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名古屋高等裁判所 平成15年(行ス)5号 決定 2003年4月23日

主文

1  原決定を取り消す

2  岐阜地方裁判所平成14年(行ウ)第16号損害賠償代位請求住民訴訟事件につき,被告をAから瑞浪市長Aに変更することを許可する。

理由

第1抗告の趣旨及び理由

抗告人の抗告の趣旨は主文同旨であり,抗告の理由は別紙即時抗告理由書(写)のとおりである。

第2当裁判所の判断

1  本件は,抗告人が,地方自治法に基づく住民訴訟として,瑞浪市に代位して,瑞浪市長である被告A個人に対し,瑞浪市に違法な公金支出に関する損害の賠償を求める訴訟(以下「本件訴訟」という。)を提起したところ,同訴訟係属中に相手方の指摘を受けて被告を誤ったことに気付き,被告をAから瑞浪市長Aに変更することの許可を求めたが,原審が,抗告人には被告を誤ったことについて重大な過失があったとしてこれを許可しなかったため,これに不服である抗告人から即時抗告のあった事案である。

2  抗告人は,本件訴訟の訴状提出直前,抗告人自身が作成した訴状を抗告人訴訟代理人に見せ相談をしたが,本件訴訟の出訴期限(瑞浪市監査委員の監査請求棄却決定から30日の期限)である平成14年9月28日が迫っていたこともあり,抗告人訴訟代理人はその内容に立ち入って点検をする余裕がなく,その形式的な不備の点検をするにとどめたため,抗告人本人が自らの作成名義で本件訴訟の訴状を作成したものとしてこれを提出したと主張するところ,本件記録によれば,本件訴訟の訴状は平成14年9月27日付けで作成され同日岐阜地方裁判所に提出されたこと,同訴状には訴訟代理人の記載はなく,同訴状は抗告人本人名で作成されていること,本件記録に編綴されている抗告人の弁護士宮田陸奥男に対する訴訟委任状は平成14年9月26日付けで作成されているが,実際に原審に提出されたのは同年10月3日であることが認められるから,抗告人の上記主張はあながち不合理であるとして排斥できないものである。そうすると,本件訴訟において被告を誤ったことにつき抗告人に重大な過失があったかどうかを判断するにあたっては,抗告人が本件訴訟の提起にあたり法律専門家の助言を得る機会があったということを重視することは相当とはいえない。

そして,本件訴訟の提起があったのは,平成14年法律4号によって地方自治法242条の2第1項4号が改正され,同改正附則1条及び4条,平成14年政令94号により上記改正法が施行された平成14年9月1日を経過して間もない時期のことであり,本件のような住民訴訟において被告を誤ることは十分起こりうる状況であったといえることも考慮すれば,抗告人が本件訴訟において被告を誤ったことについて抗告人に重大な過失があったとまでは認められないというべきである。

3  よって,抗告人の被告変更の申立てを却下した原決定は失当であるからこれを取り消し,抗告人の申立てを許可することとして,主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官 小川克介 裁判官 鬼頭清貴 裁判官 濱口浩)

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