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名古屋高等裁判所 平成19年(ネ)686号 判決 2008年4月21日

控訴人

X1<他1名>

被控訴人

株式会社オーエムソーラー協会

同代表者代表取締役

同訴訟代理人弁護士

日置雅晴

被控訴人

Y1<他1名>

上記両名訴訟代理人弁護士

幅隆彦

久保田宏

主文

一  原判決中、控訴人らと被控訴人株式会社オーエムソーラー協会に関する部分を次のとおり変更する。

二  被控訴人株式会社オーエムソーラー協会は、控訴人ら各自に対し、三八一五万七六七二円及びこれに対する平成一〇年一一月二日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

三  控訴人らの被控訴人株式会社オーエムソーラー協会に対するその余の請求を棄却する。

四  控訴人らの被控訴人Y1及び被控訴人Y2に対する控訴をいずれも棄却する。

五  訴訟費用中、控訴人らと被控訴人株式会社オーエムソーラー協会とに係る部分は、第一、二審を通じてこれを一〇分し、その三を控訴人らの負担とし、その余を被控訴人株式会社オーエムソーラー協会の負担とし、控訴費用中、控訴人らと被控訴人Y1及び被控訴人Y2とに係る部分はいずれも控訴人らの負担とする。

六  この判決は第二項に限り、仮に執行することができる。

事実及び理由

第一当事者の求めた裁判

一  控訴人ら

(1)  原判決を取り消す。

(2)  被控訴人らは、控訴人らに対し、連帯して、五一三〇万円及びこれに対する平成一〇年一一月二日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

(3)  訴訟費用は、第一、二審を通じて被控訴人らの負担とする。

(4)  仮執行宣言

二  被控訴人ら

控訴人らの控訴をいずれも棄却する。

第二事案の概要

一  本件は、控訴人らを注文主、有限会社コムハウス(コムハウス)を請負人として締結された建物建築請負契約に基づき、コムハウスが幸栄建設株式会社(幸栄建設)を下請とし、被控訴人株式会社オーエムソーラー協会(被控訴人オーエムソーラー協会)から購入した部材を使用して建築した住宅(本件建物)について、耐久性、構造、機能等に欠陥があり、控訴人らに損害が生じたとして、控訴人らが、建物の部材を販売した被控訴人オーエムソーラー協会、本件建物の建築確認申請書上、設計者及び工事監理者と記載されている被控訴人Y2(被控訴人Y2)、幸栄建設の取締役の地位にあった被控訴人Y1(被控訴人Y1)に対し、不法行為に基づく損害賠償として、五四六六万八四二〇円及びこれに対する不法行為の日(代金支払完了日)である平成一〇年一一月二日から支払済みまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の連帯支払を求めたところ、原判決が、控訴人らの請求をいずれも棄却したため、控訴人らが控訴した事案である。なお、控訴人らは、当審において、五一三〇万円及びこれに対する上記と同旨の遅延損害金の範囲に請求を減縮した。

なお、控訴人らは、原審において、コムハウスとその代表者取締役であったB、幸栄建設とその代表取締役であったCの相続人Dに対しても同様の請求を行い、五一三〇万円及び遅延損害金の限度で請求が認められたが、この点については双方とも不服を申し立てることなく確定している。

以上のほかの事案の概要は、次のとおり補正し、控訴人らの当審における主張を付加するほか、原判決の事実及び理由の「第二 事案の概要」の一及び二に記載のとおりであるので、これを引用する。

二  原判決の補正

(1)  原判決四頁一行目冒頭から六行目末尾までを以下のとおりに改める。

「ウ(ア) 被控訴人オーエムソーラー協会は、「環境共生建築の資材に関する開発・製造・供給・物流の事業」、「環境共生建築を進める地域工務店の活性化・組織化に関する企業経営事業」などを目的とする株式会社であり、建築上の工夫により太陽エネルギーを床暖房等に利用する「OMソーラーシステム」(本件システム)を開発し、被控訴人オーエムソーラー協会との間で「ボランチャイズチェーン契約」を締結して被控訴人オーエムソーラー協会の会員となった工務店(加盟工務店)に対し、同システムの部材や、同システムと住宅の躯体を一体化させた規格住宅である「フォルクスハウス」の部材を販売し、各種講習会等を通じて技術、情報の提供を行っている。(乙ロ九、弁論の全趣旨)

(イ) 本件システムは、建物の屋根面で温められた空気を、建物中央に設置されたダクトを通して床下に貯め、各室の床に設置された吹出口から室内に吹き上げて暖房するシステムである。

被控訴人オーエムソーラー協会は、「フォルクスハウス」の一つである「フォルクスハウスA」について、「①主要構造材に構造用集成材を用い、接合部を特殊な接合金物によって単純化を図り、加工及び施工の省力化を行っている。②壁、屋根パネルには断熱材と防湿シートを予め工場において取り付けることにより、品質の向上と工期の短縮を図っている。③完成後の保証・維持管理体制が整っている。」として、平成八年四月一日、財団法人日本住宅・木材技術センターから、木造住宅合理化システム認定規程第五条第一項に基づき、「木造住宅合理化システム」の認定を受けている。(甲三六)」

(2)  同四頁九行目の「土地上に、」の後に「請負代金総額」を加える。

(3)  同四頁一三行目の「コムハウスは、」の後に「平成八年に被控訴人オーエムソーラー協会との間でボランチャイズチェーン契約を締結した加盟工務店であるところ(乙ロ八、乙ロ九)、」を加える。

(4)  同四頁二三行目の「本件建物につき」の後に「控訴人X1の名義にて」を加える。

(5)  同五頁二五行目冒頭から二六行目末尾までを「イ 被控訴人Y1及び被控訴人Y2の主張」に、同六頁二一行目及び同八頁二三行目の「被告コムハウスら六名」をいずれも「被控訴人Y1及び被控訴人Y2」に、同九頁七行目の「社員」を「従業員」に改める。

三  控訴人らの当審における主張

(1)  被控訴人オーエムソーラー協会の責任

ア 原判決は、本件建物の欠陥が、法令等や本件マニュアル等に違反した施工に起因するものであり、被控訴人オーエムソーラー協会が加盟工務店に提供した指導内容に誤りがあったことによるものではないとして、被控訴人オーエムソーラー協会の責任を否定したが、失当である。

(ア) 本件システムを装備した建物には、シロアリが発生、繁殖しやすく、かつ、シロアリ被害の発見や駆除が困難である、という特徴がある。すなわち、本件システムは、軒先から外気を取り入れ、屋根面で集熱し、ダクトにより床下に温風を導き、基礎又は土間コンクリートに蓄熱すると同時に床板に開けられた吹出口から室内に温風を導くことにより、太陽熱を利用して快適な室内温熱環境を実現するシステムであるところ、本件システムによって保たれる土間下の温度は、シロアリの活動に好適な温度となる。また、本件システムでは、蓄熱のために、建物の基礎立ち上がり部に断熱材が貼られているため、シロアリが床下に進入した場合、基礎立ち上がり部の断熱材の中、又は基礎立ち上がり部と断熱材の隙間を通って、容易に木部に到達することができ、その発見は容易ではない。

さらに、被控訴人オーエムソーラー協会は、平成一一年以前は、本件システムについて、蓄熱と温風の循環のため、床高を一〇〇mm程度にするよう指導していたところ、床高が一〇〇mm程度しかない場合、床下の点検が困難となり、シロアリの発見が遅れる危険性がある。また、本件システムでは、床下空間の空気は、外気ではなく居住空間の空気と交換されるため、人体に有害な通常の薬剤を用いることができず、シロアリの駆除が極めて困難である。

(イ) 被控訴人オーエムソーラー協会は、遅くとも平成九年までには、OMソーラーの家でシロアリが発生することを把握し、上記のような本件システムの特徴を認識し、その対策として

① 一度の施工で打設したコンクリートで地面を覆い、打ち継ぎのないべた基礎を設置する、

② クラックを起こさないような配筋をする、

③ 床高を点検可能な高さにする、

などの、物理的工法による防蟻措置を用いる必要があることを認識していた。

(ウ) したがって、被控訴人オーエムソーラー協会としては、遅くとも平成九年以降、加盟店に対し、マニュアル等において、上記防蟻措置を徹底して指導すべき義務を負っていたものであるが、これを怠り、住宅金融公庫の仕様を推奨するのみで、隙間を作らないために必要な鉄筋の打ち方を一切指導せず、床高は蓄熱性能を重視して一〇〇mmと指導した。

(エ) さらに、被控訴人オーエムソーラー協会は、上記のような事実を消費者に知らせることなく、平成一一年まで、消費者に対しては、「OMソーラーの床下空間とそれに接する土台は、常に乾燥しています。当然その生態からヤマトシロアリは喰うことができない(棲息できない)ことがわかります。」、「OMソーラーのやり方自体が、建築的防蟻工法である」、「シロアリなどに対する、薬剤による土壌処理を省略できます。」、「OMソーラーのしくみと、含水率一二%以下という構造材が、それ自体シロアリ対策になっており、人体に有害なシロアリ駆除剤などの使用は不要です。OMソーラーの床下は乾燥状態となっており、シロアリの生息を許しません。」などと宣伝し、また、床高が点検可能な高さでないこともあって、いったんシロアリの進入を許すと駆除が極めて困難であることは全く説明しなかった。こうして、本件システムを装備した建物が、そうでない建物よりシロアリに強いかのごとく虚偽の宣伝をして消費者の事実誤認を誘発した。

また、シロアリが発生した事実を認識した後も、上記宣伝を改めなかった。

その結果、これを信じた控訴人らは、適切な防蟻措置及びメンテナンス可能な床高を取っていない欠陥を有する本件建物を取得し、その補修をしなければならない損害を被ったのである。

イ 本件建物の補修には、たとえ基礎の強度に欠陥がなかったとしても、シロアリ対策のため、打ち継ぎのない基礎を設置し直し、床高を高くとるため基礎立ち上がりの高さを変更するなどの物理的な防蟻措置を施す必要がある。また、本件建物のシロアリ被害は、二階部分まで及んでおり、現状の部材を再度使用することは困難である。

(2)  被控訴人Y1の責任

幸栄建設では、建築確認申請の際、実際には設計、監理業務を行わない建築士の氏名を設計者、工事管理者として確認申請書に記載し、提出するという行為を組織的に行っていた。

被控訴人Y1は、幸栄建設の取締役の地位にあり、同社において組織的に上記違法行為が行われていることを知り、又は知り得たにもかかわらず、これを是正せず放置した。

したがって、被控訴人Y1は、会社法四二九条一項に基づき、本件建物の欠陥によって控訴人らに生じた損害につき、その責任を負うべきである。

(3)  被控訴人Y2の責任

原判決は、被控訴人Y2が本件工事について、監理を引き受けた事実はなく、また、建築確認申請の際、自らの名前が使用されたことも知らず、実際にも本件工事には何ら関与していなかったとして、被控訴人Y2の責任を否定した。

しかし、被控訴人Y2は、幸栄建設が施工する建築工事について、建築確認申請の際、その従業員である建築士の名義を上記のように使用することを事前に承諾していたことは明らかである。

そして、建築物を建築し、又は購入しようとする者に対して建築基準関係規定に適合し、安全性等が確保された建築物を提供すること等のために、建築士には建築物の設計及び工事監理の専門家としての特別の地位が与えられていることにかんがみると、建築士は、その業務を行うに当たり、新築等の建築物を購入しようとする者に対する関係において、建築士法及び建築基準法の上記各規定による規制の潜脱を容易にする行為等、その規制の実効性を失わせるような行為をしてはならない法的義務があるというべきであり、建築士が故意又は過失によりこれに違反する行為をした場合には、その行為により損害を被った建築物の購入者に対し、不法行為に基づく賠償責任を負うものと解するのが相当であり(最高裁平成一五年一一月一四日判決)、被控訴人Y2も本件建物の瑕疵によって控訴人らが被った損害について賠償責任を負う。

四  被控訴人オーエムソーラー協会の当審における主張

(1)  被控訴人オーエムソーラー協会は、平成八年七月に、薬剤によらない防蟻対策として布基礎と土間コンクリートの一体化あるいはべた基礎が有効であることを加盟工務店に紹介し、それ以後も、シロアリに関する情報や打ち継ぎへの注意を含め、その対策等について加盟工務店やOMソーラー会員に伝達してきた。

(2)  控訴人らは、被控訴人オーエムソーラー協会の宣伝文言を問題とするが、これはその作成時点での認識を内容としたものであり、当該時点で把握できなかった問題が事後的に判明したからといって法的な責任が生じるものではない。

(3)  本件では、シロアリの被害発生が確認された後、被控訴人オーエムソーラー協会が、事後的対策を提案したにもかかわらず、控訴人らはこれを拒否して何らの対処もしなかったのであり、仮に被控訴人オーエムソーラー協会に何らかの責任があるとしても、それは発生時点で適切な防蟻処理を行うのに必要な範囲に限って因果関係があるというべきである。

第三当裁判所の判断

一  当裁判所は、被控訴人Y2及び同Y1に対する控訴人らの請求はいずれも理由がないが、被控訴人オーエムソーラー協会に対する請求は、三八一五万七六七二円及び遅延損害金の支払を求める限度で理由があるものと判断する。その理由は、次のとおり付加訂正するほか、原判決の事実及び理由の「第三 争点に対する判断」の一ないし三に記載のとおりであるので、これを引用する。

(1)  原判決一〇頁一五行目の「一九~二一、」の後に「三七の一ないし二八、三八の一及び二、三九の一及び二、四〇、四一」を、二二、二三行目の「差し筋跡」の後に「やその下の打ち継ぎ部分」を加える。

(2)  同一一頁四行目の「生きている羽アリ」の前に「本件建物内で発見、採取された」を加える。

(3)  同一一頁二四行目末尾に改行の上、「(オ) 本件システムを装備した建物の土間下の温度は、シロアリの活動に好適な温度となるため、シロアリの食物となる木片等が地中にあり、かつ、湿度が保たれている場合には、シロアリの発生しやすい環境となること、また、本件システムによって温風が循環する床下の空間は、気密性が保たれ、乾燥状態が維持されている限りにおいては、シロアリが生息しにくい環境となるが、何らかの原因で気密性や乾燥状態が保たれなくなった場合には、土間下の状況とあいまって、床下や建物内にシロアリが進入し、繁殖する可能性を否定できないこと、」を加え、二五行目の「(オ)」を「(カ)」に改める。

(4)  同一二頁五行目の「差し筋跡」の後に「やその下の接続面に打ち継ぎの」を加え、一四行目の「本件建物の盛土」を「本件建物の基礎下の盛土」に改める。

(5)  同一二頁一八、一九行目の「基礎の打ち継ぎ部分に隙間が存したことが、」の後に「シロアリ進入の主たる原因となり、この他に、前記のとおり、本件建物の基礎下の地中に旧建物の残材が除去されなかったことや、土間コンクリート下の断熱剤の設置が不十分であったこと、さらに、後記のとおり、雨漏りの原因となるような施工不良や、有効な通気層が確保されないような施工不良があったことなどがシロアリの繁殖を促し、」を加える。

(6)  同一六頁一七行目の「被告Y1については」から一九行目の「認められるから」までを「被控訴人Y2及び被控訴人Y1については、《証拠省略》によれば、コムハウスの代表者であるBは、もと幸栄建設の取締役の地位にあったが、取締役在任中の平成八年五月一日にコムハウスを設立し、平成九年一月に幸栄建設の取締役を辞任したこと、同人は、上記辞任前後を通じて、控訴人らとの間で本件建物の建築に関する交渉を続け、辞任後、設計業者である「建築設計AtoZ」に設計を依頼して設計図を作成し、控訴人らに代わって行った建築確認申請の書類作成も同事務所に任せたこと、その際、Bは、幸栄建設及びその従業員である被控訴人Y2の了解を得ることなく、確認申請書上、幸栄建設を建築会社として記載させ、被控訴人Y2を設計者・工事管理者として記載させたこと、被控訴人Y2は本件工事の設計、監理を引き受けた事実はなく、建築確認申請にあたってその名前が使われたことも知らなかったこと、実際にも本件工事には何ら関与していないこと、被控訴人Y1は本件当時、幸栄建設の取締役であり、営業を担当していたもので、本件には何ら関与していなかったことが認められる。そうすると」に改め、二二行目の末尾の後に改行の上、以下のとおり加える。

「 また、一般に、代表権のない取締役は、代表取締役の業務執行一般につき、これを監視し、取締役会を通じて業務執行が適正に行われるようにする職務を有するものであるが、取締役会に上程されない事項について、代表権のない取締役が責任を負うのは、代表取締役の業務活動の内容を知ることが可能であることを要すると解すべきところ、本件当時、幸栄建設において、組織的に、建築確認申請の際、設計・監理に関与しない建築士の名義を記載する行為が行われていたと認めるに足りる証拠はなく、被控訴人Y1において、Bによる、本件建物の建築確認申請の際に行われた前記のような行為を知り得たとも認められないから、この点についての控訴人らの主張も採用できない。」

(7)  同一六頁二五行目から一七頁五行目までを、以下のとおり改める。

「(3) 上記(2)に認定した事実によれば、被控訴人Y2についても、設計者又は工事監理者としての責任を認めることはできない。」

(8)  同一七頁七行目から一八頁三行目までを、以下のとおり改める。

「(4)ア 被控訴人オーエムソーラー協会の責任については、《証拠省略》によれば、被控訴人オーエムソーラー協会は、加盟工務店に対し、当初は、主としてオーエムソーラシステム(屋根面で温められた空気を建物中央に設置されたダクトを通して床下に貯め、各室の床に設置されたオーエム吹出口から室内に吹き出し、暖房するシステム)のノウハウを提供していたところ、その後、ソーラーシステムと住宅の躯体が一体化したフォルクスハウスを開発し、その部材を供給するようになったが、被控訴人オーエムソーラー協会が提供する部材は躯体部分のもののみであり、基礎の部材や工法、仕上げ等については当該建物の地盤の状況等が現場によって異なるため、各加盟工務店に委ね、加盟工務店の選択、判断に基づいて、それぞれ資材を調達して施工していたこと、そのため、加盟工務店がフォルクスハウスを施工するに際して、施工についての講習やマニュアルの配付等の指導を行い、設計図面の提出を受けて躯体の強度等のチェックをするといった方法で、設計、施工についての教育、指導を行っていたが、それ以上に個別の住宅の設計に関与したり、施工を監督するということはなく、これらは加盟工務店がその責任において行うものとされていたことが認められる。

イ これによれば、被控訴人オーエムソーラー協会としては、供給した部材の瑕疵について責任を負うことがあるのは別にして、加盟工務店に対する教育、指導に関しては、その内容に誤りや不適切な点があった場合には責任を負うものの、それに関係のない加盟工務店の施工上の過誤等によって生じた欠陥については、これを知りながら放置したような場合を除いて、責任を負うことはないというべきである。そうすると、本件建物に認められる前記の各欠陥のうち、シロアリ被害による耐久性の欠陥を除くその余の欠陥は、前記認定のとおり、いずれも被控訴人オーエムソーラー協会に関係のない、加盟工務店であるコムハウス及びその下請けの幸栄建設による法令等や本件マニュアル等に反した施工に起因するものであるので、これについては被控訴人オーエムソーラー協会が損害賠償の責任を負うことはないものと認められる。

ウ これに対し、シロアリ被害による耐久性の欠陥については、控訴人らは、被控訴人オーエムソーラー協会が加盟工務店に対して、適切な防蟻措置を指導すべき義務を怠り、かつ、消費者に対し、本件システムによる建物がシロアリに強く、その生息を許さないかのごとく誤った宣伝、広告をしたことによるものであるとして、被控訴人オーエムソーラー協会には損害を賠償すべき責任がある旨主張するので検討する。

(ア) 《証拠省略》によれば、被控訴人オーエムソーラー協会は、本件システムがシロアリ対策にも有効であるとして、加盟工務店や消費者等に対して、以下のように宣伝、広告をしていた事実が認められる。

a 被控訴人オーエムソーラー協会は、本件システムでは、屋根面で温められた空気がダクトを通して床下に貯められることから、床下空間や土台は常に乾燥しており、したがって、一般の建築方法による住宅に比較してシロアリの被害が極めて少ないとの認識のもとで、その発行にかかる「月刊OM」の平成三年一二月号にオーエムソーラーシステムの考案者であるE執筆にかかる「白蟻物語」を掲載したが、その中では「OMの床下通気層内は白蟻は生きていることはできませんので、スタイロフォームで大丈夫です。」としていた。

b そして、平成七年四月号の「月刊OM」にはOM流シロアリ対策として「OMソーラーは、①乾燥状態に弱いシロアリの生態を考慮すると、土間床下に逆気するOMのしくみ自体がシロアリ対策として有効であること、②公庫仕様(平成六年度版)に明記されている建築構造的シロアリ対策の要件を満たすことにより、シロアリ駆除剤の使用は行わないこと、③さらに、シロアリ被害多発地域等においては、E論文に記されている「薬剤に頼らない防蟻対策」を参考にして工夫することを指針とする、等を決めました。」とした上で、一部補筆された前記「白蟻物語」を再掲したが、その中では「OMソーラーの仕組みは、建物を乾燥状態に保ち、それ自体が優れた防蟻工法です。」「OMソーラーの床下空間とそれに接する土台などは、常に乾燥しているのでヤマトシロアリは食べることができません。高温乾燥空気が通っているOMの床下空間は、どんな生き物も長居することはできず、まして乾燥に極度に弱い白蟻は通り抜けることさえも危険です。」「OMソーラーのやり方自体が、非常に優れた建築的防蟻工法であることがわかりました。床下、小屋裏を含めてOMに関わる空間は、人間には健康的ですが、白蟻には住みにくい、あるいは危険な場所なのです。しかし、一軒の家の中には、風呂場、水廻り、非OMの床下など、白蟻の好みそうなところが残ります。家の中の空気を積極的に循環させ、健康な家を目指しているOMの建物では、そういう部分でも薬剤にたよらず建築的防蟻工法でやりたいものです。」などと記載されていた。

c さらに、平成八年一月に被控訴人オーエムソーラー協会が発行した「あいうえOM」にも、同様の内容の「白蟻物語」を掲載した。

d また、パンフレット「VOLKSHAUS」には、「フォルクスハウスは、OMソーラーのしくみと、含水率一二%以下という構造材が、それ自体シロアリ対策になっており、人体に有害なシロアリ駆除剤などの使用は不要です。OMソーラーの床下な乾燥状態になっており、シロアリの生息を許しません。」と記載し、パンフレット「OM SOLAR 木造打ち放し住宅 VOLKS A」にも、「防湿層押えコンクリート基礎の工事により、床下換気口を省略することが認められ、白アリなどに対する薬剤による土壌処理をやらなくて済みます。」と記載した。

(イ) 一方、被控訴人オーエムソーラー協会は、遅くとも平成八年までには、OMソーラーシステムの家でシロアリが発生したとの報告を約二〇件受け、平成九年においても二〇件の報告例があって、その中には食害の生じていた事例もあり、調査の結果、発生例の多くが布基礎と土間コンクリートの隙間(クラック)から進入していることが判明していたことが認められる(甲三七)。そして、《証拠省略》によれば、その前後から本件契約が締結された平成一〇年四月二九日までの間において、被控訴人オーエムソーラー協会は加盟工務店やOM会員に向けて、次のようにシロアリ対策に関する情報を提供していたことが認められる。

a 平成七年二月二〇日付けの、被控訴人オーエムソーラー協会の理事長から加盟工務店に宛てた文書では、本件システムを装備した住宅でシロアリ防虫剤を使用して中毒症状を訴える問題が発生したという報道を受けて、今後OMソーラー工事においては防蟻剤の使用を一切とりやめるよう加盟工務店に求めると共に、①本件システムでは、乾燥状態にある床下で、シロアリが繁殖する条件はきわめて厳しく、シロアリにとっては不都合な環境であること、②布基礎による換気の不十分さはシロアリの繁殖を促すこと、③本件システムを装備した住宅であっても、全くシロアリが発生しないとはいえないが、少なくとも一時的な効果しか期待できない防蟻剤による処理よりは有効といえること、などを説明した。

b 平成七年三月一五日付けの業界紙に掲載された記事では、被控訴人オーエムソーラー協会は、その頃、薬剤に頼らない防蟻対策を標準仕様とし、床廻りについては①基礎はできるだけ高く、②布基礎部では地上部をところどころ切る、換気口は従来の三倍以上大きく等の方法を組み合わせて換気を良くし、床下を明るくする、③床下防湿コンクリートを全面に設置する、④土台、大曳き、根太などにはひのき、ひば等の材質を使う、⑤土台下(特に内面側)に蟻返しを入れる、などを提案していることが報道された。

c 平成七年四月発行の「月刊OM」では、前項の(ア)bで述べた内容のほかに、

(a) ヤマトシロアリは、湿った、あるいは腐りかかった木材しか食べることができず、乾燥した木材を食べることはできないこと、したがって、住宅では、土台、水回り、通気の悪い床下等が被害を受けやすいが、雨漏りや漏水、結露などがあると、建物上部でも被害を受けることがあり得ること、

(b) イエシロアリは、主として土中に巣を作り、本件システムの床下蓄熱コンクリートの下の断熱材であるスタイロフォームやポリウレタンフォーム、更には、これらより消化困難なポリエチレンフォームでもシロアリに侵食されること、本件システムの床下蓄熱コンクリート下の断熱材にシロアリが巣を作った場合、シロアリの食料がなければ全滅すると考えられること、

(c) 床下、小屋裏を含めて本件システムに関わる空間は、シロアリには住みにくい、あるいは危険な場所といえるが、一軒の家の中には、風呂場、水回り、本件システム対象外の床下など、シロアリの好みそうな場所が残るので、薬剤に頼らない防蟻対策が必要であること、具体的には、

① 敷地

ⅰ 土中の根株や木材を取り除く。掘り出したものは焼却する。すでに住みついている場合は、巣を作るきっかけとなり易いので、宅造地は特に注意する。

ⅱ 建物廻りの排水を良くする。

ⅲ 建物完成後は、建物廻りに物を置かない。工事の終わった後、敷地内の木片は除去する。

② 本件システム対象外の束立て木造床廻り

ⅰ 基礎はできるだけ高くする。

ⅱ 布基礎廻りでは、布基礎の地上部をところどころで切る、換気口を大きな物(従来のものの三倍以上)にする、基礎と土台の間をモルタルキャンバーなどで浮かせ、空気の澱みをなくす、布基礎の内面のどこもが、どこかから見えるようにする、などの方法を組み合わせて、極力床下換気を良くし、床下を明るくする(布基礎は、床下換気を非常に悪くし、シロアリが生息しやすくなる。本件システムの蓄熱床部分があると、その他の束立て床部分の換気が取りにくくなるので、特に注意が必要である。)。

ⅲ 床下防湿コンクリートを全面に打つ。周囲の地盤より高くする。

ⅳ 土台、大曳き、根太などには、ひのき、ひば等の対蟻性の強い材質を使う。

ⅴ 土台下に蟻返しを入れる。

ⅵ 土台はできれば外部に露出させる。

③ 地上部の建物

ⅰ 外壁は、透湿性シートを使い、通気工法とし、壁体内結露をなくし、木材を乾燥状態に保つ。

ⅱ 小屋裏の換気を十分にする。

ⅲ 複雑な屋根を避け、雨漏りをなくする。

ⅳ 束立て木造床下、天井裏などの点検を可能にする。

ⅴ 浴室、台所、押入などの結露、湿気に注意する。室内の換気も良くする。

などの対策が必要であることが報告された。

d 平成八年一月発行の「あいうえOM」では、基礎高六五cm以上の家ではシロアリの被害を受ける率が低いこと、基礎高以外の防蟻法としては、床下換気(床下の換気を良くして、床下を明るくする。床の周囲の高い位置に、換気孔を大きく、数多くとる。)、防湿コンクリートの設置(床下に、地中からの水蒸気発散を抑えるために、防湿コンクリートを全面に打つ。)、漏水・結露の防止(浴室、台所、押入などの結露や湿気に注意し、室内換気を良くする。)、点検(建物完成後、建物周りに物を置かない、草を伸ばさないよう心がける。)などの方法が有効であることが報告された。

e 平成八年七月発行の「OM設計部通信」では、平成八年四月から五月までに加盟工務店やユーザーから十数件のシロアリ発生(土間コンクリート下の地面から、布基礎を内断熱した時のスタイロフォームと基礎又は土間コンクリートとの隙間及びピットの打ち継ぎ部分の隙間から羽蟻が出てきたこと)の報告があったこと、OM空間は大変乾燥していてシロアリが出るはずがないと思っていたのでびっくりしたこと、本件システムを装備した建物の土間下温度は、冬期でもシロアリの活動に好適な一五度以上に保たれているので、シロアリの食物となる伐採した樹木の根株や建て替え新築時の残材などが建築中の不注意で土中に残ると、短期間で羽アリが発生すると考えられること、対策としては、①最も大きな要素であるシロアリの食物(木材、根株など)を土中に残さない、やむなく型枠・支え・杭などを土中に残す場合には、シロアリの食物となる木材を使用しない、②スタイロフォームなどのシロアリの通過しやすい部分やコンクリートの隙間を造らない、布基礎と土間コンクリートを一体化し又はべた基礎とする、土台には「ひばの芯持ち材」などの耐久性・防蟻性のあるものを使用することや、建設時に敷地の歴史、盛土・埋め戻しのある時はその土の内容もよく調べること、など有効であることが報告された。

f 平成八年一二月発行の「設計部通信」では、スタイロフォームなどのシロアリが通過しやすい部分やコンクリートの隙間を造らないよう、基礎と土間コンクリートを一体化する具体的な工法について、加盟工務店が実際に施工した例が図解と共に紹介された。

なお、被控訴人オーエムソーラー協会は、平成一二年四月になって、人が入れる床下空間をOM一般の設計法とし、基礎は布基礎と一体となったべた基礎を必ず採用すべきであると提言するに至っている(甲五一)。

(ウ) このように、被控訴人オーエムソーラー協会は、加盟工務店等に対する内部資料では、シロアリの発生した事例の存在や概要、そしてそれに対する対策や実施例などについての情報を提供していたものの、同様の情報を一般の消費者に対して公開した事実は本件全証拠によっても認められず、また、(ア)に記載のとおり、「白蟻物語」を繰り返し掲載することなどによって続けてきた、本件システム自体が防蟻対策として有効であり、土壌の薬剤処理の必要もないといった内容の宣伝、広告を改めようとした事実も認められない。

さらに、加盟工務店に対しても、前記のとおり、布基礎と土間コンクリートの打ち継ぎ部分に問題のあることが明らかになっていたのに、上記の内部資料による情報提供はしていたものの、それ以上に、施工マニュアルの改訂やその他の方法を講じるなどして、その点に関する加盟工務店への注意喉起を徹底して行った事実は本件全証拠によっても認められず(マニュアルには木部の防蟻措置についての記載はあるが、地面に講じる防蟻措置の記載はないことが認められる(甲二一、乙ロ一二)。)、その結果として、コムハウスのBや幸栄建設のFらは、被控訴人オーエムソーラー協会からの従来の情報では本件システムにより床下の空気は乾燥しているので、薬剤処理や土壌の処理をしなくても大丈夫であり、シロアリ対策としては、基礎の形態だけで、住宅金融公庫の仕様と同様の布基礎と土間コンクリートの鉄筋による一体化で足りると認識していたことが認められる(証人F、原審被告B)。

(エ) そして、《証拠省略》によれば、控訴人らは、平成七年ころから、オーエムソーラーシステムに関心を持ち始め、被控訴人オーエムソーラー協会からコムハウスのBを紹介され、以後、同人から見学会の連絡を受けて、これに参加し、被控訴人オーエムソーラー協会の発行する資料やパンフレットを入手しては検討を重ねるなどした結果、フォルクスハウスの自然志向の理念や上記の平成八年一月発行の「あいうえOM」の記事やパンフレットの記載などから、土壌処理が不要で、薬剤による防蟻処理をしない建て方に好感をもって、本件契約をするに至ったこと、そのため本件建物の建築に当たっても、土壌の薬剤処理は行わなかったことが認められるのである。

(オ) 以上の事実からすれば、被控訴人オーエムソーラー協会は、当初、本件システム自体が有効な防蟻対策であり、土壌の薬剤処理などは不要であるとして宣伝を行っていたものであり、上記のようなその宣伝内容からは、シロアリの生息はもちろん、シロアリが床下空間を通ることすら不可能なものと受け取れるものであったということができる。

しかるに、被控訴人オーエムソーラー協会は、遅くとも平成八年にはシロアリが発生した事例を把握し、基礎の打ち継ぎ部分の隙間に問題があることを認識していたのであり、そうであれば、一旦シロアリが発生した場合には、従来、床下の高さは蓄熱効果などとの関係から一〇〇mm前後とするように指導してきたこともあって(甲三八)、駆除や更なる予防の措置を講じるのが極めて困難となることをも併せ考えると、上記のような宣伝、広告を改めるのはもちろん、被控訴人オーエムソーラー協会の従来からの宣伝、広告によって、加盟工務店や消費者が抱いたであろう本件システムのシロアリに対する安全性のイメージを是正するための方策を講じるとともに、実際に本件システムによる住宅を建築しようとする消費者に対しては、シロアリ発生のリスクの存在を正しく伝え、加盟工務店に対しても、施工マニュアルの改訂なども含め、前記打ち継ぎ部分からのシロアリの進入を防ぐ方法等について徹底した指導を施す必要と注意義務があったものというべきである。

被控訴人オーエムソーラー協会は、上記の宣伝、広告の内容は、当時のシロアリの生態等に関する認識に基づいて記述したものにすぎないと主張しているが、そうであったとしても、本件システムとの関係についての記載部分には誇張が認められる上、その記載内容とは相違して、実際にシロアリが発生した事例を把握した以上は、そのような宣伝、広告を行ってきた者として、本件システムによる住宅を建築しようとする消費者や加盟工務店に対して、上記のような義務を負うものと解すべきである。

また、本件においてシロアリが通るだけでなく、食害まで生じたことの原因については、本件全証拠によっても具体的に特定することはできないのであるが、これがすべてコムハウスや幸栄建設による設計、施工上の過誤によるものと認めることもできず、さらに、そもそも本件システムによる床下空間ではシロアリが全く生育することができないことを認めるに足りる証拠もない。

そして、被控訴人オーエムソーラー協会がこのような注意義務を怠った結果、控訴人ら及びコムハウスらは、被控訴人オーエムソーラー協会の従来からの広告や指導のとおり、本件システムがシロアリ対策に有効なもので、薬剤処理などは不要であるとの認識のもとに、本件契約を締結し、土壌の薬剤処理等を行うことなく、また、布基礎と土間コンクリートとの打ち継ぎ部分に対する有効な対策を講じることなく本件建物を建築してしまったものと認められるのであって、被控訴人オーエムソーラー協会はその義務違反の結果生じた本件建物の前記耐久性の欠陥による損害について賠償すべき責任があるものと認めるのが相当である。

(カ) なお、被控訴人オーエムソーラー協会は、本件でシロアリの発生が確認された後に控訴人らが適切な事後的対策を講じていないことなどを理由に、仮に何らかの責任があるとしても、それは発生時点で適切な防蟻処理を行うのに必要な範囲に限られるべきであると主張している。

そして、《証拠省略》によれば、本件でシロアリの発生が見られた後、平成一一年五月一八日に被控訴人オーエムソーラー協会のGが現地調査に訪れて、和室と浴室の下に蟻道や食害の存在が判明したこと、同人は、控訴人らに対し、原因は明らかでないが、当面の対策として、浴室の下は薬剤を土間コンクリートの下に注入して隙間をモルタルで塞ぎ、和室の下は蟻道部分をモルタルあるいはコンクリート用の接着剤で塞ぐこと、今後のシロアリの発生については、すべての箇所で何らかの方法で立ち上がり部分のスタイロフォームを撤去して点検ができるようにし、断熱が欠損する部分は泡ガラスで対応すること、薬剤を使用するのであれば毒性の少ない月桃あるいはベイトシステムが良いことなどを提案したが、それらの費用の負担については請負契約に関わる部分であり、控訴人らと請負業者であるコムハウスとの間の問題であるとして触れなかったこと、これに対し、控訴人らは、他の部位についても徹底した点検をする必要があり、費用や責任の問題もあるなどとして納得せず、そのほかの雨漏り等の瑕疵に対するコムハウスのBの対応への不満や不信などもあって、コムハウスではなく他の工務店の関与を求めたが、それについての費用は控訴人らに負担を求められたことから、以後の対応をとることなく本件訴訟の提起に至っていることが認められる。

しかしながら、点検口を設けるといっても、本件建物は床下が一〇〇mm程度しかないことから、漏れなく点検するためには数多くの点検口を設けなければならず、日常の生活にも支障の生じることが考えられる上、その結果効果的な対策を講じることができるのかも明らかでなく、また、ベイトシステムやセントリコンについては、ヤマトシロアリの生態に照らして、あるいは本件のようにすでに屋内で食害の被害が生じているような場合の効果については疑問があり(甲二六、三三、証人H)、さらに、これらの対策といっても決して低額とはいえない費用を要することが見込まれ、その効果も疑問があるとすれば、控訴人らが、関係者の責任や費用負担が明らかでない状態で、被控訴人オーエムソーラー協会の提案に応じなかったことや、自らの費用負担で対策を講じなかったことをもって、その後の被害の拡大が被控訴人オーエムソーラー協会の上記注意義務違反とは因果関係がなく、控訴人らの責任であるということはできず、被控訴人オーエムソーラー協会の上記主張は前記判断を妨げるものではない。」

(9)  同一八頁六行目の「上記一の瑕疵」を「前記耐久性の欠陥」に改め、一五行目から一九行目までを削除する。

(10)  同一八頁二〇行目から二四行目までを、次のとおり改める。

「(イ) この補修のためには、より安価な方法として、現在使用されている部材をできるだけ再使用することを前提として、基礎・土台部分を上屋から切り離して、上屋部分をジャッキアップし、上記の補修工事を施工することが相当である。

そして、《証拠省略》によれば、その費用としては、ジャッキアップそのものに要する費用と盛土をも含む基礎部分の撤去費用として一四〇五万八三一〇円、基礎工事のやり直し費用二七四万六九五五円が認められ、その他ジャッキアップに伴って必要となる補強等のための内外装や設備等の一時撤去や保管、養生等の費用及び諸経費(八%)、消費税(五%)、そしてジャッキダウン後の復旧工事に要する費用等(乙ロ五によれば一二七七万五九一〇円)をも加算すると、少なくとも控訴人らが主張する三一六五万七六七二円(原判決別紙瑕疵一覧表A欄記載の金額)の費用を要するものと認めることができる。」

(11)  同一九頁七行目の「補修期間は七か月」を「被控訴人オーエムソーラー協会に責任のある欠陥についての補修期間は五か月」に、八行目の「二〇〇万円」を「一六〇万円」に改める。

(12)  同一九頁一六行目の「二〇〇万円」を「前記欠陥に関連する部分として一二〇万円」に改める。

(13)  同一九頁二四行目の「弁護士費用は四〇〇万円」を「被控訴人オーエムソーラー協会に負担を求め得る原審における弁護士費用は二四〇万円」に改める。

二  以上のとおり、控訴人らの被控訴人オーエムソーラー協会に対する請求は、控訴人らの連帯債権として三八一五万七六七二円及びこれに対する不法行為の後である平成一〇年一一月二日から支払済みまで民法所定年五分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるが、その余の請求はいずれも理由がないので、原判決中、これと異なる部分を変更し、控訴人らの被控訴人Y1及び同Y2に対する請求はいずれも理由がないので、控訴人らの同被控訴人らに対する控訴をいずれも棄却することとして、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 西島幸夫 裁判官 福井美枝 野々垣隆樹)

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