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名古屋高等裁判所 平成10年(ネ)213号 判決 1998年10月21日

呼称

控訴人

氏名又は名称

カツヤ産業株武会社

住所又は居所

愛知県名古屋市名東区名東本通二丁目三二番地

代理人弁護士

藤田哲

代理人弁護士

鈴木利治

輔佐人弁理士

筒井大和

呼称

被控訴人

氏名又は名称

株式会社システックキョーワ

住所又は居所

大阪府大阪市平野区平野北一丁目五番一九号

代理人弁護士

牛田利治

代理人弁護士

岩谷敏昭

代理人弁護士

澤由美

呼称

被控訴人

氏名又は名称

良川文弘

住所又は居所

大阪府大阪市生野区田島四丁目七番二号

代理人弁護士

牛田利治

代理人弁護士

岩谷敏昭

代理人弁護士

澤由美

呼称

被控訴人

氏名又は名称

阿部莞二

住所又は居所

大阪府大阪市平町区平野北一丁目一〇番二〇―一〇六号

代理人弁護士

牛田利治

代理人弁護士

岩谷敏昭

代理人弁護士

澤由美

輔佐人弁理士

大西孝治

輔佐人弁理士

大西正夫

主文

一  原判決を次のとおり変更する。

二  控訴人の請求及び被控訴人株式会社システックキョーワの請求をいずれも棄却する。

三  訴訟費用は、第一、二審を通じ、控訴人の請求に関して生じたものは控訴人の負担とし、被控訴人株式会社システックキョーワの請求に関して生じたものは同被控訴人の負担とする。

事実及び理由

第一  当事者の求める裁判

一  控訴人

1  原判決を次のとおり変更する。

2  被控訴人らは、控訴人に対し、連帯して五〇〇〇万円及びこれに対する平成七年五月一日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

3  被控訴人株式会社システックキョーワの請求をいずれも棄却する。

4  訴訟費用は、第一、二審を通じ、被控訴人らの負担とする。

二  被控訴人ら

1  本件控訴をいずれも棄却する。

2  控訴費用は控訴人の負担とする。

第二  事実関係

争いがない事実等及び争点は、原判決の「事実及び理由」欄の第二の記載を引用する。

第三  当裁判所の判断

一  被控訴人会社が実施している印刷方法が本件特許発明の技術的範囲に属するかどうかの判断については、原判決の「事実及び理由」欄の第三の一の記載を引用する(ただし、原判決二五頁九行目の「同裁判所は、」の次に「平成六年一〇月一三日、」を付加し、二六頁二行目の「取り消した」を「取り消す旨の判決をし、同判決は上告がされることなくそのころ確定した」と訂正し、三行目の「した上、」の次に「平成七年四月一七日、」を付加する。)。

二  控訴人の行為が不正競争防止法二条一項一一号の行為にあたるか、それにつき控訴人に故意又は過失があったかの判断については、次のとおり補正するほか、原判決の「事実及び理由」欄の第三の二の記載を引用する。

1  原判決三九頁八行目から五〇頁一〇行目までを次のとおり訂正する。

「 前記認定のとおり、昭和六二年初めころから被控訴人会社は控訴人に家具のつまみ部材等についての曲面印刷を発注していたが、控訴人の関連会社である東名特殊印刷の従業員として曲面印刷の業務に従事していた被控訴人阿部が同社を退職して、昭和六三年九月に被控訴人会社に入社した直後である同年一二月ころから、被控訴人会社において曲面印刷を業として行うようになり、平成元年一二月から被控訴人会社の控訴人に対する曲面印刷の発注が激減し、平成二年九月以降は発注がなくなったことが明らかであるところ、このことからすると、控訴人において、被控訴人会社が被控訴人阿部から得た技術的知識を利用して本件特許権に抵触する方法による印刷方法を実施しているとの疑いをもったとしても無理からぬ理由があるというべきであり、これに加え、控訴人が平成七年五月にオーエス商事株式会社、千代田グラビヤ、日本写真印刷株式会社に対し前記通知書を送付した時点では、既に平成六年一〇月ころ前記東京高等裁判所の判決が確定していたこと、その確定直後の同年一二月に控訴人が被控訴人会社に警告書を送付していたこと、それにもかかわらず、被控訴人会社は、これに対する何らかの具体的な反論をすることがなかったこと、平成七年二月大阪地方裁判所が発した検証物の提示命令にも被控訴人会社は従わなかったこと等の情況にあったことを総合考慮すると、控訴人がオーエス商事株式会社等に対し前記通知書を送付したことについて、控訴人に過失があるということはできないというべきであり、その他これを認めるに足りる証拠はない。

控訴人は、原審における平成八年一〇月二三日付準備書面において、転写時にゼリー状のPVA溶液が印刷模様の下面に一部残っていても、それが接着剤と類似の働きをして印刷模様の変形を防止することもある旨の主張をしている。しかるところ、前記東京高等裁判所判決は、検証において残存していた粘着性を有し透明で光沢のある付着物がPVAベース又はその溶解したものといわざるを得ないとしつつ、右の付着物は膜という一定の形状を備えるものではなく、これによって本件特許発明の作用効果に変わりはないと解されるということを理由として、それはもはや本件特許発明におけるベースとはいえないものであると判断しているのである(甲第一〇号証二八頁)。そして、控訴人の前記準備書面に記載されたゼリー状のPVA溶液も、右東京高等裁判所判決がいう「膜という一定の形状を備えるもの」ではないとみることができるのであり、したがって、右東京高等裁判所判決によれば、右のような実施方法も本件特許発明の実施の一態様であるという解釈が可能であるから、被控訴人会社がそのような方法で曲面印刷を実施している可能性を控訴人において認識していたとしても、そのことは、右の通知書の送付につき控訴人に過失があったとはいえないという前記結論に影響を及ぼすものではない。」

2  同五一頁六行目から五二頁六行目までを次のとおり訂正する。

「(二) 謝罪広告請求及び損害賠償請求について

前記(引用する原判決三七頁一行目から六行目)のとおり、控訴人がオーエス商事株式会社等三社に対する通知と同様の通知を広い範囲に行ったとは認められないうえ、右三社に対し通知書を送付した行為については、右にみたとおり、控訴人に過失があるとは認められないので、被控訴人会社の右の請求は失当である(なお、被控訴人会社は、原審における平成九年四月一六日付準備書面において、控訴人に対する損害賠償請求に関し、右の通知書の送付以前にも控訴人は被控訴人会社の取引先等に対して警告書を送付しているものの、これによって被った損害の賠償請求権が時効によって消滅していることを自認していることが明らかである。)。」

三  よって、控訴人の請求及び被控訴人らの請求はいずれも理由がないので、主文のとおり原判決を変更し、訴訟費用の負担につき民事訴訟法六七条、六一条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 渋川満 裁判官 河野正実 裁判官 佐賀義史)

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