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名古屋高等裁判所 平成21年(行コ)18号 判決 2010年1月21日

主文

1  本件控訴を棄却する。

2  被控訴人X2の請求に関する部分は、平成21年8月5日、同被控訴人の死亡により終了した。

3  当審における訴訟費用中、控訴によって生じた分は控訴人の、補助参加によって生じた分は補助参加人の各負担とする。

事実及び理由

第1  当事者の求めた裁判

1  控訴人

(1)  原判決を取り消す。

(2)  被控訴人らの請求を棄却する。

(3)  訴訟費用は、第1、2審とも被控訴人らの負担とする。

2  被控訴人

主文と同旨

第2  事案の概要

1  本件は、三重県いなべ市(以下「いなべ市」という。)の住民である被控訴人ら及び1審原告X1が、いなべ市が同市内に所在するZ(当審控訴人補助参加人、以下「Z」という。)との間で締結した原判決別紙物件目録記載の各土地(以下、併せて「本件土地」という。)の賃貸借契約は、工場用地開発のための土地買収に協力した地元住民に対する協力金の支払を目的としているにもかかわらず、自然環境保全という虚偽の理由を掲げて締結したものであって無効又は違法であるから、上記賃貸借契約に基づく賃料の支出も違法であると主張して、いなべ市の執行機関である控訴人に対し、地方自治法242条の2第1項1号に基づき、上記賃貸借契約に基づく賃料の支出の差止めを求めるとともに、同項4号に基づき、平成17年から平成20年までの間の上記賃貸借契約に基づく賃料合計4000万円の支出命令をした同市市長の職にあるAに対する上記4000万円及びこれに対する各支払日の翌日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の損害賠償請求をすることを求めた住民訴訟である。

なお、1審原告X1は、平成19年2月23日に死亡した。

原判決は、1審原告X1の訴えについて、同原告の死亡により終了した旨の宣言をするとともに、被控訴人らの請求を、いずれも認容した。

そこで、控訴人が控訴した。

2  前提事実、争点及びこれに対する当事者の主張は、以下のとおり原判決を付加訂正するほか、原判決の「第2 事案の概要」欄の1及び2に記載のとおりであるから、これを引用する。

3  原判決の付加訂正

(1)  原判決4頁3行目冒頭から同頁11行目末尾までを、次のとおり改める。

「本件土地とその東側に隣接する土地には、もともと、野入溜(のいりだめ)と総称される3つのため池(以下「野入溜」という。)及びその周辺の湿地があったが、これらのため池は、水路でつながっており、最も西側の上流に所在するため池から順に上池、中池、下池と呼ばれていた。

公社が作成した平成9年10月付け「大安二期工業団地造成事業計画書」における、土地利用計画図は、別紙図面1のとおりであり、野入溜の中池及び下池の全部を埋め立てて工場用地にするという計画になっていた(乙18)。なお、同計画書の土地利用計画によれば、総面積49.3ヘクタールのうち、工場用地29.7ヘクタール、駐車場8.8ヘクタール、緩衝緑地3.7ヘクタール等の構成となっていた。

ウ ところが、公社が作成した平成10年5月付け「大安二期工業団地造成事業事業計画書」においては、造成計画平面図は、別紙図面2のとおりであり、野入溜のうち埋め立てて工場用地とするのは、中池の約半分及び下池であり、中池の約半分と上池は、緑地とする計画に変更された(乙23)。なお、同計画書の土地利用計画によれば、総面積58.4ヘクタールのうち、工場用地37.5ヘクタール、緩衝緑地6.5ヘクタール、緑地10.0ヘクタール等の構成となっていた。

さらに、上記土地利用計画は、若干の変更を経て、平成11年7月ころまでに、原判決別紙図面2のとおりとなった(乙28)。同図面の青緑色着色部分(約10ヘクタール)が、計画区域内の「残存緑地」である。

エ その一方、旧大安町、b社その他関係機関において協議を重ねた結果、平成10年7月28日に、旧大安町、b社、公社及び三重県との間で、工場立地協定(乙2、25)が締結された。同協定で、公社がb社に譲渡する工場用地は、別紙図面3のとおりであり、野入溜については、中池の約半分及び下池がこれに含まれていた。」

(2)  原判決4頁20行目冒頭から同頁24行目末尾までを、次のとおり改める。

「 前記のとおり、本件土地とその東側に隣接する土地には、野入溜及びその周辺の湿地があったが、本件土地には、上池の全部と、中池の一部が含まれる。」

(3)  原判決10頁18行目末尾を改行のうえ、次のとおり付加する。

「(5) 控訴人の当審における主張について

控訴人は、当審において、原審における主張を変更し、乙18ないし36という膨大な証拠を提出しようとする。

特に、控訴人は、原審において、旧大安町、b社、公社及び三重県との間で平成10年7月28日に締結された工場立地協定においては、工場用地は、中池及び下池を含むと主張し(控訴人原審準備書面5、4頁)、それに沿う陳述書(乙1)を提出していた。しかし、控訴人が当審において提出しようとする証拠と対比すれば、これは、控訴人が、故意に虚偽の主張立証をしたものとしか考えられない。

したがって、控訴人の当審における主張の変更や、乙18ないし36は、時期に後れた攻撃防御方法として、却下すべきである。」

(4)  原判決10頁22行目冒頭から11頁7行目末尾までを、次のとおり改める。

「ア 旧大安町は、公社に対し、b社の工場用地の開発を目的として、本件開発事業の実施を依頼し、平成10年7月28日、b社、公社及び三重県との間で、公社が、野入溜のうち、中池の約半分及び下池の全部を含む面積約40ヘクタールの土地を工場用地として造成し、b社に譲渡することを内容とする工場立地協定を締結した。

イ Aは、平成9年以前に、野入溜に貴重な希少植物が生育していることを聞いていたが、平成10年2月7日、野入溜の自然保護にかかわっている関係者を集め話を聞いたところ、強い開発反対の意見が出され、特に、上池及び中池については、開発不可能との印象を持った。

そこで、旧大安町及び公社は、当初の計画を変更し、中池の一部及び下池の全部を埋め立てて工場用地とし、当該地域に生育している希少植物を中池の残りの部分と上池に移植して残存緑地とすることとした。

公社は、平成10年9月30日、三重県の「環境影響評価の実施に関する指導要綱」3条3項に従い、指定事業の規模を43.50ヘクタールから59.49ヘクタールに変更するについて、その理由を「湿性植物保全対策等の為計画地拡大」と通知している(乙26)。

さらに、旧大安町及び公社は、平成11年6月、本件開発事業に係る環境影響評価準備書に対し、三重県から、中池及び下池を含む緑地地域は、植生自然度の高い貴重な群落等も存在することから、可能な限り緑地の保全に努める必要があるなどの意見が出され、これを受けて、一部計画を変更した。」

(5)  原判決11頁8行目の「他方」を、「当初から」と改める。

(6)  原判決11頁11行目の「ならなかった」と「ところ」との間に、次のとおり加入する。

「(しかも、門前区は、従前から、約18.8ヘクタールの広さの野入溜に対し、入会権のような権利まで主張していた。)」

(7)  原判決11頁23行目の「を締結し」と「、そ」との間に、次のとおり加入する。

「(Aは、早くも平成10年3月ころ、開発区域のうち緑地部分の土地を、門前区に替え地として提供し、同時に、替え地の自然植生を残すことを意図して、門前自治会長に対し、10.0ヘクタールの替え地と年間1000万円での借地という提案をしている。)」

(8)  原判決14頁19行目末尾を改行のうえ、次のとおり付加する。

「 (4) Aに過失がないこと

Aは、年額1000万円の賃料を支払ってでも、本件土地の自然環境を保全することによって本件開発事業が成就することになれば、旧大安町に、その何十倍もの固定資産税や法人市民税の増収をもたらし、かつ、住民の雇用機会の増大に繋がることを確信して、本件賃貸借契約に至る合意をしたのである。

したがって、Aにとって、賃料の支出が損害に当たるなどと認識する余地は、皆無であった。Aに、過失はない。

(Z独自の主張)

野入溜は、もともとZ(あるいは門前区)の所有地であった。

したがって、Zは、野入溜の全部約18.8ヘクタールとその周辺の土地約5.7ヘクタールの合計約24.5ヘクタールの土地を所有していたところ、本件開発事業の結果、Zの所有地は、本件土地の10ヘクタールに減少した。

これに対し、門前自治会は、水利利用権の補償金として12億1206万2500円を受領したが、これば約18.8ヘクタールから約4.3ヘクタール(10ヘクタール-5.7ヘクタール=4.3ヘクタール)を除いた約14.5ヘクタール(18.8ヘクタール-4.3ヘクタール=14.5ヘクタール)について、1坪当たり2万7500円で評価した金額に相当する。しかし、この価格は、公社が個人地主から土地を買い上げた際の価格1坪当たり5万5000円の半額であって、極めて低額である。なお、旧大安町は、上記支払を水利利用権の補償金などと説明するが、門前区に対しては、野入溜に代わる水源を確保するというのであるから、上記支払は、水利利用権の補償金とみるのは困難であって、端的に土地の収用に対する対価とみるべきである。

その他、本件賃貸借契約の賃料も、b社が、本件土地の北側隣接地を賃借している賃料の3分の1であり、これも低額である。

以上を前提に、旧大安町との合意内容をみると、Zにとって、極めて不合理なものとなっている。」

第3  当裁判所の判断

1  当裁判所は、被控訴人らの請求はいずれも理由があるから認容すべきものと判断するものであるが、その理由は、以下のとおり、原判決を付加訂正するほかは、原判決「第3 当裁判所の判断」欄の1ないし5に記載のとおりであるから、これを引用する。

なお、被控訴人らは、控訴人の当審における主張や乙18ないし36は、時期に後れた攻撃防御方法に当たり、却下されるべきである旨主張する。

確かに、控訴人は、原審において、旧大安町、b社、公社及び三重県との間で平成10年7月28日に締結された工場立地協定においては、工場用地は、中池及び下池を含むと主張し、それに沿う陳述書(乙1)を提出するなどしているところ、乙25によれば、これが事実と異なることは明らかであり、しかも、控訴人が事実に基づく主張立証をすることに、格別の支障があったとも考え難い。そうすると、控訴人が、故意にこれらの主張立証をなしたのではないかが疑われるし、少なくとも、控訴人が誤った主張をしたことについて、重過失が認められるというべきである。

もっとも、裁判所は、時期に後れた攻撃防御方法が、訴訟の完結を遅延させると認めた時は、却下の決定をなし得るとされるところ、控訴人の当審における主張の変更や書証の提出によっても、新たな人証が必要となるなど、特に訴訟の完結を遅延させる事情は認められないというべきであるから、控訴人の当審における主張の変更や書証の提出を許すことが相当であると判断する。

2  原判決の付加訂正

(1)  原判決16頁13行目から15行目にかけての「証拠(甲3、5の①、②、7、8、9、17、19、20、22の①、②、24、26、乙1ないし10、12ないし16、証人D、被告本人)」を、次のとおり改める。「証拠(甲3、5の①、②、7、8、9、17、19、20、22の①、②、24、26、乙1ないし10、12ないし16、18ないし29、30の①、②、31、32、34、原審証人D、原審控訴人本人)」

(2)  原判決18頁5行目の「5.7ヘクタール」を、「5.7ヘクタールに相当する分の土地」と改める。

(3)  原判決21頁24行目の「必要があると求めた(乙7)。」を、次のとおり改める。

「必要があると求めた。また、「本工業団地の緑地面積は、計画区域全体の約34%となっているが、この地域は植生自然度の高い貴重な群落等も存在することから、可能な限り緑地の保全に努める必要がある。」ともした(乙7)。なお、緑地面積の比率に関しては、控訴人も、原審本人尋問において、「そして、工場の残存緑地、これも三十数パーセントは必ず必要です。」と供述している。」

(4)  原判決22頁1行目冒頭から同頁12行目末尾までを、次のとおり改める。

「イ 公社が作成した平成9年10月付け「大安二期工業団地造成事業計画書」の土地利用計画図は、別紙図面1のとおりであり、野入溜の中池及び下池の全部を埋め立てて工場用地にするという計画になっていたが、その後に作成された平成10年5月付け「大安二期工業団地造成事業事業計画書」における造成計画平面図は、別紙図面2のとおりであり、野入溜のうち埋め立てて工場用地とするのは、中池の約半分及び下池であり、中池の約半分と上池は、緑地とする計画に変更された。

そして、平成10年7月28日、旧大安町、b社、公社及び三重県との間で、工場立地協定(乙2、25)が締結された。同協定で、公社がb社に譲渡する工場用地は、別紙図面3のとおりであり、野入溜については、中池の約半分及び下池がこれに含まれていた。

さらに、前記土地利用計画は、若干の変更を経て、平成11年7月ころまでに、原判決別紙図面2のとおりとなった。

この時点において、本件土地は、上記のとおり、Z名義の土地の代替地等として門前区に提供されることが合意されていたが、旧大安町は、同町が同土地を借地とすることを前提に、残存緑地として、なお計画に含めていた。」

(5)  原判決24頁5行目冒頭から同頁6行目の「点について」までを、次のとおり改める。

「ア 本件賃貸借契約は本件土地を緑地として保全するためのものであるという点について」

(6)  原判決25頁1行目冒頭から26頁8行目冒頭の「エ」までを、次のとおり改める。

「確かに、証拠(乙19ないし22)及び弁論の全趣旨によれば、平成8年3月から7月にかけて東海淡水生物研究会のF博士(以下「F」という。)」による「三重県大安町両ヶ池、上池における湿地性の生物調査(植物を中心に)」が行われており、それによると、野入溜は「特筆すべき植物生息地」であることが指摘されていたこと、平成9年9月29日には、旧大安町町役場の応接室に、Fの他、植物の専門家であるGや当時三重県員弁郡土地開発公社が事業計画書に基づく環境影響評価書の作成を委託していた株式会社d(以下「d社」という。)の担当者が集まり、野入溜の調査についての協議がなされたが、そこでd社の調査が不十分なものであることが指摘されていたこと、そして、大安二期工業団地の造成計画については、なお環境面での調査が必要であることが指摘されていたこと等が認められ、これらに、前記「大安二期工業団地造成事業計画書」の内容の変更を併せ勘案すれば、Aにおいても、工場立地協定が締結された平成10年7月28日の時点においては、本件土地の開発については、自然保護の観点から問題があることは認識していたことが推認できる。

しかしながら、本件土地を工場用地として開発するには、自然保護の観点から問題があることを認識していることと、本件賃貸借契約が真に野入溜の自然保護のためになされたものであるかどうかとは、別の問題といわざるを得ず、本件賃貸借契約が真に野入溜の自然を保護するためになされたものであるか否かは、大安二期工業団地造成計画事業全体の内容との関係において検討しなければならない。そこで、その点についてさらに検討するに、そもそも、本件土地の自然保護という観点からすれば、旧大安町(その後はいなべ市)の所有であった本件土地を、他人に譲渡することなく、自らの所有地としたままでその自然環境の保護を図るのが最も妥当であり、自然であって、本件土地を、他人に譲渡することは、基本的に、本件土地の自然保護とは相反する行為といわざるを得ない。しかるに、控訴人は、本件土地を譲渡しても、それをいなべ市が本件賃貸借契約を締結して借り受けることによって、本件土地の自然を保護することは可能である旨主張し、そのために、本件賃貸借契約を締結したと主張する。そこで、さらに本件賃貸借契約によって本件土地の自然を保護することが可能なのかどうかについて検討するに、まず、根本的に、本件賃貸借契約には6年との期間が定められているが、それを経過すれば、Z(実質的には門前区)はいつでも賃貸借契約を解除することができ、その場合には、いなべ市は本件土地を整地して返還することとされているが、この契約書のとおりであるとすれば、6年後には、本件土地の自然保護はZの意向に全て委ねることになるところ、Z(門前区)は、A自身述べているように自然保護には全く関心がなく(乙15)、財産的な価値に注目してその取得を希望したものであることを勘案すれば(甲7)、この契約によって本件土地の自然が保護されるとは、到底認められない。なお、この「整地」について、Dは、原審証人尋問において、借りた時の状態を指すと証言するが、本件賃貸借契約の4条2項の文言が「甲(Z)からの解約申し出があった場合乙(いなべ市)は、整地後速やかに解約に応じるものとする。」とあることからすると、到底そのような趣旨には解されず、更地にすることを指すと解すべきである。」

(7)  原判決26頁21行目冒頭から27頁14行目末尾までを、削除する。

(8)  原判決27頁15行目冒頭の「これらの事情に加え」を、次のとおり改める。

「そして、前記のとおり、b社の希望する工場用地を確保し、本件開発事業を行うためには、Zが所有する土地を買収することが不可欠であったこと」

(9)  原判決28頁3行目の「単に」を、「自然保護のためというのは名目上のものに過ぎず、真実は」に改める。

(10)  原判決28頁8行目冒頭の「(4)」を、削除する。

(11)  原判決28頁20行目の「ということはできないのであるから、」を、次のとおり改める。

「ということはできない(b社からの税収等が、中長期的に継続することが期待できたとしても、無期限に継続するという保障はない。)のであるから、」

(12)  原判決29頁20行目の「したがって、」から同頁21行目末尾までを、次のとおり改める。

「この点、控訴人は、Aについて、年額1000万円の賃料を支払ってでも、本件土地の自然環境を保全することによって本件開発事業が成就することになれば、旧大安町に、その何十倍もの固定資産税や法人市民税の増収をもたらし、かつ、住民の雇用機会の増大に繋がることを確信して、本件賃貸借契約に至る合意をしたもので、賃料の支出が損害に当たるなどと認識する余地は、皆無であり、Aに過失はない旨主張する。しかし、年額1000万円の支払を、本来の賃料と認めることのできないことは、前記認定のとおりであり、前記事実からすれば、本件賃貸借契約の真の目的が本件土地の自然環境の保護のためでないことは、Aも当然認識していたものと認められるので、控訴人の主張は、採用することができない。Aは、本件賃貸借契約に基づき既に支出された部分について、いなべ市に生じた損害を賠償すべき責任を負う。」

(13)  原判決30頁6行目の「本件開発事業の実現は」から同頁7行目の「経済効果をもって、」までを、次のとおり改める。

「本件賃貸借契約は無効であるから、賃料は支払うべきではないところ、これを支払ったのであるから、それが損害に当たることは明らかであり、本件開発事業によって控訴人が主張する経済効果が上がったとしても、それをもって、」

(14)  原判決30頁8行目末尾を改行のうえ、次のとおり付加する。

「6 なお、補助参加人は、野入溜が、もともとZ(あるいは門前区)の所有地であったことを前提として、るる主張する。

しかし、前記認定のとおり、昭和8年5月15日付けの、桑名税務署長の当時の梅戸井村長に対する地目更正の通知文書によって、野入溜の所有権が、旧大安町に属することは確認されたのであり、Zも野入溜の所有権が旧大安町の所有であることを認めた上で、その後の種々の契約を行ったものであるから、Zの主張は、理由がなく、採用することができない。

7 被控訴人X2の死亡による訴訟終了宣言

被控訴人X2は、口頭弁論終結前の平成21年8月5日に死亡していることが記録上明らかであるので、同被控訴人の訴えは、その死亡により終了したことを宣言すべきである。」

第4  よって、原判決は相当であって、控訴人の本件控訴は理由がないから棄却することとし、被控訴人X2の請求に関する部分は、同被控訴人の死亡により終了したことを宣言して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 高田健一 裁判官 上杉英司 堀禎男)

別紙図面1<省略>

別紙図面2<省略>

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