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名古屋高等裁判所 平成20年(ネ)1027号 判決 2009年11月18日

控訴人(一審原告兼一審原告亡X1承継人)

X2

控訴人(一審原告)

X3<他2名>

控訴人ら訴訟代理人弁護士

栁田潤一

同訴訟復代理人弁護士

鬼頭圭

被控訴人(一審被告)

日本興亜損害保険株式会社

同代表者代表取締役

A<他1名>

被控訴人ら訴訟代理人弁護士

藤田哲

須藤裕昭

村井久記

盛田裕文

主文

一  本件控訴をいずれも棄却する。

二  控訴費用は控訴人らの負担とする。

事実及び理由

第一当事者の求めた裁判

一  控訴人ら

(1)  原判決を取り消す。

(2)  被控訴人日本興亜損害保険株式会社は、控訴人X2に対し、二八〇〇万円及びこれに対する平成一八年二月三日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

(3)  被控訴人日本興亜損害保険株式会社は、控訴人X3に対し、七〇〇万円及びこれに対する平成一八年二月三日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

(4)  被控訴人日本興亜損害保険株式会社は、控訴人X4に対し、七〇〇万円及びこれに対する平成一八年二月三日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

(5)  被控訴人日本興亜損害保険株式会社は、控訴人X5株式会社に対し、一一〇万七七五〇円及びこれに対する平成一八年二月三日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

(6)  被控訴人日本興亜生命保険株式会社は、控訴人X2に対し、三一二〇万三五九〇円及びこれに対する平成一八年二月三日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

(7)  訴訟費用は、第一、二審とも被控訴人らの負担とする。

(8)  仮執行宣言

二  被控訴人ら

主文と同旨

第二事案の概要

一  本件は、亡B(以下「亡B」という。)が自動車の衝突事故により死亡したことから、被控訴人日本興亜損害保険株式会社(以下「被控訴人損害保険会社」という。)に対し、自動車保険契約ないし損害保険契約に基づき、亡X1(以下「亡X1」という。)において保険金二一〇〇万円、控訴人X2(以下「控訴人X2」という。)、同X3(以下「控訴人X3」という。)及び同X4(以下「控訴人X4」という。)において保険金各七〇〇万円ずつ及びこれらに対する訴状送達の日の翌日である平成一八年二月三日から支払済みまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払を求め、損害保険契約に基づき、控訴人X5株式会社において保険金一一〇万七七五〇円及びこれに対する訴状送達の日の翌日である平成一八年二月三日から支払済みまで年五分の割合による遅延損害金の支払を求め、被控訴人日本興亜生命保険株式会社(以下「被控訴人生命保険会社」という。)に対し、亡X1において保険金(遺族年金)三一二〇万三五九〇円及びこれに対する訴状送達の日の翌日である平成一八年二月三日から支払済みまで年五分の割合による遅延損害金の支払を求めたのに対して、被控訴人らが、上記事故は偶然の事故ではなく、亡Bが故意に発生させたものであり、亡Bは自殺したものであるから、保険金の支払義務を負わないと主張して争っている事案である。

二  原判決は、被控訴人らの主張を認めて、亡X1及び控訴人らの請求をいずれも棄却したところ、亡X1及び控訴人らが控訴した。

なお、亡X1は、本件控訴提起後の平成二一年三月四日に死亡し、控訴人X2が亡X1の地位を相続により承継し、請求の趣旨を上記のとおり変更した。

三  前提事実及び争点(争点に関する当事者の主張も含む。)は、以下のとおり原判決を付加訂正するほか、原判決「第二事案の概要」欄の二及び三に記載のとおりであるから、これを引用する(なお、文中の「原告X1」を全て「亡X1」と改める。)。

四  原判決の付加訂正

(1)  原判決四頁八行目末尾を改行して、次のとおり付加する。

「 その後、亡X1は、平成二一年三月四日に死亡し、その法定相続人は、子である控訴人X2、同X3、同X4及びC(養子)の四名であるところ、このうちの控訴人X2以外の三名は、相続を放棄したので、亡X1の権利義務関係は、全て控訴人X2が相続により包括承継した。」

(2)  原判決六頁三行目の「次のとおりとなる。」を「、X1死亡より前の時点において、次のとおりであった。」と改める。

(3)  原判決六頁二一行目の「原告X1」を「亡X1(したがってその包括承継人である控訴人X2)」と改める。

(4)  原判決六頁二五行目冒頭から二六行目末尾までを次のとおり改める。

「 亡Bは、過労による居眠り運転によって本件事故を惹起したものであり、そうではなくとも、本件事故当時、睡眠時無呼吸症候群の症状を呈しており、その影響により、本件事故直前に急速に意識レベルが低下して居眠り状態となり、本件事故を惹起したものであって、故意ではなく偶然の事故によって死亡したものである。」

(5)  原判決七頁八行目末尾を改行して、次のとおり付加する。

「 控訴人らは、過労による居眠り運転により本件事故が起こった旨の主張に加え、亡Bが本件事故当時睡眠時無呼吸症候群に罹患しており、本件事故はその影響によるものである旨にわかに主張するが、いずれも認められない。」

第三当裁判所の判断

一  当裁判所も、控訴人らの請求は理由がないからいずれも棄却すべきであると判断するが、その理由は、以下のとおり原判決を付加訂正するほか、原判決「第三 当裁判所の判断」欄の一(1)ないし(11)に記載のとおりであるから、これを引用する。

二  原判決の付加訂正

(1)  原判決九頁一六行目の「ハンドルを操作し、」から一八行目の「右側(北側)にずらし、」までを削除する。

(2)  原判決九頁二〇行目末尾に次のとおり付加する。

「しかし、本件車両は、この走行の間、通路や駐車場内に引いてある中央線の仕切りに従い左側通行によって通常の進路を取った場合に比べ、最終的に約三メートル右側(北側)にずれて走行するに至っており、このような進路変更の詳細は不明である。」

(3)  原判決一〇頁一二行目末尾に次のとおり付加する。

「しかし、これらグレープフルーツの箱が荷台から落ちて散乱するようなことはなかった。」

(4)  原判決一二頁七行目の「⑤亡Bは、」から九行目の「進路変更を行っていること、」までを次のとおり改める。

「⑤亡Bは、北側架橋を通過する付近から本件事故の現場に至るまでの間に、三メートル程度北側に進路を変更した上で、本件車両の正面を本件駐車車両の正面にほぼ正対して衝突させていること(この点、控訴人らは、正面衝突ではなく、左側部分から先に斜めに角度をもって衝突した旨を縷々指摘するが、多少の角度が認められるとしても、いずれも信用性の認められる《証拠省略》等の内容に鑑みて、ほぼ正面衝突であることは否定しようがないものと考えられる。)、」

(5)  原判決一二頁二五行目冒頭から末尾までを次のとおり改める。

「(5) なお、控訴人らは、本件事故当時、亡Bは睡眠時無呼吸症候群の症状を呈しており、その影響により、本件事故直前に急速に意識レベルが低下して居眠り状態となったことにより本件事故を惹起した旨主張し、その症状とされる、昼間の眠気、睡眠時の呼吸停止、大きな鼾(いびき)等の事実を立証するために、亡X1作成の陳述書のほか、a市場の仕事仲間らの陳述書を多数提出する。しかし、これら陳述書は、いずれも原判決後に作成されたものであることが窺われ、その各内容はいずれも十分な具体性を有するものではない上、亡X1は従前、亡Bが病気もせずとにかく丈夫であった旨を強調しており、その原審で提出された陳述書等一切の証拠からも、亡Bが睡眠時無呼吸症候群であったことの兆候を窺わせる事情は全く認められないところであるから、上記陳述書等があるからといって、本件事故当時亡Bが睡眠時無呼吸症候群に罹患していたことを認めることはできず、控訴人らの主張を採用することはできない。

他に、前記(1)の認定を左右するに足りる証拠はない。」

(6)  原判決一二頁二六行目の「本件事故発生前、」から一三頁七行目の「この点、」までを削除する。

(7)  原判決一三頁九行目の「上記箱」を「グレープフルーツ入りの箱」と改める。

(8)  原判決一三頁二四行目末尾に次のとおり付加する。

「そして、本件事故発生前、亡Bは、夕方、取引先店舗を商品交換のため訪れたことが認められ、その後、亡Bは、a市場に戻り、本件車両の荷台にグレープフルーツ入りの箱を積載したものと推認されるなど、本件事故直前まで、亡Bが日常と異ならない行動を取っていたことが窺われないではない。」

第四結論

よって、本件控訴はいずれも理由がないからこれらを棄却することとし、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 高田健一 裁判官 尾立美子 上杉英司)

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