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名古屋高等裁判所 平成14年(ネ)7号 判決 2002年9月10日

主文

1  原判決中、控訴人に関する部分を取り消す。

2  被控訴人の控訴人に対する請求を棄却する。

3  訴訟費用は第1、2審とも被控訴人の負担とする。

事実及び理由

(以下、略語は原判決に準ずる。当審分も含めて別紙略語表のとおりである。 /略語表は添付省略)

第1当事者の求めた裁判

1  控訴人

主文同旨

2  被控訴人

(1)  本件控訴を棄却する。

(2)  控訴費用は控訴人の負担とする。

第2事案の概要

1  本件は、美術商で古物商をも営む被控訴人が、商品として買い入れた水指及び香炉(本件骨董品、以下この購入を「本件取引」という。)並びに骨董品の見本写真など(本件写真等)につき、Aを被疑者、その元夫Bを被害者とする本件(窃盗)被疑事件の捜査資料として、岐阜南(警察)署のC司法巡査に対して任意提出したところ、同事件の送致を受けた岐阜地検(地方検察庁)の担当検事である本件検察官が、刑事訴訟法(以下「刑訴法」という。)222条1項(124条1項)を根拠に、本件骨董品をBに還付したので(本件被害者還付)、被控訴人が控訴人(国)に対し、本件被害者還付が違法であるとして、民法709条又は国家賠償法(以下「国賠法」という。)1条1項に基づき、本件骨董品の時価相当額350万円の損害賠償及び被害者還付日以後の遅延損害金(年5分)を請求した事案である。

原審は、本件被害者還付は刑訴法124条1項に反する違法な職務執行であり、本件検察官に過失があると認定し、被控訴人がDから本件骨董品を購入した本件取引については即時取得が成立し、本件被害者還付により被控訴人の所有権が侵害されたとし、本件骨董品の時価を350万円として、被控訴人の控訴人に対する国賠法1条1項に基づく請求を全部認容したので、控訴人が事実誤認等を主張して控訴した〔なお、被控訴人は、岐阜県(原審相被告)に対しても、C巡査が本件写真等の一部を紛失したことによる損害賠償等を求め、原審で請求の一部が認容されたが、これについては双方から控訴がない。〕。

当審において、被控訴人は、本件請求は、国賠法1条1項に基づくもので、民法709条に基づく請求をしないとして、同請求にかかる訴えを取り下げ、本件請求を、本件検察官の違法な職務執行によって、本件骨董品に対する被控訴人の所有権が侵害されたことによる損害賠償を求めるものであるとし、本件検察官の違法行為と独立して検察事務官E係長の職務執行の違法を問うものではないこと等を明確にした。

2  争いのない事実等は、次のとおり改めるほか、原判決「事実及び理由」第2の1のとおりであるからこれを引用する(ただし、原審相被告岐阜県に対する請求のみに関する部分を除く。)。

原判決3頁10行目の「木箱入りの水指1個(以下」を「木箱入りの水指1個(木箱に桃山時代の古信楽である旨の記載があるもの。以下」と、11行目の「木箱入りの香炉1個(以下」を「木箱入りの香炉1個(木箱にLの作である旨の記載があるもの。以下」と、4頁2行目の「F(」を「Fことf(当時52才。」と、3行目の「D(」を「D(当時29才。」とそれぞれ改める。

3  本件の争点

(1)  本件被害者還付による被控訴人の所有権侵害の有無

この争点は、被控訴人主張の所有権取得原因である即時取得が成立したか否かであり、具体的には、民法192条、193条の要件該当性に関して次の点が問題となる。

ア 被控訴人が本件骨董品を民法192条により即時取得したか。すなわち、本件取引に、民法192条が適用され、被控訴人が取引の相手方、いわゆる「前主」につき権利者であると信じたことに過失があるか。

イ 本件骨董品が「盗品」であり、盗難のときより2年以内に占有者に対して回復請求がなされたか(民法193条)。

(2)  本件被害者還付の違法性と過失の有無

この争点は、本件被害者還付に刑訴法124条1項の要件があるか、要件ありと信じたことに注意義務違反があったかというものであり、双方の主張によれば以下の点が問題となる。

ア 本件骨董品は、刑訴法124条1項にいう「贓物」であるか。

イ 民法193条に定める、盗難のときより2年以内に占有者に対して回復請求がなされ、かつ、これがなされたことが明らかであったか。

ウ 本件取引につき民法192条(即時取得)の適用があるか、あるとしても被控訴人が「前主」に所有権があると信じたことに過失があることが明らかであったか。

エ 被害者還付すべき理由が明らかとはいえないとしても、なお、本件被害者還付につき、国賠法1条1項の違法性及び過失が認められるか。

(3)  損害の発生の有無及びその数額

本件骨董品の所有権侵害の有無及びその時価

4  争点に関する当事者の主張

(1)  争点(1) のア(民法192条の要件該当性)について

(控訴人の主張)

ア 民法192条の即時取得成立の要件である権限ありと信じた取引行為の相手方である「前主」とは、所有者であるかのような外観を有する者をいうところ、被控訴人がD及びその夫と称するG(以下この両名を「Dら」という。)から本件骨董品を買い受ける(本件取引)に際し、Dらは本件骨董品を所有者から依頼されて売却することを明示していたから、本件骨董品を占有していたDらは民法192条の「前主」に該当せず、被控訴人においてDらの処分権限を信頼したとしても、被控訴人の本件取引には民法192条が適用されない。

イ 仮に、被控訴人の本件取引に民法192条の適用があるとしても、上記のとおり、Dらは所有者から依頼されて売却することを明示していたのであるから、所有者とされたFの交際相手の所有権があること及びDらの処分権限があることを信じ、かつ、信じたことに過失がないことが必要であるところ、次のとおり、被控訴人がDらから受けた説明を含めて、本件骨董品の購入の際の事情からは、本件骨董品がFの交際相手の所有であると信ずべき具体的事情が全くなく、被控訴人が上記所有権の存在を信じていたものではないし、信じたとしても信じたことに過失がある。

(ア) 被控訴人は、解体業者Hから、古物を処分したがっている知り合いとしてDらの紹介を受けたに過ぎず、「前主」と説明されたFの交際相手について事前に紹介されたことはない。

(イ) 本件取引に際しては、その由来はおろか、「前主」の氏名さえ知らされず、会わせて欲しいとの申出も断られたものである。そして、Dについても、免許証の写真を見たものの、住所氏名等の確認もしていない。

(ウ) 本件取引を持ち込んだDは、水商売人風であり、通常金満家が居住するとは考えにくい県営住宅に居住するとして、同所で取引され、多数の高価な骨董品を段ボール箱に詰めた状態で見せられたものである。

(エ) 本件水指は、著名な鑑定家による記載があり、1000万円でも売却しうる骨董品であると考えたにもかかわらず、35万円として買い受けを申し出たところ、Dらは難色を示さず、売却したもので、骨董品の取引をし慣れない素人であることが明らかである。

(オ) 被控訴人は、多数の骨董品を見せられ、取引もしているものであって、Dらが、処分を焦っていたと理解できたはずであり、その出所に疑問を抱いて、所有者と称されていた者の調査等をすべきであった。現に、本件骨董品の取引を持ちかけられ、不審を抱き、取引を断った同業者もいた。

(カ) その後、Dらとの連絡が途絶えても、被控訴人は何らの措置に出ていないことからすれば、Dらの処分権限等について何ら関心を持っていなかったことを推測させるものである。

(被控訴人の主張)

ア 民法192条適用の前提である取引行為の相手方である「前主」とは、所有者であるかのような外観を有する者に限られず、他人の動産を自己の名において処分する権限を有する者や代理人も含まれる。被控訴人がDらと本件取引をするに際し、Dらは本件骨董品を所有者(旧家の奥さん)から依頼されて売却することを明示していたが、Dらの代理権限には何らの瑕疵がないから、本件骨董品を占有していたDらは民法192条の「前主」に該当し、旧家の奥さんが「前主」となるものではない。

イ そして、被控訴人において、「前主」であるDらが権利者であると信じたことにつき過失があったとはいえないことは次の点から明らかである。

(ア) Dは、Hという信用できる紹介者の紹介による取引相手であり、服装や雰囲気からも疑念を抱くべき状況はなかった。D宅で取引され、自筆の領収書も作成している。

(イ) 所有者とされた者について紹介するとのことだったが、紹介されないまま終わったに過ぎない。

(ウ) 本件水指が時価1000万円することはない。被控訴人の評価は他の本件骨董品も含めて350万円を下らないとのものである。

(エ) Dの住居や取引場所は県営住宅であっても、住居の建替え等に際して、骨董品が多数持ち込まれることは希ではなく、Dの夫も解体業や手配師風であったもので、従業員らしい者も出入りしていたものであり、古物を運搬するのに段ボール箱詰めすることはままあるから、旧家の奥さんから依頼されて処分するとの外観があったものである。

(オ) Dらは、第一回目の取引は不成立であったし、その後も多数回にわたって処分をしているものであり、処分を焦っていたものとは窺われない状況であった。

(2)  争点(1) のイのうち、本件骨董品が盗品であるかについて

(控訴人の主張)

本件骨董品は盗品である。詳しくは、原判決8頁8行目から24行目までのとおりであるからこれを引用する〔ただし、同部分の(刑訴法124条1項の)「贓物」とする部分を「盗品」と読み替える。〕。

(被控訴人の主張)

本件骨董品は盗品ではない。具体的には、原判決6頁21行目から7頁3行目までのとおりであるからこれを引用する(同上)。

(3)  争点(1) のイのうち、民法193条の回復請求の有無について

(控訴人の主張)

ア 盗品等の所有権は、盗難等の日から2年間は未だ被害者に帰属し、2年間に民法193条による回復の請求がないときに、盗品等の善意の取得者はその所有権を即時取得するというべきである。したがって、民法193条所定の回復の請求とは「占有の回復」を求める行為にすぎないものであり、格別の様式を要せず、盗難被害品の占有の回復を求める意思が明示されていれば足りるというべきである。

イ Bは、盗難の翌日の平成10年4月17日に岐阜南署へ本件骨董品を含む被害届を提出し、同年12月頃の同署での別件取調べにおいて本件骨董品の返還の請求をする旨意思表示をし、平成11年2月ころC巡査が被控訴人へBの上記意思を伝えた。Bの上記返還請求は有償を前提とするものであったが、民法193条による回復の請求として欠けるところはない。

ウ Bは、平成11年10月ころから数回にわたって、本件検察官に対し、本件骨董品を含む被害品の返還を求めた。民法193条による回復請求の相手方は「占有者」と規定されているだけであるから、その占有者には盗品を領置している検察官等の捜査機関を含むと解すべきである。そのように解すべき理由は、原判決10頁5行目から11頁5行目までのとおりであるからこれを引用する。

(被控訴人の主張)

控訴人の主張アについては争わないが、その余は争う。イについては、C巡査から被害者が「適価で買い取りたいと言っている」旨を伝えられ、「いいですよ。」と回答したものであり、このような有償を条件とする返還請求は民法193条による回復請求に該当しない。ウについては、民法193条の「占有者」とは、「民法192条の要件を備えた現在の占有者」と解すべきであるから、検察官などの捜査機関はこれに該当しない。

(4)  争点(2) ア(本件骨董品の贓物性)について

(控訴人の主張)

本件骨董品は贓物に該当する。詳しくは、原判決8頁8行目から24行目までのとおりであるからこれを引用する。

(被控訴人の主張)

本件骨董品は贓物ではない。具体的には、原判決6頁21行目から7頁3行目までのとおりであるからこれを引用する。

(5)  争点(2) のイ(民法193条の回復請求の有無及び存在の明白性)

双方の主張は上記(3) のとおりである。

(6)  争点(2) のウ(民法192条の要件に該当しないことの明白性)について

双方の主張は上記(1) のとおりである。

(7)  争点(2) のエ(国賠法1条1項の違法性及び過失)について

(控訴人の主張)

本件被害者還付につき違法性がない。詳しくは、原判決11頁13行目の「仮に、」から24行目までのとおりであるからこれを引用する。

(被控訴人の主張)

押収物は原則として被押収者へ還付すべきであるが(刑訴法123条)、贓物で被害者に還付すべき理由が明らかなときに限り被害者に還付することと定められており(同法124条1項)、本件では被害者に還付すべき理由が明らかでないことが容易に判断できたから、本件被害者還付は国賠法上も違法であり、本件検察官に同法1条の過失がある。

(8)  争点(3) (本件骨董品の所有権侵害の有無及びその時価)について

双方の主張は、原判決11頁26行目から13頁5行目までのとおりであるからこれを引用する。

第3当裁判所の判断

1  被控訴人の請求は、本件被害者還付により本件骨董品の所有権を侵害したとする国家賠償請求であるところ、当裁判所は、被控訴人に本件骨董品の所有権が認められない、すなわち、その購入に際し、売主が権利者であると信じたことにつき被控訴人の過失が認められ、即時取得が成立したといえないものであって、本件骨董品の所有権侵害は認められず、被控訴人の請求はその余の点について判断するまでもなく理由がないと判断する。その理由は以下のとおりである。

2  前提となる事実は、次のとおり改めるほかは、原判決14頁17行目から18頁12行目までのとおりであるからこれを引用する。

原判決15頁16行目の「二、三十万円」を「20万円ないし30万円」と、16頁15行目から16行目にかけての「県営住宅I荘」を「県営I住宅」と、17頁3行目と14行目の各「承諾が得られなかった。」をいずれも「応じてもらえなかった。」と、18頁11行目の「原告の方でも」から12行目までを「被控訴人からDへの携帯電話が通じないようになったが、被控訴人は前記I住宅のDの住居を訪問して調査したことは一度もなかった。」とそれぞれ改める。

3  本件取引への民法192条の適用(争点(1) のアの控訴人の主張ア)について

控訴人は、民法192条の取引行為の相手方すなわち、いわゆる「前主」とは所有者であるかのような外観を有する者をいい、本件骨董品を第三者から依頼されて売却することを明示していたDらは「前主」に該当せず、本件取引には民法192条の即時取得が適用されないと主張する。

しかし、所有者本人から売却の委託を受けて動産を所持する者(占有代理人)の占有も、本人による占有(間接占有)の一部を構成するものであり、本人による占有と一体となって、動産の占有による権利表象機能を有するというべきであるから、第三者より委託を受けたDらから本件骨董品を購入した本件取引について民法192条の即時取得の適用を否定する理由はない。

控訴人の主張は採用できない。

4  本件取引に際して「前主」が権利者であると信じたことにつき被控訴人の過失が認められるか(争点(1) のアの控訴人の主張イ)について

(1)  民法192条の即時取得の要件である取得者の「無過失」については、取得の際、「前主」が所有権等の処分ができる者(権利者)と信じたことに過失のなかったことと解すべきところ、上記のとおり、Dらは第三者(A、被控訴人の主張では「旧家の奥さん」)から依頼されて本件骨董品を売却するものであることを明示していたのであるから、本件取引において前主が権利者であると信じたこととは、上記「旧家の奥さん」が本件骨董品の所有権を有し、かつDらがその売却の委任を受けていたものと信じたことと解すべきである。そして、DらがFを介して旧家の奥さんから委任を受けていたとの被控訴人の主張につき、控訴人はこれを積極的に争うものではなく、弁論の全趣旨により同事実を認めることができるので、本件ではDらへの委任者である「旧家の奥さん」が本件骨董品の所有者であると信じたことにつき、被控訴人の過失があると認められるかどうかの検討を要することとなる。

(2)  上記前提となる事実(原判示)、特に、<1>本件骨董品を含めDらが所持していた骨董品は数十点の多数に及び、被控訴人の仕入値において合計200万円を超える物件であって、相応の由来を窺わせる値打ち物もあったこと、<2>しかるに、これらが無造作に段ボール箱に入れられ、車のトランクや県営住宅の一室に保管されているまま被控訴人に提示されたものであること、<3>取引を申し出たDは、水商売人風であって、上記県営住宅に居住していたことなどの本件取引の事情に加えて、被控訴人が古物商であって、盗品等不正品の疑いがある物の警察官に対する申告義務(古物営業法15条2項)、取引相手の確認義務(同条1項)、取引内容の帳簿記載義務(同法16条)等の注意義務を負っているものであること等を考慮すると、被控訴人は本件取引をするについて、所有者とされた「旧家の奥さん」の所有権の存在についての情報を得るか、少なくとも所有者から売却を任されたとするDらの話が信用できるものであることの情報、すなわちDらの職業や身元等について確実な情報とこれを裏付ける資料を得るべき注意義務があったものというべきである。

(3)  しかるに、被控訴人は、Dらに対し、旧家の奥さんに引き合わせてくれるよう求めたのみで、Dらからこれに応じて貰えないままに、本件取引を含む3回の取引を終えたものであり、被控訴人は旧家の奥さんが本件骨董品等の所有権を有する事情について何ら情報を得ないまま本件取引をしたものとみざるを得ない。そして、被控訴人は、Dについても、同人から運転免許証の提示を受け、代金の領収証等(甲3ないし5。その住所の地番の記載は「1-79」とも「1-80」とも記載し、同一でない。)を受け取りながら、運転免許証の顔写真で同一性を確認したにとどまり、運転免許証と領収証等とに記載されたDの氏名と住所が一致するかどうかや、地番の記載の不一致の理由等も確認せず、古物台帳等の帳簿も作成していなかったものである〔被控訴人は、平成10年11月4日にC巡査から「D」の顔写真を見せられるまで、売主の女性の氏名を領収書記載の「J」と認識していたものであるから(乙10)、運転免許証の氏名との照合をしていないことが明らかである。〕。また、Dらが3回目に売却した骨董品1点の引渡しを遅滞したまま、Dの携帯電話への連絡が取れなくなった後も、被控訴人はDの住居であるという県営I住宅404号室ないし406号室を訪問調査したことがないというのであるから(原審被控訴人本人)、被控訴人は領収証等に書かれた県営I住宅の住所(K区L-M又はL-N)がDの真の住所であるか等その身元などに重きを置いていなかったものと見ざるを得ない。結局、被控訴人による所有者の情報の入手や代理人であるDの身元やその信用性の確認は極めて不十分なものであったというほかない。

(4)  してみると、被控訴人が、信頼するHの電話での紹介によりDらとの取引を始め、Dの身なりも整っていてスナック経営者風であり、即時に取引をしないで自宅訪問によって取引を進め、代金の領収証を徴し、一応免許証の提示も受けた等の前記認定(原判示)の事情を考慮しても、被控訴人において、Dらへ売却を依頼した旧家の奥さんに本件骨董品の所有権があると信じたことには過失があると認めざるを得ない。

(5)  したがって、その余の点について判断するまでもなく、被控訴人主張の本件骨董品についての即時取得の成立を認めることはできず、被控訴人主張の本件骨董品の所有権取得を認めることはできない(民法193条につき、その要件に該当すれば当然に被控訴人の即時取得は否定されるし、これに該当しないとしても上記のとおり民法192条の要件該当性が否定される。)から、本件被害者還付によって所有権を侵害されたとの被控訴人の主張を認めることはできない。

第4結論

よって、被控訴人の控訴人に対する請求は、その余の争点につき判断するまでもなく理由がないので、原判決中これを認容した部分は相当でないから、これを取り消し、被控訴人の控訴人に対する請求を棄却し、第1、2審の訴訟費用を被控訴人に負担させることとして、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 田村洋三 裁判官 小林克美 裁判官 戸田久)

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