名古屋家庭裁判所豊橋支部 昭和50年(少)275号 決定 1975年6月09日
少年 D・Y(昭三一・四・二生)
主文
少年を中等少年院へ送致する。
当裁判所が昭和四八年七月一九日なした少年を名古屋保護観察所の保護観察に付する旨の決定はこれを取消す。
理由
(非行事実)
少年は、別紙「非行一覧表」のとおり、共犯者と共謀のうえ、又は単独で、昭和五〇年四月一六日ころから五月六日ころまでの間一一回にわたり、他人の財物を窃取したものである。
(適用法令)
各事実につき刑法二三五条、なお共犯の点について同法六〇条。
(中等少年院送致の理由)
1 少年は昭和四六年五月一〇日ころから八月二三日ころまでの間に窃盗七件(被害見積合計七万八、五〇〇円位、共謀および単独犯)を犯し、翌四七年二月二八日不処分決定を受け、同年九月一七日、二〇日に窃盗二件(中古オートバイ盗、単独犯)を犯し、翌四八年一月一八日不処分決定を受け、同四七年一〇月二八日ころから翌四八年二月三日ころまでの間に窃盗三件(被害見積合計八万四、〇〇〇円位、共同正犯・一部Aと共謀)を犯し、同年七月一九日保護観察決定を受けており、右保護観察期間中に前記認定のとおり、本件各非行を行なつたものである。
2 本件各非行は、大部分が深夜、他の少年と共同して、駐車中の自動車内の金品、自動車部品を窃取したものであり、八の非行は、普通乗用車購入の頭金支払のため、深夜、勤務先の喫茶店から現金を窃取したものであり、以上によれば、少年の非行は偶発的なものではなく、反覆的であり、常習化しかかつていると認められる。
3 少年は両親とも健在であるが、中学二年のころ、父親が女性問題で家を出、別居することになり、一時は仕送りもなく、母親は旅館に住み込みで働き、少年、兄、姉を養育していたのであり、前件はこの間に犯されたものである。
その後父親からは仕送りが届くようになり、昭和四九年一〇月には父母が同居するようになつたが、部屋が狭いため、少年一人、アパートに居住することになつた。
なお少年は幼少時から視力が弱く、身体は大柄であるが、心臓が弱く、力仕事を嫌つており、学校の成績は下位である。
4 以上、少年の家庭環境、身体条件等同情すべき点はあるが、本件非行は両親が同居するようになり、経済的にも回復した後のものであること、非行回数も多く、被害総額も二六万円余に及ぶこと、前述のように更生の機会が三回もあつたのに、本件非行を敢行したものであり、内一件は保護司に面接に行つた日に行なつている等、規範意識がやや鈍麻し、非行が固定しかかつていること、現段階では両親の監査能力も不十分であること等が認められ、本件共犯者との交際を止めさせ、短絡的性格を矯正し、規則正しい生活をさせ、将来の生活方針をじつくり考えさせる必要がある。
5 従つて、この際、少年を中等少年院に送致して、その専門的指導のもとに矯正教育をほどこすのが相当であると考える。
よつて少年法二四条一項三号、少年審判規則三七条一項、少年院法二条三項、少年法二七条二項を適用して主文のとおり決定する。
ただし、少年は今迄に少年院に送致されたことはなく、今回、少年鑑別所においても、ある程度、反省の態度が見られること、非行も未だ固定し切つておらず、いわば、現在、固定するかしないかの分岐点に立つていると認められること、反社会的集団との関係はないこと、両親も今回の少年の非行を反省し、退院後は少年と同居する等受け入れ態勢を準備しつつあること等の事情があるので、収容期間はさほど長くする必要はなく、四ヵ月以内の短期処遇課程が相当であると考えるのでその旨勧告する。
(裁判官 神沢昌克)
非行一覧表
番号
日 時
(昭和年月日)
(時 分 こ ろ)
場 所
被害者(管)は管理者
被 害 品
共犯者
品 目
数量
時価または金額(円)位
1
五〇・四・一六午後一〇時三〇分ころ
蒲郡市○○町○○×の○○△△茶屋
○田○助
現金
中古射的銃外四五点位
一丁
二、〇〇〇
見積合計
一一、三六〇
A
2
五〇・四・二一午前〇時三〇分ころ
同市○○○通り○丁目○○○○○自動車○○営業所工場事務所
○井○治
中古カーステレオシートカバープラグ
一台
三枚
二個
八、〇〇〇
五、〇〇〇
六六〇
同
3
五〇・四・二二午前六時ころ
同市○○○通り○丁目△△△○○モータース裹側路上に駐車中の車内
○野○ら
中古カーステレオ
一台
二〇、〇〇〇
同
4
五〇・四・二六午前一時ころ
同市○○○通り○丁目×××株式会社○○モータース○○営業所駐車場に駐車中の車
(管)
○山○男
中古ホイルキャップ
一〇個
二一、二〇〇
同
5
五〇・四・二六午前一時三〇分ころ
同市○○町○○××の○○○自動車工業株式会社中古車置場の車内
(管)
○田○二
中古工具セット
バックミラー
チェンジレバー握り
発煙筒
現金
二式
二個
二個
一個
六、〇〇〇
五、〇〇〇
二、〇〇〇
六〇〇
八〇
同
6
五〇・五初めころ午前一時ころ
同市△△町○○×被害者方駐車場に駐車中の車
○浜○明
ウインカーコンビネーションランプレンズ
一個
九〇〇
B
7
五〇・五初めころ午前一時ころ
前記○○自動車工業株式会社駐車場に駐車中の車内
○川○己
自動車免許証
中古懐中電灯
地図
自動車用ワックス
一冊
一個
二冊
一個
五〇〇
八〇〇
一、〇〇〇
同
8
五〇・五・四午前二時ころ
同市××町○○×××の○喫茶店○ゆ○
○中○海
現金
たばこ
九七個
一三二、一六〇
九、七〇〇
なし
9
五〇・五・六午前一時三〇分ころ
前記○○自動車工業株式会社中古車展示場に駐車中の車
○田○二
バンバー
一本
一〇、〇〇〇
CB
10
五〇・五・六午前二時ころ
同市△×町○○×○○自動車株式会社××営業所
○井○治
中古たばこ灰皿セット外四点
一式
計二七、八〇〇
B
11
五〇・五・六午前二時三〇分ころ
同市△△町○○××○○駐車場に駐車中の車内
○場○典
現金
一、七〇〇
同