名古屋家庭裁判所 平成21年(家)3195号 審判 2009年1月07日
主文
本件申立てをいずれも却下する。
理由
第1申立ての趣旨
1 本籍○○県○○市○○町×番地 筆頭者Aの戸籍中,「平成拾四年×月×日△△市△△町×丁目×番地Bをロシア国の方式により胎児認知 平成拾七年×月×日証書提出 同月×日同区長から送付」とあるのを抹消することを許可する。
2 本籍△△県△△市△△町×丁目×番地 筆頭者Bの戸籍中,「【胎児認知日】平成14年×月×日 【認知者氏名】A 【認知者の戸籍】○○県○○市○○町×番地 A【認知の方式】ロシア国の方式【証書提出日】平成17年×月×日【証書提出者】父」とあるのを抹消することを許可する。
第2申立ての理由
1 申立人は,日本国籍を有する男性である。B(平成×年×月×日生)は,ロシア国籍の母の子である。
2 平成17年×月×日に△△市役所において胎児認知の報告的届出がなされ(甲1の1),申立人及びBの各戸籍には,平成×年×月×日ロシアの方式により胎児認知が成立した旨の記載がなされている(甲3,4,創設的届出,以下「本件胎児認知」という。)。
3 しかしながら,本件胎児認知(創設的届出)は存在せず,同戸籍記載は明白な過誤である。
すなわち,本件胎児認知の報告的届出(甲1の1)に際して,在□□ロシア総領事館での「子供の認知届」と題された書面が添付され(甲1の2の1ないし3),それを創設的届出と扱って戸籍に記載がされている。
しかし上記は適式なロシア方式による胎児認知ではないから,本件胎児認知は存在しない。したがって,各戸籍の記載は添付書類の評価の過誤によってなされたものであるから,戸籍法113条に基づき,申立の趣旨記載の審判を求める。
第3当裁判所の判断
1 本件申立ては,ロシア方式による胎児認知が不適式,不存在であることを理由とする戸籍訂正の申立てであるところ,戸籍法113条による家庭裁判所の許可に基づく戸籍の訂正は,戸籍の記載自体から訂正すべき事項が明白な場合,又は戸籍の記載自体からは明白ではないものの,訂正すべき事項が軽微で,親族法,相続法上の身分関係に重大な影響を及ぼす虞のない場合に許されるものであって,訂正すべき事項が戸籍上明白ではなく,身分関係に重大な影響を及ぼすべき場合には,同法116条1項によらなければ許されないと解するのが相当である。
本件申立ては,胎児認知の方式違背を問題とするものであり,申立人は平成17年×月×日付けの認知届(甲1の1),Bの実父であることを認める旨の書面,(甲1の2の1,2)の申立人の各署名は自筆であることを争っていない。戸籍訂正の前提となるかかる認知届の効力については,人事訴訟において,申立人,Bの双方が主張立証を尽くした上で判断されるべきである。
また,本件訂正は関係者であるBに身分上重大な影響を及ぼすものである。
2 以上によれば,本件について戸籍法113条による戸籍訂正は許されないというべきであり,本件申立ては理由がない。よって,主文のとおり審判する。
(家事審判官 三上乃理子)