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名古屋高等裁判所 平成7年(ネ)524号 判決 1995年10月27日

主文

一  本件控訴を棄却する。

二  控訴費用は、控訴人の負担とする。

三  原判決主文第三項の別紙物件目録一枚目表六行目の「鉄骨」を「鉄筋」と、同裏五行目の「鉄骨コンクリート造一階建」を「鉄筋コンクリート造一階建居宅」と、同一二行目の「鉄筋鉄骨」を「鉄骨鉄筋」と、同項の「浜松出張所」を「浜松支局」と、各更正する。

事実

第一  当事者の求めた裁判

一  控訴人

1  原判決を取り消す。

2  被控訴人の請求をいずれも棄却する。

3  訴訟費用は、第一、二審とも、被控訴人の負担とする。

二  被控訴人

主文第一、二項と同旨

第二  当事者の主張

当事者の主張は、次に訂正、付加するほか、原判決の事実欄第二に記載されているとおりであるから、これを引用する。

一  原判決四枚目表三行目の「浜松出張所」を「浜松支局」と訂正する。

二  同裏九行目から一〇行目にかけての「利息を三六・五パーセントとして」を「利息年三六・五パーセント、遅延損害金年四〇・〇〇四パーセントの約定で」と訂正する。

三  同七枚目表八行目の「右」を「本件貸付債務の元本として」と訂正し、同九行目の「遅延損害金」の次に、「として」を付加する。

四  同九枚目裏六行目の「ものもの」を「もの」と訂正する。

五  同一〇枚目裏二行目の「貸金業法四三条の適用を肯認すべきである。」を「貸金業法四三条一項の適用を肯認すべきであり、あるいは、被控訴人は、信義則上、受取証書の交付の欠缺を主張できないものというべきである。」と訂正する。

六  同一一枚目裏三行目の「四三条」の次に、「一項」を付加する。

七  控訴人及び被控訴人の当審における主張を、次のとおり付加する。

1  控訴人

(一) 仮に、控訴人が被控訴人に対し期限の猶予の意思表示をしたとしても、同意思表示は、錯誤により無効である。

すなわち、右期限の猶予は、あくまでも約定利率である年三六パーセントの割合による利息金の受領が、貸金業法四三条一項の「有効な利息の債務の弁済とみな」されることを前提としてされたものである。仮に、控訴人が、本件各利息の受領が、右規定の要件を満たさないと認識していれば、控訴人は、絶対に期限の猶予を行わないし、利息制限法に基づいて年三〇パーセントの割合による遅延損害金を請求するとともに債権回収手続に着手していたはずである。そして、右錯誤は、期限の猶予の意思表示の動機に関するものであるが、控訴人は、利息金を受領する際、被控訴人に対し、利息として受領する旨を表示し、かつ、その利息の受領が右「有効な利息の債務の弁済」とみなされることを当然の前提として右意思表示をしているから、利息の受領が、右規定の要件を満たさないとすれば、控訴人の期限の猶予の意思表示には、法律行為の要素に錯誤があったというべきである。

(二) 被控訴人の後記2(二)の主張は否認する。

2  被控訴人

(一) 控訴人の右主張(一)は否認する。

(二) 貸金業者である控訴人は、期限の猶予の意思表示を、ほぼ一年間にわたって繰り返してきたものであるから、控訴人は、右1(一)の錯誤に関し、重大な過失があったものであり、民法九五条但書により無効を主張することができない。

第三  証拠(省略)

理由

当裁判所も、被控訴人の控訴人に対する本訴各請求は、いずれも正当として認容すべきものと判断するが、その理由は、次に訂正、付加するほか、原判決の理由欄に記載されているとおりであるから、これを引用する。

一  原判決一三枚目表三行目の「信用する」から同七行目末尾までを「信用することができない。」と訂正する。

二  同一四枚目裏七行目及び九行目の「四三条」の次に、「一項」を各付加する。

三  同一五枚目表四行目の「四三条」の次に、「一項二号」を付加する。

四  同七行目の「右規定」を「貸金業法四三条一項」と訂正する。

五  同一六枚目表四行目末尾の次に、「また、右によれば、被控訴人が、信義則上、受取証書の交付の欠缺を主張できないというべき事情も、見出すことができない。」を付加する。

六  同裏八行目の「本件貸付金は弁済により」を「控訴人が右供託金の還付を受けたことにより、右供託金は本件貸付金債務の弁済に充当されたものと解すべきであり、これにより、本件貸付金債務は」と訂正する。

七  控訴人の当審における錯誤の主張について、次のとおり付加する。

控訴人は、控訴人が被控訴人に対してした期限の猶予の意思表示は、約定利率である年三六パーセントの割合による利息金の受領が、貸金業法四三条一項の「有効な利息の債務の弁済とみな」されることを前提としてされたものであり、錯誤により無効であると主張する。しかし、控訴人の内心に、右の点について錯誤があったとしても、右錯誤は、意思表示の動機に関するものに過ぎないものというべきである。そして、右動議が意思表示の相手方である被控訴人に対して表示されたことを認めるに足りる証拠はない。したがって、右錯誤は、民法九五条の「法律行為ノ要素」に関するものということはできず、控訴人の錯誤の主張は失当といわざるをえない。

よって、原判決は相当であって、本件控訴は理由がないから、これを棄却し、原判決主文第三項を本判決主文第三項のとおり更正し、控訴費用の負担につき、民事訴訟法九五条、八九条を適用して、主文のとおり判決する。

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