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名古屋高等裁判所 平成12年(ネ)430号 判決 2001年6月14日

控訴人(原告) X

同訴訟代理人弁護士 水谷博昭

同 可児晃

被控訴人(被告) 有限会社不動観光

同代表者代表取締役 A

同訴訟代理人弁護士 伊藤勤也

同 海道宏実

同 加藤美代

同 兼松洋子

同 阪本貞一

同 長谷川一裕

同 藤井繁

同 松本篤周

同 村上満宏

主文

1  原判決を取り消す。

2  本件訴えを却下する。

3  訴訟費用は、第1、2審とも、控訴人の負担とする。

事実及び理由

第1当事者の求めた裁判

1  控訴人

(1)  原判決を取り消す。

(2)  岐阜地方裁判所が昭和60年(ケ)第263号不動産競売事件において平成8年3月8日に作成した配当表につき、被控訴人に対する配当額が913万0,960円とあるのを0円とし、上記金額を控訴人への配当額に加えると変更する。

(3)  訴訟費用は、第1、2審とも、被控訴人の負担とする。

2  被控訴人

(1)  本件控訴を棄却する。

(2)  控訴費用は控訴人の負担とする。

第2事案の概要

事案の概要は、原判決「事実及び理由」の「第二 当事者の主張等」のとおりであるから、これを引用する。

第3当裁判所の判断

1  前記(原判示)のとおり、被控訴人は、債務名義である本件公正証書の執行力のある正本に基づき、債権執行を申し立て(岐阜地方裁判所平成7年(ル)第92号)、控訴人の有する抵当権付債権を差押えた結果、その取立権(民事執行法155条)に基づき抵当物件に関する不動産競売事件(岐阜地方裁判所昭和60年(ケ)第263号)において、抵当権者である控訴人が受ける配当金の一部を受領し得る実体法上の地位を取得したものであるが、不動産競売裁判所は、不動産競売の執行手続上も被控訴人が控訴人の地位を一部承継したものとして、その配当受領権限を肯定し、被控訴人を債権者として配当表に表示した。

ところで、控訴人は、上記債務名義に係る請求権の不存在を主張して被控訴人の取立権及び配当受領権限を否定するのであるが、この場合、上記債務名義による強制執行の不許を求めて請求異議の訴えを提起し、これに勝訴すれば、抵当権付債権差押えの執行自体を排除することができるのであるから、配当異議の訴えによらずとも、その目的を達成することができる。そして、現に、控訴人は、被控訴人対し、上記債務名義に関する請求異議の訴えを提起している(岐阜地方裁判所平成7年(ワ)第382号、当庁平成12年(ネ)第431号)。

他方、控訴人の本件配当異議の訴えは、上記債権執行事件における債務者である控訴人が、執行力ある債務名義の正本を有する債権者である被控訴人に対し、上記抵当権付債権差押えにより被控訴人が受領しようとする金員の額について、不服を申し立てるものであるところ、このような場合、債務者は、請求異議の訴えを提起すべきであって、民事執行法90条5項の趣旨に照らしても、配当異議の訴えを提起することはできないというべきである。

したがって、本件配当異議の訴えは、手続の選択を誤った訴えであって、不適法である。

2  よって、控訴人の請求を棄却した原判決は相当ではないから、これを取消し、上記に従い本件訴えを却下することとし、訴訟費用の負担について民訴法67条2項、61条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 笹本淳子 裁判官 鏑木重明 戸田久)

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