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名古屋高等裁判所 平成24年(ネ)1010号 判決 2012年11月27日

主文

1  本件控訴を棄却する。

2  控訴費用は控訴人の負担とする。

事実及び理由

第1控訴の趣旨

1  原判決を取り消す。

2  被控訴人の名古屋地方裁判所平成23年(フ)第55号破産事件において,破産債権者表に記載された控訴人の破産債権による債務名義につき,名古屋地方裁判所書記官は控訴人に強制執行のための執行文を付与すべきことを命じる。

3  訴訟費用は,第1,2審とも被控訴人の負担とする。

第2事案の概要

1  本件は,被控訴人が破産して免責許可決定が確定した後,被控訴人に対して破産債権(以下「本件破産債権」という。)を有していた控訴人が,被控訴人に対し,本件破産債権は破産法253条1項2号の非免責債権であると主張して,破産債権者表に記載された本件破産債権による債務名義について,執行文を付与することを求めた事案である。

原審は,本件訴えを執行文付与の訴えとしては適法なものと認めることはできないとして,本件訴えを不適法却下した。

2  その余の事案の概要は,原判決1頁25行目の「被告の破産事件(」の次に「平成23年(フ)第55号。」を加え,次項に当審における控訴人の主張を付加するほかは,原判決「事実及び理由」欄第2の1及び2記載のとおりであるから,これを引用する。

3  当審における控訴人の主張

免責許可決定確定後の破産債権者表に執行文を付与することが不可能であり,かつ給付訴訟を提起して新たに債務名義を得る以外に強制執行を行う方法がないというのは,破産法221条の規定の趣旨から疑問であり(なお,控訴状兼控訴理由書には破産法211条と記載されているが,同法221条の誤記と認める。),非免責債権に該当するか否かを慎重に判断するためには,民事執行法33条の準用ないし類推適用が認められるべきである。

第3当裁判所の判断

1  当裁判所も,本件訴えは不適法であるから,却下すべきものと判断する。その理由は,以下のとおり補正し,次項に当審における控訴人の主張に対する判断を付加するほかは,原判決「事実及び理由」欄第3記載のとおりであるから,これを引用する。

(1)  原判決4頁14行目の「同条が」から15行目の「解されない。」までを「本件のような場合には,民事執行法26条1項によって執行文が付与されるか,あるいは控訴人が被控訴人に対して本件破産債権の給付訴訟を提起することによって本件破産債権に基づく強制執行を実現することが可能であるから,上記のように解したとしても憲法32条に違反するものではない。」に改める。

(2)  同4頁20行目冒頭から24行目末尾までを削除する。

2  当審における控訴人の主張に対する判断

控訴人は,免責許可決定確定後の破産債権者表に執行文を付与することは不可能であるとして,これが確定的なものであるかのように主張する。しかし,控訴人は,本件破産債権について破産記録を保管している裁判所に民事執行法26条1項に基づく執行文付与の申立書類を提出しようとしたが,担当者の示唆により,これを提出しなかったものであるから,同条項に基づく執行文の付与が不可能であることが確定的なものであるとはいえない。

また,控訴人は,給付訴訟を提起して新たに債務名義を得る以外に強制執行を行う方法がないというのは破産法221条の規定の趣旨から疑問である旨主張する。しかし,本件においては,破産者に対する免責許可決定が確定しているという事情があるから,控訴人が給付訴訟を提起せざるを得ないとしても,必ずしも同条の趣旨に反するとはいえない。

さらに,非免責債権に該当するかどうかを慎重に判断するという実質論を理由に執行文付与の訴えが許されるということができないのは,既に判示したとおりである(原判決引用部分)。

したがって,控訴人の主張は採用できない。

なお,控訴人は,当裁判所に対し,破産法221条1項による強制執行について,執行文の付与を,民事執行法26条で行うべきか,同法33条で行うべきか,あるいは給付訴訟を提起すべきかの判断を求めているが,上述のとおり,当裁判所は,本件訴えは同法33条1項の執行文付与の訴えとしては適法なものと認めることはできないと判断するものであり,本件訴えに対する判断としてはこれをもって足りるものである。当裁判所が控訴人の求めるその余の点について判断しても,同判断は,同法26条に基づいて執行文の付与を申し立てられた裁判所書記官や,給付訴訟を提起された裁判所を拘束するものではないから,これに対する判断は示さない。

第4結論

よって,原判決は相当であるから,本件控訴を棄却することとして,主文のとおり判決する。

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