が請求書、二枚目が請求書(控)の複写式となっている。)を使用して、右(1)の一枚ないし数枚の請求書を基に右の合計請求書を作成し、これに、その一枚ないし数枚の請求書を添付して各取引先に売掛金を請求するが、合計請求書を作成せずに、直接右(1)の請求書で請求することもある。合計請求書を作成したときは、二枚目の合計請求書(控)が手元に残る。
(3) 売掛金が回収されると、基本的には領収書を相手方に交付するが、その場合には、領収書の控えが手元に残る。
(4) (1)の納品書(控)から、得意先別になっているルーズリーフ式の元帳に売上が転記され、売掛金が回収されたときは、右(3)の領収書の控えに基づいて入金事実が記帳され、小切手等により回収した際は、それを基に後日元帳に記帳される。
(二) 原告は、その主張に係る収入額を、基本的には納品書(控)で立証し、これが欠落している部分等については、入金状況を示す預金通帳、元帳の該当部分、合計請求書(控)等によって立証しようとしている。しかしながら、右納品書(控)には、別紙8「書証検討表」記載のとおりの問題点等があるので、以下、それらの点について検討する。
(1) 一冊五〇組の納品書綴に存在する納品書(控)の欠落について
証拠(甲A一ないし三一(いずれも枝番を含む。))と弁論の全趣旨によれば、原告から提出された納品書綴には、取引の多い得意先別の専用の綴とその他の取引先をまとめた「その他」用の綴の二種類が存在することが認められるが、甲A第一ないし三一号証のいずれにも欠落部が存在し、最も欠落部数の多いものは、得意先別の綴(甲A第一三号証)で八部、「その他」用の綴(甲A第二三号証)で一四部にのぼっている。
そして、右欠落部分について、証人山岸専吾(第一回)は、書き損じ、製品単価や個数の訂正・変更、さらに、納品書綴が複写式になっていることから、下敷を入れず、あるいは下敷の入れる場所を誤ったまま記入すると、一組に記入した結果その下の方の組にまで複写されてしまったことにより、余分に作成されてしまった不要な組を破り捨てたために生じたものである旨証言し、甲第二一号証にも同趣旨の記載がある。
しかし、一冊の綴(甲A第二三号証)で一四部の欠落が存在するということは、全体として二八パーセントの欠落を意味し、右のような書き損じ等のみが原因ではなく、他に売上があるのではないかとの疑いも生じ得る。もっとも、この点については、証人山岸専吾(第一回)は、甲A第二三号証の綴は、当初「その他」用として使用していたが、三組使用したところで、他に「その他」用として使用していた綴(甲A第二七号証)の中に未使用部分が存在することを発見したので、甲A第二三号証を、有限会社杉谷製作所専用にすることとし、右三組分については、再度甲A第二七号証の未使用部分に書き写した上で、甲A第二三号証の初めの三組を破り捨てたものである旨証言し、甲第二一号証にも同趣旨の証言がある。そして、右証言を前提とすれば、甲A第二三号証の欠落一四部のうち、三部を除いた一一部が、書き損じ等を原因としていることになるが、それでも欠落部分は、全体の二二パーセントになる。
しかしながら、得意先であるミワ金型工業株式会社の専用綴である甲A第一三号証の欠落八部に対しては、その中に売上漏れ等が含まれているかどうかは反面調査により確認し得るものであるにもかかわらず、被告から売上漏れ等であるとの具体的な反証はない(証人岩田幸雄の証言(第一、第二回)によると、岩田は、本件各処分の段階で原告の取引先に対する反面調査等により収入を実額で把握できたと考えていたことが認められるのであるから、被告が、右八部の欠落が売上漏れ等であることを立証することは困難ではない。)。
そうすると、証人山岸専吾の前記証言と甲第二一号証の記載も一応合理性を有するので、甲A第一三号証の欠落八部は、売上漏れ等ではなく、右証言及び記載の理由による書き損じ等であると認めるのが相当であり、それとの比較からしても、甲A第二三号証の欠落一一部も、その中に売上漏れ等が存在することをうかがわせる具体的な事情について被告の反証のない本件においては、証人山岸専吾の前記証言(第一回)と甲第二一号証により、その証言及び記載の理由による書き損じ等による欠落によるものと認めるのが相当である。
以上からすると、一冊五〇組の納品書綴に存在する欠落部分に、売上漏れ等が含まれていないものと推認するのが相当であり、これを覆すに足りる証拠はない(なお、被告は、乙第一四号証(領収書)及び乙第一五号証(請求書)を提出しているところ、これに対応する納品書(控)は甲A第九号証の中に存在しないことが認められるが、証拠(甲四〇の一、二、証人山岸専吾(第二回))によれば、右領収書と請求書は、実際の取引上のものではなく、原告にはその記載に対応する収入はなかったものと認められるのであるから、乙第一四号証及び乙第一五号証をもって、売上漏れ等が存在する根拠とすることはできない。)。
(2) 表紙の作成開始日付とずれている納品書(控)
甲A第二三号証は、表紙に昭和五九年三月六日から作成を開始したことを示す記載があるにもかかわらず、納品書(控)は、昭和五九年四月一四日から始まっている。
しかしながら、右(1)で認定したとおり、原告は、甲A第二三号証の綴を、当初「その他」用として使用していたが、三組使用したところで、他に「その他」用として使用していた綴(甲A第二七号証)の中に未使用部分が存在することを発見し、甲A第二三号証を、有限会社杉谷製作所専用にすることとし、右三組分については、再度甲A第二七号証の未使用部分に書き写した上で、甲A第二三号証の初めの三組を破り捨てたことが認められる。そして、証拠(甲二一、証人山岸専吾(第一回))によれば、破り捨てた三枚の納品書(控)に対応するものが、甲A第二七号証の三一ないし三三であることが認められ、甲A第三一号証の一に記載された作成開始日付と、甲A第二七号証の三一の日付の食い違いは、単なる誤記であると認められるから、結局、甲A第二三号証の表紙の作成開始日付と納品書(控)の日付とのずれは、売上漏れ等を示す事情とはいえない。
(3) 日付順となっていない納品書(控)
原告の提出した納品書綴の中には、日付順となっていない納品書(控)が存在する。しかしながら、証拠(甲二一、五一、乙二一、証人山岸専吾(第一回))によれば、月数の書き誤り(例えば、「二月」と書くべきところを「一月」と書き誤ること。)、未使用の納品書の組を飛ばして次の組に記入してしまい、その後、前の未使用の組を使用したこと、株式会社杉正製作所からの注文は、緊急の仕事が多く、納品書を作成せずにとりあえず納品しておいてから、後に覚書及び記憶に基づいて、実際に納品した日付で納品書を作成したことがしばしばあったこと、このような事情から日付の逆転が生じたことが認められる。
なお、甲A第二七号証には、右のような単なる組飛ばし等の理由だけでは説明のできない日付の逆転(日付が最前部からも最後部からも順に進んでいる。)が存在するが、証拠(甲二一、証人山岸専吾(第一回))によれば、「その他」用の綴を使い切っていたため、その時に新栄工業株式会社の専用綴として使用し始めていた甲第A二七号証を、当座の便宜のため、その末尾から「その他」用としても使用し始めたことが認められる。
以上からすると、日付の逆転には一応の理由が認められる上、日付の逆転が売上漏れ等を示すとの具体的な反証もない以上、日付の逆転は、売上漏れ等に基づくものではないと認めるのが相当である。
(4) 日付のない納品書(控)
原告の提出した納品書綴には、日付のないもの(甲A第一一号証の二〇、甲A第二二号証の一三、甲A第二六号証の二七、甲A第二六号証の三七)が含まれているが、甲A第一一号証の二〇は、昭和六一年との記載があるので本件各係争年分とは無関係であるし、甲A第二二号証の一三は、日付がなくても昭和六〇年八月の収入であることが認められること、甲A第二六号証の二七は、証拠(甲二一、甲A二五の三〇、三二、三五、甲A一一七、証人山岸専吾(第一回))からすると、昭和五八年一〇月三〇日、同年一一月一日及び同年一一月三日の納品をまとめて記載したものであること(ただし、納品書(控)である甲A第二六号証の二七の金額である一六万一〇〇〇円よりも、甲A第一一七号証の金額である一七万一〇〇〇円の方が、後の訂正された額であることからしてより正確であると認められ、これに反する証人山岸専吾の証言(第一回)の該当部分は信用できない。)、甲A第二六号証の三七についても、その記載から、昭和五九年一月の取引であることが認められる。
したがって、日付の記載のないものは、甲A第一一号証の二〇を除き、すべて本件各係争年分の取引であることが認められるのであり、日付の記載のないことをもって、売上漏れ等をうかがわせるような事情であるとは認められない。
(5) 単価・金額の記載のない納品書(控)
原告の提出した納品書綴には、単価・金額の記載のないものが多数含まれている。
しかしながら、証拠(甲二一、証人山岸専吾(第一回))と弁論の全趣旨によれば、単価・金額の記載がないのは、納入先と単価の合意ができていなかったため、納入の段階では納品書に単価を記入しなかったからであり、その後、請求の段階で請求書のみに単価を記入したり、改めて納品書を作成したりしたこと、その単価については、元帳に記載されていることが認められる。そして、原告からは、単価・金額の記載のないすべての納品書(控)に対応するすべでの収入を証明する証拠として、元帳、預金通帳が提出されており、前掲証拠(甲二一、証人山岸専吾(第一回))と弁論の全趣旨によると、単価・金額の記載のないものについては、すべて金額の裏付けがなされているから(ただし、前掲証拠によれば、甲A第二九号証の八は、無料サービスであることが認められ、甲A第五五号証の一と弁論の全趣旨によれば、甲A第二七号証の四一は、返品となったものであることが認められ、これらの認定を覆すに足りる証拠はない。)、単価・金額の記載がないことは、売上漏れ等をうかがわせる事情にはなり得ないというべきである。被告は、この点につき、種々の疑問を指摘するが、いずれも原告から取引先が明らかにされているものばかりであるから、具体的な反証を行うことができるにもかかわらず、これをしていない以上、売上漏れ等の事情はないとの認定を覆すことはできない。
(6) 名宛人の記載のない納品書(控)
原告から提出された納品書綴には、納入先の記載のないもの(甲A二五の二四ないし二六、三三、三七、甲A二七の九、二八、甲A二八の四、一六)が含まれているが、納入先の記載がないことは、その納品書(控)に対応する収入が現実に存在したかどうかの問題とはなり得ても、それ以上に売上漏れ等の存在をうかがわせる事情にはなり得ないというべきである。
そして、証拠(甲二一、甲A二八の二(納品書(控))、甲A三四の二(合計の請求書(控))、甲A五九(元帳)、一二六(元帳)、証人山岸専吾(第一回))によれば、甲A第二五号証の二四ないし二六、三三は、有限会社シノブ工業への納品書(控)、甲A第二五号証の三七、甲A第二七号証の九、二八、甲A第二八号証の四、一六は、いずれもシノブエンジニアリング株式会社への納品書(控)、有限会社シノブ工業に対する納品書(控)であることが認められるのであるから、当該納品書(控)とこれに対応する元帳の記載に相当する収入が現実に存在したことも認められる(なお、甲A第二五号証の二四の日付とこれに対応すると思われる甲A第一二六号証の該当部分の日付に食い違いがあるが、納品書(控)の順番と元帳の記載の順番から判断して、両者は同一の取引を示しており、どちらかの日付が誤記であるに過ぎない。)。
(7) 未使用の組のうち、請求書のみがないもの
甲A第一八、甲A第二五ないし二七号証の納品書綴りの中に、未使用の組(三枚一組)のうち、請求書のみがない組が存在することは当事者間に争いがないところ、証拠(甲二一、証人山岸専吾(第一回))によれば、カーボンの付いていない請求書のみをメモ代わりに使用したものと認められ、売上漏れ等を示すものとはいえない。
(8) 「×」の記載された納品書(控)
原告の提出した納品書(控)には、「×」の記載されたもの(甲A第一二号証の二二、甲A第二八号証の三六、甲A第二八号証の四一)が存在するが、甲A第一二号証の二三、甲A第二八号証の三七、四二からすると、明らかに書き損じであることが認められ、売上漏れ等を示すものとはいえない。
(9) 原告主張の昭和五八年分の事業所得金額がマイナスであること
原告の主張によれば、昭和五八年分の事業所得金額は、△五五万九九六八円であって赤字であり、後に判示するように当裁判所の判断においても赤字となる。しかし、後に判示するように、昭和五八年分については経費として減価償却費、専従者控除が含まれており、これらは生活費に充当することが可能であったものと認められるから、事業所得金額がマイナスであることをもって、特に不自然であるとすることはできない。
以上の(1)ないし(9)からすると、原告の提出した証拠には、売上漏れ等を示すような問題点は特に認められない上、実際に売上漏れ等が存在するとの反証もなされていないことになる。
被告は、さらに、審査請求の際には、原告が提出した請求書控え及び領収書控えには、それぞれ三四枚、一三枚の欠落が認められ、白紙の領収書控えが一二〇枚含まれており、控えと様式は同一であるが記載内容を異にする請求書八枚、納品書二枚及び領収書三枚が取引先に保存されていることも確認されたこと、原告の主張する事業所得金額は、確定申告段階、審査請求段階及び本訴段階においてことごとく異なっていることを理由として、原告が主張する収入金額は、すべての取引先からのすべての収入とは認められないと主張するが、前者については、乙第一四、第一五号証のほか、乙第三号証(裁決書)を提出するのみで、何ら具体的な内容を明らかにしないから、これをもって、原告の主張額以外に、売上漏れ等が存在すると認めることはできず、後者についても、昭和五八年分の確定申告の際、銀行からの借入れができるように、あえて粉飾して申告していた旨の証人山岸専吾の証言(第一回)は、後に判示するように原告が本件各係争年において利息の支払をしていることから一応首肯でき、また、その他の主張金額の差異は、弁論の全趣旨によると、本件各係争年分において計上漏れとなっていた経費を事後的に計上したり、ある経費科目を計上する年を変更したり、不明確な経費を自己否認したりしたため、確定申告段階、審査請求段階及び本訴段階における主張額に変化が生じたものであることが認められるから、右主張額の変化自体が、本訴における原告の主張額に売上漏れ等が存在することを示すものとはいえない。
(三) したがって、原告が提出した証拠とは無関係な収入は存在しないものとして、以下、原告が実額として主張する収入金額につき、証拠によって裏付けのあるものかどうか、その対応関係を検討する。
(1) 昭和五八年度について
(a) 杉原鉄工所株式会社からの収入(以下においては、単に取引先のみを記載する。)
証拠(甲A一の一ないし二二、甲A二の一ないし四八、甲A三の一、二)によれば、合計金二五四万八九九九円の収入が認められる。
(b) 株式会社杉正製作所
証拠(甲A二四の九、一一ないし一四、一六ないし一八、二一ないし二三、二八、三〇、三八、四二、四四、甲A二五の一、二、五、八、一四、一五、一七、二二、甲A二六の七、一二、二〇、三四、甲A一二七ないし一四九(いずれも枝番を含む。)、証人山岸専吾(第一回))によれば、合計金三九万三〇六〇円の収入が認められる(原告は、この金額から振込料四、八〇〇円を減額しているが、振込料は、その性質上経費として計上すべきものであるし、右振込料についてはその支払がなされたことを認めるに足りる証拠はないから、本件においては、右振込料を考慮することはできない。なお、甲A第二四号証の四四は、その記載内容と証人山岸専吾の証言(第一回)から判断して、甲A第二四号証の四二の再発行分であることが認められるから、右の計算においては、甲A第二四号証の四二のみを計上することになる。)。
(c) 有限会社日進
証拠(甲A二六の二一、二二、二六)によれば、合計金九万六四〇〇円の収入が認められる。
(d) 松岡鉄工所
証拠(甲A二四の三五、四三、甲A二五の四)によれば、合計金二万四一五五円の収入が認められる(原告は、甲A第二四号証の三五の金額は、実際には五円さらに引かれていると主張するが、これを裏付ける証拠はない。)。
(e) 安井工業所
証拠(甲A二四の三三、三四)によれば、合計金七二九〇円の収入が認められる。
(f) 大宮製作所
証拠(甲A二四の二五ないし二七、二九、三二)によれば、合計金一三万六四〇〇円の収入が認められる。
(g) 堀部マシンサービス
証拠(甲A二四の一五、一九)によれば、合計金二万三五〇〇円の収入が認められる(原告は、この金額から振込料四〇〇円を減額しているが、振込料は、その性質上経費として計上すべきものであるし、その支払がなされたことを認めるに足りる証拠はないから、本件においては、これを考慮することはできない。)。
(h) 有限会社シノブ工業
証拠(甲A二五の二三ないし二六、三三、甲A三四の一、二、甲A一二六、証人山岸専吾(第一回))によれば、合計金六万三三〇〇円の収入が認められる(なお、甲A第二五号証の二三と二五は、その記載内容及び証人山岸専吾の証言から、同一の取引を示しているものと認められる。)。
(i) 大一工業
右(2)の<4>で認定したとおり、甲A第二六号証の二七(納品書(控))に記載された金額よりも、甲A第一一七号証の方が、収入金額を正しく示しているものと認められるから、金一七万一〇〇〇円の収入が認められる(なお、そのうち一万一〇〇〇円は、川口製作所からの入金であることを示す記載が存在するが、いずれにしても収入金額に変化はない。)。
(j) 有限会社服部製作所
甲A第二四号証の一〇によれば、金一万七五〇〇円の収入が認められる。
(k) 新栄工業
証拠(甲A二五の三六、甲A二六の三一、甲A一一八)によれば、合計金二万九〇〇〇円の収入が認められる。
(l) 東野製作所
甲A第二五号証の三四によれば、金三万円の収入が認められる。
(m) 田中製作所
納品書(控)としては、甲A第二六号証の一ないし六、八、九(以上の合計は金一四万〇〇五〇円)、甲A第二六号証の一三ないし一六(以上の合計は金八万七八五〇円)、甲A第二六号証の一七ないし一九(いずれも金額の記載がない。)が存在する。原告は、さらに、田中製作所から昭和五八年一二月一日に金三二万八九〇〇円が入金されたことを示す甲第A第三二号証の一、二(預金通帳)を提出しているが、昭和五八年における納品書(控)は他に存在しない上、納品書(控)で明らかになる金額は二二万七九〇〇円であるから、金額的にみても、右預金通帳の入金額が、金額の記載のない納品書(控)を含めたすべての納品書(控)に対応する入金額の合計であると推認することができ、右推認に覆すに足りる証拠はない。よって、収入は、合計三二万八九〇〇円と認められる。
(n) O・K・K
証拠(甲A二五の二七ないし二九、三一)によれば、合計金八万七〇〇〇円の収入が認められる。
(o) 宮崎鉄工所
甲A第二四号証の三六によれば、金二万一八六〇円の収入が認められる。
(p) 川崎鉄工
証拠(甲A二四の三九、甲A二五の三)によれば、合計金一万三〇〇〇円の収入が認められる。
(q) 堤鉄工所
証拠(甲A二四の二四、三一、四一、甲A二五の六、七、九ないし一三、一六、一八ないし二一、甲A二六の一〇、一一、甲A三五の一、二、甲A三六の一、二)によれば、合計金四四万九三六〇円の収入が認められる。
もっとも、甲A第三五号証の一、二及び甲A第三六号証の二には、甲A第二四号証の二四、三一の納品書(控)に対応する合計金額からさらに一万五〇〇〇円を減額した旨の記載が存在するが、根拠が明らかでない以上、これをもって収入金額自体を減額することはできない。
(r) 福三製作所
証拠(甲A二六の二四、二五、二八ないし三〇、甲A三七の一)によれば、合計金一二万九六〇〇円の収入が認められる。
(s) 有限会社上飯田製作所
証拠(甲A二六の三二、三三、三五、甲A三八)によれば、合計金四万二四〇〇円の収入が認められる。
(t) 有限会社鹿島鉄工所
甲A第二四号証の二〇によれば、金四〇〇〇円の収入が認められる。
(u) 伊藤製作所
甲A第二四号証の四〇によれば、金一万〇五〇〇円の収入が認められる。
(v) 横井鉄工所
甲A第二四号証の三七によれば、金五〇〇〇円の収入が認められる。
(w) シノブエンジニヤリング株式会社
甲A第二六号証の二三によれば、金三〇〇〇円の収入が認められる。
(x) 太田鉄工
甲A第三九号証によれば、金五〇〇〇円の収入が認められる。
(y) 双葉商会
証拠(甲A三三の一ないし四)と弁論の全趣旨によれば、合計金三万九三一〇円の収入が認められる(甲A第三三号証の三、四は、納入先が不明であるが、弁論の全趣旨から双葉商会に対するものと認められる。)。
以上からすると、昭和五八年の収入金額の合計は、金四六七万九五三四円となる。
(2) 昭和五九年度について
(a) 杉原鉄工所株式会社
証拠(甲A三の三ないし五〇、甲A四の二ないし四二、甲A五四)によれば、合計金二三七万五四五四円の収入が認められる。
(b) 株式会社杉正製作所
証拠(甲A一九の二ないし二二、甲A二六の三九、四二、甲A二七の六、八、一六、二二、三三、三四、三七、甲A二八の一一、一三ないし一五、甲A五五の一ないし六、甲A九〇)によれば、合計金一一五万三九〇〇円の収入が認められる(原告は、この金額から振込料六二〇〇円を減額しているが、振込料は、その性質上、経費として計上すべきものであるし、その支払を認めるに足りる証拠はないので、本件においては、これを考慮することはできない。)。
(c) 有限会社上飯田製作所
証拠(甲A六の二ないし七、九ないし四〇、甲A五六の一ないし四)によれば、合計金一七五万五九六九円の収入が認められる。
(d) 福三製作所
証拠(甲A二六の三八、四〇、四一、甲A二七の一七、甲A三七の二)によれば、金六万一五六〇円の収入が認められる。
(e) 有限会社日進
証拠(甲A二七の一二、一三、一五、二五、三一、三六、三八、四〇、甲A二八の三、三五、四六、四八、甲A二九の二、七ないし一二、二一、甲A五七、甲A一二〇、証人山岸専吾(第一回))によれば、金五五万二五〇〇円の収入が認められる(「部品加工一式」に関し、甲A第二九号証の二一(納品書(控))の日付と甲A第五七号証(元帳)の日付が、食い違っているが、いずれも同一の取引を示しているものと認められるから、計算上は影響がない。)。
なお、甲A第五七号証によれば、一一月二〇日において、三万七〇〇〇円を減額した旨の記載があるが、その記載内容からして、外注費と認められるから、収入金額そのものの算定において、差し引くことはできないというべきである。
(f) 株式会社新栄工業
証拠(甲A一六の二ないし四九、甲A一七の二ないし一三、甲A二六の三六、三七、甲A二七の三ないし五、一〇、一一、一八、二一、二三、二六、三五、甲A一一九)によれば、合計金二〇〇万六二〇〇円の収入が認められる。
(g) ミワ金型工業株式会社
証拠(甲A一二の二ないし四六、甲A一三の二ないし一二、甲A二八の五、九、一〇、一二、甲A五八)によれば、合計金一〇六万二八八〇円の収入が認められる。
(h) シノブエンジニヤリング株式会社
証拠(甲A二七の九、二八、甲A二八の二、四、一六、二一、二五、甲A二九の五、六、一八、甲A五九)によれば、合計金一五万六〇〇〇円の収入が認められる(なお、右(2)の<6>参照)。
(i) 株式会社向洋工業所
証拠(甲A七の二ないし二七、甲A二七の二九、甲A六〇)によれば、合計金四八万五九〇〇円の収入が認められる。
なお、甲A第六〇号証には、四月分において、材料費四八五円を収入金額から減額しているが、そもそも経費(発生年月日は不明)として計上すべきものであって、収入金額の算定上差し引くことはできないものであり、また、原告主張に係る振込料二四〇〇円の支払の事実を認めるに足りる証拠はないから、本件においては、これを考慮することはできない。
(j) 株式会社前田鉄工所
証拠(甲A二一の二ないし三四、甲A六一の一ないし四)によれば、合計金三五五万六四一〇円の収入が認められる。
なお、甲A第六一号証には、一二月において、金一万二三六一円及び金三、九四五円を減額する旨の記載が存在するが、減額の根拠が明らかではない以上、収入金額から差し引くことはできず(記載内容からして、外注費と推測される。)、また、原告主張に係る振込料五〇〇〇円は、経費として計上すべきものであり、その支払がなされたことを認めるに足りる証拠はないから、本件においては、これを考慮することはできない。
(k) 株式会社東海鋳造所
証拠(甲A二八の八、一八、二三)によれば、合計金一七万六八八〇円の収入が認められる(原告は、この金額から振込料二〇〇〇円を減額しているが、経費として計上すべきものであるし、そもそもその根拠となるべき証拠がない。)。
(l) 株式会社飯田鉄工所
証拠(甲A二八の一九、二四、二九、甲A六三)によれば、合計金九万五〇五〇円の収入が認められる。
(m) 株式会社愛機製作所
甲A第三〇号証の二の一ないし四によれば、計算上は、合計一〇万三〇〇〇円であるが、甲A第六四号証から、実際には合計一〇万五〇〇〇円の収入があったものと認められる。
(n) 株式会社小笠原鉄工所
証拠(甲A二九の三、四)によれば、合計金一〇万四六二〇円の収入が認められる。
(o) 浅野鉄工株式会社
証拠(甲A二九の一九、二〇、二四)によれば、合計金三七万円の収入が認められる(甲第二一号証と弁論の全趣旨によれば、甲A第二九号証の二四は、甲A第二九号証の一九の再発行であると認められる。)。
(p) 安藤工業所
証拠(甲A六の八、甲A二七の七、一四、二〇、二四、二七、三〇、三九、甲A二八の六、二六、二七、三三、三七ないし三九、四二、四四、四五、甲A二九の一四、一六、一七、二三)によれば、合計金一七万九三〇〇円の収入が認められる。
(q) 有限会社杉谷製作所
証拠(甲A二三の二ないし一一、甲A六五、証人山岸専吾(第一回))によれば、合計金六七万七三〇〇円の収入が認められる。
(r) 日本合金軸承株式会社
甲A第二九号証の一三によれば、合計金二三万六〇〇〇円の収入が認められる。
なお、甲A第六六号証によれば、三万六〇〇〇円を減額する旨の記載が存在するが、根拠が不明である以上、これをもって、収入金額自体を減額することはできない。
(s) 太田鉄工所
証拠(甲A二七の一九、三二、甲A二八の七、二二)によれば、合計金一二万七〇〇〇円の収入が認められる。
(t) 木村商会
甲A第二八号証の二八によれば、金八、〇〇〇円の収入が認められる。
(u) 大一工業所
証拠(甲A二八の三四、四三)によれば、合計金八〇〇〇円の収入が認められる。
(v) 菅生鉄工
甲A第二九号証の二二によれば、金二万七〇〇〇円の収入が認められる。
(w) 鹿六工業
証拠(甲A二八の三〇ないし三二、四〇、甲A二九の一五)によれば、合計金一二万一六四〇円の収入が認められる。
(x) 双葉商会
証拠(甲A六七の一ないし五)によれば、合計金一一万四七二五円の収入が認められる(記載上は納入先が不明であるが、弁論の全趣旨から双葉商会に対するものと認められる。)。
(y) 伊藤製作所
甲A第六八号証によれば、金一万〇五〇〇円の収入が認められる。
(z) 株式会社杉山工業
証拠(甲A二八の一七、二〇、四七)によれば、合計金二四万七九二〇円の収入が認められる。
なお、甲A第六九号証は、その記載及び乙第二四号証からして、株式会社杉山工業に対する外注費に該当するから、原告の収入に計上することはできず、また、原告主張に係る振込料一〇〇〇円は、経費として計上すべきものである上、その支払を認めるに足りる証拠はないから、本件においては、これを考慮することはできない。)。
以上からすると、昭和五九年における収入金額の合計は、金一五七七万五七〇八円であると認められる。
(3) 昭和六〇年度について
(a) 株式会社前田鉄工所
証拠(甲A二一の三五ないし四五、甲A二二の二ないし三二、甲A八八の一ないし七、乙二三、証人山岸専吾(第一回))によれば、合計金三八一万四七四二円の収入が認められる(原告は、この金額から振込料八八〇〇円を減額しているが、経費として計上すべきものであり、そもそもその根拠となるべき証拠がない。)。
(b) ミワ金型工業株式会社
証拠(甲A一三の一三ないし四三、甲A一四の二ないし四八、甲A一五の二ないし五、甲A八九)によれば、一三二万〇九〇〇円であることが認められる(なお、甲A第一三号証の二八の最終行の金額を、金三二〇〇円として算定した。また、甲A第一三号証の二九の最終行は、単価が不明であるが、弁論の全趣旨によれば、この売上に相当する収入は存在しないものと認められる。)。
(c) 株式会社杉原鉄工所
証拠(甲A四の四三ないし四八、甲A五の二ないし四九)によれば、合計金一三四万七九五九円の収入が認められる。
(d) 株式会社杉正製作所
証拠(甲A一九の二三ないし四八、甲A二〇の二ないし一六、甲A九〇)によれば、合計金七八万四五三〇円の収入が認められる(原告は、この金額から振込料七二〇〇円を減額しているが、経費として計上すべきものであり、その支払を認めるに足りる証拠はないから、本件においては、これを考慮することはできない。)。
(e) 新栄工業
証拠(甲A一七の一四ないし四五、甲A一八の二ないし一九、甲A九一、証人山岸専吾(第一回))によれば、合計金二二二万七八〇〇円の収入が認められる(なお、証人山岸専吾の証言(第一回)によれば、甲A一七号証の二八は、甲A第一七号証の二四の再発行分と認められる。)。
なお、甲A第九一号証には、二万円を減額した旨の記載が存在するが、根拠が明らかでない以上、これをもって収入金額自体を減額することはできない。
(f) 有限会社上飯田製作所
証拠(甲A六の四一、甲A七の二八ないし五〇、甲A八の二ないし四六、甲A九の二ないし四八、甲A一〇の二ないし一四、甲A九二の一ないし三)によれば、合計金四五二万二六〇五円の収入が認められる(甲A第九号証の一四は、記載内容と弁論の全趣旨からして、甲第八号証の四五の再発行であるものと認められる。)。
なお、甲A第九二号証の一ないし三には、それぞれ三〇〇〇円、二万一〇〇〇円、七万九〇〇〇円を減額した旨の記載が存在するが、根拠が明らかでない以上、これをもって収入金額自体を減額することはできない。
(g) 安藤工業所
証拠(甲A二九の四一、四二、四五、四六、甲A三〇の四、五、七、一一、一六、二一、二三、二八、三二、甲A三一の三、七)によれば、合計金一六万七七〇〇円の収入が認められる。
(h) シノブエンジニヤリング株式会社
証拠(甲A二九の二五、三九、甲A三〇の一八、二二、二九、三一、三六、甲A三一の一一、一二、一八、甲A九三)によれば、合計金一五万一六〇〇円の収入が認められる。
(i) 有限会社日進
証拠(甲A二九の二六、三二、三五ないし三八、四七、甲A三〇の九、一三、一七、二〇、二七、三四、三五、甲A三一の四ないし六、甲A九四の一、二)と弁論の全趣旨によれば、合計金四四万六三〇〇円の収入が認められる(一〇月分の入金は、書証上は、五万〇五〇〇円であるが、弁論の全趣旨から五万一〇〇〇円であると認められる。)。
なお、原告は、七月及び八月における有限会社日進に対する外注費合計九万円(右外注費の存在は、証拠(甲三七ないし三九、乙一三、甲A九四の二、証人山岸専吾(第二回))からも認められる。)を右収入金額から減額しているが、外注費は経費であるから、これをもって収入金額自体を減額することはできない。
(j) 杉山工業
甲A第三〇号証の一〇によれば、金一一万三四〇〇円の収入が認められる(原告は、この金額から振込料六〇〇円を減額しているが、経費として計上すべきものであり、その支払を認めるに足りる証拠はないから、本件においては、これを考慮することはできない。)。
(k) 有限会社杉谷製作所
証拠(甲A二三の一二ないし三六、甲A九五)によれば、合計金一〇四万六六〇〇円の収入が認められる。
(l) 有限会社平岡製作所
証拠(甲A三一の九、一〇、一六、二〇、二一、甲A九六、証人山岸専吾(第一回))によれば、合計金三二万二〇〇〇円の収入が認められる。
(m) 株式会社小笠原鉄工所
証拠(甲A二九の三四、四〇、四三、四四、甲A三〇の三、六、一二、一五)によれば、合計金二九万四一二五円の収入が認められる。
(n) シバヤマメカニック株式会社
証拠(甲A二九の二七、二九ないし三一、甲A三〇の二五、二六、三〇))によれば、金四八万五六〇〇円の収入が認められる(原告は、この金額から振込料二、〇〇〇円を減額しているが、経費として計上すべきものであり、その支払を認めるに足りる証拠はないから、本件においては、これを考慮することはできない。なお、甲A第三〇号証の三〇は、弁論の全趣旨からして、甲A第三〇号証二五、二六の再発行分と認められる。)。
(o) 浅野鉄工株式会社
証拠(甲A三〇の一四、二四、三三、甲A三一の二、八、一三、一四)によれば、合計金八二万五七〇〇円の収入が認められる。
(p) 株式会社東海鋳造所
甲A第三〇号証の一九によれば、金六万一四四〇円の収入が認められる(原告は、この金額から振込料六〇〇円を減額しているが、経費として計上すべきものであり、そもそもその根拠となるべき証拠もない。)。
(q) 有限会社市来機械
証拠(甲A一一の二ないし七)によれば、合計金一七万〇八〇〇円の収入が認められる。
(r) 株式会社大江機械
証拠(甲A二九の三三、四一、四二、甲A九七、証人山岸専吾(第一回))によれば、金二万円の収入が認められる。
(s) アイセイハード株式会社
甲A第三〇号証の八によれば、金二万九七〇〇円の収入が認められる。
(t) 有限会社鹿島鉄工所
甲A第三一号証の一五によれば、金四〇〇〇円の収入が認められる。
(u) 鹿六工業所
甲A第三一号証の一七によれば、金二〇〇〇円の収入が認められる。
(v) 川瀬鉄工
証拠(甲A九八の一、二)によれば、合計金二万円の収入が認められる。
以上からすると、昭和六〇年の収入金額の合計は、金一八一七万九五〇一円であることが認められる。
2 必要経費
(一) 昭和五八年度について
(1) 一般経費
<1> 仕入れ
証拠(甲A一二二の一ないし六、甲A一二三)によれば、原告は、昭和五八年度において、材料費合計金七万五四一二円を支払った事実が認められる。
そうすると、昭和五八年分の収入金額との比較からして、原告は、最低限、右金額に相当する材料を昭和五八年中に費消したものと推認することができるから、右金額を昭和五八年分の収入金額に対応する経費として認めるのが相当である。
<2> 公租公課
(a) 本件事業に供している土地建物の固定資産税
証拠(甲四一の一、二、甲A四〇)によれば、原告の居宅の面積は六四・三三平方メートルであるのに対し、作業所の面積は四〇・九四平方メートルであること(その結果、作業所の原告所有建物全体に対する面積割合は、三八・八九パーセントと算定される。)、原告は、昭和五八年度の固定資産税として金一万八一一〇円を支払ったことが認められる。そして、土地の利用についても、作業所の面積割合に応じて事業用に使用していると推認するのが合理的である。
したがって、原告が、金一万八一一〇円の三八・八九パーセントである金七〇四三円を事業用の経費として計上することは、合理性が認められ、右金額をもって昭和五八年分の収入金額に対応する経費と認めることができる。
(b) 事業用自動車の自動車税
甲A第四一号証と弁論の全趣旨によれば、合計金七〇〇〇円を昭和五八年分の収入金額に対応する経費として認めることができる。
(c) 原告が加入する民主商工会の会費
証拠(甲A四二の一ないし一一)によれば、原告は、民主商工会に対し、毎月六〇〇〇円支払っていたこと(したがって、一月及び一一月においても、六、〇〇〇円を支払っていたものと推認できる。)、六、〇〇〇円の内訳は、「会費」二五〇〇円、「保」二〇〇〇円、「積金」一五〇〇円であることが認められるが、会費そのものは、税務申告に関連するものであるから、これを経費として計上することはできるが、その他のものについては、業務との客観的関連性を認めることはできない(弁論の全趣旨によると、「保」は組合員が相互に助け合うために「病気の入院見舞金」「死亡見舞金」などに支出され、「積金」は商工会の会員で組織される「班」の会費として積み立てられ、その使途は、証人山岸専吾の証言(第二回)によれば、忘年会、見舞い等であることが認められる。)。
さらに、甲A第四二号証の二も、支出の内容が不明であり、業務との関連性が明らかではないから、記載内容の三〇〇〇円は、これを経費として認めることができず、結局、昭和五八年分の収入金額に対応する経費として計上できるのは、会費一二か月分の合計金三万円のみである。
(d) 運賃
証拠(甲A四三の一ないし五)と弁論の全趣旨によれば、合計金二九万一五〇〇円を昭和五八年分の収入金額に対応する経費として認めることができる。
<3> 水道光熱費
(a) 水道費
証拠(甲A四四の一ないし六)によれば、原告は、昭和五八年度において、水道料金として合計金一万六五二五円を支払ったことが認められる。
しかしながら、右水道代は、すべて原告の業務に関連するものとはいえず、家庭用の水道代も含まれていることは、原告自身が認めているから、家事関連費(所得税法四五条一項一号、同法施行令九六条)に該当し、事業の遂行上必要である部分又は合理的な算定基準を明らかにする証拠はないから、経費として計上することはできない。
(b) 電気代
証拠(甲三〇の二、甲A四五の一ないし二四、証人山岸専吾(第一回))と弁論の全趣旨によれば、原告は、昭和五八年度において、事業用動力(低圧電力)代として合計金三七万七三八三円を支払い、電灯料金として合計四万六六七七円を支払ったことが認められる(昭和五八年一〇月分については、いずれも領収証が存在しないが、証人山岸専吾の証言(第一回)及び弁論の全趣旨により、動力代が二万三八九四円、家庭用電灯料金が二、九〇三円であることが認められる。)。そして、電灯料金については、右金額に、作業所の面積割合である三八・八九パーセントを乗じた一万八一五三円を事業用と認めるのが合理的であるから、結局、昭和五八年分の収入金額に対応する事業用の電気代は、合計金三九万五五三六円と認められる。
(c) ガス代
証拠(甲A四六の一ないし一二)によれば、原告は、昭和五八年度のガス代として合計金八万四三二八円を支払ったことが認められる。
しかしながら、右ガス代と業務との関連性が不明である上、仮に関連性があるとしても、すべて原告の業務に関連するものとはいえず、家庭用のガス代も含まれていることは、原告自身が認めているから、家事関連費(所得税法四五条一項一号、同法施行令九六条)に該当し、事業の遂行上必要である部分又は合理的な算定基準を明らかにする証拠はないから、経費として計上することはできない。
<4> 通信費(電話代)
証拠(甲A四七の一ないし一〇、証人山岸専吾(第一回))と弁論の全趣旨によれば、原告は、昭和五八年度において、電話代として、合計金五万六二〇〇円を支払ったことが認められる(昭和五八年六月分及び一二月分については、請求書・領収証書が提出されていないが、前掲証拠と弁論の全趣旨により、六月分は四五五〇円、一二月分は五二七〇円であることが認められる。)。
しかしながら、右電話代が、すべて原告の業務に関連するものとはいえず、家庭用の電話代も含まれていることは、原告自身が認めているから、家事関連費(所得税法四五条一項一号、同法施行令九六条)に該当し、事業の遂行上必要である部分すべてを明らかにする証拠はないが、弁論の全趣旨によれば、最低でも支払額の半額は、事業の遂行上必要である部分と推認することができるから、右五万六二〇〇円の半額である金二万八一〇〇円が昭和五八年分の収入金額に対応する経費と認められる。
<5> 接待交際費
証拠(甲A四八の一ないし一九、証人山岸専吾(第一回))と弁論の全趣旨によれば、合計金三三万五〇四〇円を昭和五八年分の収入金額に対応する経費として認めることができ、右認定を覆すに足りる証拠はない。
<6> 修繕費
(a) 工場の修繕費
証拠(甲A四九の一ないし四)と弁論の全趣旨によれば、一三万一六三六円を昭和五八年分の収入金額に対応する経費として認めることができる(甲A第四九号証の二の「神棚板」は、主観的には業務上の必要性が認められるとしても、通常必要なものとして客観的に経費と認識できるものとはいえないから、その支払額である金二万五〇〇〇円は、経費として計上できない。そして、甲A第四九号証の二の請求金額は、甲A第四九号証の一の金額に値引きされたものと推認されるから、右神棚代を差し引いた金額から値引き割合を考慮して計算した。また、甲A第四九号証の四の請求金額は、甲A第四九号証の三によれば、昭和五九年二月一日に七〇〇円値引きされているから、昭和五九年に値引きを計上する)。
(b) 機械設備修繕費
証拠(甲A四九の五ないし九、一一、甲A八一の一)と弁論の全趣旨によれば、合計金六三万〇三四〇円を昭和五八年分の収入金額に対応する経費として認めることができる(甲A第四九号証の一一の請求金額は、甲A第四九号証の一〇によれば、昭和五九年二月一日に九四〇円値引きされているから、昭和五九年に値引きを計上する。甲A第四九号証の一二は、昭和五九年において経費として計上する。)。
(c) 事業用車両修繕費及び共済掛金
証拠(甲A四九の一三ないし一七)によれば、原告は、昭和五八年度において、事業用車両修繕費及び共済掛金として、合計金一一万〇四〇〇円を支払ったことが認められるから、右金額をもって昭和五八年分の収入金額に対応する経費と認められる(甲A第四九号証の一三によれば、共済掛金の額は、従前の契約の場合、二万九六五〇円であり、契約継続の場合の「おすすめ契約」では、二万六二五〇円であるから、後者の額を支払ったものと推認される。また、甲A第四九号証の一四の車検代行手数料五、〇〇〇円は、甲A第四九号証の一五の五、〇〇〇円と同一であるものと推認される。)。
<7> 消耗品費
(a) 事業用事務用品費
証拠(甲A五〇の一ないし四)と弁論の全趣旨によれば、原告は、昭和五八年において、事業用事務用品費として合計金一万六四七〇円を支払ったことが認められる。
そして、その事実から、最低限右金額に相当する事務用品を昭和五八年において費消したものと推認することができるから、右金額を昭和五八年分の収入金額に対応する経費として認めるのが相当である。
(b) ガソリン代
証拠(甲A五一の一ないし八)と弁論の全趣旨によれば、合計金二六万四六七九円を収入金額に対応する経費として認めることができる。
(c) 消耗工具購入費
証拠(甲A五二の一ないし五、七ないし一〇、一三ないし二二、二五、二八、二九)と弁論の全趣旨によれば、原告は、昭和五八年度において、消耗工具購入費として合計金六四万二二四五円を支払った事実が認められるので、昭和五八年中に、右金額に相当する消耗工具を費消したものと推認することができる。したがって、右金額を、昭和五八年分の収入金額に相当する経費として認めることができる(なお、甲A第五二号証の六の金額は、甲A第五二号証の七ないし九の合計金額に含まれている可能性があるから、同号証の六の金額は、経費として計上することができない。また、同号証の一一、一二の各金額は、同号証の一三の金額に含まれている可能性があるから、同号証の一一及び一二の各金額は、経費として計上することができない。同号証の一四は、昭和五九年二月一日付けであるが、発生は昭和五八年と推認されるので、昭和五八年分の経費に計上する。同号証の一七は、同号証の一八の振込書であり、振込は昭和五九年に行われているから、振込料六〇〇円は、昭和五九年分の経費となる。同号証の二八の「備考」欄には、一一万二〇〇〇円と一、三四〇円の合計額から六万三三四〇円を差し引いて、残額五万円となった旨の記載があるから、同号証の二六及び二八の各請求書に対応する領収書が、同号証の二三及び二四であると推認される。)。
<8> 福利厚生費(労働保険料等)
証拠(甲A五三の一ないし三)によれば、合計金一五万二三八〇円を昭和五八年分の収入金額に対応する経費として認めることができる。
<9> 事業用機械・車両減価償却費
証人山岸専吾の証言(第一回)と弁論の全趣旨によれば、別紙9「減価償却費の計算(定額法)」記載のとおり合計金九六万九七四七円を昭和五八年分の収入金額に対応する経費として認めることができる。
(2) 特別経費(外注費、支払利息、事業用建物の減価償却費)及び専従者控除の額
右金額の実額合計が、金九五万二三八〇円であることは、当事者間に争いがない。
(3) 以上から、昭和五八年度の必要経費の額は、合計金五〇三万九九〇八円となる。
(二) 昭和五九年度について
(1) 一般経費
<1> 仕入れ
証拠(甲A一二四の一ないし一六)によれば、原告は、昭和五九年度において、材料費合計金一五万九九八〇円を支払ったことが認められる。
そして、昭和五九年分の収入金額との比較からして、最低限右金額に相当する材料を昭和五九年において費消したものと推認することができるから、右金額を昭和五九年分の収入金額に対応する経費として認めるのが相当である。
<2> 公租公課
(a) 本件事業に供している土地建物の固定資産税
証拠(甲A四〇、七〇)によれば、原告は、昭和五九年度の固定資産税として合計金一万八六八二円支払ったことを推認でき、これに作業所の床面積の割合である三八・八九パーセントを乗じた金七二六六円を、昭和五九年分の収入金額に対応する経費として計上するのが合理的である。
(b) 事業用自動車の自動車税
甲A第七一号証と弁論の全趣旨によれば、合計金八八〇〇円を昭和五九年分の収入金額に対応する経費として認めることができる。
(c) 原告が加入する民主商工会の会費
証拠(甲A七二の一ないし七)と弁論の全趣旨によれば、原告は、民主商工会に対し、会費として毎月二五〇〇円支払っていたこと(領収証のない一月、三月、一〇ないし一二月においても、二五〇〇円を支払っていたものと推認できる。)が認められ、一年分の合計金三万円が昭和五九年分の収入金額に対応する経費として認められる(会費以外を経費として計上することができないことは、前記(一)の(1)<2>(c)と同様である。)。
<3> 水道光熱費
(a) 水道費
証拠(甲A七三の一ないし六)によれば、原告は、昭和五九年度において、水道料金として合計金一万八七七五円を支払ったことが認められるが、右(一)の(1)<3>(a)と同様に経費として認めることはできない。
(b) 電気代
証拠(甲三〇の二、甲A七四の一ないし二三、証人山岸専吾(第一回))と弁論の全趣旨によれば、原告は、昭和五九年度において、事業用動力(低圧電力)代として合計金九五万八六二九円を支払い、電灯料金として合計五万〇〇八〇円を支払ったことが認められる。そして、事業用電灯料金については、右金額に、作業所の面積割合である三八・八九パーセントを乗じた一万九四七七円と認めるのが合理的であるから、結局、昭和五九年分の収入金額に対応する事業用の電気代は、合計金九七万八一〇六円と認められる。
(c) ガス代
証拠(甲A七五の一ないし一一)によれば、原告は、昭和五九年度のガス代として合計金八万六三七〇円を支払ったことが認められるが、右(一)の(1)<3>(c)と同様経費として認めることはできない。
<4> 通信費(電話代)
証拠(甲A七六の一ないし一一)によれば、原告は、昭和五九年度において、電話代として、合計金六万八八三〇円を支払ったことが認められるが、右(一)の(1)<4>と同様に右金額の半額である金三万四四一五円が昭和五九年分の収入金額に対応する経費と認められる。
<5> 接待交際費
証拠(甲A七七の一ないし二七、証人山岸専吾(第一回))と弁論の全趣旨によれば、合計金五一万四七五〇円を昭和五九年分の収入金額に対応する経費として認めることができ、右認定を覆すに足りる証拠はない。
<6> 宣伝費
証拠(甲A七八の一ないし七)によれば、合計金二万四六〇〇円を昭和五九年分の収入金額に対応する経費として認めることができる。
<7> 損害保険料
証拠(甲A七九の一、二)によれば、合計金五万一九四〇円を昭和五九年分の収入金額に対応する経費として認めることができる。
<8> 修繕費
(a) 工場の修繕費
証拠(甲A八〇の一ないし八)によれば、合計金五四万六五〇〇円を昭和五九年分の収入に対応する経費として認めることができる。
(b) 工場修繕費の値引き
右(一)の(1)<6>(a)で認定したとおり、△七〇〇円の値引きが認められる。
(c) 機械設備修繕費
証拠(甲A四九の一二、甲A八一の二ないし五、七)と弁論の全趣旨によれば、合計金八万三三四〇円を昭和五九年分の収入金額に対応する経費として認めることができる。
(d) 機械設備修繕費の値引き
右(一)の(1)<6>(b)で認定したとおり、△九四〇円の値引きが認められる。
(e) 事業用車両修繕費
証拠(甲A八二の一ないし三)と弁論の全趣旨によれば、合計金一二万〇九五〇円を昭和五九年分の収入金額に対応する経費として認めることができる。
<9> 消耗品費
(a) 事業用事務用品費
証拠(甲A八三の一ないし六)によれば、原告は、昭和五九年度において、事業用事務用品費として合計金九、六六〇円を支払ったことが認められる。
そして、最低限右金額に相当する事務用品を昭和五九年において費消したものと推認することができる、右金額を昭和五九年分の収入金額に対応する経費として認めるのが相当である。
(b) ガソリン代
証拠(甲A八四の一ないし一三)と弁論の全趣旨によれば、合計金四六万一〇二四円を昭和五九年分の収入金額に対応する経費として認めることができる。
(c) 消耗工具購入費(振込料を含む。)
証拠(甲A五二の一七、甲A八五の一ないし四三、四九ないし五九)と弁論の全趣旨によれば、原告は、昭和五九年度において、消耗工具購入費として合計金二二三万三三〇八円を支払った事実が認められるので、昭和五九年中に、右金額に相当する消耗工具を費消したものと推認することができる。したがって、右金額を、昭和五九年分の収入金額に対応する経費として認めることができる(なお、領収書である甲A第八五号証の三二の金七万〇九六〇円は、甲A第一一三号証の七の「御入金高」である金七万〇九六六円と同一であるものと認められ、右領収書を作成した昭和五九年にすでに値引きされたものと推認されるから、甲A第一一三号証の七の「前月請求高」である金一〇万一四四六円は、昭和五九年においてすでに値引きされたものと認められる。そして、甲A第一一三号証の七の「当月御買上高」である金一一万一五五〇円は、甲A第一一三号証の八ないし一〇の合計額と一致するから、甲A第一一三号証の八、九は、いずれも甲A第一一三号証の七の「前月請求高」の金額とは別の経費を示すものと認められる。甲A第八五号証の四四ないし四八の合計金一五万一三二六円は、仕入れに含まれていると推認されるので、計上しない。甲A第八五号証の六〇は、昭和五九年分の帳簿かどうか明らかではないから、昭和五九年分の経費に算入できない。)。
(d) その他
原告は、その他の消耗品費として、合計金五万九一六〇円を計上すべきであると主張し、その証拠として甲A第八六号証の一ないし七を提出しているが、甲A第八六号証の一、二、五、六はいかなる経費であるか、業務との関連性が不明確であり、経費として認めることはできないから、業務との関連性が認められる甲A第八六号証の三、四、七の合計金三万五五六〇円のみを昭和五九年分の収入金額に対応する経費として計上すべきことになる。
<10> 福利厚生費(労働保険料等)
証拠(甲A八七の一ないし一二)によれば、合計金三〇万八三二一円を昭和五九年分の収入金額に対応する経費として認めることができる(なお、甲A第八七号証の一三ないし一九の赤旗の代金については、業務関連性を明らかにする証拠がない。)。
<11> 事業用機械・車両減価償却費
証人山岸専吾の証言(第一回)と弁論の全趣旨によれば、別紙10「減価償却費の計算(定額法)」記載のとおり合計金二〇〇万九〇二九円を昭和五九年分の収入金額に対応する経費として認めることができる。
(2) 特別経費(外注費、支払利息、給料・賃金及び事業用建物の減価償却費)及び専従者控除の額
右金額の実額合計が、金五五三万八六二九円であることは、当事者間に争いがない。
(3) 以上から、昭和五九年度の必要経費の額は、合計金一三一五万四五三八円となる。
(三) 昭和六〇年度について
(1) 一般経費
<1> 仕入れ
証拠(甲A一二五の一ないし二一)と弁論の全趣旨によれば、原告は、昭和六〇年度において、材料費合計金一八万九九六四円を支払ったことが認められる。
そして、昭和六〇年分の収入金額との比較からして、最低限右金額に相当する材料を昭和六〇年において費消したものと推認することができるから、右金額を昭和六〇年分の収入金額に対応する経費として認めるのが相当である。
<2> 公租公課
(a) 本件事業に供している土地建物の固定資産税
証拠(甲A四〇、九九)によれば、原告は、昭和六〇年度の固定資産税として金一万九六五七円を支払ったことを推認でき、これに作業所の床面積の割合である三八・八九パーセントを乗じた金七、六四五円を昭和六〇年分の収入金額に対応する経費として計上するのが合理的である。
(b) 事業用自動車の自動車税
証拠(甲A一〇〇の一、二)と弁論の全趣旨によれば、合計金一万七六〇〇円を昭和六〇年分の収入金額に対応する経費として認めることができる。
(c) 原告が加入する民主商工会の会費
証拠(甲A一〇一の一ないし一〇)と弁論の全趣旨によれば、原告は、民主商工会に対し、会費として毎月二五〇〇円支払っていたこと(領収証のない一月及び一二月においても、各二五〇〇円を支払っていたものと推認できる。)が認められ、一年分の合計金三万円が昭和六〇年分の収入金額に対応する経費として認められる(会費以外を経費として計上することができないことは、前記(二)の(1)<2>(c)と同様である。)。
<3> 水道光熱費
(a) 水道費
証拠(甲A一〇二の一ないし六)によれば、原告は、昭和六〇年度において、水道料金として合計金二万二六二五円を支払ったことが認められるが、右(二)の(1)<3>(a)と同様に経費として認めることはできない。
(b) 電気代
証拠(甲三〇の二、甲A一〇三の一ないし一二、甲A一〇四の一ないし一二、証人山岸専吾(第一回))及び弁論の全趣旨によれば、原告は、昭和五九年度において、事業用動力(低圧電力)代として合計金九二万七四三八円を支払い、電灯料金として合計五万〇一九〇円を支払ったことが認められる。そして、事業用電灯料金については、右金額に、作業所の面積割合である三八・八九パーセントを乗じた一万九五一九円と認めるのが合理的であるから、結局、昭和六〇年分の収入金額に対応する事業用の電気代は、合計金九四万六九五七円と認められる。
(c) ガス代
証拠(甲A一〇五の一ないし七)によれば、原告は、昭和六〇年度のガス代として合計金八万一九五〇円を支払ったことが認められるが、右(二)の(1)<3>(c)と同様に経費として認めることはできない。
<4> 通信費(電話代)
証拠(甲A一〇五の六、七、甲A一〇六の一ないし六)によれば、原告は、昭和六〇年度において、電話代として、合計金六万九四八〇円を支払ったことが認められるが、右(二)の(1)<4>と同様に右金額の半額である金三万四七四〇円が昭和六〇年分の収入金額に対応する経費と認められる。
<5> 接待交際費
証拠(甲A一〇七の一ないし三九、証人山岸専吾(第一回))と弁論の全趣旨によれば、合計金九六万一七〇〇円を昭和六〇年分の収入金額に対応する経費として認めることができる。
<6> 広告宣伝費
証拠(甲A一〇八の一ないし一二)によれば、合計金二万一六〇〇円を昭和六〇年分の収入金額に対応する経費として認めることができる。
<7> 損害保険料
証拠(甲A一〇九の一ないし四)によれば、合計金一一万二三六〇円を昭和六〇年分の収入金額に対応する経費として認めることができる。
<8> 修繕費
(a) 機械設備修繕費
証拠(甲A一一〇の七ないし一四)と弁論の全趣旨によれば、合計金二九万三七〇〇円を昭和六〇年分の収入金額に対応する経費として認めることができる。
(b) 事業用車両修繕費
証拠(甲A一一〇の一ないし五)によれば、合計金一五万二三五〇円を昭和六〇年分の収入金額に対応する経費として認めることができる。
<9> 消耗品費
(a) 事業用事務用品費
甲A第一一一号証によれば、原告は、事業用事務用品費として金六三〇円を支払ったことが認められる。
そうすると、最低限右金額に相当する事務用品を昭和六〇年において費消したものと推認することができるから、右金額を昭和六〇年分の収入金額に対応する経費として認めるのが相当である。
(b) ガソリン代
証拠(甲A一一二の一ないし一五)と弁論の全趣旨によれば、合計金三七万九三一三円を昭和六〇年分の収入金額に対応する経費として認めることができる。
(c) 消耗工具購入費
証拠(甲A一一三の一ないし七、一〇、一三ないし三七)と弁論の全趣旨によれば、原告は、昭和六〇年度において、消耗工具購入費として合計金一〇四万九九五五円を支払った事実が認められるので、昭和六〇年中に、右金額に相当する消耗工具を費消したものと推認することができる。したがって、右金額を、昭和六〇年分の収入金額に対応する経費として認めることができる(なお、甲A第一一三号証の一のうち「前月繰越額」は、いつの発生か不明であるため、「本月請求額」のみを計上する。甲A第一一三号証の七の「当月御買上高」である金一一万一五五〇円には、右(二)の(1)<9>(c)で認定したとおり甲A第一一三号証の八、九の金額が含まれているから、残額である甲A第一一三号証の一〇の金額のみを計上する。また、甲A第一一三号証の一一の金額で、甲A第一一三号証の七の「前月度残額」が完済され、甲A第一一三号証の八、九の請求合計額金九万六三七〇円は、甲A第一一三号証の一二の金五万円で一部弁済されたものと推認されるから、甲A第一一三号証の一二の金額は昭和六〇年分の経費に計上しない。そして、甲A第一一三号証の八、九の合計請求額は、甲A第一一三号証の一二の金額を差し引いても金四万六三七〇円が残っているから、甲A第一一三号証の一三の金額には、この四万六三七〇円も含まれていると推認され、これを差し引いた金一七万七五三五円のみを、昭和六〇年分の経費として計上する。)。
(d) その他
原告は、その他の消耗品費として、合計一五万四六七〇円を計上すべきであると主張し、その証拠として甲A第一一四号証の一ないし一二を提出しているが、甲A第一一四号証の一ないし五は、いかなる経費か、業務との関連性が不明確であり、経費として認めることはできないから、業務との関連性が認められる甲A第一一四号証の六ないし一二の合計金一一万八六七〇円を昭和六〇年分の収入金額に対応する経費として計上すべきである。
<10> 福利厚生費(労働保険料等)
証拠(甲A一一五の一ないし六、一一六の一ないし一二、一五)によれば、合計金三三万〇六二七円を昭和六〇年分の収入金額に対応する経費として認めることができる(なお、赤旗の日刊紙及び日曜版並びに甲A第一一六号証の一三、一四は、業務との関連性が不明であるため、経費として計上することはできない)。
<11> 事業用機械・車両減価償却費
証人山岸専吾の証言(第一回)と弁論の全趣旨によれば、別紙11「減価償却費計算表(定額法)」記載のとおり合計金二五〇万九九八九円を昭和六〇年分の収入金額に対応する経費として認めることができる。
(2) 特別経費(外注費、支払利息、建物減価償却費及び給与・賃金)及び専従者控除の額
右金額の実額合計が、金七二九万四六七三円であることは、当事者間に争いがない。
(3) 以上から、昭和六〇年度の必要経費の額は、合計金一四四五万二四七三円となる。
3 事業所得金額
右1及び2からすると、総収入金額から必要経費を控除した事業所得金額(総所得金額)は、以下のとおりとなる。
(一) 昭和五八年度 △三六万〇三七四円
(二) 昭和五九年度 二六二万一一七〇円
(三) 昭和六〇年度 三七二万七〇二八円
四 結論
以上判示したところによれば、本件各処分(昭和六〇年分については異議決定により一部取り消された後のもの)の取消しを求める原告の請求は、昭和五八年分については、取消しを求める限度で、昭和五九年分及び昭和六〇年分については、右三の3で認定した各総所得金額を超える部分に相当する部分の取消しを求める限度でそれぞれ理由があるから、その限度でこれを認容することとし、その余は理由がないから、これを棄却することとし、訴訟費用の負担につき、行政事件訴訟法七条、民事訴訟法八九条、九二条本文を適用して、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 岡久幸治 裁判官 森義之 裁判官 田澤剛)
別紙1
本件課税処分等の経緯
別表一(昭和58年分)
<省略>
別表二(昭和59年分)
<省略>
別表三(昭和60年分)
<省略>
別紙2
昭和58年分同業者比率計算表
<省略>
別紙3
昭和59年分同業者比率計算表
<省略>
別紙4
昭和60年分同業者比率計算表
<省略>
別紙5
同業者抽出基準
一宮税務署管内において鉄工業を営む個人事業者のうち、所得税法143条(青色申告)の承認を受けて、昭和58年分ないし昭和60年分の所得税の確定申告について、青色申告書を提出している者で、以下の1ないし3の条件のいずれにも該当する者
1 昭和58年1月1日から昭和60年12月31日までの間において、旋盤(NC旋盤を除く。)を有し、材料の提供を受けて機械部品受託加工業を継続して営んでいる者
ただし、以下の(1)ないし(3)に該当する者を除く。
(1) 昭和58年1月1日から昭和60年12月31日までの間の途中において、開業、廃業、休業又は業態を変更した者
(2) 更正処分又は決定処分が行われた者のうち、国税通則法又は行政事件訴訟法の規定による不服申立期間又は出訴期間を経過していない者並びに不服申立中又は訴訟係属中の者
(3) 昭和63年12月22日付けで名古屋国税局長から一宮税務署長に発せられた「昭和58年分ないし昭和60年分の機械部品受託加工業の同業者調査報告書の提出について(一般通達)」に基づく同業者調査報告書作成日現在において、所得税の調査が行われている者
2 他の業種目を兼業していない者
3 事業所が一宮税務署管内にある者
4 青色事業専従者が妻のみである者
5 電力の年間使用電力量が以下の(1)ないし(3)のいずれかの範囲内にある者
(1) 昭和58年分については、同年1月1日から同年12月31日までの1年間の低圧電力の使用量が4,349キロワット時以上1万7,316キロワット時以下の範囲内にある者
(2) 昭和59年分については、同年1月1日から同年12月31日までの1年間の低圧電力の使用量が1万0,014キロワット時以上4万0,058キロワット時以下の範囲内にある者
(3) 昭和60年分については、同年1月1日から同年12月31日までの1年間の低圧電力の使用量が8,277キロワット時以上3万3,108キロワット時以下の範囲内にある者
別紙6
油圧式単能機同業者データ
<省略>
別紙7
<省略>
別紙8
書証検討表
<省略>
<省略>
<省略>
別紙9
減価償却費の計算(定額法)
<省略>
別紙10
減価償却費の計算(定額法)
<省略>
別紙11
減価償却費の計算(定額法)
<省略>
昭和六三年(行ウ)第一七号
更正決定
原告 石田勲
被告 一宮税務署長
右当事者間の当庁昭和六三年行ウ第一七号所得税更正処分取消請求事件につき、平成七年七月二四日当裁判所がなした判決に明白な誤謬があるから、職権により、つぎのとおり決定する。
主文
右判決の主文中、「一」の「2」に「金二五七万二三七八円」とあるのを「金二六二万一一七〇円」と、「一」の「3」に「三六三万四五五九円」とあるのを「金三七二万七〇二八円」と、各更正する。
平成七年七月二六日
名古屋地方裁判所民事第九部
裁判長裁判官 岡久幸治
裁判官 森義之
裁判官 田澤剛