大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

名古屋地方裁判所豊橋支部 昭和55年(ワ)178号 判決 1981年3月24日

主文

被告は原告に対し、金二九万五七四二円及びこれに対する昭和五五年八月五日以降支払済みまで年六分の割合による金員を支払え。

原告のその余の請求を棄却する。

訴訟費用はこれを八分し、その七を原告の、その一を被告の各負担とする。

この判決の第一項は仮りに執行することができる。

事実

第一、申立

一、原告(請求の趣旨)

1  被告樽前運輸有限会社は、原告に対し、金二四四万六八九三円及びこれに対する昭和五五年八月五日以降支払済みまで年六分の割合による金員を支払え。

2  訴訟費用は被告の負担とする。

旨の判決並びに仮執行の宣言を求める。

二、 被告

1  原告の請求を棄却する。

2  訴訟費用は原告の負担とする。

旨の判決を求める。

第二、主張

一、請求原因

1  原告は昭和五四年六月二七日訴外有限会社森田土木運輸(旧商号有限会社三東運輸=以下訴外会社という)から、同社が被告に対して当時有し、また将来取得すべき運送代金債権全部(同年七月末日までの計金五一一万〇二八八円)の譲渡を受け、同債権譲渡の通知は右訴外会社から被告に同月二八日ころなされた。

2  よつて原告は被告に対し、右譲受債権額五一一万〇二八八円から、同年七月六日被告より支払を受けた金二六六万三三九五円を除く残額金二四四万六八九三円及びこれに対する本件訴状が被告に送達された日の翌日である昭和五五年八月五日以降支払済みまで年六分の割合による商法所定遅延損害金の支払を求める。

二、被告の認否

請求原因1の事実及び同2の事実中原告に対する支払金額を認め、その余は争う。

三、抗弁

訴外会社は前記債権譲渡通知の後同年八月八日ころ書面で被告に対し、原告の債務不履行を理由に右債権譲渡を解除した旨通知して来た。

その後訴外石川正三は、訴外会社に対する債権に基き、訴外会社の被告に対する前記運送代金債権中金二一五万一一五一円に対し、札幌地方裁判所より同月一五日仮差押決定(同庁昭和五四年(ヨ)第四七二号)を得、更に、同年一一月四日右債権につき同裁判所から債権差押並びに取立命令を得た。被告は右命令に従い訴外石川正三にそのころ右金額を支払つた。

仮りに訴外会社の原告に対する債権譲渡契約の解除が効力を生じなかつたとしても(同年九月一日ころ訴外会社は被告に対し前記解除通知を撤回する旨通知して来ている)、被告は前記解除通知により訴外会社が右運送代金債権者としての地位を回復したものと信じたもので、その間に訴外石川正三によつて得られた前記仮差押命令、これに基く差押並びに取立命令に従つてなされた被告の右訴外人に対する支払は債権の準占有者に対する支払として有効である。

よつて右訴外人に対する支払金額の範囲で前記運送代金債権は消滅している。

四、抗弁に対する原告の認否

抗弁事実中訴外会社が被告に対し、被告主張のころ、前記原告に対する運送代金債権の譲渡契約を解除する旨の通知及び右解除通知を撤回する旨の通知をそれぞれなした事実を認め、その余は不知

五、再抗弁

被告は前記運送代金債権の仮差押決定の後と雖も訴外会社より債権譲渡解除通知を撤回する旨の通知に接しているのであるから、当然右債権譲渡契約の効力の存否、真実の債権者が何人であるかについて調査し、なおこれを確認できないときは債権者を確知できない場合として供託の措置をとるべきである。被告には前記訴外石川に対する運送代金の支払に当り債務者としての注意義務を怠つた過失があり、免責されない。

六、再抗弁に対する認否

これを争う。

第三、証拠(省略)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例