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名古屋高等裁判所 平成13年(ラ)185号 決定 2001年8月21日

抗告人(申立人(差押債権者)) ぎふしん総合ファイナンス株式会社

同代表者代表取締役 A

同代理人弁護士 広瀬英二

同 永田忍

同 小島浩一

相手方(相手方) Y

主文

1  本件抗告を棄却する。

2  抗告費用は抗告人の負担とする。

理由

第1本件抗告の趣旨及び理由

別紙「執行抗告状」写しの抗告の趣旨及び抗告の理由記載のとおり

第2当裁判所の判断

1  抗告人が原審で求めた売却のための保全処分の申立ての趣旨及び主張の要旨は、原決定別紙判断の理由1項及び2項記載のとおりである。

2  本件の事実関係は、原決定4枚目12行目から5枚目24行目までの記載のとおりであり、以下、この事実関係を前提として検討する。

民事執行法55条1項にいう「不動産の価格を著しく減少する行為又はそのおそれがある行為(価格減少行為等)」とは、最低売却価額を最低ラインとして競争売買によって形成されるべき公正な価格を著しく減少させる行為又はさせるおそれのある行為をさすものと解される。

ところで、原決定別紙物件目録1及び3記載の各土地には本件仮登記がされているところであって、これが原因となって同目録1ないし4記載の各不動産(以下「本件各不動産」という。)の売却価格が減少させられる可能性があることは否定し難いものと考えられる。しかし、本件記録によれば、同目録1記載の土地上には同目録2記載の建物が、同目録3記載の土地上には同目録4記載の建物がそれぞれ存在し、各建物は所有者であるB及びその家族が使用しており、相手方は占有していないことが認められる。そして、評価人による評価の過程においても、相手方が上記各土地を占有しているとの事情は考慮されていないのである。これによると、本件仮登記に係る賃貸借は、占有の実体を伴わないものであることが明らかであり、売却によって当然に消滅するものと解される。そうしてみると、本件仮登記が存することによって、直ちに競争売買による価格形成が著しく阻害されるということはできない。この点に関し、抗告人は、本件仮登記が存在することにより、一般の人が事件屋関与の物件であると考えるため、価格が下がることは明白である旨主張するが、論旨は、売却価格が減少させられる一般的な可能性が存することを述べるものにすぎない。本件において、本件仮登記が本件各不動産の価格を著しく減少させるものであることに関する疎明はないものといわざるを得ない。

また、抗告人は、本件不動産競売手続において相手方の利益が全く考慮されないのであれば、売却前に本件仮登記を抹消しても何ら不利益を被るものがいないことを理由として本件仮登記を抹消すべきである旨を主張する。しかし、論旨のいう事情があることをもって直ちに民事執行法55条1項の要件を満たすものと解することはできない。

3  よって、抗告人の申立てを棄却した原決定は相当であるから、本件執行抗告を棄却することとし、主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官 小林克美 裁判官 佐久間邦夫 戸田久)

<以下省略>

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