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名古屋高等裁判所 平成15年(ネ)484号 判決 2003年12月25日

大阪市西区南堀江1丁目2番13号

控訴人

株式会社クオーク

代表者代表取締役

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訴訟代理人弁護士

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三重県●●●

被控訴人

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訴訟代理人弁護士

村田正人

石坂俊雄

福井正明

伊藤誠基

主文

1  本件控訴を棄却する。

2  控訴人の当審における予備的請求を棄却する。

3  控訴費用は控訴人の負担とする。

事実及び理由

第1控訴の趣旨

1  原判決を取り消す。

2  (主位的請求)

被控訴人は,控訴人に対し,38万2592円及びこれに対する平成12年9月1日から支払済みまで年6パーセントの割合による金員を支払え。

3  (予備的請求)

被控訴人は,控訴人に対し,27万9272円及びこれに対する平成11年12月3日から支払済みまで年5パーセントの割合による金員を支払え。

4  訴訟費用は,1,2審とも被控訴人の負担とする。

5  仮執行宣言

第2事案の概要

本件は,割賦購入斡旋等を目的とする会社である控訴人が,被控訴人との間で,被控訴人が株式会社フォーラムニジュウイチコーポレーション(以下「フォーラム21」という。)から買い受けた「医療事務速習講座」という名称のパソコン用ソフトのCD-ROM及びテキスト(以下「本件教材」という。)の代金を控訴人においてフォーラム21に立替払し,その立替金及び手数料(以下「立替金等」という。)につき被控訴人から分割して支払を受けるとの立替払契約(以下「本件立替払契約」という。)を締結したと主張して,被控訴人に対し,本件立替払契約に基づき,立替金等の残額38万2592円及びこれに対する期限の利益を喪失した日の翌日である平成12年9月1日から支払済みまで商事法定利率年6パーセントの割合による遅延損害金の支払を求めた事案であるところ,原審が請求棄却の判決を言い渡したので,これに不服がある控訴人が控訴したものであり,控訴人は当審において予備的に不法行為に基づく損害賠償を請求するに至った。

なお,本件は,当初,被控訴人が,津簡易裁判所に対し,控訴人,フォーラム21及び株式会社アド・ホック(以下「アド・ホック」という。)を共同被告として,共同不法行為による損害賠償請求権に基づき,支払済みの分割金の返還等を求めて訴えを提起したところ(平成12年(ハ)第349号事件,以下「甲事件」という。),控訴人が,同裁判所に対し,別訴として提起したものである(平成13年(ハ)第11号事件,以下「乙事件」という。)。乙事件は,同裁判所において甲事件に併合された後,職権で原審の津地方裁判所に移送となったが,被控訴人が原審の最終段階で甲事件を取り下げたので,乙事件のみが係属している。

1  前提となる事実は,原判決の「事実及び理由」欄の「第2」の「1」に摘示のとおりであるから,これを引用する。

なお,併合前の乙事件において提出された書証は,甲事件の書証と重複するので,用いないこととする。

2  争点は,次のとおり付加訂正するほか,原判決の「事実及び理由」欄の「第2」の「2」に摘示のとおりであるから,これを引用する。

(1)原判決3頁20行目の「クーリング・オフの抗弁」の後に「(平成12年改正前の訪問販売等に関する法律第9条の12第1項本文。なお,同法を以下「訪問販売法」という。)」を加える。

(2)同4頁1行目の「再抗弁その1」の後に「・訪問販売法第9条の12第1項第1号」を加える。

(3)同頁3行目の「再抗弁その2」の後に「・訪問販売法第10条第1項第1号」を加える。

(4)同頁7行目の「動機の錯誤」の後に「・訪問販売法第30条の4,民法第95条本文」を加える。

(5)同頁11行目から12行目の「再抗弁その1」の後に「・民法第95条但書」を加える。

(6)同頁17行目の「再抗弁その2」の後に「・民法第1条第2項」を加える。

(7)同頁17行目の末尾に,行を改め,次のとおり加える。

「(8)フォーラム21は,本件売買契約の締結にあたって,被控訴人がいつでも解約することができる旨の覚書を送付して中途解約できる権利を被控訴人に与え,被控訴人はこの解約できる権利を行使したものとして,控訴人の請求を拒絶できるか(約定解約権行使の抗弁・当審における新たな主張・訪問販売法第30条の4)」

(8)同頁18行目の「(8)」を「(9)」と改め,20行目の「抗弁」の後に「・民法第1条第2項,第90条)」を加える。

(9)同頁20行目の末尾に,行を改め,次のとおり加える。

「(10)仮に,本件立替払契約に基づく控訴人の請求が認められないとしても,被控訴人は控訴人に対し,下記の不法行為に基づく損害賠償責任を負っているか(不法行為に基づく損害賠償請求・当審における新たな主張・民法第709条)

被控訴人は,フォーラム21から本件教材を購入するにあたり,平成11年11月24日,控訴人との間で,本件立替払契約を締結したが,被控訴人によれば,本件教材の売買契約及び本件立替払契約締結の意思はなかったにもかかわらず,控訴人担当者からの電話による意思確認の際には,いい加減に「はい,はい」と対応し,あえて契約締結意思がある旨の回答をして,控訴人をして本件立替払契約を締結させ,フォーラム21に対し,31万5000円の立替払いをさせた。しかしながら,被控訴人主張のように,在宅ワークの受講料のローン契約であると認識していたのであれば,上記電話の際に,契約内容について一言確認すべきで,これを確認することは容易で何らの障害もなかったし,これをしていれば,控訴人はその後の手続を進めることはなく,本件立替払契約の申込みを拒否できたはずである。被控訴人は,本件教材の売買代金についてのショッピングローン契約を締結する意思がないのであれば,それを控訴人に伝えて,控訴人に損害が発生することを未然に防止すべき注意義務があったのに,被控訴人は,自己の軽率な言動によって,これを怠ったものであり,少なくとも過失があったというべきである。なお,控訴人が被った損害は,フォーラム21に対して支払った31万5000円から被控訴人がこれまでに支払った3万5728円を控除した27万9272円となる。」

第3当裁判所の判断

1  当裁判所は,控訴人の請求はいずれも理由がないものと判断するが,その理由は,以下のとおり訂正するほか,原判決の「事実及び理由」欄の「第3」に説示のとおりであるから,これを引用する。

(1)原判決6頁3行目冒頭から18行目末尾までを,以下のとおり,改める。

「 証拠(甲1ないし3,23,28の1及び2,29,30,乙イ6,乙ハ3の1及び2,被控訴人)によれば,フォーラム21は,本件契約書を返送してもらった後,被控訴人に対し,仕事についての簡単な説明書,アド・ホックに対するアドネットタウンの入会申込書,本件教材であるパソコン用ソフトのCD-ROM及びテキストのほか,いつでも解約できる旨記載した覚書等を遅滞なく送付していること,被控訴人は,平成12月6月28日付けの内容証明郵便において,クーリングオフを行使する趣旨で,契約の解除を主張したこと,これに先だって被控訴人から相談を受けた三重県消費生活センターの担当者がフォーラム21との交渉の過程で,本件立替払契約の契約書の写しを入手したことから,上記内容証明郵便に,ローン代金額について正確な金額が記載されていることが認められる。なるほど控訴人が主張するように,フォーラム21としては本件契約書控えを送付しなければ,いつまでもクーリングオフにより本件売買契約を解約される立場にあることを考えると,フォーラム21が,本件売買契約締結のころ,本件契約書の控えを被控訴人に対して送付した可能性も考えられないではないが,被控訴人が本人尋問で,本件契約書の控えをフォーラム21から送付してもらっていないと供述していることや,上記認定事実に照らすと,いまだフォーラム21が被控訴人に対し,本件契約書の控えや写しを送付した事実を認めることができないといわざるを得ない。

すると,クーリングオフの抗弁に対する再抗弁その1は,理由がない。

4  争点(4)(営業のためか否か)について

証拠(甲12,被控訴人)によれば,被控訴人は,出産後で仕事がないことから,医療事務の勉強をして在宅のままその仕事をすれば,家計が少しでも助かるであろうと考えて,本件売買契約を締結したことが認められる。そうすると,被控訴人は,いわゆる内職として,もっぱら賃金を得る目的をもって医療事務という労務に服しようとしていたのであるから,訪問販売法第10条第1項第1号の「営業のため若しくは営業として」本件教材を購入したものではないというべきである。

すると,クーリングオフの抗弁に対する再抗弁その2も,理由がない。」

(2)同頁19行目の「4」を「5」と,7頁19行目の「5」を「6」と,8頁5行目の「6」を「7」とそれぞれ改める。

(3)同8頁19行目の冒頭から20行目の末尾までを,以下のとおり改める。

「8 争点(10)(不法行為に基づく損害賠償請求)について

控訴人は,当審において新たに不法行為に基づく損害を主張するが,証拠(乙イ1,被控訴人)によれば,控訴人と被控訴人との間には,本件教材の売買に関するショッピングローン契約が締結されていることが認められるのであるから,本件教材の売買契約及び本件立替払契約につき契約を締結する意思がなかったわけではないし,被控訴人は前記(原判決引用部分)のとおり動機に錯誤があったもので,他方,証拠(乙ハ5)によれば,控訴人担当者は電話で被控訴人の意思確認をする際に,支払金額や支払条件は確認しているものの,契約の目的については問いかけすら行っていないことが認められるのであるから,このような状況に照らせば,被控訴人には上記電話確認に際して積極的に在宅ワークの受講料のローン契約であるということを控訴人担当者に告げなければならない注意義務はないのであって,被控訴人に違法な行為があったとはいえず,本件全証拠によっても,被控訴人に控訴人に対する不法行為責任を認めることができない。

9 以上によれば,控訴人の主位的請求については,被控訴人によるクーリングオフの抗弁が認められるうえ,本件売買契約における動機の錯誤に基づく無効の主張を被控訴人が控訴人に対して対抗できることから,理由がないし,当審において追加された不法行為責任を追及する予備的請求についても,理由がない。」

2 よって,本件控訴は理由がないから棄却し,控訴人の当審における予備的請求も理由がないから棄却することとし,主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 小川克介 裁判官 鬼頭清貴 裁判官 濱口浩)

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