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名古屋高等裁判所 平成3年(行コ)3号 判決 1992年3月31日

第一審原告(平成三年(行コ)第三号事件被控訴人)

宮崎邦彦

第一審原告(平成三年(行コ)第三号事件被控訴人)

平山良平

第一審原告(平成三年(行コ)第四号事件控訴人)

藤田宏子

右第一審原告ら訴訟代理人弁護士

渥美裕資

第一審被告

(平成三年(行コ)第三号事件控訴人 平成三年(行コ)第四号事件被控訴人)

名古屋市人事委員会

右代表者委員長

椙山正弘

右訴訟代理人弁護士

冨島照男

宮澤俊夫

小川淳

主文

一  第一審被告の本件控訴に基づき、原判決第一項を左のとおり変更する。

1  第一審被告が昭和六二年八月一七日付けでした第一審原告宮崎邦彦の同年七月二六日付け要求にかかる勤務条件に関する措置の要求のうち、研修承認についてはこれを取り上げないとの判定を取り消す。

2  第一審原告宮崎邦彦のその余の請求を棄却する。

二  第一審被告の第一審原告平山良平に対する本件控訴を棄却する。

三  第一審原告藤田宏子の本件控訴を棄却する。

四  訴訟費用中第一審原告宮崎と第一審被告との間に生じた分は第一、二審を通じ、その二分の一を第一審原告宮崎の、その余を第一審被告の各負担とし、第一審被告の第一審原告平山に対する控訴費用、控訴人藤田の控訴費用は、右各控訴人の負担とする。

事実

第一申立

(第一審被告名古屋市人事委員会・第三号事件控訴人)

一  原判決中第一審原告宮崎邦彦、同平山良平に関する部分を取り消す。

二  第一審原告宮崎邦彦、同平山良平の請求をいずれも棄却する。

三  訴訟費用は第一、二審とも右第一審原告らの負担とする。

(第一審原告藤田宏子・第四号事件控訴人)

一  原判決中第一審原告藤田宏子に関する部分を取り消す。

二  第一審被告が昭和六三年八月一一日付けでした第一審原告藤田宏子の同年七月二六日付け要求にかかる勤務条件に関する措置の要求は取り上げないとの決定はこれを取り消す。

三  訴訟費用は第一、二審とも第一審被告の負担とする。

(第三号事件被控訴人宮崎、同平山)

一  第一審被告の本件控訴を棄却する。

二  控訴費用は控訴人の負担とする。

(第四号事件被控訴人名古屋市人事委員会)

一  第一審原告藤田宏子の本件控訴を棄却する。

二  控訴費用は控訴人の負担とする。

第二主張

当事者双方の事実上、法律上の主張は、当審における主張を左に付加するほかは、原判決事実第二当事者の主張(原判決二丁裏一一行目(本誌五八五号<以下同じ>130頁2段18行目)から二一丁表五行(134頁4段14行目)目まで)の記載と同一であるから、ここにこれを引用する。

(第一審原告藤田の主張)

一  第一審原告藤田は、公立学校栄養職員に任命された者で、同職員は栄養士の資格を要する。その具体的職務は、学校給食の指導、実施全般のみならず、食生活一般の指導、調査にも及び、学校内では研修グループの一員であり、現職教育への出席義務もある。

学校栄養職員はその職務を遂行するにあたって常に研修が不可欠であり、学校内においても教員と同じく研修活動に参加していることに照らせば、法律上の明文はなくとも、教員に準じた研修の必要性があり、教員の研修義務と質的に異なるものはない。

二  本件学習会は、生徒に対して安全な給食を提供するために必要な知識を得て、その職務を果たすため不可欠な集会であったから、第一審原告藤田はこれの参加を決意し職専免の申請をしたが、校長の裁量権の濫用によりこれがなされなかったので、やむなく年次有給休暇を使用せざるを得なかった。この経過からみれば、右職専免の問題は、教員の場合と同じく勤務条件の問題である。

(第一審被告の主張)

一  第一審原告宮崎に対する本件判定等一1及び同平山に対する本件判定等二について

1 勤務条件に密接に関連する事項であっても、それが管理運営事項であれば、そのこと自体は措置要求の対象とはならない。勤務条件と管理運営事項とが密接に関連し、管理運営事項の処理によって勤務条件に影響が及ぶ場合には、管理運営事項の処理によって影響を受けた勤務条件そのものについて措置要求することができると解すべきであり、かつそれを以って足りるのである。元来、第三者機関である人事委員会は、準司法的権限を有するが、その権限には自ずから限界があり、研修不承認の当不当を判断して、勤務を要しない時間指定の要否を判断することはできず、判定等一2のごとく、当該校長のなした勤務を要しない時間の指定が、職員の勤務時間、休日、休暇等に関する条例等に適い、校長の裁量が妥当であったか否かについてのみ判定を行い得るにすぎないから、措置要求により、管理運営事項たる研修不承認の取消を求めることはできない。

2 職務専念義務免除は、公務優先の原則に立って、職員の基本的な専念義務を限定的、例外的な場合に限って免除するものであるのに対し、休暇は労働基準法等により認められた労働者の基本的権利であり、労働者の指定した日に与えられるもので、両者はその性格を全く異にする。また休暇は全く自由な時間使用ができるのに対し、職専免の場合には免除された理由、目的の範囲内でのみ限定された行動が要請されるもので、休暇と類似する性格を有しないから、勤務条件に密接に関連する事項とは到底いい得ない。

また仮に、承認さるべき研修が、校長によって不承認となった場合には、校長が行政上の責任を負うものであり、右不承認の結果、教員が休暇を返上せざるを得なくなっても、教特法二〇条二項の研修は、本来教員が自主的に行うものであって、教員の職務そのものではないから、休暇を利用して研修を行うことは不当ではなく、研修不承認の単なる間接的結果に止まり、これを理由として研修承認を休暇等と同様に勤務条件であると結論するのは不当である。

二  第一審原告宮崎に対する本件判定等一2について

右宮崎の措置要求は、本件旅行を研修として承認すること、及び同宮崎の希望しない勤務を要しない時間の指定を取り消すことの二つの異なる事項を内容とするものである。研修の承認は、管理運営事項であるから、措置要求の対象となり得ないと第一審被告は判定し、他方校長による勤務を要しない時間の指定は勤務条件に関することであり、指定を行った校長の措置を撤回することを求める要求は、措置要求の対象となるものと第一審被告は判断したうえ、指定を行った校長の裁量が妥当であったか否かについても判定を行ったものであり、その判断の過程には考慮事項遺脱の瑕疵はない。

三  第一審原告藤田に対する本件判定等三について

右藤田は、教特法二条の教育公務員ではなく、教特法は適用されないから、同法二〇条二項に基づく研修として校長が承認するか否かの問題は生じない。

また職専免条例や職専免規則二条一六号、一七号による職務専念義務の免除は、服務監督権者である校長が職専免をしてまで本件学習会への出席を相当と認めるか否か、校務運営上の支障の有無などの諸般の事情を総合的に勘案し、校長の判断と責任において決定すべき管理運営事項であり、仮に校長の職専免不承認により、同藤田が休暇を取得して右学習会に参加したとしても、文字通り間接的な関係に止まり、そのことを理由に勤務条件に関連するとみることはできない。

第三証拠

本件記録中の原審及び当審における書証目録、原審における証人等目録に記載されたとおりであるから、これをここに引用する(略)。

理由

一  当事者間に争いのない事実は、原判決理由一に記載されたとおり(原判決二二丁表二行目(134頁4段18行目)から六行目(134頁4段25行目)まで)であるから、これをここに引用する。

二  そこで、本件措置要求一1及び二につき、地公法四六条による「勤務条件」に関するものであるか否かを一般的に検討する。

1  措置要求の性質

地公法四六条は、給与、勤務時間その他の勤務条件に関し、人事委員会に対して当局により適当な措置が執られるべきことを要求できる旨定めている。この措置要求の性質は、地公法が職員に対し、労働組合法の適用を排除し、団体協約を締結する権利を認めず、また争議行為を禁止し、労働委員会に対する救済申立ての途をとざしたことに対応し、職員の勤務条件の適正を保障するために、職員の勤務条件につき人事委員会の適法な判定を要求し得べきことを職員の権利乃至法的利益として保障する趣旨のものと解される(最判三小、昭和三六年三月二八日判決、民集一五巻三号五九五頁)。

即ち、勤務条件に関する措置要求の制度は、労働基本権を制限された代償として、職員たる地位に基づいて有する職員の経済上の権利の保障請求権であるということができる。

2  措置要求の対象

地公法四六条は、「勤務条件」として給与、勤務時間を例示しているが、これは同法五五条一項の団体交渉の対象事項として定める勤務条件と同一用語であり、代償措置として設けられている国家公務員法八六条の俸給、給料その他あらゆる勤務条件に関する行政措置要求の規定とも同義であると解されるので、職員が地方公共団体に対し勤務を提供するについて有する諸条件で、職員が自己の勤務を提供し、又はその提供を継続するか否かの決心をするにあたり、一般的に当然考慮の対象となるべき利害関係事項であるものをさすと理解できる。そして具体的には、給与、勤務時間、休暇以外に旅費の種類、金額、支給条件の改善、執務環境の改善、採光、換気施設の改善、庁舎の拡充、地公法四五条一項、三項に定める以外の公務災害補償に関する事項などがその対象として考えられる。

3  管理運営事項との関係

前記のように地公法四六条と五五条一項の「勤務条件」は同一内容と解せられるところ、五五条三項が管理運営事項を団体交渉の対象から除外していることからすると、労働基本権の制約に対する代償措置である措置要求についても、管理運営事項を対象とすることは予定されていないものというべきである。従って地方自治体の当局が、法令に基づき自らの責任と判断において自主的に処理すべき予算執行権、人事権等の管理運営事項は措置要求の対象とならない。

しかし、ある事項が管理運営事項に関するものであると同時に勤務条件と密接に関連する場合がある。具体的には、管理運営事項の処理の結果、影響を受けることのある勤務条件がこれにあたるのであるが、このような場合に管理運営事項に属するという理由だけから、措置要求の対象にならないとすると、前記の代償措置としての措置要求制度そのものの趣旨を没却してしまう結果となるので、勤務条件の側面からの問題として、措置要求の対象とすることは制約されず、その結果、当局が管理運営事項について何らかの措置を執らざるを得なくなったとしても、それは管理運営事項自体を措置要求の対象としたわけではないから、右の原則に反するとはいえないのである。

このような例として、職員の定数の定めは、人事権の一態様であるから、定数の定めそのものを措置要求の対象とすることはできないが、これを勤務条件の側面からの措置要求として職員の定数配置が少ないため過重な時間外勤務を行わざるを得ない勤務時間の問題として要求することはできるし、職員の服務に関する事項は、一般的には対象とならないが、それが同時に勤務条件に関するものであれば、措置要求をすることができる。例えば職務専念義務の免除が勤務条件に関連する結果となる場合には、これに該当するものと理解できる。

三  右二の検討結果から第一審原告宮崎の本件措置要求一1、同平山の同二の適否を判断する。

1  教特法上の研修の特色

一般の地方公務員については、勤務能率の発揮及び増進のために研修の機会が与えられるが(地公法三九条)、研修の実施は任命権者にあり、職員自身には研修すべき義務は明定されていない。

これに対し、教育公務員については、教育の本質から研究と人格の修養とが求められ、教育公務員自身に研修義務が直接課せられ、かつその職責を遂行するために研修は必須とされ、任命権者の企画実施する研修(職務命令研修)のほかにとくに校長を除く教員個人の側からの自発的な研修(自主研修)として、職務専念義務免除による教特法二〇条二項の研修、勤務時間外の完全な自主的研修が認められている。

2  教特法二〇条二項の研修

地方公共団体の職員は、服務規律に従って勤務する服務義務に関する面からみると、地公法三五条により、勤務時間及び職務上の注意力のすべてをその職務遂行のために用いなければならないとする職務専念義務を負っているのであるが、この義務を免除するためには、法律又は条例の特別の定めが必要であり、各地方公共団体では職専免条例を制定して、研修を受ける場合には同条例に基づき、同義務が免除されている。しかし教育公務員については、この条例を俟つまでもなく、教特法二〇条二項の規定が地公法三五条にいう法律の特別の定めに該当し、直接に同義務が免除される。

そして、給与上の取扱も、給与条例上「勤務しなかったことにつき承認があった場合」として、勤務していたのと同様有給の扱いとされる。

このように法律によって直接職務専念義務を免除し、服務義務から解放する例は他に殆どその例をみないが、一般論として職務専念義務免除が勤務条件に属する勤務時間、休暇、休日と実質的に密接な関連を有することになるから、教特法二〇条二項の研修は、教員にとって、その遂行する職務に不可欠なかつ密接な服務義務であると共に、本属長の承認によって職務専念義務を免除され、勤務場所を離れて自発的研修に努めることができ、しかもこれに法律が特別の性格を付与していることは教員にとって大きな関心事項であり、事実上の利益であるということができるから、同項による本属長の承認、不承認は、自己の勤務の継続的提供の決意にあたり、考慮の対象となる利害関係事項に該当し、労務の提供に関連した勤務条件性を有するものとして、端的に措置要求の対象となるものというべきである。

3  管理運営事項の該当性

教特法二〇条二項の研修の承認は、教員の自主研修権を保障したものであるから、本属長は授業に支障のない限り、必らず承認しなければならないとする見解もあるが、同項が「授業に支障のない限り」との要件を特に規定していることを考えると、授業に支障がある場合には承認をしないものとして、本属長の承認権を拘束し、更に本属長の職務内容からみて、授業以外の校務運営上の支障の有無、研修の日程及び内容が職務に関連し、教員の資質、人格の修養と向上に寄与するか等の事情も考慮して、当否の判断を裁量的に行うべきものと考えられるので、右承認は、本属長の自由裁量による、各学校の管理運営事項に該当するものというべきである。

右のように承認が、管理運営事項にあたるとしても、前記説示のとおり同項の研修の承認については、教員の勤務条件としての性格もあわせ有するものと認められるから、措置要求の対象事項に該当するものと解される。

4  第一審被告の当審における主張について

第一審被告は、当審における主張1において、第一審被告の権限の制約から、研修不承認の結果、校長のなした勤務を要しない時間の指定が妥当か否かについて判定は行い得るが、研修不承認の当不当の判断はなし得ないと主張する。管理運営事項(研修不承認)と勤務条件(勤務を要しない時間の指定)とが密接に関連し、前提と結論との関係のように表裏一体となっている場合には、管理運営事項についても、地公法四七条の規定から、第一審被告は、本属長たる地方公共団体の機関に対し、勧告をなし得るものと解するのが相当である。その理由は、原判決二四丁表一行目「人事委員会等は、」(135頁2段22行目)から同裏三行目「必然性はなく、」(135頁3段9行目)までと、原判決二八丁裏七行目「措置要求の制度」(136頁3段22行目)から二九丁表三行目末尾(136頁4段1行目)までと同一であるから、これらをここに引用する。

また、第一審被告は当審における主張2において、休暇と職務専念義務免除とは制度としての趣旨も、法的性格も異なるのに、これを休暇、休日の面を有するとして同一視するのは不当であり、不承認の結果、休暇等を返上せざるを得ないことは間接的、事実的な結果にすぎないと主張する。

しかしながら、教特法二〇条二項の研修については法律が特別の性格を与え、その承認による職務専念義務の免除の問題が管理運営事項に属しても措置要求の対象となし得るとする当裁判所の前記判断からすれば、職専免と休暇との法律的な性格の峻別や勤務を要しない時間の指定との相当因果関係を考慮する必要はなく、実質的、実際的に休暇、休日の側面を有し、勤務条件性があることを指摘すれば足りるものである。

第一審被告の右主張1・2はいずれも採用できない。

5  結論

以上によれば、本件措置要求一1、同二につき、地公法四六条に規定する勤務条件に該当しないとの理由で、これを取り上げないとした本件判定等一1、同二は取消しを免れない。

四  第一審原告宮崎の本件措置要求一2について

原本の存在及び成立に争いのない(証拠・人証略)によれば、同宮崎は、本件措置要求一1の志賀中学校校長の研修承認要求と共に、本件旅行中の昭和六三年八月一二日、一三日、一五日ないし一七日について、同校長が勤務を要しない時間を一方的に指定したのは、同校において教員の希望日をもとになされることになっている指定についての慣行違反で、かつ差別的取扱であるとして、あわせて同一2の撤回の措置要求をなした。これに対し、第一審被告は、勤務を要しない時間の指定は研修の承認とは異なり、勤務条件に関する事項そのものであるとして、実質審理に入り、要求者である第一審原告宮崎、志賀中校長、同教頭らから事実聴取を行い、結論として校長の右指定は妥当な措置であるとして、要求一2を棄却したこと、以上の事実が認められる。

そこで、志賀中校長のなした右指定に、第一審原告宮崎の主張するその意思に反し、希望を無視した慣行違反、差別的取扱いの違法があるかを検討する。前掲各証拠のほか、(証拠・人証略)によると、名古屋市立中学校の教諭の四週六休制については、その職務の特殊性により、通常の方式により難いため、昭和六三年四月一三日付教育長通知により、各校長の権限で毎五二週間につき勤務を要しない時間として指定される時間数が一〇四時間となるよう、夏季、冬季等の休業日における勤務時間を各校長が指定するものと定められていた。志賀中学校においては職員が出勤簿整理補助表の「指定」欄へ予め丸印をつけて、他の職員との競合や、校務への支障の有無などを校長が判断、調整した後、原則として職員が丸印をして提出した希望日を尊重して、その日に指定する方法をとってきた。

第一審原告宮崎は、昭和六三年七月一一日、本件旅行への参加を研修として承認するよう校長に申請し、その後、本件旅行期間中の日を除外して、その他の夏季休業中の日を「指定」希望日として丸印を打っていたが、校長は七月二五日に本件旅行を研修として承認しない旨を決定してその旨通知すると共に、同宮崎が旅行に参加できるように配慮し、かつこれに参加しても無断欠勤とならないよう考慮して、旅行期間中の日を勤務を要しない時間として指定したこと、同宮崎は右旅行期間中の日について年次有給休暇の請求をせず、また請求をする意思も有していなかったこと、以上の各事実を認めることができる。

これによれば、右勤務を要しない日の指定の権限は校長にあり、校長は校務運営上の理由から、職員の申し出た希望日に拘束されず、他の日に指定することは濫用にわたらない限り認められるものというべきであり、しかも研修の不承認を前提として、第一審原告宮崎の不利益にならないよう配慮して右指定を行ったことが認められるから、校長の右指定が、同宮崎の意に反したものであったからといって、違法なものということはできない。

第一審被告の判定一2も、校長の指定に違法が認められない以上は、実体判断として要求一2を棄却するのが相当であるから、違法は認められない。

五  第一審原告藤田の本件措置要求三について

当裁判所も、右措置要求三は地公法四六条の勤務条件に関するものであるとは認め得ず、同藤田の本訴請求は理由がないと判断する。

その理由は、左に訂正、削除するほかは、原判決三一丁表一一行目「職専免規則二条」(137頁2段14行目)から同三二丁裏九行目末尾(137頁4段1行目)までの説示と同一であるから、これをここに引用する。

1  原判決三一丁裏五行目「先に二1で述べた」(137頁2段25行目)を「前記二3で考察した」と訂正する。

2  原判決三二丁表六行目「教育公務員」(137頁3段11~12行目)から同裏二行目末尾(137頁3段23行目)までを「学校栄養職員は、教特法に定める教育公務員には該当せず、従って教特法一九条、二〇条二項の研修の適用乃至準用を考慮する余地はない。従って、第一審原告藤田の本件学習会への参加を教特法二〇条二項の研修としてとらえることは不可能であるから、地公法三九条の任命権者による研修以外に、公務員の側からする自主研修は、前記職専免規則二条一六号又は一七号に該当するものとして任命権者が職務専念義務を免除しない限り、これに参加することはできない。

教員と学校栄養職員との間で、自主研修に対する法律上の配慮が右のように異なり、これが峻別されている以上、職専免規則二条一六号又は一七号に基づき任命権者が行うその免除自体は、本来的に管理運営事項であって、これを勤務条件としてとらえることは困難である。」と改める。

六  結語

以上の次第で、第一審原告宮崎の本訴請求中、本件判定一1の取消を求める部分及び同平山の本訴請求はいずれも理由があるが、同宮崎の判定一2の取消を求める請求及び同藤田の本訴請求は理由がない。これと一部結論において異なる原判決主文一は不当であるから、これを変更し、結論において同旨の原判決主文二、三は結局相当であるから、その部分の各控訴を棄却し、訴訟費用の負担につき、行政事件訴訟法七条、民事訴訟法九六条、九五条、九二条、八九条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 土田勇 裁判官 水野祐一 裁判官 喜多村治雄)

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