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名古屋高等裁判所 平成22年(行コ)29号 判決 2011年4月15日

主文

1  控訴人らの控訴をいずれも棄却する。

2  控訴費用(補助参加によって生じた費用を含む。)は控訴人らの負担とする。

事実及び理由

第1控訴の趣旨

1  原判決を取り消す。

2  被控訴人は、Zに対し、5000万円及びこれに対する平成20年8月12日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払うよう請求せよ。

3  訴訟費用は、第1、2審とも被控訴人の負担とする。

第2事案の概要

1  本件は、御浜町等が出資し、いわゆる第三セクターとして設立されたパーク七里御浜株式会社(パーク七里御浜)の、御浜町に対する借受金債務の連帯保証人であるA及びBに対し、御浜町が合計6000万円の保証債務の履行等を求めた訴訟において、上記両名の連帯債務の額を1000万円とし、その余の債務を免除する旨の訴訟上の和解(本件和解)を成立させたことが、違法な財産の管理に当たるとして、御浜町の住民である1審原告ら181名が、御浜町の執行機関である被控訴人に対し、地方自治法242条の2第1項4号に基づき、本件和解当時の御浜町長である被控訴人補助参加人(Z)に対して5000万円及びこれに対する平成20年8月12日(Zが本件和解に係る議案を御浜町議会に提出しこれが可決された日の翌日)から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金を支払うよう請求することを求めた事案である。

2  原審は、1審原告らの請求を棄却し、これを不服とする1審原告ら全員が控訴し、その後18名が控訴を取り下げた。

3  その余の事案の概要は、当審における控訴人らの主張を次項に付加するほかは、原判決「事実及び理由」欄の第2の1及び2に記載のとおりであるから、これを次のとおり補正して引用する。

(1)  原判決3頁2行目冒頭から4行目の「あったところ、」までを以下のとおりに改める。

「パーク七里御浜は、昭和61年5月28日、御浜町立a中学校の跡地の有効利用を図ると共に、御浜町経済の活性化を目的として、御浜町や三重県等の出資によりいわゆる第三セクターとして設立された株式会社であり、同跡地において、ショッピングセンター・観光センター・レストラン・地域活性化センター等からなる複合施設「パーク七里御浜モール・ピネ」を運営している。

パーク七里御浜は、上記施設の開業当初から経営不振が続き、平成元年度から平成13年度まで、固定資産税を納期限から遅滞して納付する状況にあった。(甲14、弁論の全趣旨)」

(2)  同3頁9行目の「連帯保証した」の次に「(以下「本件連帯保証」という。)」を加える。

(3)  同3頁17行目から4頁2行目までを以下のとおりに改める。

「ア(株式の無償譲渡)

相手方(御浜町)は、申立人(パーク七里御浜)に対し、相手方所有のパーク七里御浜株式会社の株式を、平成18年6月9日限り、申立人に全額一括で無償譲渡する。

イ(債務の確認)

申立人は、相手方に対し、本日現在金9億7026万5400円の債務が存在することを確認する。

ウ(土地売買)

申立人は、南牟婁郡<以下省略>所在の宅地11353.79m2のうち2404.37m2(以下「本件土地」という。)を、申立人の単独所有として、同土地上の抵当権をすべて抹消して一切の負担なき土地としたうえで、平成18年7月末日限り、相手方に代金1億0286万円で売り渡すこととし、申立人から相手方への移転登記完了後、相手方は、申立人に代金を支払う。

エ(納税)

申立人は、相手方に対し、前項の土地代金の受領と同時に、申立人が相手方に納税義務を負う租税金9018万3000円を納付する。

オ(借受金債務の弁済)

申立人は、相手方に対し、イの債務の内金3017万7000円を次のとおり分割して、相手方指定のb銀行普通預金口座(口座番号<省略>)御浜町収入役名義)に振り込んで支払う。

a 平成18年6月16日限り、金500万円

b ウの土地代金の受領と同時に、金1267万7000円

c 平成18年9月末日限り、金1250万円

カ(賃貸借)

相手方は、申立人に対し、ウの売買契約終了後、本件土地を以下の条件で賃貸する。

a 使用目的 駐車場他

b 賃貸期間 平成19年3月末日まで

以後、毎年当初に契約を更新するものとする。

c 賃料 毎年度始めに当年度分を全額支払う。(但し、賃料は、その年の固定資産税評価額に100分の1.4を乗じた金額を年額とする。)

キ(債務の支払方法と免除)

相手方は、申立人に対し、エ及びオの支払が滞りなく履行されたときは、貸金残債務のうち金8億8008万8400円を、平成19年3月31日を以て免除する。

相手方は、申立人に対し、同貸金の連帯保証人である申立外A及び申立外Bに対する連帯保証債務の履行請求に関する手続きが完了した段階で、申立人に対するその余の債権(前項の免除後残債権6000万円から連帯保証人によって回収できた金額を控除した残額)を免除する。」

(4)  同4頁5行目の「被告として、」の次に「本件連帯保証にかかる債務の履行として、」を加え、7行目の「平成18年第21号」を「平成18年(ワ)第21号」に改める。

(5)  同4頁8行目から11行目までを以下のとおりに改める。

「さらに、Bの訴外C外4名に対する不動産贈与及び訴外D外3名に対する不動産贈与がいずれも詐害行為に当たるとして、B及び受贈者らを被告とする詐害行為取消請求訴訟(同支部平成18年(ワ)第22号、同第23号。以下それぞれ「22号訴訟」、「23号訴訟」ということがある。)を提起した。」

(6)  同4頁16行目の「和解を」を「後記内容の訴訟上の和解を」に、「承認された。」を「賛成多数で可決された。」にそれぞれ改める。

(7)  同4頁20行目の「御浜町に対し、」の次に「貸付金元金5億7200万円の連帯保証債務に関する解決金として、」を、23行目の「御浜町に対し、」の次に「貸付金元金3億7800万円の連帯保証債務に関する解決金として、」をそれぞれ加える。

4  当審における控訴人らの主張

(1)  和解の違法性の判断基準について

ア 原判決は、地方公共団体が紛争の一方当事者として行った和解の違法性の判断基準について、当該地方公共団体の長に与えられた裁量の範囲をあまりにも広範に捉えた点で失当である。

法律による行政の原理に基づき、地方公共団体の長の裁量は、法律の枠内で認められるにすぎない。したがって、関係法令の趣旨・目的に基づき、①和解の判断の基礎とされた重要な事実に誤認があること等により重要な事実の基礎を欠くことになる場合、又は、②事実に関する評価が明らかに合理性を欠くこと、③判断の過程において考慮すべき事情を考慮しないこと等によりその内容が社会通念に照らし著しく妥当性を欠く場合には、裁量の逸脱、濫用に該当し、違法となる。

イ 本件和解は、極めて高額の金銭債権の回収に関する紛争を対象とするものであるから、地方財政法2条1項、4条の2が地方公共団体の財政の健全な運営を求める趣旨からすれば、より多くの回収を行い、地方公共団体の財政を確保することが第一に求められる。

また、パーク七里御浜の事業には、およそ公益性・公共性がないのみならず、当初から極めて杜撰な経営計画の下に始められた事業であり、安易に税金を投入すべきでなかったにもかかわらず、9億5000万円もの融資をしたものであるから、より一層債権の回収を重視すべきであった。

さらに、和解の当事者であるA及びBに対する連帯保証債務の履行請求は、実質的には、もと御浜町長及びパーク七里御浜代表者としての責任追及の意味もあるものであったから、安易に免除すべきではなかった。

ウ しかるに、被控訴人は、十分な財産調査を行わず、また、より多くの金額の回収を重視せず、わずか1000万円の支払義務を履行すればその余を免除するという内容の和解を成立させたのであり、その内容が著しく妥当性を欠くことは明らかであるから、裁量の逸脱、濫用と評価すべきである。

(2)  裁量の逸脱、濫用に該当する特段の事情について

仮に、紛争の一方当事者である地方公共団体が訴訟上の和解をする際、当該地方公共団体の長に広範な裁量権が認められるとしても、本件和解には、以下のとおり、裁量の逸脱、濫用に当たる特段の事情がある。

ア A及びBの財産調査について

Zは、町長として和解を成立させるかどうかを判断する前提として、Aに対し、その財産状況について、預貯金の取引履歴を確認し、預貯金額が収入と比較して少ないときは、その使途等について説明を求め、裁判上も追及しなければならないのに、これを怠り、正確な財産状況を把握しないまま本件和解を成立させることを決断した。このように、和解をする際に本来考慮すべき事情を考慮していない点で、その判断は地方自治体の長の裁量権を逸脱している。

(ア) 預貯金額の調査について

Zは、Aの提出した資料を見て、預貯金額が少ないと感じたにもかかわらず、既に行った仮差押え以外の調査は必要ないと判断して、Aに対し、預貯金額が少ない理由について説明を求めていない。少なくとも、被控訴人が把握していた退職金及び年金の振込口座について取引履歴を開示させれば、預貯金額が少ない理由や、他の財産の有無が判明していたはずである。たとえAがそれに応じなかったとしても、その要求すらしていない以上、Zには財産調査を尽くす姿勢のなかったことが明らかである。

この点について、原判決は、地方自治体に、本人の同意なく個人の預貯金の取引履歴を調査する権限、方法はないとしているが、既に被控訴人とAの間で訴訟手続が係属している以上、Aが預貯金の取引履歴の任意開示を拒んだとしても、裁判所に対して調査嘱託の申立てや文書提出命令の申立てを行えば、預貯金の取引履歴を調査することができたはずである。

(イ) 選挙費用について

原判決は、Aが3回の選挙費用に6000万円が必要であったとの説明について、明らかに不合理とまではいえないとしたが、誤りである。

Aは、21号訴訟において提出した「和解について(2)」と題する書面(甲10)の記載内容に照らし、原判決の判示のように、法定選挙費用のみならず、選挙を含む政治活動全般に関する費用とは説明していない。仮に2期8年にわたる政治活動資金として6000万円を支出したと考えても人口約1万人の御浜町において、8年間で6000万円もの政治活動費用をかけたというのは多額といわざるを得ない。

この点についてZは、上記のようなAの不合理な説明を裏付けるような資料の提出を求めず、調査を尽くしていない。

(ウ) 年金について

Aは、毎月約35万円の年金を受給しているにもかかわらず、預貯金額が15万円しか存在しなかったことについて、上記「和解について(2)」と題する書面において、税金、社会保険料の支払や銀行への借入金返済があり、残った月額約21万円から生活費を支出しているため、年金額から預貯金額を増やすことはできないと説明し、原判決はこれが不合理なものとはいえないとしたが、この点についての説明と裏付けの提出を求めていない点で、財産調査を尽くそうという姿勢はうかがえない。

イ 債権回収に関する被控訴人の姿勢に関する評価の誤り

被控訴人は、Zが町長に就任した後、パーク七里御浜の問題についてのプロジェクトチームからEを外してチームを解散させ、訴訟準備能力を低下させ、財産調査を打ち切った。

(ア) 町長交代による姿勢の変化について

原判決は、FからZへの御浜町長事務引継書(乙1)に「今後については和解を前提に解決を図りたい」と記載されていることや、Fが21ないし23号訴訟等を委任したG弁護士外4名に、Zが引き続き委任していることを根拠に、被控訴人が、町長交代後、方針を転換したとは認められないとした。

しかしながら、Zは、Aについてはその全財産の開示が確実に履行されてからでなければ和解はできない、とのFの方針を変更し、Fが在任中に開示された財産以上の財産が新たに開示されることのないまま、本件和解を成立させた。そして、このように委任者の意向が変わった以上、代理人弁護士の変更はなくとも、代理人による受任事務の処理方針が変更されるのは明らかである。

(イ) パーク七里御浜の問題を担当するプロジェクトチームについて

原判決は、プロジェクトチームの存在自体を否定したが、誤りである。証人Hも、その存在を認める証言をしているし、被控訴人も、プロジェクトチームが御浜町課設置条例の組織上位置づけられておらず、いわば任意のものにすぎないとしながらも、I、E、Jの3名がFから口頭で命じられて訴訟準備に当たっていたことを認めている。

このようなプロジェクトチームは、条例上設けられた組織ではないが、特命を受けて特定の課題の対応に当たるものであり、条例上位置づけられていないことは何ら不自然ではない。しかも、本来企画振興課又は総務課が対応するパーク七里御浜問題や訴訟準備などについて、生活環境課や建設課に属していた職員に担当を命じた点に、Fが、パーク問題に精通した職員や不動産登記の実務に就いている職員体制でAらの責任追及に当たったことが現れている。

Zは、町長に就任した後、訴訟の進行中、しかもAらの財産状況の把握が問題となっているときに、従来Aらの財産状況の把握など訴訟準備に当たってきたプロジェクトチームからEを外すなどの処置を講ずることで、プロジェクトチームを解散させ、訴訟準備能力の低下を招き、不十分なままで財産調査を打ち切った。このことからも、FからZへの町長の交代に伴い、被控訴人の姿勢が変化したことは明らかであり、原判決がプロジェクトチームの存在そのものを否定したのは失当である。

(ウ) Aらによるパーク七里御浜に対する求償権の行使の可能性について、Zは、

a 本件和解成立時点において、連帯保証債務を履行した連帯保証人が主債務者に求償権を行使できることを認識しており、連帯保証人が主債務者に求償権を行使すれば、自己の財産を維持できるという認識もあったが、その点を和解額の増額を求めるという方向では考慮しなかったこと

b パーク七里御浜につき、経営の健全化が必要であると考えており、本件特定調停において御浜町が債権の一部を放棄したのもパーク七里御浜の健全な経営のためと判断していたこと

を認める供述をしている。そうすると、Zは、本件和解を成立させるにあたって、連帯保証人であるA及びBに多額の金額の支払を求めると、パーク七里御浜がA及びBから多額の求償権の行使を受け、その健全な経営が害されると判断したものと推認できる。他方、既に御浜町と資本関係等を持たない民間会社であるパーク七里御浜の健全な経営を考慮して、本件和解の成立を判断したことは、本来考慮に入れるべきでない事項を考慮に入れたことになるから、本件和解を成立させるという判断に、裁量判断の方法ないしその過程に誤りがあるものとして、違法となる。この点を看過した原判決は失当である。

第3当裁判所の判断

当裁判所も、控訴人らの請求はいずれも理由がなく、棄却すべきものと判断する。その理由は、次のとおり付加訂正するほか、原判決「事実及び理由」欄の第3に記載のとおりであるから、これを引用する。

1  原判決16頁3行目の「配偶者が」から同3、4行目の「代表取締役であったことなどから」までを「亡夫Kが、パーク七里御浜の設立当時の御浜町長であり、かつ、パーク七里御浜の代表取締役であったことなどから」に改める。

2  同16頁16行目の「更なる経営状態の悪化等から」を「ピネの開業当初から経営不振が続き、平成元年度から平成13年度まで、固定資産税を納期限から遅滞して納付するなどの状況にあり、御浜町から上記融資を受けた後も、経営状態は改善せず、」に改める。

3  同17頁12行目の「御浜町議会に対し、」の次に「「主たる債務者であるパーク七里御浜株式会社に対して、債務免除等を行ったにも関わらず、連帯保証人は借入当事者と同等であるとはいえ連帯保証人に対し債務履行を求めるというのは、住民を窮地に追い込むような行為です。町が、法的手続きだけを考え執行していくことは、住民の福祉の増進、また、町長の政治信条に反するものではないかと考えます。」、」を加え、13、14行目の「と記載された」を「等と記載された」に改める。

4  同24頁12行目の「多額の税金をつぎ込むこと」を「多額の税金をつぎ込んで9億5000万円もの融資をすること」に、16行目の「財産回収」を「債権回収」に、それぞれ改める。

5  同24頁24行目冒頭から25頁6行目の「理由はない。」までを以下のとおりに、6行目及び9行目の「財産回収」を「債権回収」に、それぞれ改める。

「 しかし、地方公共団体の長が議会の議決を経て行う和解の前記のような性質に照らすと、パーク七里御浜の事業に対する住民の評価によって、直ちに地方公共団体の長の有する裁量権の範囲自体が左右されるものとは解されない。また、Aに対する請求によって、元御浜町長としての同人の責任追及という効果が事実上期待できるとしても、御浜町が本件連帯保証に関し、Aに対する民事訴訟によって追及し得るのは、保証契約に基づく法律上の責任に尽きるのであるから、この点においても長の裁量権の範囲に消長をきたす余地はないというべきである。」

6  同26頁7行目の「Aとの関係おいても」を「Aとの関係においても」に改め、8行目の末尾に続けて以下のとおり加える。

「このことは、本件特定調停が、A及びBが当事者として関与することなく成立したものであり、その内容も、主債務者が借受金債務総額9億7026万5400円のうちの3017万7000円と、滞納税金9018万3000円を遅滞なく支払ったときは、借受金残債務のうち8億8008万8400円を免除し、さらにその残額6000万円については、A及びBに対する保証債務履行請求手続の完了後、両名から回収できた金額を超える部分を免除する、というものであり、A及びBからの債権回収については、最高6000万円と想定されていたが、必ずしもその全額を回収することは予定されていなかったことからも明らかといえる。」

7  同26頁11、12行目の「認められない。」を「認められず、Fの下で上記訴訟を追行してきた上記弁護士らと相談の上、本件和解成立に至ったものであり、同弁護士らは、町長の交代の前後を通じて、単にその指示や意向に沿うだけではなく、弁護士としての専門的な知識・経験等に基づき、依頼者の正当な利益を実現して迅速かつ確実に債権回収を図るため、適正妥当と考えられる法的措置を選択し、Aの財産調査の方法や程度についても、当時の具体的な状況の変化に応じて対応し、助言していたものと認められるから、この点についての控訴人らの主張も採用できない。」に改める。

8  同26頁24行目の「上記に認定したところによれば、」を「また、前記のとおり、平成18年7月に21ないし23号訴訟が提起され、同年10月にZが御浜町長に就任し、平成19年3月には、同訴訟において、A及びBが各財産を明らかにして速やかに和解案を提示する意向を明らかにしていたのであるから、このような状況の下で、それまで他の事務と並行して訴訟準備に当たっていたIの同年4月の異動等により、従前の事実上の体制に変化が生じたとしても、それをもって、」に改める。

9  同28頁4行目の末尾に続けて、以下のとおり加える。「また、控訴人らは、21号訴訟において、調査嘱託や文書提出命令の申立て等により、Aの財産の調査を行うべきであったとも主張するけれども、同訴訟において御浜町が立証責任を負う事項とは無関係に、和解の前提としてこれらの申立てが当然に採用されることを前提とする控訴人らの上記主張は採用できない。」

10  同28頁20行目の次に改行の上、以下のとおり加える。

「 この点について控訴人らは、上記説明の不合理性を指摘するけれども、前記のとおり、訴訟上の和解は、当該紛争の経緯や内容、両当事者や関係者の利害状況、紛争解決の経済性等諸般の事情を総合考慮した上で、互譲により成立に至るべきものであって、相手方の資力はその一事情にすぎない以上、資力に関する相手方の説明が明らかに不合理とはいえないことや、更なる調査に要する時間や費用、調査によってもたらされる効果などを総合考慮の上、受訴裁判所の勧告や、代理人弁護士の意見をふまえて本件和解を成立させたことをもって、調査を尽くす姿勢に欠けるものと評価することはできず、控訴人らの上記主張は採用できない。」

第4結論

よって、原判決は相当であり、本件控訴は理由がないから棄却することとし、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 中村直文 裁判官 福井美枝 下嶋崇)

(別紙)控訴人目録<省略>

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