大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

名古屋高等裁判所 平成16年(行コ)24号 判決 2004年12月27日

控訴人

同訴訟代理人弁護士

出口崇

被控訴人

南勢町長 川口米人

同訴訟代理人弁護士

楠井嘉行

川端康成

西澤博

赤木邦男

加藤明子

今井潔

中西正洋

被控訴人補助参加人

南勢町長 川口米人

同訴訟代理人弁護士

南谷直毅

被控訴人補助参加人

同町助役 Z1

同訴訟代理人弁護士

中島健一

主文

1  本件控訴を棄却する。

2  控訴費用は控訴人の負担とする。

事実及び理由

第3 当裁判所の判断

1  当裁判所も、本件訴えは適法であり、控訴人の請求は理由がないものと判断するが、その理由は、次のとおり補正するほか、原判決「事実及び理由」欄第3記載のとおりであるから、これを引用する。

(1)  原判決17頁5行目と6行目の間に次のとおり付加する。

「なお、被控訴人は、控訴人は以前から町政に関心があり、町長選挙にも強い関心を抱き、川口町長の当選に伴い助役が誰になるかも予想していたというくらいであるから、議会だより等を見て参加人Z1が勧奨退職金を受領したことは容易に推察できたはずであり、控訴人が本件各支出から1年を経過した後に本件監査請求をしたことに正当な理由はないと指摘する。

しかしながら、控訴人が、南勢町の町政や町長、助役等に対する関心が強かったからといって、ただちに本件各支出の存在及び内容を容易に知ることができたといえるものでもなく、これを知ることができたのは、前記(原判決16頁13行目から17頁5行目まで)のとおり、早くともAから参加人Z1が退職勧奨金を受け取ったことを伝えられた平成15年1月中旬ころと解されるのであって、控訴人が本件各支出から1年を経過した後に本件監査請求をしたことには正当な理由が認められ、被控訴人の上記指摘は採用できない。」

(2)  同19頁11行目と12行目の間に次のとおり付加する。

「なお、控訴人は、参加人Z1が退職した後、技術参事の席が空席のままで、ただ一般職の後進の昇進の可能性が生じているというだけでは、わざわざ優遇措置までして勧奨退職を行う必要はなく、被控訴人が参加人Z1に勧奨退職による優遇措置を行ったことは、本件要綱が定める「職員の新陳代謝を図り、合理的な職員構成を積極的に維持することにより、町行政の能率的な運営を促進する」という南勢町における勧奨退職者に対する優遇措置の制度趣旨に反し、裁量権の逸脱に当たると指摘する。

しかしながら、上記本件要綱の制度趣旨からすれば、勧奨退職者に対する優遇措置が後進の昇進等の人事行政上の効果を目して行われるべきであるとまではいえるにしても、前記(原判決「事実及び理由」欄第2の2)認定の本件条例及び本件要綱の定めが、勧奨退職者を退職手当の優遇措置の対象者とするだけで、特に事後の人事行政上の措置にまでは触れていないことからすれば、これを勧奨退職によって人事行政上の効果を触発することを狙った制度と解することも可能であり、少なくとも、後進の昇進の可能性が生じたというに留まる勧奨退職者に対する優遇措置は制度趣旨に反するものであるとし、これを裁量権の逸脱とまでいうことはできない。

また、控訴人は、本訴提起後の平成15年4月1日、本件要綱は改正され、条文上退職手当の優遇措置を受ける者は募集に応じて退職する者のみとされて勧奨に応じて退職する者は削除され、勧奨退職者は解釈によって退職手当の優遇措置を受ける余地を残すのみとなっているのであるから、南勢町の優遇措置制度の本質は募集退職であり、勧奨退職ではないとして、被控訴人が参加人Z1に勧奨退職による優遇措置を行ったことは、裁量権の逸脱に当たると指摘する。

しかしながら、上記改正後の本件要綱による優遇措置制度の本質が募集退職であるかどうかは一応措くとしても、参加人Z1が南勢町技術参事兼総務課長を退職した平成11年5月31日当時、勧奨退職による優遇措置は前記(原判決「事実及び理由」欄第2の2)のとおり本件条例及び改正前の本件要綱に正当な措置として明定されていたのであるから、上記改正によってこれが裁量権の逸脱になると解される余地はなく、控訴人の上記指摘は採用できない。」

2  以上のほかにも控訴人及び被控訴人はるる主張するが、いずれも上記認定判断を左右するものではないから、これを採用することはできない。

3  結論

したがって、控訴人の請求を棄却した原判決は相当であり、本件控訴は理由がないからこれを棄却することとして、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 熊田士朗 裁判官 川添利賢 多見谷寿郎)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例