名古屋高等裁判所 平成17年(ラ)273号 決定 2005年12月20日
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抗告人
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抗告人
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上記両名訴訟代理人弁護士
谷口典明
愛知県尾西市東五城字若宮前15番地
相手方
株式会社ユニーファイナンス
代表者代表取締役
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訴訟代理人支配人
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東京都目黒区三田1丁目6番21号
相手方
GEコンシューマー・ファイナンス株式会社
代表者代表取締役
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訴訟代理人弁護士
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同
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同
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主文
1 抗告人●●●の抗告に基づき,原決定中,抗告人●●●関係部分を取り消す。
相手方株式会社ユニーファイナンスは,本案の受訴裁判所に対し,本決定送達の日から10日以内に,原決定添付文書目録1記載の文書を提出せよ。
2 抗告人●●●の抗告に基づき,原決定中,抗告人●●●関係部分を次のとおり変更する。
(1) 相手方GEコンシューマー・ファイナンス株式会社は,本案の受訴裁判所に対し,本決定送達の日から10日以内にその業務に関する商業帳簿(貸金業の規制等に関する法律19条で作成・備置が義務づけられている債務者ごとの帳簿)又は同法施行規則16条3項,17条2項に定める書面の中,相手方GEコンシューマー・ファイナンス株式会社と抗告人●●●との間の平成4年4月10日から平成5年9月30日までの期間内における金銭消費貸借取引に関する事項(貸付年月日,貸付金額及び返済年月日,返済金額)が記載された部分の全部(電磁的記録を含む。)を提出せよ。
(2) 抗告人●●●のその余の文書提出命令の申立てを却下する。
3 抗告人●●●と相手方株式会社ユニーファイナンスとの間に生じた抗告費用は相手方株式会社ユニーファイナンスの負担とし,抗告人●●●と相手方GEコンシューマー・ファイナンス株式会社との間に生じた抗告費用は,相手方GEコンシューマー・ファイナンス株式会社の負担とする。
理由
第1抗告の趣旨及び理由
別紙1「文書提出命令却下に対する即時抗告申立書」及び別紙2,3の各「意見書」(いずれも写し)のとおり
第2抗告の趣旨及び理由に対する意見等
1 相手方株式会社ユニーファイナンス
別紙4「答弁書」及び別紙5「準備書面」(いずれも写し)のとおり
2 相手方GEコンシューマー・ファイナンス株式会社
別紙6「文書提出命令却下に対する即時抗告に対する意見書」(写し)のとおり
第3当裁判所の判断
1 本件は,抗告人●●●(以下「抗告人●●●」という。)が相手方株式会社ユニーファイナンス(以下「相手方ユニーファイナンス」という。)に対し,原決定別紙文書目録1記載の文書(以下「本件文書1」という。)の提出命令を求め,抗告人●●●(以下「抗告人●●●」という。)が相手方GEコンシューマー・ファイナンス株式会社(以下「相手方GEコンシューマー」という。)に対し,原決定別紙文書目録2記載の文書(以下「本件文書2」という。)の提出命令を求めたところ,原審が抗告人らの申立てをいずれも却下したため,これを不服とする抗告人らが抗告した事案である。
2 抗告人●●●の抗告について
(1) 本件文書1は民事訴訟法220条3号後段の法律関係文書に該当することは明らかである。
(2) 相手方ユニーファイナンスは,平成3年当時顧客に貸付をする場合には,各貸付ごとに貸付金明細カード(以下「カード」という。)を作成し,返済を受けた都度その旨カードに記載する方法で債権管理をしており,完済となった後は,帳簿備付期間中は保管するものの,期間経過後は順次カードを廃棄しているので,平成3年6月28日貸付以前の取引に関する文書は廃棄済みであって所持していないと主張する。
相手方ユニーファイナンスの事業規模からすると,平成3年当時に作成され,保管されていたカードは相当な枚数に上るものと推測されるから,保管の必要がなくなったカードを順次廃棄したとの主張を直ちに排斥できるものではない。
しかしながら,記録によれば,相手方ユニーファイナンスは,本件文書提出命令申立前に陳述された第1準備書面において,訴が提起される前に開示した取引以前の抗告人●●●に関する取引は,平成3年9月20日に返済を受けた同年6月28日の貸付が最後であると主張し,上記取引のカードを乙ロ3号証として提出するために,その写しを抗告人●●●に交付しているのであって,この事実からすると,相手方ユニーファイナンスは,既に10年間の保管期間が経過した上記カードを未だ保管しているのであり,必ずしも10年間経過したカードをすべて廃棄しているわけではないといわざるをえない。
相手方ユニーファイナンスにおいて,保管していたカードを廃棄したとすれば,業者に依頼したことの関係書類や廃棄を指示若しくは承認した事実や報告を受けた事実に関する社内記録を提出することが可能であるところ,これらの事実を明らかにしない以上,相手方ユニーファイナンスは平成3年9月20日以前に完済された抗告人●●●との取引に関するカード(本件文書1)を現に保管しているものと認めざるをえない。
なお,相手方ユニーファイナンスは,平成3年6月28日以降の文書は乙ロ3号証により写しを交付したので,同日から同年9月20日までの取引に関する本件文書1の提出を求める申立ては理由がないと主張するが,同時期に貸付が複数存在した可能性を考えれば,上記期間内に乙ロ3号証に記載されたもの以外にも貸付や返済がなされた貸付があった可能性があるから,本件文書1は,平成3年9月20日以前に完済された貸付に関する文書ということとなる。
(3) なお,相手方ユニーファイナンスは,仮にこれらの文書を所持していたとしても,同日以前の取引に関する不当利得返還請求権は,時効により消滅していると主張し,本件文書1を証拠とする必要性がないと主張するもののようであるが,証拠の必要性の判断は原審の専権に属することであり,原審は上記論点についての判断を経た上で原決定をしたものと解するほかない。
証拠としての必要性に関する相手方ユニーファイナンスの主張は理由がない。
(4) 以上によれば,相手方ユニーファイナンスは原決定添付の文書目録1記載の文書を提出する義務があるから,本件抗告は理由がある。
3 抗告人●●●の抗告について
(1) 本件文書2が民事訴訟法220条3項後段の法律関係文書に該当することは明らかである。
(2) 記録によれば,抗告人●●●は平成4年4月10日以降,相手方GEコンシューマー(当時の商号株式会社レイク)から継続的に貸付けを受けていたことが認められる。
(3) 本件文書2のうち,平成5年10月以降のものについて
記録によれば,相手方GEコンシューマーが,本件文書2のうち,平成5年10月以降の取引履歴を書証として提出予定であることが認められ,抗告人●●●の本件文書提出命令申立てのうち,平成5年10月以降の取引にかかる文書に関する部分については申立の必要性がない。
(3) 本件文書2のうち,平成5年9月までのものについて
相手方GEコンシューマーは,平成5年9月以前の取引履歴は存在したが,これを消除したため存在しないとし,消除の具体的な内容について主張し,これに関する証拠を提出した。
しかし,記録によれば,相手方GEコンシューマーは,他の同種事件において,上記取引履歴の消除に関し,電算機のプログラムによる自動消除システム(10年を経過した取引履歴が自動的に消除されるシステム)によったものであり,このシステムは,相手方GEコンシューマーの情報システムが開発したもので,開発を外部に委託したり,市販のソフトウェアを利用・改良したものではなく,システム自体は単純なものであるから,社内に自動消除システムに関する運用資料も存在しないなどと主張していたことが認められるところ,相手方GEコンシューマーが本件で主張する消除の方法は,電算機のプログラムによる自動的なデータ消除を内容とする部分もあるが,データが入力されたカセットテープの粉砕等物理作業を要する相当大がかりなものであって,同種事件における相手方GEコンシューマーの主張と食い違いがあり,相手方GEコンシューマーの主張には一貫性がないといわざるを得ず,取引履歴の消除に関する相手方GEコンシューマーの主張は採用することができない
したがって,本件文書2のうち,相手方GEコンシューマーが消除したとする平成5年9月までのものについては,これが存在しないとする相手方GEコンシューマーの主張は理由がなく,これら文書は現在も存在し,相手方GEコンシューマーが所持するものと認められる。
(4) 相手方GEコンシューマーは,10年以上前の返済について,不当利得返還請求権が発生したとしても,同請求権は時効により消滅したから,10年以上前の取引履歴を保管する必要性はないと主張するが,記録によれば抗告人●●●の借入と返済は継続した一体のものであると認められ,相手方GEコンシューマーが時効消滅したと主張する不当利得返還請求権は,その後の貸金元金に充当されるべきものであるから,上記主張は採用することができない。
(5) 以上のとおりであって,相手方GEコンシューマーは,本件文書2のうち,抗告人GEコンシューマーにおいて任意に提出する予定の平成5年10月以降のものを除いたものを提出すべき義務があるというべきであるから,抗告人●●●の本件文書提出命令の申立ては主文第2項(1)の限度で理由があるが,その余は理由がない。
4 よって主文のとおり決定する。
(裁判長裁判官 野田武明 裁判官 鬼頭清貴 裁判官 濱口浩)
<以下省略>