名古屋高等裁判所 平成29年(う)83号 判決 2017年5月29日
主文
本件控訴を棄却する。
理由
1 控訴趣意は控訴趣意書(弁護人作成)のとおりである。論旨は量刑不当(原判決懲役4年6月)である。
2 けん銃を適合実包と共に保管して所持した。
保管けん銃数は2丁,適合実包数は11発に及んでいる。知人の暴力団関係者からやくざを辞めるために金を貸してほしいと頼まれ借金の形に預かったという。動機経緯に酌むべきものはない。自ら処分しようと考えていたという。殺傷能力の高い極めて危険な凶器であることに照らし,勝手な処分が許されるものでもなく,この点特に酌むべき事情にならない。平成2年現住建造物等放火,非現住建造物等放火未遂罪で懲役4年6月に,平成8年建造物等損壊罪で懲役1年6月に処せられた服役前科が2犯あるほか,平成23年4月詐欺罪で懲役1年3年猶予に処せられたのに,猶予期間経過後2年5か月を経ずして本件に及んだ。規範意識の鈍麻が認められる。刑責は重い。
事実を認め反省の態度を示したこと,元妻が被告人の更生を願い社会復帰後の支援を約していること,扶養すべき家族がいることのほか,本件を機に十余年にわたり務めた町議会議員を辞職したことや新聞報道等による社会的制裁を受けたことといった所論指摘の事情を考慮しても,原判決の量刑が重過ぎて不当とはいえない。
3 論旨は理由がない(刑訴法396条適用)。
(検察官田澤奈津子出席)
名古屋高等裁判所刑事第1部
(裁判長裁判官 山口裕之 裁判官 出口博章 裁判官 大村陽一)