大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

名古屋高等裁判所 平成12年(ネ)233号 判決 2002年8月22日

主文

1  控訴人Bの控訴に基づき,原判決主文一ないし六項を取り消す。

2  前記取消しにかかる被控訴人Cの控訴人Bに対する請求のうち,原判決別紙物件目録一記載の土地が控訴人Aの所有であることの確認及び同土地について控訴人Aとの間で賃借権を有することの確認を求める各訴えを却下し,その余の請求をいずれも棄却する。

3  控訴人Aの控訴をいずれも棄却する。

4  当審において追加された控訴人Aの予備的請求を棄却する。

5  訴訟費用は第1,2審を通じて,被控訴人Cに生じた費用の10分の1と控訴人Bに生じた費用を被控訴人Cの負担とし,被控訴人Cに生じた費用の10分の9及び被控訴人会社に生じた費用と控訴人Aに生じた費用を控訴人Aの負担とする。

事実及び理由

第1控訴の趣旨

1  控訴人B(甲事件)

(1)  原判決を取り消す。

(2)  被控訴人Cの控訴人Bに対する請求をいずれも棄却する。

(3)  訴訟費用は第1,2審とも被控訴人Cの負担とする。

2  控訴人A(乙・丙各事件)

(1)  原判決を取り消す。

(2)  被控訴人Cの控訴人Aに対する請求を棄却する。

(3)  被控訴人Cは控訴人Aに対し,原判決別紙物件目録三,同目録四の13,14記載の土地上から同目録五記載の建物を収去して,同土地を明け渡せ。

(4)  被控訴人会社は控訴人Aに対し,同目録五記載の建物から退去して,同建物を明け渡せ。

(5)  被控訴人Cは控訴人Aに対し,同目録二,四の1ないし19記載の土地を明け渡せ。

(6)  被控訴人会社は控訴人Aに対し,同目録二,三,四記載の土地を明け渡せ。

(7)  被控訴人C及び被控訴人会社は控訴人Aに対し,各自平成9年9月11日から同目録二,三,四記載の土地の明渡済みに至るまで1か月当たり440万円の割合による金員を支払え。

(8)  (当審における予備的請求)

被控訴人らは控訴人Aに対し,控訴人Aが被控訴人Cに1300万円を支払うのと引き換えに同目録五記載の建物を収去して,同目録二,同目録四の1ないし19記載の土地を明け渡せ。

(9)  訴訟費用は第1,2審とも被控訴人らの負担とする。

(10)  (3)ないし(8)につき仮執行宣言

第2事案の概要

1  被控訴人Cが控訴人A所有の土地を自動車学校用地として賃借し,その後,被控訴人Cが経営する被控訴人会社においてこれを自動車学校用地として利用しているという事案で

(1)  甲事件は,被控訴人Cが前記土地の一部について所有権移転の本登記ないし仮登記を経由している控訴人Bに対して,前記本登記を経由している土地について控訴人Aの所有であることの確認,被控訴人Cが賃借権を有することの確認及び土地使用を妨害する行為の禁止を求めるとともに本登記ないし仮登記の抹消登記手続を求めた事件

(2)  乙事件は,被控訴人Cが,前記土地の一部は賃貸していないとして賃借地の範囲を争う控訴人Aに対して,賃借権の確認を求めた事件

(3)  丙事件は,控訴人Aが被控訴人Cに対して,賃貸借は解除により終了した等として,自動車学校建物の収去と賃貸土地の明渡及び賃料相当損害金の支払を求めるとともに,被控訴人会社に対して,自動車学校建物からの退去と明渡及び占有している土地の明渡と賃料相当損害金の支払を求めた事件である。

原審が甲,乙事件の請求を認容し,丙事件の請求を棄却したため,これを不服とする控訴人B,同Aが控訴したものである。なお,当審において控訴人Aは,前記のとおりの立退料の支払との引き換えの建物収去土地明渡の予備的請求を追加した。

2  前提事実

(1)  被控訴人Cと控訴人Aとの間には,被控訴人Cが控訴人A所有の原判決別紙物件目録二記載の土地,同目録三記載の土地,同目録四の3,4,6ないし14,16ないし19記載の土地(以下同目録記載の各土地を「本件一ないし四土地」等と略する。)計17筆について,後記内容で借り受ける旨の昭和45年3月19日付け賃貸借契約書(甲5の3)(以下「本件契約書」という。)が存する。

賃料 月額8万8000円

支払方法 毎月末日支払

目的 自動車学校の建物,その他諸施設の敷地として利用

(2)  被控訴人Cは,前記各土地及び本件一土地,本件四の1,2,5及び15の土地を整地して自動車練習コース及び附属施設を完成させ,本件三土地,四の13,14の土地上に原判決別紙物件目録五記載の建物(以下「本件建物」という。)を建築し,保存登記を経由してこれを自動車学校校舎等として使用するに至った。

(3)  控訴人Bは,①本件一土地について,昭和63年3月1日代物弁済を原因として名古屋法務局西尾支局同月9日受付第3330号により所有権移転登記を,②本件二土地ついて,昭和59年7月31日代物弁済予約を原因として名古屋法務局西尾支局同年8月16日受付第11831号により所有権移転請求権仮登記を,③本件三土地について,昭和59年7月31日代物弁済予約を原因として名古屋法務局西尾支局同年8月6日受付第11422号A持分全部移転請求権仮登記を,それぞれ経由している(以下「本件①ないし③登記」等と略し,併せて「本件各登記」という。)。

(4)  控訴人Bは被控訴人Cに対し,本件①登記の経由後である昭和63年3月15日付け内容証明郵便で,本件一土地の使用を禁止する旨,同年6月2日付け内容証明郵便で,不動産侵奪罪で刑事告訴する旨の通知をした(甲12,13)。

(5)  控訴人Aは被控訴人Cに対して,平成元年,本件一ないし四土地の賃料は平成元年2月7日以降1か月440万円であることの賃料増額確認請求訴訟を提起(名古屋地方裁判所岡崎支部平成元年(ワ)第51号)し,平成3年11月12日,同裁判所は,前記増額賃料は1か月100万円であることを確認する旨の判決を言い渡した(甲3)。

(6)  被控訴人Cは,平成6年1月17日に被控訴人会社を設立して,代表取締役に就任したが,同日からは被控訴人会社が前記自動車学校を営んでいる。

(7)  控訴人Aは,被控訴人Cに対して,本件賃貸借契約上の特約に基づく明渡義務があること及び無断転貸をしたことを理由に,平成6年6月12日付け内容証明郵便で,本件賃貸借契約解除の意思表示をし,同意思表示はその頃被控訴人Cに到達した。

3  当事者の主張

(甲事件)

(1) 被控訴人Cの主張

① 控訴人Bは,本件①登記を経由した後,被控訴人Cに対して,前記のとおり本件一土地の使用を禁止するとか,不動産侵奪罪で告訴する旨の内容証明郵便を送付し,その後も同土地について自動車学校の使用を妨害する嫌がらせを継続している。

② 控訴人Bの本件各登記は実体のないものであり,仮に登記原因どおりの代物弁済があったとしても,同代物弁済は控訴人Aと控訴人Bとの間の通謀虚偽表示によるものであり無効である。仮に控訴人Bが本件一土地を善意の第三者に譲渡すれば,被控訴人Cの賃借権が法的に否定される可能性もある。

③ したがって,被控訴人Cは控訴人Bに対して

(ア) 本件一土地が控訴人Aの所有であることの確認

(イ) 被控訴人Cが本件一土地について本件賃貸借契約に基づく賃借権を有することの確認

(ウ) 被控訴人Cの控訴人Aに対する本件賃貸借契約に基づく賃借権を保全するため,債権者代位として,控訴人Aが控訴人Bに対して有する本件各登記の抹消登記手続

(エ) 控訴人Bによる本件一土地の使用を妨害する一切の行為の禁止

をそれぞれ求める。

(2) 控訴人Bの主張

① 控訴人Bと被控訴人Cとの間で,被控訴人Cが控訴人Aに対して賃借権を有することを確認する利益はない。

② 本件一土地の所有権は控訴人Bにあり,すでに所有者でなくなった控訴人Aとの間で賃借権を確認する利益はない。

③ 本件一土地について,被控訴人Cは当初から賃借権を有さない。よって,当事者(原告)適格がない。

④ 控訴人Aは被控訴人Cに対して,平成6年6月12日本件賃貸借契約を解除しているから,被控訴人Cは前同日以降本件二,三土地についても賃借権を失った。よって,被控訴人Cは本件②,③登記の抹消登記手続請求についても当事者(原告)適格がない。

⑤ 被控訴人Cの本件②,③登記の抹消登記手続請求は,後記別訴事件の既判力に抵触する。すなわち,被控訴人Cは,控訴人Bに対する昭和62年(ワ)第196号所有権移転請求権仮登記抹消登記手続請求事件(以下「別訴事件」という。)において,債権者代位権に基づき,本件②,③登記の抹消登記手続請求と同じ請求をした。別訴事件は,裁判所の勧告により被控訴人Cが訴えを取下げ,これに伴う裁判上の和解が成立した。よって,被控訴人Cの本件②,③登記の抹消登記手続請求は別訴事件の和解内容と抵触し,許されない。

(乙事件)

(1) 被控訴人Cの主張

① 本件賃貸借契約の対象とされた土地は本件一ないし四の土地である。

② しかるに,控訴人Aは被控訴人Cの本件一,二土地に関する賃借権を争っている。

③ 仮に,本件一,二土地が本件賃貸借契約の対象となっていなかったとしても,被控訴人Cは本件賃貸借契約の対象地として20年以上にわたってこれを占有し,かつ賃料を支払ってきた。よって,被控訴人Cは,本件一,二土地について賃借権を時効取得した。よって,本訴において賃借権の取得時効を援用する。

④ 控訴人Aは,本件一土地の所有権が控訴人Aから控訴人Bに移転していることから,被控訴人Cが控訴人Aとの賃借権を確認する意味がない旨主張するが,前記のとおり本件一土地に関する本件①登記は通謀虚偽表示により無効の登記である。

⑤ よって,被控訴人Cは控訴人Aに対し,被控訴人Cと控訴人Aとの間において,本件一,二土地について自動車学校の建物,その他諸施設の敷地利用を目的とする賃借権を有することの確認を求める。

(2) 控訴人Aの主張

① 本件一土地は本件賃貸借契約の対象となっていない。なぜなら,本件賃貸借契約は昭和45年3月19日に締結されたものであるところ,控訴人Aが本件一土地を取得したのは昭和48年11月28日であり,本件賃貸借契約当時,本件一土地は控訴人Aの所有ではなかったからである。また,本件一土地は,昭和63年3月1日代物弁済を原因として控訴人Bにその所有権が移転している。

② 被控訴人Cが本件一,二土地について賃借権の確認を求める請求は,あたかも一筆の土地の一部についてその所有権の確認を求めるのと同様であり,このような賃借権の一部の確認請求は許されない。

(丙事件)

(1) 控訴人Aの主張

① 本件二,三及び四土地は控訴人Aの所有である。

② 本件賃貸借契約の対象とされた土地は,本件二,三土地,本件四の3,4,6ないし14,16ないし19の土地である。したがって,本件四の1,2,5及び15の土地は本件賃貸借契約の対象となっていない。

③ 本件賃貸借契約には,賃借人は自動車学校の経営廃止をする等の原因で本賃貸借契約が終了したときは,賃借土地を賃貸人に明け渡さなければならない旨の特約(以下「本件特約」という。)がある。平成6年1月17日以降は被控訴人会社において自動車学校を営んでおり,被控訴人C自身は自動車学校の経営を廃止したものであるから,本件特約により本件賃貸借契約は終了した。よって,被控訴人Cは控訴人Aに対して,本件賃貸借契約の終了に基づき,賃借土地を明け渡す義務がある。

④ 被控訴人Cは,被控訴人会社を設立し,被控訴人Cが賃借していた土地を控訴人Aに無断で被控訴人会社に転貸した。同転貸が本件賃貸借契約の信頼関係を破壊するに足るものであることは以下の理由から明らかである。

(ア) 土地の賃借権譲渡・転貸に賃貸人の承諾を要求している民法612条の法意は,このような賃借権の譲渡・転貸の際に伴う譲受人(転借人)から譲渡人(転貸人)に支払われる反対給付の一部を承諾料等として賃貸人にも取得させる機会を持たしめることにある。

(イ) 本件契約書に記載された計17筆の賃貸土地の平成10年度の固定資産税評価額合計額は10億9000万円余であるところ,被控訴人会社が取得した転借権の価格はその約4分の1と仮定しても,2億7250万円の権利を無償で取得したことになる。また,税実務上許容される転借料は,土地価格の6パーセントの半額である年額3360万円となるべきであるにもかかわらず,被控訴人会社が被控訴人Cに支払っているのは年額1800万円にすぎない。

(ウ) 他方,控訴人Aが被控訴人Cから受領している賃料額は年額1200万円にすぎず,かつ控訴人Aを含む家族が納付している固定資産税の年額は556万円余にのぼる。したがって,控訴人Aは,賃料相当額の半額を固定資産税として納付し,その余の金額に所得税が課されるため,実際には賃料額の半額以下の金額しか取得していないことになる。

(エ) このように,被控訴人Cの被控訴人会社に対する無断転貸により,被控訴人会社は多大な利得を得ている一方で,控訴人Aは不当に低廉な賃料額しか得られていないのであるから,前記転貸が控訴人A・被控訴人C間の賃貸借における信頼関係を破壊するに足りるものである。

⑤ 控訴人Aは被控訴人Cに対し,本件賃貸借契約を解除したから,被控訴人Cは,本件賃貸借契約の対象となっていた本件二,三土地,本件四の3,4,6ないし14,16ないし19の土地について占有権原を失った。

⑥ また,被控訴人Cには,当初から本件四の1,2,5及び15の土地の占有権原はない。

⑦ しかるに,被控訴人Cと被控訴人会社は,本件二ないし四土地を占有している。

⑧ 本件二ないし四土地の一か月当たりの使用相当損害金は440万円を下らない。

⑨ よって,控訴人Aは

(ア) 被控訴人Cに対して,本件賃貸借契約の終了あるいは所有権に基づき,本件建物の収去と本件二ないし四土地の明渡

(イ) 被控訴人会社に対して,所有権に基づき本件二ないし四土地の明渡

(ウ) 被控訴人C及び被控訴人会社に対して,本訴状送達の日の翌日である平成9年9月11日から前記土地の明渡済みまで1か月当たり440万円の割合による賃料相当損害金の支払をそれぞれ求める。

⑩ (当審における予備的請求)仮に,前記請求が認められないとしても

(ア) 本件賃貸借契約は期間の定めがないから,昭和45年3月19日から30年を経過した平成12年3月20日の経過をもって期間満了となる。

(イ) 控訴人Aは被控訴人Cに対して,平成12年3月15日到達の内容証明郵便により,期間満了した場合には更新を拒絶する旨の通知をした(丙10の1,2)。

(ウ) 控訴人Aには,次のとおり土地の明渡を求める正当事由がある。

<ア> 平成12年度の路線価に依拠して被控訴人らが占有している本件土地全部(計22筆)の公示価格を算定すると,15億4500万円余となるところ,年額適正賃料は,法人税基本通達によると地価の6パーセントであるから,9270万円余となるべきものである。しかるに,本件賃貸借における賃料は年額1200万円という不当な低廉となっている。その原因は,控訴人Aが賃料の増額を求めても,被控訴人Cにおいて,本件賃貸借契約前は水田であったことから収穫の米穀価格を基礎として,その後の米価と公租公課の上昇分の増額で足りるとの主張に固執して,控訴人Aの適正な賃料増額要求を拒否してきたことによるものである。

<イ> 控訴人Aは,平成3年8月20日生まれの高齢者であるから,近い将来において同人を被相続人とする相続税課税がなされる事態にも対応せざるを得ない状況下にある。この場合,控訴人Aの相続人(妻と3人の子)に課せられる相続税は合計で4億5220万円余と想定されるところ,このような多額の納税資金を調達するにためには,賃貸にかかる本件各土地を更地として第三者に売却する以外にない。

<ウ> 他方,被控訴人会社は,このように高額な土地を利用しながら,平成10年度(同年8月1日~翌年7月31日)で326万円余,平成11年度で712万円余の利益しか上げられない社会的存在にすぎない。しかも,本件建物は,30年前に廃校になった学校の木造校舎を移築したもので老朽化しており,償却済みの施設である。

(エ) さらに,控訴人Aは被控訴人Cに対して,前記正当事由を補完するものとして,本件建物の評価額602万円余の約倍額である1300万円を支払う用意がある。

(オ) よって,予備的に,控訴人Aは被控訴人らに対して,控訴人Aが被控訴人Cに1300万円を支払うのと引き換えに本件二ないし四土地を明渡すことを求める。

(2) 被控訴人らの主張

① 被控訴人Cは被控訴人会社に対して,被控訴人C所有の本件建物を賃貸しているにすぎず,土地の転貸借にはあたらない。

② 仮に被控訴人Cが被控訴人会社に対して土地を転貸したとしても,被控訴人会社は道路交通法107条の11(現行108条)の改正(平成5年法律第43号)に伴い,愛知県公安委員会からの指導に基づき設立されたものであり,被控訴人Cが経営していた当時とその内容は同じであるから,無断転貸による解除権は生じない。

③ 仮に,控訴人Aによる本件賃貸借契約の解除に理由があるとしても,控訴人Aは解除後も被控訴人Cから支払われる賃料を受領しているから,控訴人Aは被控訴人会社に対する転貸を追認したというべきである。

④ (控訴人Aの予備的請求に対して)

(ア) 本件賃貸借契約は被控訴人Cが自動車学校の経営を続ける限り継続するというのが契約当事者である控訴人Aと被控訴人Cの意思であり,本件建物の朽廃時期をもって期間満了とする旨の定めがあるものである。

(イ) 仮に期間の定めがないとしても,借地法上更新拒絶の要件としては,「正当事由の存在」と「期間満了後の遅滞なき異議」が必要である(同法4条)ところ,控訴人A主張の更新拒絶の通知は期間満了前にされたものであるから「期間満了後の遅滞なき異議」にあたらないことは明らかである。

(ウ) 控訴人Aの土地明渡の正当事由がある旨の主張は否認ないし争う。被控訴人Cは,本件各土地を賃借するに際して,自動車学校用の敷地とするために,埋立造成工事,本件建物その他の施設の整備等に4億円を超える費用を投下しているが,本件建物等の施設は老朽化していないし,現にこれらを利用した自動車学校において,西尾市や西尾警察署の委託を受けて幼稚園児らに対する交通安全教育の実施や自動車運転免許者に対する愛知県公安委員会の講習機関としての役割を果たしており,D自動車学校a校は公益性を有する存在となっているのである。

4  争点

(1)  丙事件について

① 本件賃貸借契約の対象土地の範囲

② 約定又は無断転貸を理由とする解除による本件賃貸借契約の終了の有無

③ 期間満了による本件賃貸借契約の終了の有無(予備的請求)

(2)  乙事件について

① 訴えの適否

② 本件賃貸借契約の対象土地の範囲

(3)  甲事件について

① 訴えの適否(確認の利益の有無)

② 既判力抵触の有無

③ 賃貸借契約の対象土地の範囲

④ 妨害行為禁止請求の当否

第3当裁判所の判断

1  本件契約書には,被控訴人Cと控訴人Aとの賃貸借契約の対象土地として,本件一ないし四土地から,本件一土地,四の1,2,5及び15土地を除いた各土地は明示されているが,本件一土地,四の1,2,5及び15土地は明示されていないところ,被控訴人Cによる賃借の対象土地の範囲について(全事件共通)判断する。

(1)  前提事実に加えて,証拠(甲5の1,控訴人A[原審],被控訴人C兼被控訴人会社代表者[原審・当審],後掲証拠)及び弁論の全趣旨によると,以下の事実が認められる。

① 被控訴人Cは,愛知県岡崎市b町において,昭和35年8月頃からD自動車学校を開設経営していたところ,昭和44~45年頃,愛知県西尾市内においても自動車学校を開設することを計画し,その適地として控訴人Aが農地として所有する一塊の土地である本件各土地を賃借することとした。

② 本件各土地の位置関係は甲19のとおりであり,全体でおよそ四角形の形状をなす一塊の土地となっているところ,本件契約書上に賃貸借土地として記載の漏れている前記各土地のうち,本件一土地は,一塊の土地の南東角付近に位置し,本件四の3,4土地に挟まれた細長い畦畔(赤道)として国の所有するところであった土地であり,本件四の1,2及び5土地は一塊の土地の東側の一辺に位置し,いずれも昭和44年3月20日付けの分筆により生じた土地であり,同様に一塊の土地の東側に位置する本件四の3,4,5及び9土地も前同日付けで分筆され,一塊の土地の東側の一辺を隣地と画する境界線が直線となるようになっている。

また,本件四の15土地は一塊の土地の西北角付近に位置し,本件三土地,四の13及び14土地に挟まれ,同土地とともに一塊の土地の西側の一辺を隣地と画する境界線が直線となるようになっている(甲19,丙2の1,2,3の2ないし7,10)。

③ 被控訴人Cは,農地(田)であった本件各土地の一部がいわゆる深田として低地であった部分に土砂を搬入して埋め立てて,自動車学校敷地用に造成したうえ,昭和46年2月19日愛知県公安委員会から指定自動車教習所の指定を受けて「D自動車学校a校」の名称で自動車学校を開校した(甲5の4,5,甲14,15,30)。

④ 本件一土地は外周コースの一部であり,踏切が設置されており,同土地は自動車学校を経営するために必要不可欠な土地部分であり(甲5の1,甲14,19),本件二土地は南北に細長く伸びる土地であるが自動車教習コースの一部であり,本件三土地は自動車の校舎,事務所敷地の一部である(甲14,19,乙4)。

⑤ このように本件各土地が自動車学校の敷地として利用されるようになった後,本件一土地は,昭和48年11月7日受付で大蔵省の所有権保存登記がされ,同年10月31日売買を原因として同年11月28日受付で,控訴人Aに所有権移転登記が経由され(甲8,丙1,3の1),本件四の1,2土地は,昭和47年12月5日交換を原因として昭和54年7月9日受付で控訴人Aに所有権移転登記が経由された(丙2の1,3の2,3)。

(2)  以上の認定事実によると,本件一土地,四の1,2,5及び15土地は,本件契約書上賃貸借の対象土地として明示されていないとはいえ,前記のような土地の位置,形状,分筆の経緯,被控訴人Cによる本件各土地の埋立造成と自動車学校用敷地としての利用の開始,継続に照らすと,控訴人Aと被控訴人Cとの間においては,前記各土地も本件契約の賃貸借土地の一部とすることを合意してその引渡を了したものと認めるのが相当であり,本件契約書上賃貸借の対象土地として明示されなかったのは,本件契約書作成当時,前記各土地(但し,本件四の15土地を除く。)が未だ控訴人Aの所有名義になっていなかったからにすぎないものと推察される。

なお,本件四の15土地が本件契約書に明示されなかった理由は証拠上不明であるが,これをもって賃貸借の対象土地に含まれるとする前示判断を左右するに足りるものではない。

2  控訴人Aは,本件賃貸借契約は被控訴人Cの無断転貸による解除あるいは約定の終了原因により終了した旨主張するので,以下検討する(丙・乙事件)。

(1)  前記認定事実(前提事実を含む。)に加えて証拠(被控訴人C兼被控訴人会社代表者[原審・当審],後掲証拠)及び弁論の全趣旨によると,以下の事実が認められる。

① 被控訴人Cは,本件賃貸借にかかる本件各土地において自動車学校を経営していたが,道路交通法107条の11(現行108条)の改正(平成5年法律第43号)に伴い,公安委員会は,免許関係事務の全部又は一部を総理府令で定める法人に委託することができると定められ,愛知県公安委員会は個人経営の自動車学校に対し,前記改正が施行される平成6年6月までに自動車学校を法人化するように行政指導した(甲16,18)。

② そこで,被控訴人Cは,前記行政指導に従い,個人経営であった自動車学校を法人化することとし,平成6年1月17日付けで被控訴人会社を設立登記し,代表取締役に就任した。法人化以来,被控訴人Cは被控訴人会社の発行済株式総数200株のうち,196株を所有し,その余の株も被控訴人Cの家族が所有している(甲17,丙5)。

③ 被控訴人Cは,表記訴訟代理人弁護士を通じて,控訴人Aに対し,平成6年4月11日付けで,被控訴人会社を設立した経緯とともに今後被控訴人会社が被控訴人Cから本件建物を賃借して自動車学校を経営することになるものの,本件各土地の賃借権の譲渡・転貸にはあたらないとする内容の書面を送付し,控訴人Aの理解を求めた(甲1)。

④ これに対して,控訴人Aは被控訴人Cに対し,同年6月12日付けで,被控訴人Cが被控訴人会社に本件建物と関係のない敷地部分を賃貸することについて控訴人Aの承諾がないとして本件賃貸借を解除する旨の書面を送付した(乙1)。

(2)  以上の認定事実によると,自動車学校経営の法的主体が被控訴人Cから被控訴人会社に変更されたことにより,被控訴人Cが控訴人Aから借り受けていた土地の利用については,被控訴人Cから被控訴人会社に転貸されたものと認められる。

この点について,被控訴人らは,被控訴人会社は被控訴人Cから本件建物を賃借しているにすぎず,本件各土地の賃借人は依然として被控訴人Cであるから,賃借権の譲渡・転貸はない旨主張する。

しかしながら,被控訴人会社は被控訴人Cから建物を賃借するとともに,被控訴人Cが控訴人Aから賃借している本件各土地についても自動車学校用地として利用しているとみるべきであるから,その実態からすれば,被控訴人会社が被控訴人Cから本件各土地を転借しているものと評価するのが相当であり,被控訴人らの前記主張を採用することはできない。

(3)  もっとも,この転貸は,自動車学校経営の法的主体が被控訴人C個人から前記認定の事情により被控訴人会社という法人に変わったにすぎないものであり,自動車学校用地としての本件各土地の利用の実質には何ら変更がないのであるから,賃貸人たる控訴人Aとの間の信頼関係を破壊するものとはいえず,背信行為と認めるに足りない特段の事情がある。

よって,無断転貸を理由とする控訴人Aの解除は効力がないというべきである。

(4)  また,本件賃貸借契約において,賃借人は自動車学校の経営廃止をする等の原因で契約が終了した場合には賃借地を明け渡す旨の本件特約があるところ(甲5の3,乙2),控訴人Aは,前記約定を理由に被控訴人Cは自動車学校の経営をやめたのであるから賃借土地を返還すべきである旨主張する。しかしながら,被控訴人Cは被控訴人会社の代表者として依然として自動車学校の経営の中心的立場にあり,被控訴人Cにおいて自動車学校の経営を廃止したとは到底いえない。よって,本件特約による終了も認めることはできず,控訴人Aの前記主張も理由がない。

3  さらに,控訴人Aは,当審において期間満了による終了を主張するので,検討する。

(1)  本件賃貸借契約は,期間の定めがないから,賃貸借の開始日である昭和45年3月19日から30年の平成12年3月20日の経過をもって期間満了になるところ,被控訴人Cは本件各土地を自動車学校用地として被控訴人会社に転貸して,その使用を継続しているのであるから,控訴人Aにおいて遅滞なく異議を述べたこと及び更新を拒絶するについて正当事由のあることを基礎づける事実を具体的に主張立証しなければならない(借地借家法付則4条但書,旧借地法2条1項,6条)。

控訴人Aは被控訴人Cに対し,平成12年3月15日到達の書面をもって更新拒絶の通知をしており(丙10の1,2),当審において平成14年1月28日受付で予備的請求の申立てをして,同請求を維持しているのであるから,遅滞なく異議を述べたものと評価することができる。

なお,本件賃貸借契約が期間の定めがないものであるとする点に関して,被控訴人らは,本件賃貸借契約は被控訴人Cが自動車学校の経営を続ける限り継続するというのが契約当事者である控訴人Aと被控訴人Cの意思であり,本件建物の朽廃時期をもって期間満了とする旨の定めがあるものである旨主張するが,本件契約書3条2項の「賃借地上の建物が滅失し,更らに建物を建築しようとするときは,賃貸人と協議すること。」との記載(甲5の3,乙2)は,賃借人の約諾条項であることは同条本文の記載から明らかであり,前記記載をもって賃貸借期間を定めた条項と解することはできないから,被控訴人らの前記主張を採用することはできない。

(2)  そこで,控訴人Aの更新拒絶に正当事由があるかどうかについて検討をすすめる。

① ここにいう正当事由とは,土地の所有者(賃貸人)自ら土地を使用することを必要とする場合その他正当の事由がある場合をいうことは旧借地法6条1,2項,4条1項但書から明らかであり,また正当事由の判断にあたっては賃貸借の当事者双方の利害関係その他諸般の事情を考慮することを要するところ,控訴人Aの主張する正当事由は,要するに,賃貸土地の時価は高額であるのに賃料が不当に低額であり,賃貸人が死亡した場合,賃貸土地の相続税の負担が大きいから,これを売却する必要がある一方,賃借人は高額な賃借土地を利用しながらさしたる収益を上げることができず,賃借土地上の建物も老朽化しているというものであり,賃貸人自ら土地を使用する必要性については何らの主張をしない。

② 本件賃貸借の目的が,被控訴人Cによる自動車学校の経営にあり,そのために被控訴人Cにおいて,農地であった本件各土地の埋立造成や本件建物等の諸施設の整備とその維持に相当の資本を投下していることは前記認定事実からしても明らかであり(なお,甲27は本件各土地の埋立造成と建物設置工事として4億円余の費用を要する旨の見積書であり,このとおりの費用を要したかどうかはともかくとして,相当額資本を投下していることは明らかである。),本件建物等の施設が老朽化していると認めるに足りる証拠もない。加えて,D自動車学校a校は,西尾市や西尾警察署の委託を受けて幼稚園児らに対する交通安全教育の実施や自動車運転免許者に対する愛知県公安委員会の講習機関として相当の社会的役割を果たしていることが認められる(甲31ないし37)。

(3)  以上に指摘の事情によると,控訴人Aの更新拒絶には正当事由があるとは到底いえないから,正当事由の補完としての立退料について検討するまでもなく,本件賃貸借は法定更新されたものというべきである。よって,控訴人Aの本件賃貸借の期間満了による終了を前提とする予備的請求も理由がない。

4  乙事件について

(1)  前記認定事実によると,本件一,二土地も本件賃貸借契約の対象土地として被控訴人Cが賃借権を有するものであるところ,控訴人Aはこれを争っていることは明らかであるから,被控訴人Cの乙事件請求は理由がある。

(2)  この点に関して,控訴人Aは,本件一土地の所有権は既に控訴人Bに移転しているから,被控訴人Cが控訴人Aとの間で賃借権を確認する意味がない旨主張するが,被控訴人Cにおいて控訴人Bに対する前記所有権移転を争っていることに鑑みると,所有権の帰属者如何にかかわらず,被控訴人Cは賃借権を確認する法的利益を有するというべきであり,控訴人Aの前記主張は採用することができない。

また,控訴人Aは,賃借権の一部の確認請求は許されない旨も主張するが,賃貸借の対象土地の範囲について当事者間で争いがある場合に,これを確認する法的利益を有することはいうまでもなく,控訴人Aの前記主張は独自の見解であって採用することができない。

5  甲事件について

(1)  甲事件請求として,被控訴人Cは控訴人Bに対し

① 本件一土地が控訴人Aの所有であることの確認

② 被控訴人Cが本件一土地について本件賃貸借契約に基づく賃借権を有することの確認

③ 被控訴人Cの控訴人Aに対する本件賃貸借契約に基づく賃借権を保全するため,債権者代位として,控訴人Aが控訴人Bに対して有する本件各登記の抹消登記手続

④ 控訴人Bによる本件一土地の使用を妨害する一切の行為の禁止をそれぞれ求めるので,以下前記各請求の適否について検討する。

(2)  まず,前記①,②の各確認請求についてみるに,被控訴人Cが控訴人Aとの間で,本件一土地について本件賃貸借契約に基づく賃借権を有することは前記認定のとおりであり,控訴人Bが被控訴人Cに対し,本件①登記の経由後である昭和63年3月15日付け内容証明郵便で,本件一土地の使用を禁止する旨,同年6月2日付け内容証明郵便で,不動産侵奪罪で刑事告訴する旨の通知をしていることは前提事実(4)のとおりである。

したがって,本件一土地の所有権を取得したとする控訴人Bは,被控訴人Cによる土地の占有権原を否定していることになるから,被控訴人Cとしては控訴人Aに対する占有権原を主張してこれを確認する法的利益を有することは認められる。

しかしながら,被控訴人Cの前記②の確認請求は,控訴人Bに対する占有権原としての賃借権の確認を求めるものではなく(前記②の確認請求が,被控訴人Cにおいて控訴人Bを新所有者であることを認めた上で,その新所有者に対して,対抗力のある賃借権の確認を求める趣旨であると解することはできない。),控訴人Aに対する賃借権の確認を控訴人Bとの関係で求めるというものである。

そうすると,控訴人Aに対する賃借権を控訴人Bとの関係で確認したとしても,これは被控訴人Cと控訴人Bとの間の本件一土地に関する何らかの権利又は法律関係の存否に影響を及ぼすものではないというべきである。

また,これと同様に,控訴人Aの所有権の有無を控訴人Bとの関係で確認したとしても,被控訴人Cと控訴人Bとの間の本件一土地に関する何らかの権利又は法律関係の存否に影響を及ぼすものでもない。

よって,被控訴人Cの前記①,②の各確認請求は,いずれも確認の利益を欠くものとして却下を免れない。

(3)  次に,前記③の各抹消登記手続請求についてみるに,この請求は,土地賃借人である被控訴人Cが,土地賃貸人である控訴人Aに代位して,控訴人Aの控訴人Bに対する本件各登記の抹消登記手続請求権を行使するという債権者代位権を根拠とする請求であるところ,債権者代位権は,債務者の権利を代位行使することによって債務者が利益を享受し,その利益によって債権者の権利が保全されるという関係が存することを要するものであるところ,本件各登記名義が控訴人Bにあることが,控訴人Cが賃借人として賃貸人たる被控訴人Aに対して,本件一ないし三土地の使用収益を求める請求権の行使とは何らかかわりがないのであるから,控訴人Aの控訴人Bに対する本件各登記の抹消登記手続請求権を代位行使することによって,何ら被控訴人Cの賃借権を保全することにはならない(最高裁昭和38年4月23日第3小法廷判決[民集17巻3号536頁],最高裁昭和45年12月15日第3小法廷判決[判例時報618号31頁]参照)。

したがって,被控訴人Cの前記③の各抹消登記手続請求は理由がない。

(4)  さらに,前記④の妨害禁止請求についてみる。

① 前記認定事実(前提事実を含む。)に加えて証拠(甲5の19,控訴人B[原審],被控訴人C兼被控訴人会社代表者[原審])によると,控訴人Bは被控訴人Cに対し,本件①登記の経由後である昭和63年3月15日付け内容証明郵便で,本件一土地の使用を禁止する旨,同年6月2日付け内容証明郵便で,不動産侵奪罪で刑事告訴する旨の通知をしたこと,また,控訴人Bは,本件各登記を経由していることを理由に,本件一ないし三土地について買取りないし新たな賃貸借の締結等によって利を得ようとして,被控訴人Cの当時の代理人弁護士と交渉を持とうとしたが,被控訴人Cは控訴人Bがいわゆる事件屋であるとしてこれに応じなかったことが認められる。

しかしながら,それ以上に,控訴人Bが被控訴人Cによる本件一土地の使用について妨害行為をしたことを認めるに足りる証拠はない。

なるほど,控訴人Bは,昭和56年頃から,控訴人Aの相談に乗り,控訴人Aの被控訴人Cに対する賃料の増額請求,無断転貸を理由とする解除,あるいは愛知県公安委員会宛の自動車学校としての設備に瑕疵がある旨の上申について,控訴人A名義の各書面を作成したりして,控訴人Aと被控訴人らとの間の本件紛争の解決を困難にしていることは窺えるものの(甲6,7,24,前掲証拠),これをもって,控訴人Bによる本件一土地の使用についての妨害行為であるということもできない。そして,控訴人Bは,控訴人Aの表記訴訟代理人弁護士の教示により,前記通知書(甲12)に記載した不動産侵奪罪である旨の認識が誤りであることを理解した後は,前記のような行動をしていないのである(控訴人B[原審],弁論の全趣旨)。

② 控訴人Bが,本件各登記を経由していることから,本件一ないし三土地について所有権その他の権利を主張して,被控訴人らに対して交渉を求めることは,その目的や手段,方法において社会的相当性を欠く違法不当なものでない限り,許されないわけではなく,本件各証拠を検討するも,控訴人Bが現在も前記のような通知書を発したり,その他の方法で被控訴人Cの使用収益を妨害するような行為をしていることは認められないから,将来にわたって妨害行為をするおそれがあるとも言い難い。

よって,被控訴人Cの前記④の妨害禁止請求も理由がないというほかない。

6  結論

以上の次第で,甲事件について被控訴人Cの控訴人Bに対する請求を認容した原判決主文一ないし六項は相当ではないから,控訴人Bの控訴に基づきこれを取り消したうえ,取消しにかかる被控訴人Cの請求のうち,前記5,(1)の①,②の各確認請求にかかる訴えを却下し,その余の各請求部分をいずれも棄却することとし,乙事件について被控訴人Cの請求を認容した原判決主文七項,丙事件について控訴人Aの請求を棄却した原判決主文八項はいずれも相当であるから,乙・丙事件にかかる控訴人Aの各控訴をいずれも棄却し,控訴人Aの当審における予備的請求は理由がないからこれを棄却することとし,主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 小川克介 裁判官 黒岩巳敏 裁判官 鬼頭清貴)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例