名古屋高等裁判所 平成3年(行コ)1号
主文
本件控訴を棄却する。
控訴費用は控訴人の負担とする。
事実
第一当事者の申立
一 控訴人
1 原判決を取り消す。
2 被控訴人が昭和五七年三月一七日付で控訴人に対してした労働者災害補償保険法に基づく休業補償給付を支給しない旨の処分を取り消す。
3 訴訟費用は、第一、二審とも被控訴人の負担とする。
二 被控訴人
主文と同旨
第二当事者の主張
当事者双方の主張は、原判決の事実欄第二に記載されているとおりであるから、ここにこれを引用する(ただし、原判決七枚目裏七行目の「原因が」(本誌五七五号(以下同じ)47頁1段20行目)を「原因か」と改める。)。
第三証拠
原審及び当審の訴訟記録中の証拠目録欄に記載されているとおりであるから、これらをここに引用する(略)。
理由
一 当裁判所も、控訴人の本訴請求は、その理由がないからこれを棄却すべきものと判断する。そして、その理由は、次に付加、訂正するほか、原判決の理由欄に説示されているとおりであるから、これをここに引用する。
1 原告判決一一枚目裏一行目から二行目にかけての「第五号証の一」(48頁1段17行目の(証拠略))を「第五号証の一ないし五」と、同七行目の「第八号証」(48頁1段17行目の(証拠略))を「第七号証」と、それぞれ改める。
2 同一二枚目表七行目の「保明」(48頁1段20行目)の後に「(昭和三年六月一二日生)」を加え、同末行の「宅地造成等をしてきた。」(48頁1段27行目)を「宅地造成等の作業に従事していた。」と改め、同一三枚目裏五行目の「復雑」(48頁3段3行目)を「複雑」と、同末行の「するに」(48頁3段11行目)を「するのに」と、それぞれ改め、同一六枚目表四行目の「午前三時」(49頁1段19~20行目)を「午前七時」と改め、同九行目の「以前」(49頁1段27行目)の後に「と比較して、」を加え、同一七枚目表八行目の「県内の」(49頁2段26行目)の後に「大分県厚生連鶴見病院に転院し、その後更に」を加える。
3 同一八枚目裏九行目の「年齢」(49頁4段10行目)の後に「(五〇歳を超えた人に発症することが多い)」を加える。
4 同二〇枚目裏七行目(50頁2段5行目)から同二一枚目表八行目(50頁2段24行目)までを次のとおりに改める。
「 まず、保明が脳出血発作を起こした当日における入坑直前の同人の血圧は、最高一五〇ミリ、最低一〇〇ミリであって、仕事に差支えのない程度であり、高血圧症が自然に増悪するような状態ではなかったとする点について検討してみると、前記認定の事実から明らかなように、保明は従来(昭和五四年ころ)から血圧が最高一七〇ミリ、最低九〇ミリの前後を浮動する高血圧症に罹患していたもので、引き続き治療を要する状態にあったものということができ、また脳出血を起こした当日の午前中にも、医師に高血圧に起因すると思われる症状を訴え、最高一五〇ミリ、最低一〇〇ミリと血圧を測定されたうえ、降圧剤の施用を受けたものであって、これらのことに加えて、保明の年齢(脳出血を起こした当時五三歳)や同人が前説示のように、飲酒・喫煙を好み、ことに晩酌として焼酎二号余りを愛飲していたことをも併せ考慮すると、保明については、本件脳出血の発作以前に、その原因となるような脳小動脈壁の脆弱化現象が日々緩徐に進行していたことが十分に推測されること、そして、しかも、原審証人山田眞一郎の証言によると、脳小動脈壁の脆弱化現象は降圧剤の服用によって改善されるようなものでないことが認められるから、脳出血の発作を起こした当日午前中における保明の血圧測定値が右記載のとおりであって、仮にその測定値そのものが比較的に少ないものであったと評価されるとしても、そのことの故に、直ちに、その当時、保明の脳小動脈壁の脆弱化現象の進行が抑制されていたとか、もしくは改善されていたなどということはできない。したがって、本件においては、脳出血の発作を起こした当日の入坑直前の時点で、保明が自覚的、他覚的のいずれの観点からしても、仕事に従事しても支障のないような外観的状況にあったからといって、保明の前示の高血圧症が右脳出血の発作以前においては自然に増悪するような状態になかったなどということはできない。」
5 同二二枚目裏九行目(50頁4段12行目)から、一〇行目(50頁4段14行目)を次のとおり改める。
「4 以上の説示によって明らかなように、本件においては、保明の脳内出血が外傷に起因するものであることを認めるに足りる証拠がないのは勿論のこと、さらにまた、その発作・発症のころ、保明に業務上の身体過動又は業務遂行に関わる精神的感動に起因する血圧亢進が生じたというような事情を認めるに足りる的確な証拠もないものというべく、かえって、前説示の状況に徴すると、保明の脳内出血の発作は、従来からの高血圧症に起因する脳小動脈壁の脆弱化現象が緩徐に進行するうち、たまたま本件作業現場において自然発生的に起きるに至ったものと推認するほかはない。それ故、ひっきょう、本件においては、保明の右発症が控訴人主張の業務に起因することを認めることはできないものと結論せざるを得ない。」
二 よって、控訴人の被控訴人に対する本訴請求は、その理由がなく、これを棄却した原判決は相当であるから、本件控訴を棄却することとし、控訴費用の負担につき行訴法七条・民訴法九五条・八九条を適用して、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 服部正明 裁判官 林輝 裁判官 鈴木敏之)