大判例

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名古屋高等裁判所 平成2年(ラ)137号 決定

主文

本件各抗告を却下する。

抗告費用は抗告人らの負担とする。

理由

一抗告代理人の抗告の趣旨及び理由は別紙のとおりである。

本件記録によれば、抗告人松見ヶ浦荘苑管理組合(以下、抗告人組合という。)は相手方らに対し一億二〇〇〇万円の損害賠償請求訴訟を名古屋地方裁判所へ提起し(同裁判所昭和六一年(ワ)第三〇五九号)、同裁判所で審理が行われているところ、平成元年一二月一九日付で「訴えの変更」を申立てる旨の準備書面を提出し、抗告人組合を除くその余の抗告人五名を選定当事者に選定した一七〇名の選定者らが相手方らに対し損害賠償を求めると主張し、同書面はそのころ相手方らへ送達されたこと、同裁判所は、右申立は抗告人組合を除くその余の抗告人五名の新訴の提起にあたるとして、平成二年一〇月二日立件処理したうえ(同(ワ)第二九四七号)、これを合議体で審理することを決定し、更に同月一六日、右五名の抗告人に対し、民事訴訟費用等に関する法律三条所定の手数料の納付他の事項について一四日以内に補正することを命じ、同補正命令は、同月一七日抗告人組合訴訟代理人に送達されたこと、しかし、右抗告人五名は、この補正命令に応じなかったことから、同裁判所は、同年一二月七日、抗告人五名の新訴につき訴えを却下する旨の判決を言渡したことがそれぞれ認められる。

二抗告人らは、本件抗告によって、原審裁判所のした補正命令又は訴え却下の判決自体に不服を申し立てているのではなく、原審裁判所がこれらの裁判をしたことによって、黙示に抗告人らのした前記「訴えの変更」の申立について不許の決定をしたとして、この決定に対して不服を申立てているものと考えられるので、この点について判断する。

まず、抗告人組合については、前記のように新訴の提起として立件処理がされてはいない(右補正命令及び右判決のいずれにおいても、その裁判の効力を受ける当事者として掲げられていないし、右補正命令中には、右訴えの変更の申立につき「当裁判所はこれを頭書選定原告らの被告らに対する新訴の提起と認め」るとの記載がある。)ことからすれば、抗告人らのいう黙示の訴え変更不許の決定というものがあると考えるとしても、少なくとも抗告人組合については、右決定がされているということはできない。したがって、抗告人組合の抗告は、その他の点について判断するまでもなく、不適法である。

抗告人らは、訴え変更不許の決定が口頭弁論を経ないでされたときは抗告の申立てができると主張する。しかし、訴え変更不許の決定は、訴訟手続の進行中における中間的裁判であって、それについては独立した不服申立は許されず、その不許を踏まえた終局判決に対し控訴、上告をすることにより不服を主張すべきものである。仮に訴え変更不許の決定が口頭弁論を経ずしてされたとしても、この理が変わるものではなく、それゆえに右決定に対して抗告という独立の不服申立が許されることになるわけではない。したがって、仮に抗告人主張のような黙示の決定があったと考えたとしても、本件抗告は、不適法である。

また、抗告人らが本件抗告において主張する不服の対象が補正命令又は訴え却下の判決それ自体であるとしても、本件抗告は、次の理由により不適法である。即ち、本件補正命令及び訴え却下判決はいずれも抗告人組合を除く五名の抗告人に対するものであって、抗告人組合はこれらの裁判の名宛人ではないのであるから、抗告人組合はこれらの裁判の効力を受けるものではなく、従って、本件抗告はその利益を欠き不適法である。次に、抗告人組合を除く五名の抗告人の抗告申立であるが、補正命令それ自体に対しては抗告を申立てることはできず、この命令に従って欠缺を補正しなかったため、裁判長により訴状を却下されたときは、所定期間内に即時抗告の方法によって、当該訴状ないし準備書面が相手方に送達されたことから訴訟が係属した後であるため裁判所による訴え却下の判決をうけたときは、所定期間内に控訴、上告する方法によって、それぞれ不服申立を行うべきものである。従って、補正命令ないしは訴え却下判決に対し抗告の方法で不服を申立てた本件抗告は不適法である。

三よって、抗告人ら全員の本件抗告はいずれも不適法であるから、これを却下することとし、民訴法九五条、八九条、九三条を適用して主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官伊藤滋夫 裁判官宮本増 裁判官谷口伸夫)

別紙抗告の趣旨

原決定を取り消す。

本件を名古屋地方裁判所に差戻す。との裁判を求める。

抗告の理由

抗告人らは名古屋地方裁判所昭和六一年(ワ)第三〇五九号事件につき平成元年一二月一九日付準備書面(二)により別紙記載の請求を四次的請求として追加する旨の訴えの変更を申立てたが、同裁判所はこれを別訴の提起として取扱い、これに平成二年(ワ)第二九四七号の事件番号を付して平成二年一〇月一六日訴状としての補正命令を発し、次いで平成二年一二月七日訴え却下の判決をなした。このような場合には該裁判所は前述の一連の訴訟行為により黙示で前記訴え変更の申立てを許さない旨の決定をなしたものと解釈される。しかるに、右決定は左記のとおり重大な訴訟手続上の法令違背があり、取消されるべきである。

すなわち、訴え変更に関する裁判については民訴法一二五条の適用があり、口頭弁論を経ることが必要である(杉浦外・条解民事訴訟法三二七頁参照)。しかるに原審は抗告人らの前記準備書面(二)および訴えの変更の適法性に関して抗告人らの見解を記載した準備書面(一三)について口頭弁論を開いていない。

ところで訴え変更不許の裁判については抗告は許されないというのが判例・通説であるが、これは当該裁判が当然に口頭弁論を経ているという前提でのものであると解される。たとえば、小山昇博士の教科書にはこの点につき「法は、一般原則として、通常抗告を許す裁判を、口頭弁論を経ないで訴訟手続に関する申立てを却下した決定または命令にかぎっている。」ただし「申立てに応答するには口頭弁論の結果に基づかなければならない場合に、口頭弁論を経てなされた決定は除かれる。」と記述され、「経て」の部分に傍点をふって強調しているのである(小山昇・民事訴訟法三訂版五八九〜五九〇頁)から、口頭弁論を経ずに訴え変更不許の決定をしたときは抗告ができるという趣旨であると考えられる。

抗告代理人は、本件訴え変更の申立てに対し裁判所が口頭弁論を開かないまま決定しようとする気配を感じたので、平成二年八月二二日の準備手続期日において藤田裁判官に前記の理由を述べ、場合によっては抗告申立てすることもあり得ると警告した。それに対し同裁判官は、抗告代理人指摘のような違法はないといい、その根拠として挙げた資料が「準備手続の実務上の諸問題」である。なるほど、同書の七一頁には「この受訴裁判所の決定は口頭弁論期日を開かずなされるのが普通であるから、準備手続においては次回期日を指定しておいてもよい。」と記述され、その前後を通読すれば文言上は藤田裁判官のいうように解釈できないこともない。しかし、抗告代理人は、右記述は、学説には決定の告知も口頭弁論を開いてなさなければならないという説もあるので、その点に配慮したものであり、藤田裁判官のいうように理解するべきでないと考える。

以上述べたとおり、本件決定は違法なものであるから、さらに適切な裁判をさせるため原審に差戻すよう求める。

別紙<省略>

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