名古屋高等裁判所 平成13年(ネ)421号 判決 2001年8月10日
主文
1 本件控訴を棄却する。
2 控訴費用は控訴人の負担とする。
3 原判決は、被控訴人勝訴の部分に限り、仮に執行することができる。
事実及び理由
第1 当事者の求めた裁判
1 控訴人
(1) 原判決中、控訴人敗訴部分を取り消す。
(2) 被控訴人の請求をいずれも棄却する。
(3) 訴訟費用は、第1、2審とも、被控訴人の負担とする。
2 被控訴人
主文と同旨
第2 事実関係
次のとおり補正するほか、原判決の「事実及び理由」の「第二」記載のとおりであるから、これを引用する。
1 原判決4頁6行目の「破産者」の次に「三鋼株式会社(以下「破産会社」という。)」を付加し、6行目、8行目及び9行目の各「破産者」をそれぞれ「破産会社」と訂正する。
2 同4頁11行目の「原告が」の次に「、控訴人に対し、」を付加する。
3 同5頁10行目の「三鋼株式会社(以下「破産会社」という。)」を「破産会社」と訂正する。
4 同6頁3行目の「2月6日」を「2月7日」と、「27日」を「26日」と各訂正する。
5 同8頁10行目の「原告の」を削除する。
6 同10頁11行目の「こともできない」を「ものではない」と訂正する。
第3 当裁判所の判断
1 次のとおり補正するほか、原判決の「事実及び理由」の「第三」の三ないし五記載のとおりであるから、これを引用する。
(1) 原判決18頁11行目の「三」を「一」と訂正し、「次に、」を削除する。
(2) 同21頁4行目の「ひとえに、」を削除し、5行目の「認められる」を「考えられる」と訂正する。
(3) 同21頁6行目の「ひとえに、」を削除し、8行目から9行目にかけての「しようとしたことは明らかである。」を「する目的によると認められる。控訴人自身、当審において『(前略)対抗要件否認に該当しないよう、債権譲渡契約締結日と債権の譲渡日(または効力発生日)をずらし、譲渡日が対抗要件具備の前15日以内に来るように工夫したものが停止条件付債権譲渡契約である。』と主張し、本件債権譲渡契約の停止条件が対抗要件否認を避けるためのものであることを認めている。もっとも、控訴人は、上記記載に引き続いて、『停止条件付債権譲渡契約が担保権者(債権者)だけでなく、破産者のためにも流動資産を担保化して営業の継続を図ることができるというメリットがあったのであるから、(中略)停止条件付債権譲渡契約を脱法的な契約と捉えることは失当である。』と主張し、同停止条件は対抗要件否認を避ける目的により付されたものではあるが、法74条1項本文の潜脱ではなく、停止条件付債権譲渡契約は脱法行為ではないと主張する。しかし、停止条件が対抗要件否認を避ける目的で付されている以上、これが法74条1項本文の潜脱ではなく、停止条件付債権譲渡契約が脱法行為ではないとは到底いえない。」
(4) 同21頁10行目の「しかし、」を削除し、「破産手続」の前に「控訴人の前記主張は、本件債権譲渡契約は、控訴人を利するのみならず、破産会社をも利するものであるから、脱法ではないとの趣旨であると考えられる。しかし、この主張は、破産手続における控訴人以外の一般債権者らの存在を無視し、同一般債権者らが本件債権譲渡契約によって損害を被るであろうことを無視するものである。」を付加する。
(5) 同22頁7行目の「解すべきである。」を「解される(控訴人は、同解釈は最高裁判所昭和48年4月6日判決(民集27巻3号483頁)に反すると主張するが、本件債権譲渡契約は上記判例の存在を利用して対抗要件否認の潜脱を図る脱法行為であるから、本件事案は、上記判例と事案を全く異にし、上記判例の射程外にあるというべきである。)。」を付加する。
(6) 同22頁8行目の「そして」を「そうすると」と訂正する。
(7) 同22頁11行目と23頁1行目との間に次のとおり付加する。
「二 また、前記一のとおりであるから、本件債権譲渡契約は、破産会社の支払停止前に締結されたとはいえ、支払停止と同時に目的債権の譲渡という権利変動を生じさせた上で、目的債権を優先的、排他的に取得することを目的とする契約であり、その実質において、支払停止を知って締結された債権譲渡契約(法72条2号)と変わりがない。また、前記一の事情に拠れば、控訴人も、破産会社も、本件債権譲渡契約締結の時点において、同契約が効力を生じたときには、破産会社に対する控訴人以外の一般債権者を害する結果になることを知っていたものと認められ(乙9によっても左右されず、他にこれを左右するに足りる証拠はない。)、その実質において、破産債権者を害することを知って締結された債権譲渡契約(法72条1項)と変わりがない。そして、そうである以上、本件債権譲渡契約について、法84条の適用はないというべきである。
したがって、本件債権譲渡契約が、否認の要件を形式的には満たしていないからといって、否認の対象にならないとすることは、破産法所定の否認制度の趣旨を没却するものというべきであり、信義則に照らして、法72条1号又は2号の類推により、本件債権譲渡契約自体も否認することができると解すべきである。」
(8) 同23頁1行目の「四」を「三」と訂正する。
(9) 同24頁8行目と9行目との間に次のとおり付加する。
「ところで、控訴人は、原判決添付の債権目録1、3、5ないし10、12、14、39の債務者に対しては、同各債権の譲渡通知は手渡されており、その際、各債務者は債権譲渡の事実を了知し、債権譲渡を承諾した旨主張して、債務者の承諾は法74条によって否認し得ないから、上記各債権の譲渡を否認することはできない旨主張する。しかし、被控訴人は、控訴人主張の上記手渡しの事実を認めておらず、また、同事実を認めるに足りる証拠はない。さらに、仮に承諾があったとしても、前記二のとおり、上記各債権の譲渡は、法72条1号又は2号の類推により否認される。」
(10) 同24頁9行目の「五 よって、原告の請求は」を「四 よって、被控訴人の請求のうち」と訂正する。
(11) 同25頁11行目の「棄却することとし」から26頁1行目までを「棄却すべきである。」と訂正する。
2 以上のとおりであるから、原判決は相当であり、本件控訴は理由がないので、これを棄却することとし、控訴費用の負担について民事訴訟法67条、61条を、仮執行の宣言につき同法297条、259条を各適用して、主文のとおり判決する。