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名古屋高等裁判所 平成22年(行コ)7号 判決 2011年5月26日

主文

1  本件控訴をいずれも棄却する。

2  控訴費用は控訴人らの負担とする。

事実及び理由

第1当事者の求めた裁判

1  控訴人ら

(1)  原判決を取り消す。

(2)  処分行政庁が控訴人Aに対し平成18年11月21日付けでした平成17年1月1日から同年12月31日までの課税期間分の消費税及び地方消費税38万5700円のうち36万円についての納税の猶予の不許可処分を取り消す。

(3)  処分行政庁が控訴人Bに対し平成18年11月21日付けでした平成17年分の所得税10万1500円並びに平成17年1月1日から同年12月31日までの課税期間分の消費税及び地方消費税13万6700円についての納税の猶予の不許可処分を取り消す。

(4)  処分行政庁が控訴人Cに対し平成18年11月21日付けでした平成17年1月1日から同年12月31日までの課税期間分の消費税及び地方消費税41万5100円のうち37万3590円についての納税の猶予の不許可処分を取り消す。

(5)  処分行政庁が控訴人Dに対し平成18年11月21日付けでした平成17年分の所得税7万7800円並びに平成17年1月1日から同年12月31日までの課税期間分の消費税及び地方消費税20万6800円の合計28万4600円のうち27万6000円についての納税の猶予の不許可処分を取り消す。

(6)  訴訟費用は第1,2審とも被控訴人の負担とする。

2  被控訴人

主文同旨

第2事案の概要(以下,略称は,原則として原判決の表記に従い,原判決の該当箇所を適宜示す。)

1(1)  本件は,控訴人らがそれぞれ処分行政庁に対し,平成17年分の所得税並びに平成17年1月1日から同年12月31日までの課税期間分の消費税及び地方消費税(ただし控訴人A及び同Cについては消費税及び地方消費税のみ)について,通則法(原判決3頁9行目)46条2項に基づき,納税の猶予の申請をしたところ,処分行政庁が各申請を不許可とする処分をしたことから,その取消しを求めた事案である。

(2)  原判決は,猶予取扱要領(原判決3頁24行目)第2章第1節1(3)ニ(イ)が,通則法46条2項4号にいう「事業につき著しい損失を受けた」とは,納税の猶予の始期の前日の前1年間(調査期間〔同3頁26行目〕)の損益計算において,調査期間の直前1年間である基準期間(同4頁1行目)の利益金額の2分の1を超えて損失が生じていると認められる場合をいうものと定めていることは合理性を有する旨,同項5号の該当事実の判断について,同要領第2章第1節1(3)ヘが,同号該当事実のうち同項3号又は4号該当事実に類する事実,すなわち,「事業の休廃止又は事業上の著しい損失に類する事実」として各事実(同18頁13行目から20行目まで)を掲げていることには合理性を有する旨,控訴人Aについて同項4号及び5号(4号類似)に該当する事実は認められない旨,同Bについて同項5号(4号類似)に該当する事実は認められず,同項2号に該当する事実があるとの主張は失当である旨,同C及び同Dについてはいずれも同項5号(4号類似)に該当する事実は認められない旨判示し,控訴人らの請求をいずれも棄却したところ,控訴人らがこれを不服として控訴した。

2  関係法令等,争いのない事実,争点及びこれに関する当事者の主張は,後記3のとおり当審における控訴人らの主張(原審における主張を敷衍する部分を含む。)を付加するほかは,原判決「事実及び理由」欄の「第2 事案の概要」の1ないし3に記載のとおりであるから,これを引用する。

3  当審における控訴人らの主張

(1)  通則法46条2項4号該当性について

原判決は,猶予取扱要領第2章第1節(以下「本件要領」ともいう。)1(3)ニ(イ)が,通則法46条2項4号にいう「事業につき著しい損失を受けた」とは,調査期間の損益計算において,調査期間の直前1年間である基準期間の利益金額の2分の1を超えて損失が生じていると認められる場合をいうものと定めていることに合理性があるとしている。

しかし,上記解釈によれば,損益計算が赤字の場合で,前年利益額の2分の1を超えて赤字が生じた場合にのみ上記条項が適用されることになるが,それでは国税の税収のうち6割を占める所得税及び法人税について同条項が全く機能しなくなり不合理であること,国民の生活実態を無視している上,損益計算が赤字ではない場合にも納税の猶予の申請が許可されているという運用実態(甲全6の1ないし3,甲全9の1ないし4の事例)に沿っていないこと,猶予該当事案に基づく支出又は損失を指す猶予該当資金(猶予取扱要領第2章第1節2(1)第1文〔甲AないしDの各1〕)の共通事項として,猶予該当事実があったことにより,事業の全部又は一部の休廃止を余儀なくされた場合には「当該休止に伴い減少したと認められる利益の額」に相当する金額を猶予該当資金として差し支えないとされているところ(同2(2)イ(ロ)),一定の利益が発生する場合にも納税の猶予を認めているから,赤字を前提とする解釈とは矛盾すること,これらから,上記解釈は誤っている。

通則法基本通達において,同法46条1項の「相当な損失」の意味について,「災害による損失の額が納税者の全積極財産の価額に占める割合がおおむね20%以上の場合」をいうとされているところ(同通達46条関係第1項の2〔甲全8〕),この場合の「損失」は赤字ではなく財産の減少を意味していることなどから,同条2項4号の「損失」は,利益の減少と解釈すべきである。そして,特前所得(原判決11頁26行目。事業専従者給与控除額及び青色申告特別控除額を控除する前の所得金額をいう。)から総務省統計局の家計調査年報による1世帯当たりの実支出額(平成16年では499万0788円,平成17年では495万5136円)を控除した金額が,損益計算における「利益金額」というべきである。

(2)  通則法46条2項5号該当性について

原判決は,通則法46条2項5号(3号及び4号類似)の運用指針として設けられている猶予取扱要領第2章第1節1(3)ヘの「事業の休廃止又は事業上の著しい損失」について,「売上の減少」とは単に従前に比べて売上が減少したというだけでは足りず,事業の休廃止若しくは事業上の著しい損失があったのと同視できるか又はこれに準ずるような重大な売上の減少があったことをいうと解釈し,調査期間及び基準期間という期間設定方法が売上の減少を判断する上で適切なものとしている。

しかし,同要領が売上減少の判断対象とする期間について,同項4号該当事実の判断と異なり,調査期間及び基準期間という2年間の期間設定を明示せず,わざわざ「従前に比べて」という幅を持たせた表現を用いて,納税者の個別的,具体的実情に即応した配慮をしていることから,上記解釈は誤っている。

そして,同項4号該当事実についての「損失」は,前記(1)のとおり利益の減少と解釈すべきところ,同項5号該当事実は,これに類する事実であれば足りることになる。かかる解釈に従って検討すると,控訴人らは,いずれも同項5号(4号類似)に該当することは明らかである。

(3)  個別事情について

ア 控訴人A及び同Dについて

前記(1)のとおり,特前所得から実支出額を差し引いた金額を損益計算の結果としての利益金額とみると,控訴人Aについては,調査期間の損益計算において,基準期間の利益金額の2分の1を超えて損失が生じているときに該当するし(平成16年の特前所得が511万6000円,同実支出額が499万0788円,同損益計算の結果が12万5212円であるのに対し,平成17年特前所得が461万6560円,実支出額が495万5136円,損益計算の結果が-33万8576円となる。),控訴人Dについては,基準期間において損失が生じている場合には,調査期間の損失金額が基準期間の損失金額を超えているときに該当する(平成16年の特前所得が393万9527円,同実支出額が499万0788円で,損益計算の結果が-105万1261円であるのに対し,平成17年の特前所得が315万6853円,実支出額が495万5136円,損益計算の結果が-179万8283円となる。)。したがって,少なくとも控訴人A及び同Dが同項4号に該当することは明らかである。

イ 控訴人Bについて

被控訴人は,処分行政庁が控訴人Bに資料の提出を求めていたのに同控訴人が限られた資料を提出したにすぎないし,控訴人Bの兄の病気等の個別事情は処分行政庁が処分時に知り得ないとしている。しかし,控訴人Bは処分行政庁から具体的な資料の提出を求められたことはないし,同人の兄の病気についても,処分行政庁が十分に調査すればその実情を知ることができた内容である。

第3当裁判所の判断

1  当裁判所も,原判決と同じく,控訴人らの請求はいずれも理由がないと判断する。その理由は,次項のとおり当審における控訴人らの主張に対する判断を付加するほかは,原判決「事実及び理由」欄の「第3 当裁判所の判断」1及び2に記載のとおりであるから,これを引用する。

2  当審における控訴人らの主張に対する判断

(1)  通則法46条2項4号該当の有無について

ア 猶予取扱要領第2章第1節1(3)ニ(イ)は,通則法46条2項4号にいう「事業につき著しい損失を受けた」とは,調査期間の損益計算において,調査期間の直前1年間である基準期間の利益金額の2分の1を超えて損失が生じていると認められる場合(基準期間において損失が生じている場合には,調査期間の損失金額が基準期間の損失金額を超えているとき。)をいう旨定めており,納税の猶予の制度が納税者に対する例外的な救済措置であることや,同項4号が単なる損失ではなく「著しい損失」と限定していることなどから,猶予取扱要領が上記のような数値的基準をもって同項4号該当性を判断するとしていることは合理性を有する(原判決17頁のア)。

イ 控訴人らの主張(前記第2の3(1))に対する判断

(ア) 控訴人らは,上記解釈について,国税の税収のうち6割を占める所得税及び法人税について通則法46条2項4号が全く機能しなくなり不自然である旨主張する。

しかし,同項各号は,国税一般についての納税の猶予の要件等を定めており,そのうち4号の規定が所得税及び法人税について適用の余地がないからといって,そのこと自体が不当なものとはいえない。すなわち,通則法46条2項が,納税者がその財産につき,震災,風水害,落雷,火災その他の災害を受け,又は盗難にかかったこと(同項1号),納税者又はその者と生計を一にする親族が病気にかかり,又は負傷したこと(同項2号),納税者がその事業を廃止し,又は休止したこと(同項3号),と並んで,納税者がその事業につき著しい損失を受けたこと(同項4号)を定め,これらの一に該当する事実がある場合において,その他の所定の要件をも充足するときは,1年以内の期間を限り,その納税を猶予することができると定めているのであるから,上記4号の「事業につき著しい損失を受けた」ことの意義は,他の各号に匹敵するような事情がある場合と解されるのであり,このこととその規定文言からすれば,上記4号の意義について定めた本件要領1(3)ニ(イ)の「調査期間の損益計算において・・基準期間の利益金額の2分の1を超えて損失を生じている」とは,調査期間の損益計算の結果,損失が生ずる場合を前提にしていると解されるのであり,そのため,所得税や法人税の支払義務が生じない場合は,支払猶予という事態も生ぜず,本件要領1(3)ニ(イ)もおよそ適用がなくなるが,そのことが不合理とはいえないのである。よって,この点についての控訴人らの主張は採用できない。

(イ) 控訴人らは,上記解釈について,国民の生活実態を無視している上,損益計算が赤字ではない場合にも納税の猶予の申請が許可されているという運用実態(甲全6の1ないし3,甲全9の1ないし4の事例)に沿っていない旨主張する。

しかし,上記解釈が国民の生活実態を無視した解釈であるとはいえないし,控訴人ら主張の事例は,暦年(1月1日から12月31日まで)の所得の合計金額を比較する方法により猶予該当事実の有無を判断しようとしており,猶予取扱要領が定める調査日(納税の猶予の始期の前日)を基準とする判定の方法(調査期間と基準期間の損益計算における利益や損失に基づく判定方法)ではない上,上記事例の詳細は不明であり,かつ,そのことにより控訴人の主張が認容されるべきとまでの規定等も存在しないし,さらに同事例について納税の猶予が認められたことと上記解釈とが矛盾しているとまでは認められず,仮に矛盾していると想定しても,その一事で上記解釈が誤りであって上記事例が正しいとも断定できないから,この点についての控訴人らの主張は結局採用には至らないというべきである。

(ウ) 控訴人らは,猶予該当事実があったことにより,事業の全部又は一部の休止を余儀なくされた場合に「当該休止に伴い減少したと認められる利益の額」に相当する金額を猶予該当資金として差し支えないとの猶予取扱要領の規定(本件要領2(2)イ(ロ)〔甲AないしDの各1〕)が存するから,一定の利益が発生する場合にも納税の猶予を認めていると解釈すべき旨主張する。

しかし,上記規定中の「利益」の意味は,通則法46条2項4号該当の有無との関係について言えば,基準期間についての「利益」を意味すると考えられるから,「著しい損失」の意義を具体化した本件要領1(3)ニ(イ)について,基準期間の利益金額の2分の1を超えて調査期間に損失が発生した場合との解釈,すなわち調査期間に損失が発生していることを前提とする解釈と矛盾することはなく,この点についての控訴人らの主張は採用できない。

(エ) 控訴人らは,通則法46条1項の「相当な損失」の意味について,「災害による損失の額が納税者の全積極財産の価額に占める割合がおおむね20%以上の場合」を言うとされているところ(通則法基本通達。甲全8),この場合の「損失」は赤字ではなく財産の減少を意味しており,同条2項4号の「損失」も利益の減少と解釈すべきである旨,この場合の「利益金額」は特前所得から家計調査年報による実支出額を控除した金額である旨主張する。

しかし,同条1項は「納税者がその財産につき相当な損失を受けた場合」と規定しており,同条2項4号の「納税者がその事業につき著しい損失を受けたこと」とは,その文言や意味内容が明らかに異なっているから,同条2項4号の「損失」を利益の減少とか,特前所得から家計調査年報による実支出額を控除した金額ということはできず,他にそのように考える根拠はないから,この点についての控訴人らの主張は採用できない。

(2)  通則法46条2項5号該当の有無について

ア 猶予取扱要領第2章第1節1(3)ヘ(本件要領1(3)ヘ)は,通則法46条2項5号(3号又は4号類似)の「事業の休廃止又は事業上の著しい損失に類する事実」とは,「おおむね次に掲げる事実をいう」として,同ヘに(イ)ないし(ニ)の各事実を掲げており,同ヘ(ロ)及び(ハ)には納税者が売上の減少等の影響を受けたことが掲げられているところ,本件要領1(3)ヘは,同法46条2項5号の意義についての解釈指針を定めた個別通達であるから,事業の休廃止(同項3号)若しくは事業上の著しい損失(同項4号)があったのと同視できるか又はこれに準ずるような売上の減少があったことは当然の前提であると解され,また売上の減少については一定の期間を設けて判断せざるを得ないところ,本件要領1(3)ニ(イ)が同法46条2項4号の定義を定める中で期間を設けているから,上記の売上の減少の有無の判断においても,本件要領1(3)ニ(イ)にある調査期間及び基準期間という期間設定の方法を用いるべきである(原判決18頁から19頁までの(イ))。

イ 控訴人らの主張(前記第2の3(2))に対する判断

(ア) 控訴人らは,売上減少の判断対象とする期間について,通則法46条2項4号該当の有無の場合とは異なり,調査期間及び基準期間という期間設定が猶予取扱要領に明示されていないから,このような期間設定をすることは誤っている旨主張する。

しかし,納税者間の公平を考慮すると,恣意的な期間設定をするのは相当ではなく,本件要領1(3)ニ(イ)の調査期間及び基準期間の設定をすることが相当というべきであり,この点についての控訴人らの主張は採用できない。

(イ) 控訴人らは,通則法46条2項4号該当事実についての「損失」は利益の減少と解釈すべきであるから,同項5号該当事実もこれに類する事実であれば足りる旨主張する。

しかし,同法4号該当事実についての「損失」が利益の減少と解釈できないことは前記説示のとおりであるから,この点についての控訴人らの主張は採用できない。

(3)  控訴人ら各自についての検討

ア 控訴人Aについて

控訴人らについて本件で検討すべき調査期間は平成17年4月1日から平成18年3月31日までと解される(原判決19頁から20頁までの2の冒頭部分)ので,それを前提に検討する。

(ア) 控訴人Aは,その平成17年の特前所得を461万6560円と主張しているところ,仮にこれを調査期間(平成17年4月1日から平成18年3月31日まで)におけるものとしても,損失は発生していないのであるから,調査期間における損失として赤字の発生を要件とする通則法46条2項4号に該当する事実は認められない(原判決20頁のア)。

また,控訴人Aの主張を前提としても,平成17年売上金額(2074万1550円)は平成16年のそれ(2450万7340円)に比較して約15.4%減少したにとどまるし,調査期間の売上金額(2102万9560円)はその前1年間(2356万2200円)に比較して約10.7%の減少にとどまるから,このことを前記(2)ア及び(1)イ(ウ)に当てはめると,事業の休廃止若しくは事業上の著しい損失があったのと同視できるか又はこれに準ずるような重大な売上の減少があったということはできず,同項5号(4号類似)に該当する事実は認められない(同20頁から21頁までの(1)イ)。

(イ) 当審における主張(前記第2の3(3)ア)に対する判断

控訴人Aは,特前所得から実支出額を差し引いた金額を損益計算の結果としての利益金額とみると,調査期間の損益計算において,基準期間の利益金額の2分の1を超えて損失が生じているときに該当する旨主張するが,前記2(1)イ(エ)のとおり,このような解釈を採用する根拠はないから,この点についての控訴人Aの主張は採用できない。

イ 控訴人Bについて

(ア) 控訴人Bの主張を前提としても,その平成17年の売上金額(1036万6629円)は平成16年のそれ(831万1618円)に比較して増加しているし,調査期間の売上金額(957万1493円)もその前1年間(818万5170円)と比較して増加しており,これによれば,通則法46条2項5号(4号類似)に該当する事実は認められない(原判決21頁のア)。

(イ) 当審における主張(前記第2の3(3)イ)に対する判断

控訴人Bは,兄の病気等の事情を処分行政庁が十分に調査すればその実情を知ることができた旨主張する。

しかし,控訴人Bが処分行政庁に対し,通則法46条2項2号又は同号類似により同項5号に該当する旨主張した事実は認められないし,税務署長等が猶予該当事実を職権で調査すべき義務を負うものではないから,この点についての控訴人Bの主張は採用できない。

ウ 控訴人Cについて

控訴人Cの主張を前提としても,平成17年の売上金額(2180万0024円)は平成16年のそれ(2004万6038円)に比較して増加しているし,調査期間の売上金額(2160万9756円)もその前1年間(2098万8725円)と比較して増加しているから,これによれば,通則法46条2項5号(4号類似)に該当する事実は認められない(原判決22頁の(3))。

エ 控訴人Dについて

(ア) 控訴人Dの主張を前提としても,平成17年の売上金額(2544万6967円)は平成16年のそれ(2571万6813円)に比較して約1.0%減少したにとどまるし,調査期間の売上金額(2424万3320円)はその前1年間(2482万7818円)に比較して約2.4%の減少にとどまるから,これによれば,通則法46条2項5号(4号類似)に該当する事実は認められない(原判決23頁の(4))。

(イ) 当審における主張(前記第2の3(3)ア)に対する判断

控訴人Dは,特前所得から実支出額を差し引いた金額を損益計算の結果としての利益金額とみると,調査期間の損益計算において,基準期間の利益金額の2分の1を超えて損失が生じているときに該当する旨主張するが,前記2(1)イ(エ)のとおり,このような解釈を採用する根拠はないから,この点についての控訴人Dの主張は採用できない。

第4結論

以上によれば,控訴人らの請求はいずれも理由がないから棄却すべきであり,これと同旨の原判決は相当であるから,本件控訴をいずれも棄却することとし,主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 岡光民雄 裁判官 片田信宏)

裁判官光吉恵子は,転補のため署名押印することができない。裁判長裁判官 岡光民雄

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