名古屋家庭裁判所 昭和47年(家)491号 審判 1972年3月06日
申立人 斉藤由紀子(仮名)
主文
申立人の氏斉藤を母の氏染谷に変更することを許可する。
理由
第一 申立人は主文同旨の審判を求め、当裁判所の調査の結果次の事実を認定できる。
(1) 申立人は亡父染谷浩治、母染谷みよ(本籍瀬戸市○○町○○番地)の三女として出生したものであるが、二歳の頃小児麻痺にかかり、左下肢萎縮の身体障害が残り、上記父母のもとで監護養育されてきた。
(2) 父浩治の叔母斉藤よしが相続人無くして死亡したため昭和一三年三月二九日申立人は上記よしの選定家督相続人に選定され同女の跡をついで斉藤家の戸主となつたが、当時申立人は未だ一二歳の少女であり且つ身体障害者であつたから、上記父母の膝下を離れたことが無く四六歳の今日でもひき続き母みよの世話を受け、洋裁の内職による収入と弟正史からの仕送りで母子が同居し相互にたすけあつて生活している。
第二 上記認定事実によれば、申立人は上記上田よしの選定家督相続人となつた為両親と氏を異にすることになつたのであるが、それは申立人が一二歳の少女の時、親権者であつた父によつてなされたことであるし、今日の法制上すでに発生した遺産の相続の点を除き家督相続人としての法律上の地位は全く意味を失つているものであり、従つて申立人が斉藤の氏を称する意義は薄く、一方申立人が同居の母と氏を同じくする必要性は否定できないから、申立人の本件申立は理由があり正当として認容し主文の通り審判する。
(家事審判官 浅野達男)