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名古屋高等裁判所 平成24年(ネ)771号 判決 2012年12月21日

主文

1  原判決を次のとおり変更する。

2  被控訴人は,控訴人に対し,100万円及びこれに対する平成22年7月30日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。

3  控訴人のその余の請求を棄却する。

4  訴訟費用は第1,2審を通じてこれを5分し,その1を被控訴人の負担とし,その余は控訴人の負担とする。

事実及び理由

第1当事者の求めた裁判

1  控訴人

(1)  原判決を取り消す。

(2)  被控訴人は,控訴人に対し,541万8000円及びこれに対する平成22年7月30日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。

(3)  訴訟費用は第1,2審とも被控訴人の負担とする。

2  被控訴人

(1)  本件控訴を棄却する。

(2)  控訴費用は控訴人の負担とする。

第2事案の概要

1  本件は,控訴人が,被控訴人に対し,被控訴人が控訴人を誹謗中傷する内容の記事(本件記事)をブログに掲載したと主張して,不法行為に基づく損害賠償として,541万8000円及びこれに対する不法行為後の日であり訴状送達の日の翌日である平成22年7月30日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めた事案である。

2  原審は,本件記事は,公共の利害に関する事実についてのもので,専ら公益を図る目的で掲載され,かつ,その内容も真実に基づくものであったとして,控訴人の請求を棄却した。そこで,これを不服とする控訴人(1審原告)が本件控訴に及んだ。

3  本件の前提となる事実(争いのない事実),争点及び争点に関する当事者の主張は,原判決2頁14行目冒頭から同頁23行目末尾までを次のとおり改めるほかは,原判決「第2 事案の概要」の1,2に記載のとおりであるから,これを引用する。

「(3) 被控訴人のブログ記事

被控訴人は,同日(平成19年7月5日),自身の管理するブログに,本判決別紙本件記事記載のとおり,「A商店最期の日」と題した記事(以下「本件記事」という。)を掲載した。本件記事の中には,「当マンションの隣の空き地になんの事前報告も無しに突如産業廃棄物(建設残土)臨時保管所が設営された。」(以下「本件表現①」という。),「作業中は舞い散る粉じんによって窓は開けられない,そのけたたましい重機の騒音によってテレビの音も聞き取れない,粉じんで汚れる窓やバルコニー,隣接するマンション駐車場の車は砂だらけ。」(以下「本件表現②」という。),「苦情を伝え改善対策をお願いするも誠意ある対応は一切なし。」(以下「本件表現③」という。)との記述がある。」

第3当裁判所の判断

1  当裁判所は,被控訴人に対して100万円の損害賠償と,これに対する不法行為後の日である平成22年7月30日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を命じる限度で控訴人の請求を認容し,その余の請求を棄却すべきものと判断するが,その理由は,以下のとおりである。

(1)  争点(1)(本件記事が控訴人の社会的評価を低下させるものであったといえるか。)について

当裁判所も,本件記事は控訴人の社会的評価を低下させるものであると判断するが,その理由は,原判決「第3 争点についての判断」の1に記載のとおりであるから,これを引用する。

(2)  争点(2)(本件記事の内容が公共の利害に関する事実についてのもので,かつ,掲載の目的が専ら公益を図ることにあったといえるか。)及び争点

(3)  (本件記事の内容が真実に基づくものといえるか。)について

ア 証拠(甲1,6)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。

本件記事が掲載されたブログは,被控訴人が平成18年ころに趣味の写真の発表の場として始めたものであり,平成19年ころから他の話題を掲載するようになったが,政治や経済などの時事問題に関する記事を載せることはあったものの,被控訴人が自分の身の回りに起きた日々の出来事などについてエッセイや日記,事実などを記録する,私的なウェブサイトである。

被控訴人自身は匿名で上記ブログを管理している上,被控訴人が本件土地に関しての控訴人との紛争について掲載したのは本件記事のみで,本件記事以外にその経過等について掲載したことはなかった。

また,本件記事は,控訴人については実名を挙げている上,タイトルに「最期の日」など控訴人を揶揄する表現を用いたものであり,後述(エ(ウ))するように「舞い散る粉じん」,「けたたましい重機の騒音」といった誇張した表現を用いてもいる。

イ 被控訴人は,本件マンションの管理組合代表及び対策委員長として公害問題解決のため奔走してきた者であるところ,本件記事は,紛争の経緯と結果を報告することで同様の紛争が起きないよう警戒を呼びかけるとともに,同様の立場の一般市民の参考になればという意図で掲載したものである,すなわち,被控訴人は公害問題の被害経験者として,不特定多数の閲覧者のうち,現にあるいは将来,公害・環境問題の被害者となった者の利益を図るという公益目的で本件記事を掲載した旨主張し,被控訴人の供述(乙11,被控訴人本人)中にはこれに沿う部分もある。

しかし,上記アに認定した事実のごとく,匿名の管理者による私的なウェブサイトに,控訴人の実名を挙げた上,これを揶揄し,誇張した表現でなされた本件記事の掲載が,専ら公益を図る目的でされたとは,容易には認め難い。そして,既に弁護士が関与していた(被控訴人本人)にもかかわらず,被控訴人が平成22年4月ころに本件記事が掲載されたブログを消去したため,同ブログに本件記事以外にどのような内容の具体的記事が掲載されていたかについては何ら証拠が残されていない(甲21,弁論の全趣旨)のであり,被控訴人が同年3月19日に「正式に謝罪すれば記事は削除してあげてもいいかな」と,被控訴人が個人的に謝罪を受けることを望んでいる趣旨のコメントをしている事実(甲6)などを併せて考慮すると,被控訴人の内心に公益を図る目的があったか否かはともかくとして,本件記事については,その表現方法などからみて,専ら公益を図る目的で掲載されたとまで認めることはできない。

ウ また,続いて本件記事の真実性について検討するに,証拠(甲1,21,乙1,10,11,控訴人代表者本人,被控訴人本人)及び末尾括弧内掲記の証拠並びに弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。

(ア) 本件土地(半田市a町b番c所在の土地の南東部分)は,その両側の境界を本件マンション敷地(同町b番d所在)と本件マンションの第2駐車場(同町e番f所在)に挟まれた土地である。

本件土地は,元来,訴外C建設が資材置場として使用していたが,実質的には空き地に近い状態であり,本件マンションの住人からその使用法につき問題視されることはなかった。

(イ) 控訴人は,平成14年6月ころから本件土地を借りて産業廃棄物の積替え保管場所として使用することとし,そのころ,控訴人代表者が本件マンションを訪ね,集会室において,本件マンション管理組合の理事長であった被控訴人に対し,控訴人が本件土地を使用して作業することとなった旨の挨拶をした。

(ウ) 控訴人による本件土地の利用方法は,概ね,ダンプカーによって建設廃材及び残土を搬入し,これを下ろして一時的に保管し,ショベルカーを利用して,別のダンプカーに積み替え,これを搬出するというものであった。

控訴人が本件土地で操業した当初は,廃材,残土の量が少なかったが,次第に量が増え,本件マンションの住人から砂塵についての苦情を受けたため,控訴人は,平成15年に入り,本件土地の保管場所部分を囲むように,本件マンション敷地側に高さ1.8メートルのトタンの仮柵,本件マンション第2駐車場側に高さ2メートルの移動式のコンクリートの仮柵を設置した。

控訴人は,仮柵に,産業廃棄物の積替え保管場所であることを掲示し,法定の事項のほか,控訴人代表者の連絡先の電話番号も記していた。

(甲7)

(エ) 本件土地が産業廃棄物の保管場所として使用されていることに被控訴人が気づき,砂塵や騒音を問題視するようになったのは,上記仮柵が設置されたころであり,被控訴人は,その後,控訴人代表者に対し,継続的に苦情を申し入れていた。

控訴人代表者は,作業中に散水することによって砂塵の発生を防ごうと考え,平成16年11月ころから,水道管の設置を検討し始めたものの,隣接する本件マンション敷地又は第2駐車場の敷地以外から水道管を引くことができないことが判明し,散水作業は実現しなかった。

(甲18)

(オ) 被控訴人が,平成17年5月ころ,控訴人による本件土地の利用につき,愛知県環境課に苦情を申し立てたところ,同課担当者は,騒音については半田市の管轄であるとして対応を約束しなかったが,砂塵等については,控訴人に対し,散水をするよう要請した。

しかしながら,上記(エ)のとおり水道管は引けなかったため,控訴人は,同年12月ころ,本件マンションの水道施設を使用させてくれるよう,被控訴人に要請した。

これに対し,被控訴人は,控訴人代表者に対し,平成18年の本件マンション管理組合第13期定期総会に出席し,住人の承諾を得るよう促した。

(カ) 被控訴人は,同定期総会の開催に先立ち,控訴人による被害につき,本件マンションの住人59世帯にアンケート調査を実施した。(乙7の1ないし21)

その結果は,「残土処理作業にともなう粉塵被害」につき,「かなり迷惑」を選択したのが10戸,「たまに迷惑に思う」としたのが10戸であり,「残土処理作業にともなう騒音被害」につき,「かなりうるさい」を選択したのが8戸,「たまにうるさく思う」としたのが12戸であった。また,砂塵の被害については,ベランダや室内に砂埃が上がってくること,駐車場に置いてある自動車が砂埃で汚れることなどに複数の住人が悩まされていることが明らかとなり,騒音の被害については,重機の騒音によって住人の睡眠やテレビの視聴が妨げられ,朝6時台や7時台の早朝や土日にも騒音が生じていることが明らかとなり,悪臭についても苦情が寄せられた。

(キ) 平成18年6月4日に開催された本件マンション管理組合の第13期定期総会において,控訴人代表者が出席し,散水作業のために水道を引かせてほしいと要望したものの,管理組合による承認はされず,逆に,上記(カ)のアンケートの結果を見せられ,出席した住人から多数の要望,苦情を受けた。

管理組合側は,控訴人代表者に対し,土砂等の飛散防止策,悪臭対策,騒音防止,囲いの点検と清掃等につき,対策案を書面で回答するよう求め,訴訟を提起する可能性もあると伝えた。控訴人代表者は,訴訟になる可能性があるなら対策案を出せないとして回答を拒否したが,住人から要望のあった作業時間については,平日午前8時以降,土曜午前9時以降,日曜は作業なしとすることについて合意した。

そして,控訴人代表者は,同月中旬,作業員向けに,上記作業時間等を遵守するよう求めるチラシを作成し,配布した。(甲8)

なお,被控訴人は,平成17年3月をもって管理組合の理事長の任期を満了していたが,上記定期総会において,引き続き,控訴人に関する問題の窓口を担当することになった。

(ク) 水道の利用については,平成18年8月下旬ころになって,管理組合の理事長から控訴人代表者に対し,水道の利用を許可する方針が伝えられた。

しかし,控訴人代表者は,費用をかけて水道を引いたとしても,騒音等の問題によって操業を続けられない可能性もあると考え,被控訴人からの度重なる要望にもかかわらず,平成19年に撤退するまで,結局,散水作業を実施するための水道工事に取り掛からなかった。

騒音問題については,半田市環境課による騒音測定が行われることとなり,同年11月29日,作業員による積込み作業のデモンストレーションを行い,本件マンション2階ベランダ及び敷地境界部分において騒音を計測したところ,いずれも県の条例で定める60デシベルを超過していたことが明らかとなり,半田市環境課は,控訴人に対し,騒音を下げるよう注意を与えた。(乙4の1ないし5,乙5の1ないし5)

これに対し,控訴人は,本件土地で使用していたショベルカーを,他の作業場で使用していた作動音の小さい機種と配置転換するという対応をとった。(甲1,15,16,17)

その後控訴人が本件土地から撤退した平成19年7月5日までの間に,被控訴人あるいは管理組合から半田市に対して騒音レベルの再計測の申入れ等はなく,再計測などは行われていない。

(ケ) 被控訴人は,なおも,控訴人の操業による砂塵,騒音等が軽減していないと考えており,平成19年4月上旬,控訴人代表者に電話で問い合わせたところ,騒音についてはこれ以上の対応をしないとの回答であり,作業時の散水を実施するとの確約も得られなかった。

そこで,被控訴人は,同月26日,訴訟提起を検討するために弁護士と打ち合わせ,同年5月20日,管理組合の第14期定期総会において,訴訟を提起することも視野に入れ,「産廃対策委員会」を設置することが承認された。(乙2)

被控訴人は,このころ,控訴人代表者に対し,頻繁に苦情の電話を入れていたが,控訴人代表者は,業務に支障があるとして,電話に出ないようになっており,折り返しの連絡もしなかった。

エ(ア) 被控訴人は,本件記事中の「当マンションの隣の空き地になんの事前報告も無しに突如産業廃棄物(建設残土)臨時保管所が設営された。」(本件表現①)との記述について,被控訴人は控訴人代表者と面会したことはあったが,その際,処理場の承諾を求められ,これを断ったところ,その後ある日突然,本件土地において,土砂の搬入作業が始まり,本件マンションの住人が操業に気付いたのであるから,本件表現①は真実に基づく記述である旨主張する。

しかし,控訴人代表者は,平成14年6月から本件土地を借りて産業廃棄物の積替え保管場所として使用することとし,そのころ,控訴人代表者が本件マンションを訪ね,集会室において,本件マンション管理組合の理事長であった被控訴人に挨拶をしているのであり(上記ウ(イ)),そのころ控訴人代表者が被控訴人を訪ねる目的としては,その時期からみて,控訴人が本件土地を産業廃棄物の積替え保管場所として利用するにあたって,本件マンション管理組合にそのことを伝え,承諾を得るためであったとみるのが自然である。その旨述べる控訴人代表者の供述(甲21,控訴人代表者本人)は信用できるのに対して,被控訴人の上記主張に沿う被控訴人の供述部分(被控訴人本人)は,本件土地が事実上産業廃棄物処理施設の建設が不可能な市街化調整区域にあること(弁論の全趣旨)に照らしても,容易に信用することはできない。してみれば,本件表現①は真実に基づく記述であるとは到底認められず,ほかに本件表現①が真実に基づく記述であると認めるに足りる証拠はない。

(イ) また,被控訴人は,本件記事中の「苦情を伝え改善対策をお願いするも誠意ある対応は一切なし。」(本件表現③)との記述について,控訴人は住人側の苦情を聞き入れているかのようなそぶりをしていたものの,だんだん聞く耳さえ持たなくなっていたのであり,何ら誠意ある対応はなかったのであるから,本件表現③は真実に基づく記述である旨主張する。

しかし,控訴人は,本件マンションの住人や被控訴人からの苦情に対して,砂塵の防止のために,本件土地にトタンの仮柵やコンクリートの仮柵を立てて,控訴人代表者の連絡先を掲示し(上記ウ(ウ)),散水のための水道管の設置を検討している(上記ウ(エ),(オ))のであるし,騒音の防止のために,作業の開始時間を遅くし,日曜日の作業をなくし,これを遵守するよう作業員にチラシを配布し(上記ウ(キ)),本件土地で使用していたショベルカーを作動音の小さい機種に変更する(上記ウ(ク))などの対応をとった事実が認められるのであり,騒音対策については,上記対応の結果,騒音レベルの再計測の申入れがされることもなくなり,一定の効果があったことが窺われるのであるから,本件表現③が真実に基づく記述であるとは到底認められない。確かに散水のための水道管は管理組合が水道の利用を許可した後も最後まで設置されることはなかったが,そのことは本件マンション敷地又は第2駐車場の敷地以外から水道管を引くことができなかったことに主たる原因があるのであり,その後騒音等他の問題や費用の問題で控訴人が水道管を引かなかったからといって,上記認定判断は何ら左右されない。被控訴人が当審において新たに提出した本件マンション周辺の地図(乙12の1,2)は,平成24年当時のものであり,上記認定判断を左右するものではなく,ほかに本件表現③が真実に基づく記述であると認めるに足りる証拠はない。

(ウ) さらに,被控訴人は,本件記事中の「作業中は舞い散る粉じんによって窓は開けられない,そのけたたましい重機の騒音によってテレビの音も聞き取れない,粉じんで汚れる窓やバルコニー,隣接するマンション駐車場の車は砂だらけ。」(本件表現②)との記述についても,真実に基づく記述である旨主張する。

しかし,被控訴人が行ったアンケート調査によっても,本件マンションの全59世帯中粉じん被害について「かなり迷惑」としたのは10戸,騒音被害について「かなり迷惑」としたのは8戸に過ぎず,上記のとおり騒音対策について一定の効果があったことについてまったく触れられていないことなども考慮すると,本件表現②は相当に誇張され過ぎた記述であるといわざるを得ず,真実に基づく記述であるとまでは認め難い。

(エ) 以上のとおりであるから,本件記事の本件表現①ないし③について,その記述が真実に基づくものとは認められない。

オ 以上によれば,その余の点について判断するまでもなく,控訴人の社会的評価を低下させる本件記事を自ら管理するブログに掲載した被控訴人の行為は,公益目的の観点及び真実性の観点からみて違法性を阻却されるものではなく,違法であると評価され,控訴人に対する不法行為を構成するものというべきである。したがって,被控訴人は,被控訴人の上記不法行為により控訴人の被った損害を賠償すべきである。

(3)  争点(4)(本件記事の掲載によって生じた損害の有無)について

ア 控訴人は,控訴人が建物解体工事を請け負う契約が成立又は成立することが確実となっていたBとの2件の取引が,本件記事を読んだ顧客からの解体業者を代えてほしいとのクレームにより取りやめになった旨主張し,これに沿う証拠(甲2ないし5,21,控訴人代表者本人)もないではない。

しかし,控訴人が本件記事により取りやめになったというBとの取引は平成21年のことであって,被控訴人がした本件記事のブログへの掲載からは約2年が経過している。そして,控訴人が提出するB作成の連絡書(甲4)に極めて簡略な記載しかされていないこと,控訴人とBとの間では上記2件の取引以外に平成21年以降も相当数の取引が継続されていること(甲11,12)などを考慮すると,上記2件の取引が本件記事を原因に取りやめになった旨のB及び控訴人代表者の各供述(甲4,21,控訴人代表者本人)を直ちに信用することはできず,ほかに上記2件の取引の取りやめと本件記事の掲載との間に相当因果関係があるとまで認めるに足りる証拠はない。

イ ところで,被控訴人が自ら管理するブログに掲載した本件記事は上記(原判決引用)のとおり控訴人の社会的評価を低下させるものであるから,本件記事がブログに掲載されて一般人の閲覧に供されることにより,控訴人の信用に一定の損害が生じたことは明らかである。

しかし,本件記事が掲載されたブログは,インターネットにより不特定多数の一般人に閲覧される可能性のあるものであるから,控訴人の具体的損害については,その損害の性質上その額を立証することは極めて困難であるといわざるを得ないし,本件においても,それが立証されているということはできない。したがって,本件においては,民事訴訟法248条の規定により,裁判所が,口頭弁論の全趣旨及び証拠調べの結果に基づき,相当な損害額を認定すべきである。

そこで,これについて判断するに,本件表現①ないし③を含んだ本件記事の内容,本件記事が掲載された被控訴人の管理するブログが,控訴人からの度重なる削除要請にもかかわらず,平成22年4月ころまでの約3年間にわたって掲載されていたこと(甲1,6,21,弁論の全趣旨),その他弁論の全趣旨や証拠調べの結果によって認められる一切の事情を斟酌すれば,控訴人が被った損害の額は100万円と認めるのが相当である。

2  よって,これと結論を異にする原判決を変更することとして,主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 渡辺修明 裁判官 榊原信次 裁判官 末吉幹和)

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