名古屋家庭裁判所岡崎支部 昭和48年(少)1060号 決定 1973年9月20日
少年 T・O(昭二九・四・二生)
主文
少年を中等少年院に送致する。
理由
(非行事実)
少年は、自動車運転の業務に従事しているものであるが、
(1) 公安委員会の運転免許を受けないで昭和四八年八月二七日午後〇時一〇分ごろ愛知県豊田市○○町×丁目××番地先道路において、普通乗用車(登録番号三×○、×××号)を運転し、
(2) 前記日時、前記場所の信号機により交通整理の行なわれている交差点を名鉄○○駅から○○町×丁目方面に向い時速約三〇キロメートルで直進するにあたり、このような場合、絶えず進路前方左右を注視し、特に対面する信号機の表示する信号に注意し、これに従つて進行すべき業務上の注意義務があるのに、これを怠り、現場にさしかかる以前に警察署のパトロールカーと出合つたため無免許運転が発覚することをおそれるあまり、対面信号が赤信号を表示しているのに、折から前方交差点内が何も見あたらないのに気を許し信号を無視して同交差点内に進入した過失により、折から同交差点の西側横断歩道を信号に従い北方より南方へ横断していた○生○子(当時一四歳)に自車の左前部を衝突させて同女を路上にはね飛ばし転倒させ、よつて同人に対し頭部外傷、脳挫傷、右頸骨々折等の傷害を負わせ、
(3) 前記日時場所で、前記(2)記載の交通事故を起したのに直ちに運転を停止して被害者の救護等法律の定める必要な措置を講じなかつた
ものである。
(罰条)
(1) 道路交通法一一八条一項一号、六四条
(2) 刑法二一一条
(3) 道路交通法一一七条、七二条一項前段
(処遇等について)
少年は、昭和四五年一一月末高校を中退したが、中学時代からボンドの吸入が目立ち、高校中退後は殆ど仕事をせず、暴力団員などと交遊しながら徒食し、無免許運転を重ね、昭和四七年五月二三日友人の車に同乗中、追越されたことに因縁をつけ傷害、恐喝の非行を犯し、同年六月二二日保護観察に附せられたが、なおも生活態度は改まらず、同年八月ごろから豊田でバーテンをするうちに、同年一〇月ごろ再びボンドの吸入をはじめ無為の生活を送り、昭和四八年一月ごろより暴力団○会○中○光の若衆になり、同構成員から小遣い銭などをもらい徒食していたところ、このことを聞知した母に再三住居地に連れ戻され、その度に逃げ戻り、そのうちに、ヤキを入れられたりすることから○会を逃げ出して、鈴鹿市に戻り同市内の友人宅を転々としていた。少年は、本件非行約一〇日前、友人よりバックミラーがなく、マフラーに欠陥のある本件乗用車を購入し、本件非行前夜豊田に遊びに来、本件非行を犯したもので、その過失は極めて悪質、かつ結果も重大であり、刑事処分も十分考えうるが、他面少年は、不良顕示性、自己中心性が大きく社会的に未熟で、規範意識が薄弱かつ内省に乏しく、意思も弱く、長期にわたる無軌道な無為の生活が習慣化し、勤労意欲も殆どないものと認められるから、この際少年に対し、中等少年院において専門的指導の下にそのルーズな生活態度全般にわたり、根底からの指導を与えることがより相当である。
(結論)
よつて、少年法二四条一項三号、同審判規則三七条一項後段を適用して主文のとおり決定する。
(裁判官 島内乗統)