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名古屋高等裁判所 平成3年(行コ)15号 判決 1992年10月29日

控訴人(原告) 加藤化学株式会社

被控訴人(被告) 半田税務署長

主文

本件控訴を棄却する。

控訴費用は控訴人の負担とする。

事実及び理由

第一当事者の求めた裁判

(控訴人)

原判決を取り消す。

被控訴人が控訴人に対して昭和六二年六月三〇日付でなした、昭和五九年四月一日から昭和六〇年三月三一日までの事業年度の法人税につき、所得金額を四億六三三八万六七二一円、納付すべき税額を一億二三九二万八二〇〇円とする更正処分及び過少申告加算税額を九〇二万二五〇〇円とする賦課決定処分をいずれも取り消す。

訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。

(被控訴人)

主文同旨

第二当事者の主張

当事者間に争いのない事実等と争点及び争点に関する当事者の主張は、左に訂正、付加するほか原判決事実及び理由の第二事案の概要(原判決二丁表六行目から九丁裏二行目まで)に記載されたとおりであるから、ここにこれを引用する。

1  原判決三丁表末行「株式会社タクマ」の次に「(以下「タクマ」という。)」を、同三丁裏八行目「日本鋼管株式会社」の次に「(以下「日本鋼管」という。)」を付加し、同末行「甲一」を「成立に争いのない甲第一号証」に訂正し、同四丁表二行目「住友商事は、」の次に「本件設備を」を付加する。

2  同五丁表八行目「(証人鈴木)」から同一〇行目「組み立てられた。」までを「引続き、同年一二月暮か翌年一月初めころ本件タービンが控訴人方工場に搬入されて据え付けられた(原審証人鈴木慎二(第一回)、以下「鈴木証言(第一回)」という。)。」に改める。

3  同五丁裏八行目「昭和六〇年二月」の次に「五日」を付加し、同六丁表五行目から六行目にかけての「(甲七、八)」を「(鈴木証言(第一回)により成立の認められる甲第七、第八号証)」と、同一〇行目「(甲一二)」を「(弁論の全趣旨により真正に成立したものと認められる甲第一二号証)」と、同六丁裏四行目「(乙六)」を「(成立に争いのない乙第六号証)」と、同八行目「(甲七、八)」を「前掲甲第七、第八号証」と、同七丁表四行目「同年五月から六月にかけて」を「同年六月中旬」と訂正する。

4  同七丁裏一〇行目から八丁裏三行目までを次のとおり改める。

「(一) 法人税法上の減価償却の開始が認められ、また措置法上の特別償却(以下、両者を単に「減価償却」ともいう。)が認められるためには、当該事業年度内に当該資産を取得し、これを事業の用に供したことが必要であるが、本件事案に則して右要件を考察すれば、控訴人が本件設備の所有権を取得する以前であっても、控訴人がタクマ側から本件設備の引渡しを受け、その管理権を取得してこれを事業の用に供すれば、右要件は満たされているものというべきである。

控訴人は、昭和六〇年二月二七日本件設備について総合負荷試験を実施し、本件ボイラーが主蒸気流量八九トン(給水流量九〇トン)を記録し、本件タービンも一万キロワットの出力を記録したことが確認されたことから、タクマ側から本件設備一式の引渡しを受けたものであり、この時点においては本件タービンに故障が生じることは予期しておらず、同日付で名古屋通商産業局長に対し官庁立会検査の申請をした。そして、控訴人は同日以後、本件設備の管理権を得てこれを運転し、本件設備を自己の資産として事業の用に供するに至った。

しかし、その後の調整期間中に本件タービンに故障が発生したため、同年三月四日付で右官庁立会検査の日程変更を申請し、同年四月八日から一〇日にかけて官庁立会検査を実施して合格し、同日本件設備を検収した。ところで、本件契約に基づく仕事は、その内容に瑕疵があったとしても前記二月二七日時点で完成していたのであるから、本件設備の引渡し後、あるいは検収後に補修が行われたとしても、既に完了している引渡しの効力には何の影響もない。また本件請負代金は同年一〇月二六日に支払われているが、これは同年四月一〇日の検収後も本件タービンの補修が必要であったことから、補修が完了するまで代金の支払を延期し、前記一2(一)<4>の条項に準じて右補修が完了した同年六月二七日の四か月後に支払ったものである。

したがって、本件設備については、本件事業年度内に取得し事業の用に供したものとして、本件事業年度における減価償却が認められるべきである。」

5  同八丁裏五行目「原告は、同日付で」を「控訴人は前記のとおり同年二月二七日付で」と、同九行目「性能検査」を「検収」と訂正し、同九丁表一行目「行ったものであるから」の次に「本来の検収ではなく、前述のとおり」を付加する。

6  同九丁表二行目の次に改行して、

「(二) 本件ボイラーとタービンは設備としては別個の物であり、本件契約における見積りも控訴人における資産計上も別々になされている。そして、本件ボイラーは昭和六〇年二月二七日以降、本件タービンが修理、改造されていた間も何の問題もなく稼働していたのであるから、少なくとも本件ボイラーについては本件事業年度における減価償却が認められるべきである。」を挿入する。

7  同九丁表四行目「減価償却」の前に「(一)」を付加し、同丁裏二行目の次に改行して、

「(二) 本件ボイラーとタービンはその用途等に異なる部分があったとしても、本件契約においては一体として発注され、性能確認等や代金支払についても一体の設備として取り扱われているのであるから、両者を分離して本件ボイラーについては昭和六〇年二月二七日に取得されたものとすることはできない。」を挿入する。

第三証拠<省略>

第四争点に対する判断

当裁判所も控訴人の本訴請求は理由がないものと判断する。

その理由は、左に付加、訂正するほか原判決事実及び理由の第三争点に対する判断及び第四結論(原判決九丁裏三行目から一八丁表六行目まで)の認定、説示と同一であるから、ここにこれを引用する。

1  原判決一〇丁表八行目「注文者が」の前に「当該請負契約が締結されたというだけでは足りず、」を付加し、同丁裏末行「(乙一四の二)」を「成立に争いのない乙第一四号証の二)」と訂正し、一一丁裏七行目「なお、原告は、」から一二丁表五行目「できない。」までを削除する。

2  同一二丁裏一行目「右の事実」から同三行目「認められる」までを「右の事実及び原本の存在及び成立に争いのない乙第八号証、鈴木証言(第一回)により成立の認められる甲第六号証、第一三号証、原審証人清水利夫の証言により成立の認められる乙第二ないし第四号証、第五号証の三、同松田勝の証言により成立の認められる乙第九ないし第一一号証、第一三号証並びに鈴木証言(第一、二回)の一部、原審証人松田勝の証言を総合すると、次の事実が認められ、前掲鈴木証言のうち右認定に反する部分は措信できない。」と改める。

3  同一二丁裏三行目の次に改行して、

「<1> 本件設備の試運転完了日は昭和六〇年一月三一日の予定であったが、工事が遅延したため昭和五九年一二月二二日工程表を変更し、昭和六〇年二月五日本件タービンを起動させてその試運転を開始した。しかし、同月九日タービン回転計のギヤが飛ぶ等のトラブルが発生し同日から五日間の運転停止となった。また同月一八日から二三日までもタービンローターの高速バランス調整のため試運転が停止された。そして、同月二四日から試運転が再開されたが、オイルユニット配管部等に振動が発生するトラブルが度々生じた。

右の状況下で同月二七日調速運転による総合負荷試験が行われたところ、同日もトラブルが発生した。配管のサポート補強により振動(油圧変動)が止まったので試験を再開したところ、本件設備につき所定の出力が確認されたので、同日控訴人は、名古屋通商産業局長に対し官庁立会試験(使用前検査)の申請をした。

しかし、翌二八日本件タービン起動時に油圧変動調圧弁の振動が発生し、また調圧弁のトラブル原因が解明されていないこともあって、タクマ側は官庁立会試験に合格する確信がもてず、控訴人に延期を申し入れ、翌三月一日控訴人の了解を得た。そして、本件タービンは修理のため同月四日から八日まで運転を停止された。」を挿入する。

4  同一二丁裏四行目「<1>」を「<2>」に、同一三丁裏二行目「<2>」を「<3>」に、同末行「<3>」を「<4>」に、同一四丁表六行目「<4>」を「<5>」にそれぞれ訂正する。

5  同一三丁裏一行目「調整が必要であった。」を「調整が必要であったため、控訴人は本件設備の検収をしなかった。そして、タクマ側は、本件タービンの九五〇〇キロワットの出力テストを同月一一日に、また二四時間連続運転テストを同日から同月一七日まで行い、同月二四日に控訴人に対して本件設備の性能報告をする予定を立てた。」と改める。

6  同一三丁裏八行目「指摘があり」の次に「結局、この時点では本件設備についての控訴人の性能確認が得られず」と改める。

7  同一四丁裏四行目の次に改行して、

「<6> なお、タクマ側では、同年四月中旬まで本件設備の運転作業員二名と監督一名を控訴人方に派遣していた。」を挿入する。

8  同一五丁表一行目「同年四月八日」の前に「同年二月二七日の総合負荷試験が行われた時点はもとより、」を付加する。

同丁表一〇行目「主張するけれども、」の次に「前記(二)<1>の状況下で行われた総合負荷試験において所定の出力が確認されたからといって、タクマ側が控訴人に本件設備の受領を求めることは困難であり、控訴人においても性能確認を完了したものとしてその引渡しを受けるとは到底考えられないところ、本件設備の性能確認をするに際しては、性能報告会議を開いてこれを行うのが通常であると思料されるのにこれが開かれていないうえ、右二月二七日の時点では営業面での効率的な出力についての性能確認はなされておらず、」を挿入し、同末行「前記(二)<1>のとおり、性能確認が」を「前記(二)<2>のとおり、右の営業面での性能確認が」と訂正する。

9  同一六丁表二行目「(甲一二、一三)」を「(前掲甲第一三号証)」と訂正する。同丁裏八行目から九行目にかけての「右性能の確認に基づいて原告によって検収がされた同年七月一二日」を「控訴人によって右性能の確認がなされた同年六月二七日」に訂正し、同末行「なお、」から同一七丁表三行目「いえない。」までを削除する。

10  同一七丁表四行目から五行目にかけての「昭和六〇年七月一二日」を「昭和六〇年六月二七日」と訂正する。同丁表七行目の次に改行して、

「(六) なお、控訴人は、少なくとも本件ボイラーについては本件事業年度における減価償却が認められるべきである旨主張しているが、控訴人主張のとおり本件ボイラーとタービンが設備としては別個の物であり、控訴人における資産計上も別々になされていて、本件タービンが修理、改造されていた間も本件ボイラーは製品の生成のため正常に運転されていたとしても、前掲甲第一号証及び弁論の全趣旨により真正に成立したものと認められる甲第一九号証によれば、本件ボイラー及びタービンは一式として金七億二〇〇〇万円で請負契約が締結され、前記認定のとおり控訴人による性能確認及び代金の支払も一体の設備として処理されてきたものであるから、本件ボイラーとタービンを分離して本件ボイラーについては同年二月二七日に引渡しを受けたものと認めることはできない。したがって、控訴人の右主張は理由がない。」を挿入する。

以上の次第で、控訴人の本訴請求は理由がないからこれを棄却した原判決は正当であって、本件控訴は理由がない。

よって、本件控訴を棄却することとし、控訴費用の負担につき行訴法七条、民訴法九五条、八九条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判官 土田勇 喜多村治雄 林道春)

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