名古屋高等裁判所 平成15年(行ウ)39号 判決 2004年1月28日
控訴人 A株式会社
同代表者代表取締役 甲
同訴訟代理人弁護士 竹下重人
被控訴人 名古屋中税務署長 南博昭
同指定代理人 平野朝子
同 羽土征治
同 朝倉茂
同 根岸裕介
主文
1 本件控訴を棄却する。
2 控訴費用は控訴人の負担とする。
事実及び理由
第1 当事者の求めた裁判
1 控訴人(控訴の趣旨)
(1) 原判決を取り消す。
(2) 被控訴人が控訴人に対し、平成12年6月30日付けでした下記アないしオの各処分をいずれも取り消す。
ア 平成8年8月1日から平成9年7月31日までの事業年度(以下「平成9年7月期」という。)以降の法人税の青色申告承認取消処分
イ 平成9年7月期の法人税の更正処分(ただし、平成12年11月29日付け異議決定による一部取消後のもの)
ウ 平成9年8月1日から平成10年7月31日までの事業年度の法人税の更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分(ただし、いずれも平成12年11月29日付け異議決定による一部取消後のもの)
エ 平成10年8月1日から平成11年7月31日までの事業年度(以下「平成11年7月期」という。)の法人税の更正処分及び過少申告加算税賦課決定処分
オ 平成10年8月1日から平成11年7月31日までの課税期間の消費税及び地方消費税の各更正処分(ただし、納付すべき消費税額104万4200円及び地方消費税額26万1000円を超える部分)並びに各過少申告加算税賦課決定処分
(3) 訴訟費用は第1、2審とも被控訴人の負担とする。
2 被控訴人
主文同旨
第2 事案の概要
1 本件は、法人税について青色申告の承認を受けていた控訴人が、控訴人がした平成9年7月期ないし平成11年7月期の法人税等の各申告について、名古屋市中区錦所在の韓国メンバーズクラブ「B」(以下「B」という。)の事業収益が控訴人に帰属することを理由として、上記控訴の趣旨(2)アないしオの各処分をした被控訴人に対して、それら各処分の取消しを求めた事案である。
原審は、控訴人の請求をいずれも棄却した。そこで、これを不服とする控訴人(1審原告)が、本件控訴に及んだ。
2 本件の前提となる事実(当事者間に争いのない事実等)、争点、争点に関する当事者双方の主張は、原判決「第2 事案の概要」の1ないし3に記載のとおりであるから、これを引用する。
第3 当裁判所の判断
1 当裁判所も、原判決と同様に、控訴人の請求を棄却すべきであると判断するが、その理由は、以下のとおり付加・訂正するほかは、原判決「第3 当裁判所の判断」の1ないし4記載のとおりであるから、これを引用する。当審において新たに取り調べた証拠(甲25ないし28、29の1、2、30、31)を加えて検討しても、上記認定・判断は正当であって、変更すべき点はない。
(1) 原判決35頁13行目末尾に、行を改め、次のとおり付加する。
「(エ) さらに乙は、当審において提出された陳述書(甲31)の中で、本件契約締結の際Cが立ち会っていたことなど従前の陳述書(甲5、乙4)と異なる供述をしているが、その供述が変遷した理由については単に「本件調査時に私は非常に多忙であり真剣に質疑応答する余裕がなく、ただh・mらの誘導的な質問に対し曖昧な応答をしてしまいました」などと述べるのみで、ほかに何ら合理的な説明をしていない。しかし、乙4によれば、平成12年10月11日にh、mらによって行われた乙に対する質問は、同日午後4時ころから午後5時40分ころまで1時間半余りの時間をかけて行われたことが認められ、乙が上記調査当時それほど余裕のない状態におかれていたとは認められないから、上記説明は不自然・不合理であって、上記陳述書を容易に信用することはできない。したがって、上記陳述書も、上記(原判決引用)のとおり信用性が高いと認められる乙供述の信用性を減じるものではない。」
(2) 原判決35頁14行目に「(エ)」とあるのを「(オ)」と改める。
(3) 原判決41頁10行目末尾に、次のとおり付加する。
「なお、控訴人は、Xが記帳したBの金銭出納帳(甲18ないし22)には「甲交際費」「甲貸金」等の記載はあるが、これは甲が友人・知人などを伴ってBに赴き飲食をした場合の料金をつけにしたり、当座の必要に応じて店から寸借したりしたものを正確に記帳したにすぎないのであって、それらはある程度まとまったときに現金入金されて決済されているから、これは甲個人とBとの貸借関係であって、控訴人の事業とは全く無関係である旨主張し、これに沿う証拠(甲25)を提出する。しかし、同証拠に表れている甲への貸付等の頻度及び金額からは、かえって甲がBに対し支配力を有していることを窺わせるものであるから、控訴人の上記主張は理由がない。」
(4) 原判決44頁末行冒頭から45頁3行目までを、次のとおり改める。
「控訴人は、実際に控訴人が上記(原判決引用)賃料の振込入金による支払を受けていた証拠として、控訴人の経理を担当しているg作成の一覧表(甲28)及び普通預金通帳(甲29の1、2)を提出しているが、上記入金は、金額(月額100万円)や支払期日(毎月25日払い)の点で、かならずしも本件契約の内容に沿って入金されているとはいえないので、それが控訴人が主張するような賃料として支払われたものであるかどうかについて疑問がある。また、同一覧表に振込として記載されている入金の中には上記通帳に「振込」という記載のないものもある上、同通帳に記載された入金の中には摘要欄の記載のない入金もあり、上記一覧表あるいは通帳が、原審における控訴人代表者の供述を裏付けるものということもできない。」
2 よって、原判決は相当であり、本件控訴は理由がないから、これを棄却することとして、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 青山邦夫 裁判官 藤田敏 裁判官 榊原信次)