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名古屋家庭裁判所 平成元年(家)713号 審判 1989年4月13日

主文

申立人の本件申立を却下する。

理由

1  申立人は、遺言者山根弘全の別紙遺言につき遺言執行者の選任を求め、その実情として記録中の申立書記載のとおり主張した。

2  ところで、申立人の提出した「別紙遺言」をみると、これは遺言ではなく、申立人と遺言者との間の死因贈与契約であることは明らかである。

死因贈与については,民法554条により遺言に関する規定が準用されるのであるけれども,遺贈が単独行為であるのに対し死因贈与は契約であり,遺言執行者は単独行為であることに基づく規定であることに鑑み,遺言執行者の選任の規定は死因贈与には準用されないものと解するのが相当である(東京家庭裁判所昭和47年(家)第5741号事件審判・家庭裁判月報25巻6号141頁以下記載参照)。

3  従って,本件申立は失当というべきであるからこれを却下することとし,主文のとおり審判する。

別紙遺言

第七萬七千弐拾八号

死因贈與契約公正證書謄本

当公証人は後記当事者の嘱託に依つて其の法律行為に付いて聴取した陳述の趣旨を左の通り録取する

第壱条 贈與者山根弘全はその所有する後記の不動産を無償にて受贈者山根明夫に與へることを約し右受贈者は之を承諾した。

第弐条 本条贈與は贈與者の死亡に因つて当然にその効力を生じ、且つ、効力の発生と同時に贈與物件の所有権は更に何等の意志表示を要せず受贈者に移転するものとする。

第参条 本件贈与の目的たる不動産は左の通りである。

名古屋市○区○町×丁目××番

一、宅地 六拾弐坪五合

同所 ××番

一、宅地 五拾四坪

以上全所有権拾九分の拾五

本件の関係人左の通

名古屋市○区○町×丁目××番地

無職

贈與者 山根弘全

明治弐拾五年九月生

同所同番地

会社員

受贈者 山根明夫

大正拾壱年六月生

右両名は當公證人と面識がないので法定の印鑑証明書を提出させて其の人違ないことを證明させた此の公正證書は昭和四拾年五月拾八日左記役場で之を作成し列席者に読聞かせたところ之を承認した仍て左に當公證人と共に各自署名捺印する

名古屋市中区春日町拾九番地安藤ビル内

名古屋法務局所属

公證人 ○○ <印>

山根弘全 <印>

山根明夫 <印>

此の謄本は山根弘全の請求に因つて昭和四拾年五月拾八日左記役場に於て原本に就いて之を作成した

名古屋市中区春日町拾九番地安藤ビル内

名古屋法務局所属

公證人 ○○

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