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名古屋高等裁判所 平成25年(行コ)70号 判決 2013年12月19日

主文

1  本件控訴を棄却する。

2  控訴費用は控訴人の負担とする。

事実及び理由

第1当事者の求めた裁判

1  控訴人

(1)  原判決を取り消す。

(2)  本件を名古屋地方裁判所に差し戻す。

(3)  訴訟費用は第1,2審とも被控訴人の負担とする。

2  被控訴人

主文同旨

第2事案の概要

1  本件は,原判決別紙1「物件目録」記載の土地(以下「本件農地」という。)の近隣に居住する控訴人が,被控訴人に対し,愛知県知事(処分行政庁)が本件農地について平成24年3月16日付けでした農地法5条1項に基づく転用許可処分(以下「本件処分」という。)の取消しを求めた事案である。

2  原審は,行政事件訴訟法9条1項の定める原告適格を欠く不適法な訴えであるとして,本件訴えを却下した。そこで,これを不服とする控訴人(1審原告)が本件控訴に及んだ。(以下,原判決に「原告」とあるのを「控訴人」と,「被告」とあるのを「被控訴人」とそれぞれ読み替える(ただし,「原告適格」を除く。)。)

3  本件における関係法令の定め,前提事実(当事者間に争いのない事実等),争点及び争点に関する当事者の主張は,以下のとおり訂正し,次項に控訴人の当審における補充主張を付加するほかは,原判決「第2 事案の概要」の2ないし5に記載のとおりであるから,これを引用する。

(1)  原判決6頁3行目に「愛知県農業委員会」とあるのを,「愛知県農業会議」と改める。

(2)  原判決6頁17行目に「産業廃棄物処理法」とあるのを,「廃棄物処理法」と改める。

4  控訴人の当審における補充主張

(1)  控訴人は,本件農地から控訴人住居地の間に,いずれも農地基本台帳に記載された土地である本判決別紙不動産目録記載1ないし3の土地(本件農地から,同目録記載1の土地は直線で西側約270メートル,同目録記載2の土地は直線で西側約300メートル,同目録記載3の土地は直線で南西側約280メートルにそれぞれ所在している。)を所有し耕作しているから,控訴人住所地についてしか言及していない原判決は間違っている。

(2)  A自治会区域には,農業関係のA「上」40戸・「中」50戸・「下」47戸が組織する3実行組合の会員があり,A自治会区域の農業委員は,本件農地の隣接の会員を含む周辺地域の実行組合員を始めとする個々の実行組合員を代表しているのであるから,農業委員である控訴人が原告適格を有するのは明らかである。

第3当裁判所の判断

1  当裁判所も,原判決と同様に,本件訴えを却下すべきものと判断するが,その理由は,以下のとおり付加するほかは,原判決「第3 当裁判所の判断」の1に記載のとおりであるから,これを引用する。

(1)  原判決9頁7行目「16,」の次に,「20」を付加する。

(2)  原判決9頁18行目末尾に,行を改め,次のとおり付加する。

「 控訴人は,当審において,本件農地から控訴人住居地の間に本判決別紙不動産目録記載1ないし3の土地を所有し耕作している旨を補充して主張するが,その主張によっても,本件農地から,同目録記載1の土地は直線で西側に約270メートル,同目録記載2の土地は直線で西側に約300メートル,同目録記載3の土地は直線で南西側に約280メートルそれぞれ離れているのであって,同各土地と本件農地との間には,上記(原判決引用)のとおり,水田のほか,第三者が所有する住居その他の建物や車両置場,プール等が存在していることは明らかであるから,上記認定判断(原判決引用)は何ら左右されるものではない。」

(3)  原判決10頁1行目末尾に,次のとおり付加する。

「控訴人は,A自治会区域の農業委員は本件農地の隣接の会員を含む周辺地域の実行組合員を始めとする個々の実行組合員を代表している旨主張するが,農業委員は合議体である農業委員会の一員としてその事務に関与するにすぎないことは上記(原判決引用)のとおりであるから,A自治会区域の農業委員であるか否かが上記判断(原判決引用)を左右するものではない。」

2  よって,原判決は相当であり,本件控訴は理由がないから,これを棄却することとして,主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 渡辺修明 裁判官 榊原信次 裁判官 山本健一)

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